ブローニング D-4 - 実鉄砲自慢

2003年 1月27日 築地

最近は全然ブローニングが売れません。
一昨年、ブローニングのD-5を売ったきり、引き合いもありません。

銃の全体図
銃の全体図

基本的にミロクもブローニングも同じなので、わざわざ値段の高いブローニングを買う必然性が見あたらないのがその理由でしょう。
確かに、ブローニングのA,B,C,はミロクと大差ありません、しかしながらDグレードはちょっと違います。私が最初に自分のDグレードを手にしたとき、あまりにも開閉が緩いのでまるで中古銃であるかの様な印象を受けました。
しかしながら中古銃か新銃かの判断くらいつきます。紛れもない新銃なのですがトップレバーをひねると銃身の重みで中折れ部分が自動的に折れる位柔いのです。
しかしその理由は直ぐに理解できました、なんと機関部と銃身を徹底的に摺り合わせをしているので摺動面での抵抗が極めて少ないのです。摺り合わせをすると言うことはそれぞれの部品を最初から少し大きめに作る必要があります、そして当たり面に朱(朱肉みたいな物)を付けて朱の取れたところだけを僅かずつ研磨して削り取るのです。
この作業、写真では見たことはあるのですが、実際の作業をドイツIWA展示会に行ったときに初めて見ました、この作業、殆ど忍耐との勝負の様に見えました。
ひたすら何時間も摺り合わせを繰り返します、で、削りすぎれば大変な事になります。
全部おシャカと言うことになります、忍耐の仕事ですが気を抜くことは出来ないのです。
前々回のメルケルの項で書き忘れたのですが、メルケルの新品は中折れ部分がむちゃくちゃ堅いのです。よくこれで摺り合わせをしたなと関心するぐらいきついのです、それと比べるとDグレードはふにゃふにゃしていて頼りないくらいです。
善し悪しではなくて、それぞれの会社のポリシーの違いなのでしょう。
で、実際に射撃に使ってみると、射撃中は射撃に集中しているのでDグレードの様に弱い力で折れる上下の方がやはり使いやすく感じます、中折れ部分が堅いと射撃への集中力が遮断される、あるいは阻害されるような感じを受けます。これが実際に射撃をしてみて感じる使用感です。

日本ではDグレードと言うと圧倒的にD-5の唐草模様が一番好まれます。
私自身は変わり者ですから、D-5ではみんなと同じなので、あえてD-4を選択しました、しかしながらD-4の使用者は非常に少なく、私以外にD-4を使っている人には今まで出会った事はありません。

彫刻 1
彫刻 1
彫刻 2
彫刻 2
彫刻 3
彫刻 3

Dの後に付く、1,2,3,4,5,と言う数字は彫刻の種類であって、いずれも値段は同じです。このDグレード、ミロクの定価は470万円です、当社の販売価格でも310万円ですから、以外と価格差は少ないのです。
こんな値段が高くても、銃の製造現場では年々コストダウンをされています。
私の使用しているDグレードは1989年製造ですが、最近製造される物はリブの部分が明瞭に違っています。
私のDグレードは薬室の上にあるリブは銃身と一体で作られています、勿論薬室上部から先のリブは別部品の後付けです。実はリブが一番剥がれやすいのは薬室の上なのです、もっとも作業が粗末でリブの一部にハンダが回っていない場合はそこの箇所が剥がれるのは言うまでもありませんが、すべて同じレベルの作業がされている場合は、一番振動の起こる薬室の上が弱いのです。と言っても理論上そうだと言うことで、丁重な仕事をした銃は、生涯リブ剥がれは起きないでしょうけどね。
でもリブ全体の中でどこが一番弱いかと言うとやはり薬室の上が一番弱いのです、ですから薬室の上の部分のリブが銃身と一体で出来ているのとは耐久性の面でちゃんと理屈が付くのです、しかしながらこれを銃身と一体で作ると言うことは非常に余分な手間がかかることは言うまでもありません。
銃身部材は旋盤で削って作るわけですから、リブの部分を残すという事は丸い円周全部を削り残し、リブ以外の不要な場所をフライス盤で削り取るわけですから、無駄な作業この上ない事なのです。しかしながらこういう無駄な作業に手を掛けていると言うことがユーザーサイドには好まれるわけで、ですからFNを探す人はあまり使っていない古い物を探すと言う現象も起きてきます。ですからコストダウンをした最近のFNは特に売れ行きが悪いのです。

私のFNは古いモデルなのでリブはワイドリブです、 ワイドリブはクレーが見やすいと言う理由で使われていたのですが、クレーの速度が速くなってからはだんだん使われなくなり、現在、新銃でワイドリブというのは全く存在しません。
しかしながら、だからといってワイドリブが使い難いと言うこともないので、私はこのまま使用しております。

ワイドリブ
ワイドリブ

ミロクもそうですが、ブローニングもハンマースプリングはコイルスプリングを使用しております。射手の中にはスプリングは絶対に松葉でないと、と言うこだわりの人も少なくありません、理由を聞くと多くの人が引き金の切れ味が良いからと答えますが、引き金の切れ味とハンマースプリングの因果関係はありません。世の中で一番引き金の切れ味を大切にするのはフリーピストルですが、これに使われているのは全部コイルバネですからスプリングの種類が引き味と連動していないことは明白です。
でも、松葉ばねの方がスプリングの特性が違うので、空撃ちしたときの質感が良いのか、その様に感じているのかもしれません、また耐久性でもどちらのスプリングも優劣はありません。
では何故散弾銃には松葉バネが多いのかと言うと、スプリングを組み込むスペースの問題だと私は考えます。例えばサイドロックの銃には大きすぎてコイルスプリングは使えません。サイドロックの部分にスペースが無いし、それに格好が悪すぎます、出来るだけコンパクトに綺麗にメカ部分をまとめるには松葉バネが最適なのです。

松葉バネが良いと言われる根拠の一つに、ペラッチの引き金が影響しているかも知れません、はっきり言ってFNと比較するとペラッチの引き金は切れ味が鋭く、使用感も快適です、クレー射撃の場合、1発目と2発目を撃つ機会が多く、タン、タン、と撃つ、その切れ換えのフィーリングが大きく影響します。
FNの場合初矢を撃った後、充分に引き金を戻さないと、2の矢がセットされません。
ペラッチの場合こうした場面には殆ど遭遇しません。
それが松葉は切れが良いと言われている所以では無いかと考えています。
実はペラッチの場合も松葉スプリング以外にも、コイルスプリングも用意されていて、通常の松葉バネのモデルがMX8ならば、コイルスプリング使用のモデルはMX8Bと呼ばれています。FNの引き金の切れが悪いのは設計上の問題だと思います。
勿論調整すれば改善されるのですが、私はオリジナルのまま使用しています。
少なくともそれが命中不良の原因にはならないと考えているからです。

前回のメルケルの項では、共産圏の粗悪な装弾を使うためにメルケルのハンマースプリングは極めて強くしてあると書きましたが、Dグレードの場合はその逆です、雷管が撃発する範疇で、出来るだけハンマースプリングを弱くしてあります、ハンマースプリングが弱いと言うことはそれだけ銃の耐久性が増すことになります、スプリングが弱ければ空撃ちしても全然問題がありません、唯一問題なのは性能の悪い装弾を使った時など不発が多発することです。

ついこの間までイタリア製の装弾は性能が悪く不発の連続でした、しかしながら日本やアメリカ等の装弾メーカーが技術供与して装弾を作らせるようになってからは劇的に性能が向上しました、しかしながらイタリアで作られるレミントンのプレミアは未だに雷管だけは日本製と言うことです。この様にそれぞれの国の化学工業の完成度のレベルに応じて雷管の性能は大きく左右されます、日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、北欧、等は良い雷管を製造していますが、スペイン、イタリア、等はまだ完成度は低いと思います。
旧共産圏のレベルは全然駄目でしょう、ロシアなどは雷管の性能が悪いのに加えて、塩素酸塩類でも使っているのでしょうか、簡単に錆を誘発します。
幾ら弾が安くてもこんな弾は私なら使いませんね。値段の安い弾は要注意です!

FNの場合、ハンマースプリングが弱いので、引き金を引いてから撃発するまでのロックタイムは明らかに遅いですが、ロックタイムを云々するより、散弾銃の装弾の初速は1400フイート、ライフル装弾はその倍の2800フィーですから、長年ライフルを撃ってきた私からすると、散弾は弾のスピードが遅いのでロックタイムの遅さは全然気になりません。
殆どの上下2連銃は初矢を撃ったときの反動で2の矢をセットする振り子を内蔵しております、これは同発を防止するためのメカですが、Dグレードには振り子はありません、しかし絶対に同発はしません、いままで一度も同発の体験はありません。
同発しないと言う事の前提には、引き金の掛かりや重さをいじくらないという条件が付きます、些細な衝撃で引き金のロックがはずれれば当然同発することになります。
同発が絶対に起こらないと言うためか、発矢を撃った後、完璧に引き金を戻さないと2の矢を引けないことがあります、おっとっと、と言う感じで前につんのめるは格好悪いのでFNの時は引き金はちゃんと戻して引くように心がけています。
それと比べるとペラッチの引き金は秀作です、引き金をちょっと戻しただけでも確実に2の矢は激発します、欠点と言えばこれがFN系統の欠点でしょうね。
振り子がないと初矢が不発でも、そのまま引き金を再度引けば上の銃身から弾が出来ます。Dグレードはこうしたメカを採用していますが、ブローニング社では振り子を使わない、この方が優れていると言う判断なのでしょう。

Dグレードのハンマースプリングは弱いのに、エジェクタースプリングは異常に強すぎると私は感じます、ミロクも、そしてFNも欠点と言えばこのスプリングが強すぎるために、エジェクターの折れが起きることです、これを防ぐにはエジェクタースプリングを弱くするのが最良の方法だと思います。
今に時代、薬莢をそんなに遠くまで飛ばさないでも良いと思うのですがね・・・・・

銃床材料は年々悪くなるように思えます、Dグレードといえども最近の展示会に出してある物は飛び抜けて良いとは感じられません。
はあ~・・・・・・と思うようなDグレードも展示会で時折見かけます。
それと比べると私のDグレードはまだまともな方だと言えます、我々が銃を注文するときにはどんな銃床が付いてくるのか全然解らないのです、少なくとも銃床材の指定は出来ないのです。
Dグレードに粗末な銃床が付いてきたら売る方としては非常に困るので、最近ではブローイングを注文するのは控えています。

ブローニングの引き金は一見すると簡単に見分けられるように外見上の特徴があります、
同じ銃に見えて、ミロクとFNが歴然と違うのは引き金の上の部分が膨らんでいる事です、こう言う形状にすると指が引き金に当たる面積が増えますね、指の当たる面積が多ければ多いほど、引き金は軽く感じられます、引き金が指に当たる面を出来るだけ多くとる、これはブローニングのポリシーみたいで、上下2連みたいに基部が膨らんでいるという形状ではありませんが、ライフル銃も、拳銃も、そして機関銃までこんな感じで作られています。引き金の幅を広くしても軽く感じられますが、今度はその分デリケートな引き金感覚は阻害されます。

引き金
引き金

銃身を取り外すためには、先に先台を取り外すのはどの銃でも同じですが、先台の取り外し方法にはメーカーにより色々なタイプがあります。
メルケルの場合、先台の下半分を取り外して銃身を取り外します。
このタイプの場合、銃床の経年変化、あるいは乾燥の度合いにより、上下の合わせに狂いが生じることがあります。

先台取り外し 1
先台取り外し 1
先台取り外し 2
先台取り外し 2
先台取り外し 3
先台取り外し 3

ペラッチの場合、先台全部を取り外します、通常はこうしたタイプがおおいですね。
このタイプの場合、新品の時にはやたら堅い先台があり、外すのに苦労する場合があります、また外すとき勢い余って銃身や先台に傷を付ける事もあります。
あまり高級銃では使わないタイプです、唯一の例外はペラッチだけですね。
FNの場合、先台を前に前進させ銃身を取り外します。このタイプの場合、上下合わせみたいに狂いが生じることはありませんが、先台を前にずらすため、銃身の下側の黒染めがはげる場合があります、Dグレードの場合、メルケルみたいに上下に外すタイプの銃床もあります。

平行リブ
平行リブ

ブローニングのリブは銃身と平行に作られています、そのため狙点よりも上に着弾しなければならないトラップ銃は、少し銃身が上を向いている必要があります。
そのためリブの中心に中間サイトが付けてあり、これと照星とが8に字になるような見え方でリブをみるとちょうど良い具合に、僅かに銃身は上向きになり、照星で狙う狙点より上に着弾することになります。そのため前に出るクレーは追い越しざまに、横に飛ぶクレーは、クレーの下を撃つ事により命中します。
実際に射撃をするときは、銃を構えたときに、照星と中間照星、そのリブの感覚を確認しながら頬付けの感覚を記憶します。
その状態を継続しながらクレーを追って撃発するわけで、その瞬間は中間照星を見ることはありません。初心者にありがちなトラブルは、クレーを追っていくときに顔が上がることです、いわゆるヘッドアップと言う現象です。
拳銃にも、ライフル銃にも照星、照門が付いていますが、上下2連銃には照星はあっても、照門はありません、その照門の替わりになるのが自分の目なのです。
ですから、頬付けが変化すれば照門である目の位置が変わるので、保証付きで当たらないと言うことになります。
と、言うことになるとベンドの高さが極めて需要になりますよね、人によっては数ミリ単位で神経質に高さを調整する人も居ます、別にそれはそれで良いのですが。
私は、メルケル、ペラッチ、FN,ベレッタ水平を代わる代わる撃って楽しんでいます、いずれの銃もベンドは勿論、銃床の長ささえ違っていますが、いずれの銃でも満射の体験があります、と言うことは、それぞれの銃にあわせて、狙点を変化させればちゃんと撃つことも可能なのです、私の悲しい性は、一つの銃を徹底的に使い、射撃競技一本に集中することが出来ないと言う事なのです。
物事を一本に絞れない、女性関係に関しては"当たり"という方も読者の中には居られるかも知れませんが、やはり物事は一本に絞るのが王道でしょうね、しかし残念ながら私にはできませんね・・・・・・・・・・・・・

あ、勿論鉄砲の話ですよ、このコラムは鉄砲自慢ですから。

ここまで書いて終わりにしようと思ったのですが、他のコラムと比べて原稿量が少ないのでもう少し、番外編として書き足します。

番外編はガンケースです。
今まで誰もガンケースの事について書いた事例は少ないので書いてみます。
世界中のガンケースやさんで、私がベストだと考えているのが、イタリアのEmmebi snc社です。ホームページもあるので一度覗いて見てください。アドレスは以下の通りです。
http://www.emmebi.it/home.html 私がここの会社がガンケースでは一番だと思うのは、イギリスの名銃、ジェームスパーデーのガンケースの製造を受けていると聞いたからです。メルケルのガンケースも作っています。パーデイのガンケースを作っていればガンケースメーカーで頂点である事は言うまでもありません。
HPを覗くと色々なタイプのガンケースを作っていることがお解りいただけると思います。多くの銃器メーカーがここに自社ブランドで注文を出していますので、それぞれのメーカーの最高級のガンケースは大体ここの製造になります。
ヨーロッパに行ったときに、日本では何処に卸しているの? と聞いたら*社と*社に出ていると言う事でした、ここの会社のガンケースはユーロで表示されています、為替相場では1ユーロ=¥127位ですから演算してみてください。
日本国内で売られている価格は、この価格の倍以上ですが、倍の値段なら運賃、通関費用、流通経費等々を考えると、ごく当たり前の価格です。
それに、ここの会社個人向けには売らないそうで、最低ででも10本以上の注文でないと受け付けないと言っています。
私の購入したのは1000/71と言うモデルで、ここの会社の最高級モデルです。
これと同じ物をジェーズパーデイ用に作っていると言っていました。
日本国内の価格で言うと30万円くらいではないかと推測します。

ガンケースの外側は、パナマキャンバスと言う生地に、皮でステッチしたカバーをかけてあります、革製のガンケースは簡単に水がしみます、雨に当たっても皮は簡単に水滴を吸い込みます、勿論、皮革油を付ければ水滴は跳ね返せますが、結構べたべたして感触が良くないので、一般的に革製のガンケースに油の塗ってある物は安物ですね。
高い物はこの様に油を塗らない代わりに、キャンバスのカバーを使います。

ガンケース本体
ガンケース本体
ガンケース内部
ガンケース内部

革製のガンケースの部材は一般的にラミネートの板材です、いわゆるベニヤですね。
ベニヤでケースの本体を作り、それに皮を張り付けて作ります。
私のガンケースは、ベニヤではなくて樫材で本体を作っています、わざわざ樫材を使っているので、その樫材の本体が見えるように木部を露出させています。
その樫材で出来た本体に革を巻いて作り上げています。
このガンケースは、丈夫に出来ている分、重さが他のガンケースよりも重くできています。

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