ベレッタ451 EELL - 実鉄砲自慢

2003年 1月30日 築地

鉄砲自慢もいよいよネタ切れ! これで最終回です。
チッ、たった4回、そうです、そんなに自慢できる銃がある訳無いじゃないですか。

で、今回は水平2連銃、ベレッタ451、EELLです。

全体図
全体図

この銃の購入目的は当然狩猟用なのですが、現在のように狩猟鳥が劇的に減少している昨少なくとも東京周辺ではバードハンテングは事実上出来ないのが現実です。
しかしながら、当、ファーイーストガンセールス社の前の小川には、鴨が何羽も居着いているのです。当社に来社されるお客様の多くが、 "鴨が居ますね" と笑顔で言われるのですが、その度に "撃っちゃ駄目ですよ" とたしなめています。
田園調布の町中で撃てば、間違いなくテレビ放映され、翌日の新聞を飾るのは目に見えていますからね。北海道の競馬馬誤射事件より最も大問題になるでしょう。

川と鴨
川と鴨

私自身は終日ハンテングで歩き回っても、狩猟鳥と遭遇するのは希有な事なので声を掛ければ100%間違いなく飛び出す、クレー射撃で楽しんでいます。
この水平2連、購入したのは新品ではなく中古銃です。前の持ち主は柳田佳久さんです。何冊もハンテングの本を書かれているのでご存じの方も多いと思います。
お年も70以上になられていますのに、私よりは若く見えます。そろそろ鉄砲も整理したいと言うことで私は氏のお持ちだった水平2連銃を分けて頂きました。
水平2連銃ですと、ストレートグリップの両引きであるべきだと見識のある方は言われるかも知れませんが、射撃用として使いますと、ビバーテイルの単引きで、ピストルグリップと言う取り合わせが最適です。氏の銃もそのスペックだったのでためらわず分けて頂きました。ただし厚着した中で振り回しよく使えるように銃床はかなり短めです。
私はどんな鉄砲でも文句を言わずに使うと言うスタイルですので、外見が汚くなるような銃床の継ぎ足しはしません。
銃床にはレコイルパットもバットプレートも付いていませんので、知らない人は、これは"安物"か? と思われるかも知れませんが、高級銃と言うのは実はレコイルパットもバットプレートも付いて無く、木部に直接チェッカリングを切ってあるだけなのです。

銃床銃尾
銃床銃尾

銃床と機関部を取り付けるネジ穴の蓋も、同じ材質の木で作り、それを挿入してあるだけです。勿論こうした、レコイルパットもバットプレートも無いと言うのは狩猟用、あるいはスキー射撃用に限ったことではありますが。
当然、ジェームズパーデイも、こうしたロンドンガンと言われる高級銃にはレコイルパットもバットプレートは付いていません、少し安くなると水牛の角などで作ったバットプレートを付けていることもあります。
あるいは金属で縁取りしたバットプレートを取り付ける事もありますが中心部はあえて木部を露出させます。
以前に当社で販売したFN-のMモデル、つまりFNでは最高級のモデルでサイドプレートのタイプの物ですが、スキート用の銃にはレコイルパットが付いていませんでした。
この様に最高級の狩猟銃にはレコイルパットは付いていないのが本当なのです。

ベレッタの彫刻には舌を巻く事があります、繊細な彫刻と言う以前に、手彫りでも無いのに手彫りに見せる技術が格段に優れているのです。
ベレッタの上下2連、687とか、687EELLモデル等の彫刻は多くの人が手彫りだと思っているのでは無いでしょうか? だから高くても仕方がないと考えて居られると思います。
当社のカタログにはベレッタのこうしたシリーズは掲載しておりません、何故ならスタンプ、およびエッチング処理なのに手彫りと同じくらい、ぶっ高い値段だからです。
スタンプといえば、プレスを使って型押しするだけのことです。
エッチングと言うのは写真製版の技術を利用して加工面に写真焼き付けしたものを酸で溶かして模様を付ける方法です。これらの銃はベレッタにとっては相当利益率の良い銃でしょうが、逆にお客様にとっては非常に割高な銃なので私は取り扱って居ないのです。
しかしながらこれが手彫りだと誤認しているお客様にっては満足度の高い銃かもしれません。最もコーナーの縁取りなどは手彫りで彫っているのでなかなか素人目には見極が難しいのです。私の451 EELLは手彫りです、手彫りかどうかの確認をするには、私は彫刻の表面を顕微鏡で見ます、顕微鏡で見てタガネの後を子細に確認するのです。
そうしないとなかなか手彫りかエッチングか見分けが難しいのです。
でもスタンプ彫刻は、線の脇が盛り上がりますので簡単に視認できます、それに第一、タガネの痕はありません。

水平2連と言うと多くの人が、上下よりも安いと思われているかも知れません、しかしながら、ちゃんと作るとむしろ上下2連より手間がかかるものなのです、現実問題、上下よりも安い値段で売られている水平2連はそれなりに手抜きをして作られています。
ちゃんと作った銃は例外なく、上下よりも高い相応の値段をしています。
ジェームズパーデイ等はその代表でしょうか、メルケルも安い値段で水平を作っていますが、彫刻も含めてそれなりに手抜きをして作っています。
しかしながら世界的な傾向ですが、水平は上下よりも安い! そう言う常識があるのでどこの会社も水平2連銃は作らなくなりました。
水平2連銃の特徴は、軽いと言うことです。ペラッチのコラムでも書きましたが、最近は妙に軽い射撃銃を欲しがる人が多いのですが、そんなに軽いのが良ければ水平をお使いなさいと言いたくなります。 私の水平は3.2キロ、銃身重量は1.4キロです。
軽い水平を使いますと、成る程と言えるくらいスイングは楽になります、軽い銃を欲しがる理由も解らなくはありませんが、軽ければ軽いで、銃身が走りすぎる傾向もあり、なかなか一長一短です。水平で射撃と言うのは無理があるのではと多くの方が思われると思いますが、殆ど上下と変わらない位に撃てると思います、私が水平で当たらないのは、単に下手なのと単に外の銃を使いすぎるからに外なりません。勿論、殆どの水平が狩猟目的で作られていますのでベンドが深く、プルレングスも短いので使い勝手は良くありません。
従って、上下2連銃と比べますと、狙点はかなり上になります。
勿論、リブの水平面とするとそれなりに銃身は上向きになっては居ますがね・・・
クレーの狙いについては水平銃身の中心でとらえるのでかえって中心を明確に視認できると私には思えます。水平2連銃の射撃で絶対的に必需品なのは、手袋です! これがないと銃身の熱で触れません。私の銃はビバテイル銃床なのでまだ良い方ですが、これが正統派のイギリスタイプですと、ほとんど銃身を持って撃つようになりますので、手袋がないと銃身の熱で10発以上続けは撃てないはずです
ビバーテイルと書きましたが、これは文字通りビーバーのテイル、つまりしっぽみたいな形状をしたと言う意味です。
こうした形状の先台も、こだわりのある水平フアンからしますと、邪道と言う事になるのかもしれません。

ペラッチのコラムでも書きましたが、銃の値段によって材質の違いは無いと断言しましたが、この銃身にはボーラースチールと打刻してあります、いわゆるボーラー鋼使用という訳です。打刻はBORERですが、この会社はオーストリアの会社でドイツ語圏ですので正確にはOの上にウムラウト、つまり点々がつきます。

銃床先台
銃床先台
銃身刻印
銃身刻印

発音も、ボーラーと明るく発音するのではなく、少し濁ったような発音になりますね。

ボーラー鋼と言うと何か特別の鋼材みたいに思われると思いますが、ボーラー製鋼所製のクロームモリブデン鋼材で、通常銃に使われるクロームモリブデンと違いはありません。
しかしながら、昔のボーラー社は非常に優れた鋼材を製造していたのです、何よりも不純物が極めて少なく、鋼材の均一性を最大の特性としていました、従って値段も通常の鋼材の倍以上もしていたのです。40年くらい前は、ボーラー鋼材で作ったプレスの金型は型持ちも良かった様です、ボーラー社の刃物鋼材も結構日本に輸入されていた筈です。私も入手したことがあります。しかしながら日本の製鉄技術が向上するに従い、ボーラー鋼材の特異性も無くなり、現在はボーラー鋼材使用と、あえて宣伝している銃器メーカーは皆無になりました。
現在の銃砲はすべてボーラー鋼材と同じレベルの材料が使われているはずです。
同じように30年くらい前までのドイツでは、クルップ製鋼所で作られたモリブデン鋼材を使った物は、スペシャル、クルップスチール等と刻印した物もありましたが、これらの刻印はとっくの昔に無くなりました。

昔の銃は、射撃でも32グラム装弾が普通でしたので、水平2連には耐久性の問題から35グラム以上は使ってはいけない、等と言われていました。
ですから、銃身のロッキング、いわゆるダボが1個の物は安物、2個ある物は高級銃と言う言い方がありました、メルケルや、一部のロンドンガンはクロスボルトも備えています。しかしながら、現在の射撃のように24グラム装弾しか使わない場合は、水平2連銃は耐久性に気兼ねなくなくどんどん撃つことが出来ます。
水平2連銃で強い弾を撃ち続けると、機関部と銃身の間にクリアランスが発生します。
クリアランスがある場合、銃口から覗くと機関部と銃身の合わせ目の所から僅かに光が差し込むのでそれが視認できます。
昔はこうして寿命を判断していました、しかしながら使えないというレベルではありません。まあ、鉄砲屋さんがお客に買い換えを勧める手段だったのかもしれません。

EELLのサイドロックには、ピンが4本あります、つまり中のパーツの支点は4個と言うことですが、私が昔上司から教わった話では、サイドロックのピンは最低でも7本無いと良いサイドロックとは言えないと教えられたことがあります、その理屈からすると、この銃のサイドロックはあまり高級な出来ではないと言うことになります。
機関部のブリーチ面を見ると、撃針は表から取り外せる様に出来ています。
現在のミロクの方式と同じですよね、どちらかがアイデアをパクッたと言うことですが、一体どちらが先に出来たんでしょうね? 興味はありますが調べる元気はありません。

ブリーチ面
ブリーチ面

最後に451 EELLの彫刻をお見せしましょう、上下、左右とも繊細な唐草が掘ってありトップレバーには透かしも入っています。

彫刻 1
彫刻 1
彫刻 2
彫刻 2
彫刻 3
彫刻 3

今回もまたガンケースの話をしますが、ベレッタの水平を入れているガンケースは非常にコンパクトに出来ています、水平だからこういうサイズと言うのではなく、参考までにFNのD-4を収納してみます、これは銃身長30インチですからこれ以上大きい物は無いのですがちゃんと収納できます。このガンケースも例によってイタリアのEmmebi snc社です。ホームページもあるので一度覗いて見てください。アドレスは以下の通りです。
http://www.emmebi.it/

ガンケース
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ガンケース内部
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