液体火薬 - コーヒーブレイク

2003年 9月22日 築地
追記(訂正) 2003年 9月24日 築地

ある場所で、リキッド、プロペラント、なんて英語を聞いて思わず興味を引かれました。
英語でプロペラントと言う言い方は、弾の推進薬と言う場合に使われます。
爆速が8000メートルを超える爆薬の場合、ハイ、エキスプローシヴ、通常の火薬は単なるエキスプローシヴと英語では言われています。
一般に言われているガンパウダーと言う英語は軍事専門家の間では使われません。
リキッドプロペラントと言っているのは、米軍の専門家ですから、間違って発言した言葉ではありません。早速食い下がって聞いてみますと、文字通り液体推進薬、もっと平たく言えば液体火薬と言うことです。
どうやら米軍では液体火薬の実用化に成功したようです。
写真を見せて貰いますと、105ミリ砲程度の大きさの砲に使用しているのが解ります、105ミリ砲と言うのは資料で見た私の推測で、もう少し大きいかも知れません。

液体火薬を開発した目的は、砲の完全無人化にあるそうである、事実液体火薬を使う砲は全くの無人で、砲自体は離れたところからの遠隔操作でコントロールされるそうです。
液体火薬のもう一つの利点は、炎と煙が出ないことです。
発射の瞬間の映像をビデオで見ますと、炎は全く発生していません。黒煙も皆無です。
ほんの僅か白煙が出るだけです。
それともう一つの利点は機関銃みたいな連続発射が出来ると言うことです。
残念ながら連続発射のビデオは見せて貰えませんでしたが、私の想像では機関銃みたいに1分間に400~600発と言うサイクルではなく、砲身を安定させる為にはもっとゆっくりの間隔でないと撃てないはずで。私の推測では1発撃つのに2~4秒は要するでしょう。
関係者の話では、連続して撃てるのは5発までと言うことでしたが、これは連続して5発以上撃ちますと、砲身が加熱して狙点が狂うからでしょう。
私の推測では砲の中に20~40発以上の弾頭は装填できるはずです。
つまり、連続して5発の発射を数回繰り返すことが可能なはずです。
画像を開示できれば一番良いのですが、最先端の軍事機密ですから画像の開示は出来ません、でも私が見た限りの画像では砲の薬室にあたる部分に大きな四角い容器のような物があり、その中に液体火薬が入っているそうです、その液体を定量薬室に送り出し、弾倉にある弾頭を装填して発射するシステムだそうです。、弾倉には弾頭だけを装填してありそれを1発ずつ薬室に送り込んで撃ち出すそうです。
液体を薬室に送り出すと言うことに関しては、エンジンにガソリンを送り込むのとシステム的には似ているようには思えますが、自動車エンジンみたいにガソリンを気化させて送り込むのではなさそうですし、それに点火プラグみたいな物で点火させてる様子もありません。言うまでもありませんがガソリンでは砲弾を撃ち出すパワーとしては絶対的に爆発力が不足しています。
当然ながら液体火薬の成分、それの点火装置などは秘中の秘と言うことで、現在のところは知る事は出来ません。
ここで砲の命中精度と言うことで少し説明をしてみますが、砲の命中精度は砲の設置された地盤の状況によって大きく変わります、地盤をしっかり整えておけば相当な命中精度が出せますが、地盤が悪いと発射の瞬間に砲身がぐらつき、命中精度はバラバラとなります。
ライフル銃で言えば、ベンチレスト射撃みたいに依託射撃するのと、ハンテングみたいにオフハンドで撃つのとの違いを考えて貰えば良いでしょう。
いくら銃の命中精度が優れていても、実際の命中精度には天地ほどの違いが出るのは容易にお解り頂けますよね。
こうした液体火薬を使う自動砲では、人間が介在するのはせいぜい移動時だけで、2~4程度の兵隊でスピーデイーに移動して、移動場所で油圧装置で足場をキッチリと固めて、30~60分程度で発射準備が出来るはずです、現在では素早い移動と展開が軍事技術の世界では非常に重要な要素となっています。
現在の砲弾用ドップラーレーダーでは相手が砲弾を発射した瞬間、砲弾の飛行コースを瞬時に割り出し、その砲弾の発射地点を逆算して割り出し、簡単に反撃できるシステムが出来上がっています、その為にこの液体火薬を使用する砲弾には、レーダーに写らないステルス砲弾が使われると思いますが、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、と5発砲弾を発射したら直ぐにその場所から移動できる事も考えて設計されていると思われます。

ちなみに米軍のステルス砲弾を作成したのはナイトフォーク、ステルス爆撃機を作った、ロッキード社の、スカンクチームです。あの大きな爆撃機すらレーダーには小鳥の大きさにしか写らないのですから、熱源のないステルス砲弾は事実上レーダーでは捕らえられないはずです。それに砲弾は丸いですからレーダー波を反射しやすい平面の対象物はありませんからね。
言うまでもありませんが、自衛隊にはステルス砲弾なんて最先端の砲弾は存在しません、あ、ひょっとしたらステルス砲弾の存在も米軍の軍事機密だったかもしれません。

軍隊の世界での命中精度は、ライフルも含めてミルの指標で評価されます。
1ミルとは1000メートルで、1メートルの事を言います、100メートルなら10センチと言うことになりますね。
しかし、現在の砲は1000メートルで1メートルの目標に命中させられる命中精度を持っています。つまり、最先端のライフル銃と同じ命中精度と同じなのです、多くの人は大砲なんて相当命中精度は悪いと考えているのでは無いでしょうか、所が意外や意外、ほとんどのハンターの足下にも及ばないような命中精度を誇っているのです。
もっとも大砲の命中精度というのも軍事機密ですから、ほとんどの国民が知らないのも無理はありませんが、それに大砲の射程というのは1000メートルで使われることはほとんど無くて、近くても4000メートル、この場合命中精度は4メートルですが、戦車なら命中するレベルですよね、しかし、30キロ、40キロと言う長距離になると目標に命中させると言うよりは、その地域の上空で砲弾を炸裂させてその地域を制圧すると言う運用のされ方に変化します。

こんな大砲の話を書くと銃器のコラムと言う趣旨からは相当乖離してきますが、弾が出れば何でも同じと言うのが私の理論で、昔は6ミリBB弾をフルオートで撃ち出すシステムを発明して1500万円の特許料を稼いだこともありますし、また大砲の話にもこうして夢中になれるのです、この情報ですら、テレビで飼われている"自称軍事評論家"という素人集団は勿論、軍事情報の専門誌、ジェーン年間ですらまだ把握していない事実かも知れませんよ。


追記 2003年 9月24日

読者意見

築地さん、初めまして。残念ながら所持許可は持っていませんがファーイーストのHPを偶然見つけて以来毎日のようにアクセスしています。築地さんの解説やコラム、抱腹絶倒の面白さで病みつきになってしまい、所持の予定もないのに新着情報なども隅々まで読んでいます。

今回の液体火薬のコラムも非常に興味深い内容で、読ませていただいて有り難く思っております。軍事や技術に少しは興味があるので得難い情報でした。
液体火薬で思い出したのですが、88年頃に出版された英国の小説家ギャビン・ライフルの「砂漠の標的」に、フィクションですが液体火薬を使った戦車砲が出てきます。
作品中では特徴の一つとして射程に合わせて装薬量を変えるという説明がありました。後は小型化できるのが利点として自動装填の小型砲塔という設定でした。実際の液体火薬の開発、機密程度については知るよしもありませんが、液体火薬については、とりあえず知ってはおりました事をお知らせしたくメールいたしました。
ただ、今回のコラムを読むまでは忘却の彼方にありましたので、興味を持ったら継続して調べる努力をすべきだと叱咤されたような感じです。メディアではそれこそ液体火薬の「え」の字も見かけなかったので、トンデモの類と勝手に決めつけて忘れてしまったようです。

さて、上記のギャビン・ライアルの別の作品にはパーディの銃が登場するのは有名ですが、コラムでパーディの名前を見た時にはああ、やっぱりあったのかと嬉しい驚きでした。しかし、高級銃とは作品中でもありましたが、そんなに高価とは知らずもっと驚きました。また、私は中学生時分に友人を誘っていわゆるサバイバルゲームをしていました。お金がないので、せいぜい自作ケースレス化、ポンプアクションキット組込ぐらいでした。丁度フルオートのガスガンが出てきたところで、指をくわえて見ていましたが、あれを発明されたのが築地さんだったとはこれまた驚きでした。インターネットがなければこれを知る事もなかったと思うと感無量です。

長くなりましたが最後にコラムについてですが、それこそ材質、加工法から業界の仕組み、人種問題や心の問題について幅広いテーマについて詳しい解説と深い洞察にはいつも敬服しております。内容についてもほぼ、というか、全く同感の事ばかりです。私にとっては勉強させてもらっているようなもので、こうなったら授業料代わりに所持許可を取って・・・といつも思うのですが、生憎そのような甲斐性もないので、メールにてお礼に代えさせてください。今回「銃器のコラムと言う趣旨からは相当乖離」と書かれていますが、このような脱線は私は大歓迎です。(機械に限らず、「仕組み」を知るのが好きなのです。)


訂正

液体火薬のコラムで誤記があり、以下の方からご指摘を受けました。改めて訂正致します。

■Sさんからのメール
HPの液体火薬の項で下記の数字が間違いではないかと・・・思い。
軍隊の世界での命中精度は、ライフルも含めてミルの指標で評価されます。1ミルとは1000メートルで、1メートルの事を言います、100メートルなら1センチと言うことになりますね、ライフル銃の場合100メートルで1センチに命中する銃は、相当優れたスナイパーライフルと言うことが出来ます。100メートルでは10センチ!!!では。

■Hさんからのメール
築地様、疑問な点が ありましてメールいたします。コラムの中で1ミルは1000メートルで1メートルとの解説がございます、その比率で計算すると、100メートルでは1/1000の0.1メートル、すなわち10センチだと思うのですが? 100メートルの距離は1000メートルの1/10、ゆえに1メートルの1/10は10センチとなると思います。ご挨拶遅れましたが、私、ライフル銃を所持してまだ2年目の初心者です、スコープの調整がやっと出来るようになりました、ファーイーストガンセールスのホームページが楽しみで拝見してます、これからも宜しくお願いいたします。

■またYさんから以下のメールも頂きました。
コラムにて言及されていた液体火薬ですが、防衛庁も「液体発射薬」と言う名称で研究を行っています。研究している事実は防衛庁のHP上でも公開されています。 

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