サコー75 - 裏側まで、徹底解説

2000年10月28日 築地

これから何回かに分けて、銃器のことについて徹底的に説明したレポートを連続して書いていきたいと思います、最初に選んだ銃、それはサコー75です。
一部の人の中には昔のサコーの方が出来が良かったと言う人が居るが、昔のサコーには一つだけ致命的な欠点があった、昔のサコーはボルトの横にボルトガイドと呼ばれるプレートが付いていたのだが、使い込んだ古い銃などは射撃の衝撃でこのガイドが前にずれ、ボルト先端のボルトロッキングと機関部のロッキングの間に滑り込んでしまうことがある、そうなるとボルトガイドとボルトロッキングが噛み込んで絶対に開かなくなる、ハンテングの最中ならこれが致命的なトラブルになる、めったに起こるトラブルでは無いが一回起きるとやっかいな事になる、これが昔のサコーの、唯一の欠点であった。

しかしながらサコー75になり、この問題が解決した、サコー75ではこの部品が無くなったからである。これからしてもサコーもこの欠点はとうの昔に把握できていたのであろう、昔のサコーのデットコピーである、ホーワライフルは未だにこのボルトガイドを付けて製造しているのでいささか問題認識が甘いようである。

さて、ボルトガイドの役目はボルトをスムーズに動かす目的が有ったのだが、サコー75ではこのガイドが無くてもボルトがスムーズに動くようになったからである。

3個のラグ
3個のラグ
60度オープン
60度オープン

昔のサコーが何故ボルトガイドが必要だったかというと、ボルトに先端の左右にロッキングラグが付いていたため、そのボルトが機関部を通過するためには機関部の横にコの字型のロッキングラグが通過するためのスペースを開けなければ成らないが、ボルトの本体は円筒型なので機関部の左右にコの字型の空洞があるとボルトがスムーズに動けないのである、そのためコの字型のスペースを埋めるためロの字型のボルトガイドを設ける必要があったのである。

サコー75ではロッキングラグを3個にした、上に一個、左右の下側にそれぞれ取り付けたのでボルトの横の空洞が無くなり、ボルトガイド無しでボルトがスムーズに動くように成ったのである。

ボルト閉鎖
ボルト閉鎖

ロッキングが3個に成ったことでボルトの開閉角度が90度から60度に変更された、ボルトの開閉角度が小さいと言うことはボルトハンドルがライフルスコープに当たらなくなり、ボルト操作がスムーズになり、またスコープマウントの高さも低くすることも出来るようになった、スコープ低くなると狙いを定めるときの頬付けをしっかりと付ける事が出来るようになり格段に使い勝手が良くなる。

ボルトの改良についてはもう一つ改良された部分がある、それはボルトリリースである。レミントン700ボルトアクションの場合、安全をかけた状態でボルトの操作をすることが出来る、操作できると言うことは安全をかけていてもボサの中を歩いているときなど、ボサがボルトに引っかかるとボルトが起きてしまい、また何かの拍子にボルトリリースのボタンに触れると簡単にボルトが銃から抜け落ちてしまう。

ウインチェスター、ウエザビーなどの場合は安全をかけるとボルトもロックする、そのため安全さえかけておけばボルトが抜け落ちる心配は無いのだが、逆にボルトを操作するときは安全を外さないといけない、問題が発生するのは実際に薬室に装弾を装填している時である、弾を装填して安全をかけておくとボルトがロックしているので問題ないのだが、撃針を取り替えたり、または引き金を取り替えてシエアーの位置が変化している銃の場合、安全装置のシエアーがすり減っている銃の場合、安全と撃針とシエアーの関係を微調整しておかないと安全を戻した瞬間に"ドカーン"となることがある。

安全とボルトリリース
安全とボルトリリース

これは安全をかけた状態で引き金を引くと安全はかかっているのだが、撃針はリリースされ、安全装置の中で撃針が引き金のシエアーから外れて安全装置だけで保持されている場合、安全を外した瞬間に撃針が外れ装弾の雷管を叩くために弾が出るということになるのである、勿論どんな銃もそうなるのではなく、昔のウインチェスター、昔のウエザビーなどはそうなることがある。安全を外した瞬間に弾が出れば、おそらく、こんなに危険でビックリする事はないと思うが、古い銃ではあり得ることなのである、レミントン700も昔の銃は安全をかけるとボルトもロックしていたのだが、最近のモデルは安全をかけた状態でもボルトを動かして排莢出来るように成っているのである。

サコー75の優れているのはここである、サコー75では安全をかけるとボルトがロックする、従ってボルトが抜け落ちることがない、他の銃では薬室に装填した状態では安全を外さないとボルトが動かないのだが、サコー75の場合は安全をかけたまま、安全の前にある補助ボタンを押すと、"安全装置をかけたまま" ボルトを動かすことが出来る、つまり安全に実包を排莢する事が出来るのである、この装置が付いているのはサコー75だけである。

分解ハンドルとボルト
分解ハンドルとボルト
分解開始
分解開始

サコーにはボルトを分解するパーツが付いている、プラスチックのダイヤル状の部品で、銃を購入した人から"これはなんに使うのですか"と頻繁に質問されるが、これはボルトを分解するための物である。ボルトの後端に填め合わせてボルトをひねるとボルト全体が分解できるのである、分解は簡単だが組み立ては慣れないと難しいかも知れない、メカ、オンチの方は触らない方が無難だろう、メカに強い人はチャレンジしてみたら如何だろうか。

ボルト分解
ボルト分解

サコー75の安全装置はさらに進化した、従来のサコー75のアクションに、さらに鍵を付けたのである、ボルトの後ろに鍵を差し込んでロックしておくとボルトを起こすことも引き金を引くことも出来なくなる、この装置、日本ではほとんど意味のない装置だが、アメリカみたいに銃がリビングルームに置いてあり、同じ所に弾も置いてあるような状況の場合、鍵をかけておけば子供がいたずらをしたりして事故が起きる事は避けることが出来よう、盗難に遭ってもこうしておけば事件につながる事はないと言えるが、最もその言い分が通るのは外国の話で、いくら鍵をかけて銃が使えない状態になっていても、日本で盗難事件に遭えば所持許可は取り消しになるので、少なくとも日本に置いてはあまり意味のない装置である。意味の無い装置ではあるが一応その機構について説明しておこう。

キーコンセプト取り付け
キーコンセプト取り付け
キーコンセプト
キーコンセプト

ボルトの後端に"キーコンセプト"という部品を横から填め合わせる、パチッ、と中心でロックする、そのままキーコンセプトを半回転させると中の部品が抜けてくる、これ全体が鍵と同じ構造に成っているのでこれを抜いておけば安全なのである、他のサコー75の鍵を差し込んでも互換性がないことはいうまでもない。

勿論これをロックしたまま、鍵をなくせば銃を使うことは出来ない、鍵は一個予備が付いているが、無くすと大変な事になる、これらの鍵には登録番号が有るので、サコー本社にリクエストすれば鍵を作ることは可能だが、それらの手続きをする事は考えただけでも煩雑なことになると思われる、安全第一に考えるならボルトは別保管するのが最良の方法だろう。

キーコンセプト取り外し
キーコンセプト取り外し

サコーの銃身はフリーフローテング処理をしてある、フリーフローテングとは銃身が銃床から浮いていることである、これは銃床のひずみなどを銃身に与えないこと、銃身の自然な振動を阻害しないこと、そうしたメリットがある、射撃専用銃はすべて銃身がフリーフローテング式に成っているのはそのためである。
しかしながらサコー75の銃身は冷間鍛造で作られているため、銃身が手で触れない位熱くなるとほんのわずかだが銃身に歪みが出るため、つまり狙点が変化するのである、ハンテングライフルで銃身が触れないくらいまで連続して撃つことはあり得ないので、実用面からの問題は全く無いが射撃練習をするときは連射を避け、あまり銃身が加熱しないように撃つことが安定した射撃をするコツである。現実問題としては銃身が触れない位熱くなると銃身からかげろうが立ち、標的が揺らぎとてもまともな照準は出来ないはずである。

フリーフローテング銃身
フリーフローテング銃身

スコープの場合は陽炎のため解像力が落ちるので標的がボケるはずである。

また陽炎が立つと標的が実際の位置とずれるので陽炎の中で撃つことはお勧めできない。

私はベンチレスト射撃をするときは横から携帯の扇風機で風を送り、陽炎を吹き飛ばすようにして射撃しているのである。陽炎とはそのくらいやっかいな代物である。

弾倉
弾倉

サコー75の弾倉は着脱式であるが、デラックスモデルは相変わらずヒンジタイプの弾倉で、いわゆる固定式弾倉である、何故こうなっているかというと、サコーは今のところメチャクチャ売れているので売れている間は、デラックスモデルは当面着脱式弾倉は作らないはずである、サコーハンターの売れ行きが一段落したら新製品としてデラックスモデルの弾倉交換式が出る事は間違いない。

とにかくサコーは世界的に売れており、現在でも超品不足状態である、サコーバーミンターの308口径、または左用の銃は当社で三年前に注文した銃がまだ入荷しない状態なのである。

着脱式弾倉の中ではサコーの物が一番優れている、作動性、故障率ともトラブルは全くない、弾倉交換式で最悪なトラブルは、射撃した瞬間にその衝撃で弾倉が外れると言うことがあるが、一部の銃ではその問題があるが、サコーに関しては安心してお使いいただける逸品である。

着脱式弾倉というと弾を入れるのは弾倉を外して、弾倉に装弾を装填してそれを銃に付けて使うと考えがちだが、着脱式弾倉でも今までのヒンジタイプと同じようにボルトを開いて、機関部の上から弾を装填することが可能なのである、射撃場で単発で撃つときなどはこちらの方が遙かに便利な撃ち方である、また弾倉に装填するときもボルトを開いて上から装填するのがお好みという方は何も弾倉を外す必要は無い。

上から装填
上から装填

しかしながら弾倉内の弾を撃ち尽くした後、連続して撃たなければ成らないような場合、予備弾倉を購入されておく方が便利である。

予備弾倉はステンレス製、スチール製とも1個¥12000である。

今回、ここでリポートしているのはステンレス製の銃である、ステンレスの場合多くの銃はシンセテック銃床が取り付けられている、しかしながら最近のモデルではステンレス製のアクションに、木銃床付のモデル付も発売されている。価格はステンレスアクション、シンセテック銃床と同じである。

どこのメーカーの銃床もそうだが、シンセテック銃床には使われる樹脂は対衝撃性のプラスチックが使われている、このプラスチック極めて丈夫で、ハンマーで叩いたくらいではびくともしない、従ってシンセテック銃床が割れることは全くない。

シンセテック銃床を真冬に使うと、手の当たる部分がひんやりするが、サコーの場合、先台とグリップ部分に薄いゴムが張ってあるのでひんやりとする感触が和らげられる、また滑り止めの効果も大きい。

サコーライフルのもう一つの優れた点は、ライフルスコープのマウントシステムにある。

機関部テーパー溝 後
機関部テーパー溝 後
機関部テーパー溝 前
機関部テーパー溝 前

サコーの機関部の上は、マウントを取り付ける溝があらかじめ作られている、その溝もテーパーのアリ溝なのでマウントリングが完璧に固定される。

サコーのマウントに関していえば一端取り外したスコープも、また取り付けるだけでほとんど照準調整が必要ない位完璧に取り付く、勿論サコー純正のマウントを使用した場合のみ可能なことである、サコーマウントは1セット¥15000である。

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