ベレッタ391 ウリカ(ゴールド、シルバー、シンセテック) - 誰も書けない! 誰も書かない! 取扱説明書

2003年 3月18日 築地

左全体図
左全体図
右全体図
右全体図

私、最近足腰が弱りました!
年齢の所為も有りますが、何と言っても、足腰を使わなくなったと言うのが最大の原因でしょうね。しかしながら、腰に関しては年に数回、充分運動出来る様な思わぬ幸運に遭遇することも有りますが、足に関しては全然駄目ですね、私の通勤は車ですし、唯一の趣味である射撃ですら、べンチレスト射撃は椅子に座ったままですし、トラップ射撃ですら5つの射座をとぼとぼと移動するだけの動きですから、箸を動かすより運動量は少ないはずです。ですから歩くのも遅いです! ハンテングフィールドに出れば、70代、80代の大先輩方よりも歩きは遅いと思います。山歩きなんて論外ですね。
足は遅いのですが、他人の目から見ると手は早いようです。
ショットショーのレポートの中で、オイラのガールフレンド"クミちゃん"の事を書いたら、"さすが築地さん、手が早い、なんて言われ方もしておりますが、これって何の事なんでしょうね? さっぱり解りません。
手が早くても運動量解消にはあまり役立つとも思えず、足腰を強くするには、何と言ってもハンテングフィールドに出かけるのが一番ですね。
そしてハンテングに使用するには、一押しはベレッタ391です。
今回は、この銃について説明を繰り広げたいと思います。

当社で一番売れる自動銃(散弾銃)はベレッタです。

ですから、ベレッタの取扱説明書の日本語版が欲しいという声は以前から沢山リクエストがありましたので、今回はベレッタ391に付いて説明してみましょう。

391全体図
391全体図

この取扱説明書では、391ウリカ、ゴールドブラックと言う銃を使っていますが、これより下位のモデル、シルバー、あるいは銃床が対衝撃性プラスチックの、シンセテックモデルも構造は同じですので、取扱説明書としては同じと考えてください。

ベレッタが何故ベストセラーモデルなのかと言うと、先ず、故障が少ない、重さが軽い、これがお客様が購買を決定する最大の決め手だと思います。
機関部に軽合金を使っていますので、部材自体が軽いのですが、外見はスリムは仕上げに徹しており、これが軽量化に繋がっていることは言うまでもありません。

機関部右
機関部右
機関部左
機関部左

ゴールドブラックの機関部には、金象眼したような部分が有りますが、これは本物の金象眼ではなく、この部分だけメッキしたものです。
本物の金象眼で\185,000で売れるわけがありません、金象眼だけでこの値段がかかりますからね。しかし、見た目はいいでしょう。素人目には充分金象眼に見えますからね。
金象眼のある面は、研磨仕上げしてあります、研磨と言っても磨き上げではなくてヘアーラインと言う仕上げですね。この部分以外の上と下は、つや消し仕上げに出来ています。
これだけでも結構凝った作りです。艶消し部分と同じ仕上がりですが、トリッガーガードはファイバーグラスを混入したプラスチックで出来ています。
通常の軽合金を使ったのでは、この薄さでは簡単に割れてしまいますからね。

トリッガーガードには引き金の前に安全装置が付いています。赤いラインが見える状態ですと引き金が引けます、つまり安全が解除されている状態です。
この銃が優れている点は、この安全装置は左右どちらにでも変更できることです。
左利きの人は、当然安全装置は右用の人とは逆にして使いたい筈ですよね。
ストッパーを押しながら片方に押しますと、安全装置が抜けますので、逆に入れ替えると左用の安全装置に変更できるのです。
しかしながら、安全装置が引き金の"前"に有るのは非常に使い勝手が悪いのです。

安全装置
安全装置

引き金の"後"にあれば問題ないのですが、この事だけでベレッタの購入を止める人も少なくありません。この点に関してはレミントン、またはFNの方が優れていますね。

さて、銃の組み立てについて説明を進めます。
先台先端のネジをクルクル回しますと、ネジが取れ、先台がはずせます。
先台のネジのことを、フォアエンドキャップと言います。
先台を外した状態でメカの話をしてみます。先端に付いているのがピストンです。

ファエンドキャップ
ファエンドキャップ

ピストンですから本当は単なる円筒でいいのですが、このピストンは幾つものスリットが見えますよね、実はこの部分でガス筒に付着したカーボンを取り除くのです。

ピストン
ピストン

ベレッタが、セルフクリーニング(自動清掃)と言って宣伝しているメカニズムなのです。これで削り取られたカーボンはガス筒のエギゾーストノズルから自動的に排出されます。

ガス排出穴
ガス排出穴

ベレッタは24グラム装弾から57グラム装弾まで完璧に作動すると宣伝していますが、これは本当です!今まで回転不良のクレームは皆無です。

何故この様な事が可能かと言いますと、24グラム装弾を使うときは作動しないのですが、強い装弾を使うときは、ガス筒の前の部分が強さに応じて自動的に開放されますので、強い弾でもピストンが急激に動くことは無いのです。

バルブ
バルブ

一般の人が考えるのは24グラム装弾で動けば、強い弾でも動くわけですから、別にガスを逃がしたり、余計な事をしなくてもいいのではないかと思われるかも知れませんが、もし余分なガスを逃がさないと、ボルトが急激に後退し、機関部の後ろに激突して、機関部にクラックが生じる事があるのです。その為に強い弾を使うときは余分なガスは排出するように作られているのです。

ピストンの移動量
ピストンの移動量
スリーブの移動量
スリーブの移動量

ピストンが動くのは22ミリ、ピストンの後ろにあるスリーブがその慣性で95ミリ移動するのです。スリーブの取り付けてあるオペレーテングロッドを見てください。
レミントン等とすると数倍の強度があります。レミントン等はプレスで打ち抜いた物を加工していますので所詮は"鉄板"ですが、ベレッタの場合は"削りだし"です、それを溶接部分が酸素と結合しないように溶接した、アルゴン溶接で溶着していますので強度は完璧です。
ボルトの部分をご覧下さい。ボルトハンドルの後ろに楕円の穴があります。

溶接部分
溶接部分

ピストンが最初に動いたときには、先ず最初にボルトハンドルが10ミリ後ろに後退するのです、楕円の穴はその後退するスペースです。
ボルトハンドルが後退しますと、ボルトの上にある、銃身とロッキングしている、ロッキングブロックが降下してロッキングを解除します。

ボルトハンドルの移動量
ボルトハンドルの移動量

そしてそのまま95ミリ後退して薬莢を排出します。
銃身のロッキング部分をご覧下さい、この溝にロッキングブロックが填り込み、銃身とボルトをロックしているのです。

ロッキングブロックUP
ロッキングブロックUP
ロッキングブロックダウン
ロッキングブロックダウン

銃身を子細に見て頂くと銃身の内側は白く、銃身の外側は黒くなっているのがお解りでしょうか。これは白い部分が硬質クロームメッキしてあるのです。
ボルトの部分をご覧下さい、このロッキングブロックが持ち上がり、銃身部分に結合するのです。銃身に施してある硬質クロームメッキは錆止めの目的も有りますが、主たる目的は摩耗を防ぐためのメッキです。摩耗を防ぐためならロッキングボルトにも硬質クロームメッキをしても良さそうなもですよね。

銃身のロッキング部分
銃身のロッキング部分

私の解説書が、市販の雑誌のレベルを遙かに超えているのは、ちゃんとこうした事まで丁寧に説明する事にあります。と、言うよりは雑誌のライターなんてこんな事は知りません。鉄砲屋さんは勿論、自称専門家なんて言うレベルでも知らないでしょうね。
現場をちゃんと踏んでこないと知り得ない知識ですね。
さて、その理由ですが硬質クロームメッキはとても硬くて対摩耗性に優れているのですが、その硬い物同士を噛み合わせますと、お互いが硬すぎて両方に"カジリ"を生じてしまうのです。その為に硬質クロームメッキをした相手側は、通常のクロームモリブデン鋼材のままでないといけないのです。
ですから、機関銃の作動部分には硬質クロームメッキは絶対使ってはいけな事は、銃器設計者の常識なのです。
航空機に搭載してあるバルカン砲の銃腔内は銃身寿命を延ばすためにクロームメッキをしてありますが、それ以外の部品にはカジリが起きるので絶対硬質クロームメッキをしてはいけないのです。また、メッキは厚ければ厚いほど丈夫なように一般的には勘違いされていますが、硬質クロームメッキは実は薄ければ薄い程丈夫なのです、気取って厚いメッキをすればメッキと銃身は硬度が違うので剥離の原因になるのです。
過日、自衛隊の戦闘ヘリ、コブラの機関砲を見たのですが、銃身の1本に明瞭にメッキの剥離が視認できました、これは製造現場のエンジニアが気取ってメッキを厚くしたからです。メッキの剥離が起きると命中精度は極端に劣化します。
バリカン砲のミルスペックは、射距離300メートルに於いて、命中精度は1メートルの範囲に80%着弾すると言うことで、まるで散弾銃のパターンテストみたいな事をします。
しかしながら、昨年行われた総合火力展示演習の記録ビデオを子細に分析しますと、ホバリングしたコブラのバルカン砲は、300メートルの距離なら1メートルどころか、10メートル以上に拡散するほど非道い命中精度ですね! ホバリングするヘリコの振動は半端でないので、バルカン砲のせいだけではないので仕方ないのでしょうが、あれは物に命中させると言うための機関銃ではないですね、何処に当たるか解らないですから単なる脅しの為の機関銃です。弾着がバラバラですから弾幕を張るという目的には逆にいいかも知れませんがね。
私はメッキ屋の経験は無いのですが、64式小銃を開発した防衛庁の技術者に粘っこく食らいついて小銃の銃腔内メッキのノウハウについて徹底的に教えて貰ったのです。
ですから、チョットしたメッキ屋さんレベルの知識ならあります。

話が飛びましたが、銃身を機関部に取り付け、先台をはめますが、ベレッタの場合先台がちゃんと機関部側にぴったりと付いているか必ず確認してください。

これが正しい
これが正しい
これは駄目
これは駄目

先台がちゃんと機関部に付いていなくても取りあえず銃身は組み立てられます。
先台がちゃんと入らないのは機関部との填め合いのため、2ミリ程度の段差があるため、この段差にちゃんとはまらないとこんな状態になるのです。画像をご確認下さい。

カットオフボタン オフ状態
カットオフボタン オフ状態
カットオフボタン オン状態
カットオフボタン オン状態

機関部左側にカット-オフボタンがあります、これはボタンをオンにしますと、弾倉内の弾が出てこない装置です。通常の自動銃なら弾倉から弾が出てこないと意味がありませんよね、ではこの装置は何の為にあるかと言いますと、ハンテングの最中、チョット一休みなんて時に、当然にして薬室に入っている弾は抜きますよね、ところが弾倉に入っている弾を抜くとなりますと、何回もボルトを前後させないと駄目ですよね、ところがこのカット-オフ装置を使いますと、薬室の弾を抜いても弾倉の弾はそのままホールドされるのです。
そして、休憩が終わり、また銃を使おうとするときは、ボタンを戻すと弾倉の弾が給弾されるようになります。

ベレッタの場合、キャリアラッチは常にこの状態にあり、引き金を引いた瞬間に弾倉から装弾がここに飛び出します、偽装弾を使って空撃ちするとそのメカがよく分かりますよ。
ボルトが後退してボルトが前進すると、このキャリアが持ち上がり装弾を薬室に装填します。

キャリアラッチ
キャリアラッチ

銃を収納するときは、先台を取り付けますが、銃身が無い状態ではネジと先台の部分に空間があり、がたがたしますので赤いプラスチックスペーサーを使って組み立てます。

赤いスペーサー
赤いスペーサー

391ウリカには多くの付属品が付いています。
ベンドの高さを調整するスペーサーがあります、C-60-DXと書いてあるプラスチックの部品です。これは片方が厚くなっていますのでこれを上下入れ替えることによりベンドを高くしたり、低くしたり出来るのです。

ベンド調整スペーサー
ベンド調整スペーサー
スペーサー
スペーサー

また別の部品を銃床に組み込みますと、キャストオフ、キャストインの設定が出来ます。
キャストオフとは、右利きの射手が、銃身軸線から銃床の後ろを外側にずらすことを言います、通常キャストオフは5ミリ程度です、ストレート銃床の場合、左でも右でも使えますが、右用にキャストオフしてある銃床を左利きの人が使うと非常に使いずらいので、この場合は左用に調整する必要があります。

銃床の後ろに、このキャストオフの部品を組み込むとキャストオフになります。
この部品をひっくり返して使うと、キャストオンになります。

キャストオフ部品
キャストオフ部品

左用と言うと、薬莢が飛び出すエジェクションポートの事も気になると思いますが、これは全く気にする必要はありません。何故なら飛び出した薬莢は顔の方に向かって来る事はないのです。排莢した薬莢は先端が回りながら後ろに跳びますが、薬莢の先端が機関部にあたり、今度は逆に回転しながら45度前方に跳んでいくのです。ですから左利きでも全然問題はありません、それが証拠に軍用銃は全部エジェクションポートは同じですが、米軍の場合、30%兵隊さんが左利きです。

部品取り付け図
部品取り付け図

ベレッタ391にはガンケースも付属しています。中に何に使うか解らない金属棒が1本有ります、これはこれを弾倉内に入れることにより、弾倉内1発に改造するスペーサーです、外国では猟場によっては弾倉内1発と言う所もあるからです。
最近の銃は全てそうですが、ベレッタも交換チョーク式の銃身です、チョークは全部で5本付属しています。チョークの先端に溝が入っており、その溝の数で何のチョークか知ることが出来ます。

チョーク溝
チョーク溝
銃口部分
銃口部分

1本の溝は、フルチョーク 2本の溝はインプルーブド モデファイ、3本の溝はモデファイ 4本の溝はインプルーブド シリンダー 5本の溝はシリンダー 何も溝のない物はスキーとチョークです。
チョークのサンプルは4本有りますね、1本は銃身に付いています。
これで、合計交換チョークは5本付いていることになるのです。

チョークの他に厚さの違うレコイルパットも付属で付いています。

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