装弾の話 - 装弾

2000年10月15日 築地
追記 2000年10月24日 築地

ベンチレスト射撃ではハンドロードしないと命中精度の良い弾は絶対に出来ませんが、22口径ライフル射撃、クレー射撃、では100%既成の装弾を使うことになります、今回のコラムはそうした完成実包の話をしてみます。22口径、大口径、散弾実包と、全てのジャンルの話をしますので最後まで読んでくださいね。


22口径

22口径ライフル射撃競技では100%完成実包を使うのでどこのメーカーの弾が良いかは射手にとって最大の関心事です、その前に何故22口径リムファイヤーはハンドロードが出来無いのか説明してみます。
22口径リムファイヤーの弾は作り方が非常に難しいのです。恐らく色々ある弾の中で一番製造が難しい弾と言うことが出来ます。とてもハンドロードで出来るような領域では無いのです、22口径の弾の弾頭を取り外すと簡単に解りますが、弾の中に火薬は半分以下しか入っていません、これ以上火薬を入れると命中精度が出ないのです、火薬量が極めて少ないと言うことは火薬量の計測はかなり厳密に行われていると言うことです。私の推測ですが計量は0.1グレインまでは計測されているはずです、これほど厳密に火薬量を計測されているのは22口径ロングライフルだけです、この火薬燃焼速度が極めた早い、そのため火薬量を間違えると大変な事になるのです、あの小さなキャパシテーの中で火薬は半分以下しか入っていないのだから火薬をダブルチャージすると間違いなくボルトのエキストラクターが吹っ飛びます。
念のために言いますが、エキストラクターが吹っ飛ぶだけで人身事故にはならないので心配はありません。
ハンドロードが出来ないもう一つの理由は弾頭のクリンプです、22口径の弾は弾頭対して薬莢の先端が絞ってそれが弾頭に食い込んでいるのがお解りだろうか、多くの人がどうやって弾頭を取り付けたのか疑問に思うようで、私もよく質問される、薬莢は始めから先端が絞ってある訳では無く、最初はストレートである、そこに弾頭を入れて、弾自体を回転させながらナイフの刃先の様な物で薬莢の先端を絞り込んで弾と一体にするのである、この絞り込みが無いと撃針を叩いたときに雷管の圧力で弾頭が簡単に簡単に抜けてしまい、火薬がチャント燃焼しないことになる、そうなると威力もなくなるし、当然命中精度もバラバラになる、この様に弾頭のクリンプは22口径ライフル実包にとって極めて大切な要素なのです。
22口径に付いてもう一つ素朴な疑問として聞かれることがあります、それは22口径のリムの部分はどうして作られるかと言うことです。機械的に考えると非常に難しい製法なのです、単にリムを作るだけならプレスで成形すれば問題ありません、最大の問題はこのリムの間に爆粉を塗らなければならないのでその隙間をもうけなければならないことです。
機械的に製造したと考えると極めて複雑な構造になるし、第一、薬莢には機械工作の痕跡が全くないのです、とても私の頭では考えられなかったのでヨーロッパに行った時に長年の懸念問題をテネックスの技術に聞きました、答えは、"空気で膨らまします" と言う答えでした、なるほど空気で膨らましたのなら機械工作の後がないのがうなずけました、長い間、本当に長い間私の頭の中に巣食って居た疑念が一気に溶解しました、この喜びはとうてい他人には解らないでしょうが、解って貰わなくて結構です、でもその夜に飲んだビールの美味かったこと、私、少し変態でしょうか?

昔のテネックスは当たったと言う話の真偽!
一部の射手の間で昔のテネックスは当たった、逆に言うと最近のテネックスは当たらないと言う話がある、テネックスの名誉のために言うが、別にテネックス独自の問題では無くダイナマイト、ノーベル社のR-50も昔の方が当たったのである。
最新の工業技術を以して昔の方が性能が良かったと言うことは考えにくいのだが、この話、実は本当の事なのです、メーカーサイドは絶対に認めていませんが、昔の弾が命中精度が良かったという原因は火薬の製造方法に最大の問題があります。
もっと正確にいうならリムの所に塗る爆粉の製造方法に問題があるのです、昔はこの爆分を作るのにあまり溶剤を使わずに製造していたようなのです、そのため業界の間ではこの頃の爆粉をドライプライマイーと呼んでいます、この爆粉、性能は良いのですが唯一の欠点は製造過程で爆発の可能性がある火薬なのです、実はこの爆粉の製造過程で事故がありエレー社で数人の死者が出たことがありました。事故原因調査の結果この爆粉が原因とされ以来ドライプライマーの製造は中止されたのです、これはテネックス社だけの問題ではなくヨーロッパ中の火薬製造過程が変更されたようです、以後ウエットプライマーと呼ばれる溶剤の多い、そして危険性のない爆粉が使用されるようになったのです、で、その結果、当たらなくなった、と言われています。


大口径ライフル装弾

一番命中精度の良いのは。
大口径ライフルの装弾は、厳密に言うと150種類くらいあります、従ってそれらの性能や特性等を全部話すと、あまりに膨大な話になるので、誰もこのコラムを読んでくれません、従って装弾の全般的な話をお話しします。
市販されているレミントンやウインチェスターの装弾は、1発¥300~¥400しています、この値段、わたしからすれば異常に高い値段です、もし購入目的が狩猟ならそれほど多くの数を必要としないでしょうからこの値段でも良いかも知れませんが、射撃を練習を十分にするには高すぎます、もしハンドロードすれば100円以下で出来ることを記憶して置いてください。
ライフル装弾の問い合わせで一番多いのはどこの弾が一番性能が良いですか? と言う質問である、性能を威力と言い換えると何処の弾も威力は同じである、しかし命中精度と言うと、私は "ラプア" と断言できる、この弾はフィンランド製のたまであまり世の中に知られていないが世界選手権で優勝した弾で命中精度は完成実包としては世界一であろう、値段は1発¥160である、レミントン、ウインチェスターの半値である、最も海外の値段はレミントン等より高い、日本では逆転現象が起きているのである、但しこの弾は一般の銃砲店では取り扱っていない、逆に言うと取り扱っていないから安いと言えるのだろうが、この装弾を取り扱っているのは東京の銀座銃砲店だけである、電話は 03-3571-2639 なので一度問い合わせられると良いと思う、銃もそうだが、装弾も通信販売で購入できる、使うならこのラプアが一番命中精度が良いので、私の一押しのお勧め品である。

(追記)ラプアに関しては國友銃砲火薬店でも輸入販売しておりますとのことです。 
     國友銃砲火薬店 電話 075-351-3037
     http://www.kunitomogs.co.jp


軍用装弾の評価

値段の安いと言うことで軍用装弾も流通しています、価格的には1発¥150ですからまあまあの値段なのですが、この弾、アメリカ国内では1発わずか¥30の弾です、おっと誤解の無いように言いますが、軍隊から流れた古い弾ではありません、出来たての新品がこの値段なのです、この値段で売れるカラクリを言いますと、軍用品として政府に買い上げる弾の余剰品だから安いのです、どこの国の政府もそうですが軍事力と言うのは保有する武器の総数は勿論ですが、武器の生産能力が大切な要因です。従ってどこの国も戦時に大量の装弾を製造できるように生産能力を確保しています、しかし、確保しただけでは民間会社は潰れてしまいますから、決められた量を買い上げ、過剰分は販売を認めているのです、従って223レミントンと308ウインチェスターに限って言えば、軍用の過剰生産分がアメリカでは¥30で流通しているのです。
軍用装弾は雷管の所に赤いペイントが塗ってあり、雷管の周りはクリンプされています、多くの人が気づいていませんが弾頭はコールタールみたいな溶剤で僅かに接着してあります、これらの理由は、まず防水性能を高めるためです、私が実験した訳ではありませんが、数年は水の中にしたしておいても使えるはずです。
雷管をクリンプしてある理由は、言うまでも雷管が抜けるのを防止する目的ですが、何故この様な処理をするかと言いますと、機関銃でベルトにリンクされた弾の場合、その振動で雷管が抜けないとも限らないからです、機関銃なら不発か回転不良で済みますが、これが戦闘機の場合、給弾中に飛び出した雷管が摩擦で暴発したばあい、1発¥30の弾のおかげで100億の戦闘機が墜落してはかないません、そうした理由があるのです。
弾頭を接着している理由は、防水効果の面と、初速を上げる効果があります、弾頭は接着されているので火薬の圧力が相応に上がるまで弾頭が動きません、そのため同じ火薬量でも初速は100フィート位、早くなります。但し命中精度は悪くなります。


散弾の話

弾の事を書き出すと書くことが多くてすでに相当長いコラムになりました。
これから散弾装弾のことも書きますが少し押さえ気味の書き込みにしますのでもう少しおつきあい下さい。
先々週シドニーオリンピックから帰りましたが、持参した双眼鏡で選手達の使用装弾をつぶさに観察しました、結果、何でもありでした。
ライフル銃の場合、使用する弾で命中精度は少なからず影響を受けますが散弾銃の場合装弾による優劣はあまり認められません、特に昔は劣悪だったイタリアの装弾が最近飛躍的に性能が良くなり性能の差が無くなったのが特徴です。
昔のイタリアの弾は、ごく一部の装弾を除いて不発はほとんどなくなりました、これは雷管の性能が良くなったと言う一言につきます、プライマーの性能としては、規定の衝撃をかけると必ず激発しなければならないことと、それと矛盾しますが、ある規定の衝撃では絶対に激発してなならないと言う二面性を持っています、これは実用性と安全性から要求された性能なのです、これらの性能が劣悪なのは共産圏の弾です、最高なのはアメリカ、ドイツ、イギリスなどの弾でしたが、最近では共産系以外の国ならほとんどが技術的な差は無くなりました。
ショットガンシューターの多くが弾の善し悪しを判断するのに、銃が汚れるとか、汚れないかで評価をしましが、この評価は的を得ていません、評価すべきは当たるか当たらないかだけです、しかしながら20枚そこそこしか当たらない多くのシューターはその弾が当たるかどうかの評価は出来ようはずもありません、勿論私も同じです、ですから少なくとも論理的に技術的に優劣を判断してみましょう。
まず銃口内が汚れるかどうかですが、散弾の火薬は硝石をベースにニトログリセリン、ニトロセルローズ、を主原料に作りますが、その中に安定剤や、火薬の装填をスムーズにするため、グラファイトを表面にまぶす場合があります、グラファイトはいわば鉛筆の削りかすみたいなものです、表面の滑りは良くなるので火薬を装填するとき誤差が少なくなりますが、火薬と一緒に燃焼しないので黒い物がのこります、しかし銃口が汚れると言ってそれを敬遠するのは間違いです、グラファイトは火薬の装填誤差を少なくするためには貢献しているのですから、それから燃えかすが残るのも何の問題もありません、次の弾を撃つときにはこれらが吹き飛びますので銃には何の問題もありません、勿論燃えかすが無いに越したことはないのですが、火薬の燃焼速度を上げれば火薬の燃えかすの問題は解消しますが、燃焼速度を上げることは射撃に関してはあまり良いことではありません、燃焼速度が上がると薬室には大きな力がかかりますがだからといって弾を押し出すにはあまり効率的に作用しないのです、理想的なのは弾のスピードに合わせて徐々に燃焼していくことです、ニトログリセリンは元々爆薬的に秒速8000メートルの爆速で燃えるものを、色々なコーテングをして燃焼速度を遅くしたのが火薬ですから燃えかすが出るのは、いわば当たり前の話なのです、ですから火薬の善し悪しを燃えかすがあるかどうかで判断すべきではありません。
  昔、イタリアの弾は性能が悪くその最大の原因だったのが火薬の問題でした、イタリアの火薬はシングルベース火薬が主流だったのであまりパワーが無かったのですが、最近ではほとんどが(あるいは全てが)ダブルベース火薬になったのでアメリカや日本の弾と同じように初速が出るようになりました。そのためかイタリアの銃は昔と今では同じチョークでも少し寸法が違います。それは初速による変化のためパターンが違ってくるためです。
初速が早い方が良いのか遅いほうが良いのか即座に判断は出来ませんが、最近ではほとんどの装弾が410~430メートルあたりで落ち着いているようです。
メーカーによっては "マイルド"と言うクラスの弾を製造している所もありますが、反動がマイルドと言うことは火薬の特性もありますが一般論としては初速が落ちているので少しは不利かもしれません、私はほとんどレミントンばかりを使っているのでレミントンを例にとってお話ししますが、同じレミントンでも値段の違いがあります、高い弾はリムの部分の金属が長くなっていますが、あれは何の意味もありません、いわば化粧ですから長いというメリットは何もないのです、散弾については高い弾は鉛の中にアンチが混入されています。アンチは鉛の10倍の値段がしますので少し混入させただけでもコストが高くなります、アンチを混入させる目的は鉛を硬くするためです、何故鉛を硬くさせるかと言いますと、散弾がチョークを通過する時衝撃がかかるので弾が柔らかいと変形するのです、変形した散弾は決められたパターン以外の所に飛んでいく、いわゆる死に玉の原因になります。
初速の違いによりパターンが変化すると言いましたが、初速を上げるとパターンが小さくなると考えるのが常識ですが、実は逆の現象が起きるのです、初速を上げるとチョークでの衝撃が大きくなり、お互いに弾同士か干渉しあい、パターンは広がるのです。

まだまだ書くことはあるのですが、今回は話が長くなりましたので、これでおしまいです。

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