自動式ライフル銃について - 銃について

1999年12月24日 築地
改訂 2000年 2月 6日 築地

当社で取り扱いしている自動式ライフルはブローニングとレミントンだけです。
それ以外のメーカーはあまりお勧めできないので取り扱いをしておりません。

12月24日、最初にコラムとして書いたのがこの書き込みだったのですが、他のコラムの書き込み量とすると、重要なテーマなのにあまりにも書き込み量が少ないので、今回、加筆ではなく最初から全部書き直しました。そんな訳で、このコラムをすでにお読みになった方でも再読いただける内容になっています。


ブローニング

外国ではこの銃をBAR(バー)と愛称を込めて呼びます。BARとはブローニング、オートマチック、ライフルの略称です。実は、この銃の原型は第2次大戦中に使われた30-06のフルオートライフル、BARがその原型なのです。ですから現在市販されている猟用のBARも同じ会社の製品ですから極めて高い信頼性があります。
現用の猟用ライフルの中で回転不良が一番少ないのは、このBARです。
BARは世界中で一番売れている自動銃です、ですから常に品不足気味で販売する側からすると、品物の入手にいつも苦労させられています。高い性能の割に値段が安いのは、部品はベルギーで作られるのですが、その組み立ては工賃の安い、ポルトガルで組み立てられているからです。ですから性能の割に値段的に割安の銃が出来上がって居るのです。またBARの特徴として、7ミリマグナム、300マグナム、338マグナム等、マグナムカートリッジを使用できる自動銃としてはこのBARが世界で唯一のライフルなのです。
マグナム仕様の銃と、通常の308、30-06、とも基本構造には違いはありません。
但し、機関部はマグナム実包の長さに合わせて、308タイプ等よりはその分長くできていますが、ボルトの強度、ガスシリンダーの構造、引き金ブロックの構造、すべて同じ物です。
338マグナムを使っても大丈夫な作りの銃ですから、308や30-06では充分過ぎる耐久性があると言えます。現在のブローニングはマークII(マーク ツー)と呼ばれています、ですからこの前のモデルとしてマークI(マーク ワン)が有ったのですが、唯一の違いは弾倉の寸法が少し違うだけで、銃の構造には変更はありませんでした、それだけ完成度が高いと断言できます。
銃の出来は完璧に近いのですが、ユーザーからの不満が一番多いのが弾倉型式です。
多くの銃が、弾倉は着脱式なのですが、この銃はヒンジタイプの弾倉型式なのです。
トリッガーの前のストッパーを外すと、ヒンジが開きます、弾倉はこのヒンジに取り付けられているのです。最大の欠点は弾倉交換がスムーズに出来ないと言うことです。

一昨年あたりから、軽量モデルが発売されました、発売と同時に非常な人気となり現在も超品不足状態が続いております。当社でもこの銃を売るより、この銃を仕入れる事が最重要課題になっています。夏のセールの時からの品不足は現在も続いています、当社はこの銃をアメリカ経由で輸入しているのですが、アメリカ市場の流通経路からこの銃がほとんど消えてしまったため、急遽値段の高いヨーロッパ市場にも手を回して銃の確保につとめたのですが、ヨーロッパ市場からもこの銃は消えています、ブローニングも生産はしているのですが注文が多すぎてデーラーの間で取り合いになっているのが現状です。
日本では、お金さえ出せば何でも入手できる社会機構ですから、お金を出しても入手が難しい物と言う物はあまりありません、日本の企業なら注文が有れば増産という図式が出来上がっていますが、銃砲業界は少し事情が違うのです。
銃器の世界は40年位前が最大の生産ピーク時でそれ以降、生産量は年々減少を続けて来たのです、注文があるから増産、増産しすぎたため不良在庫、不良在庫のため経営悪化と、悪循環を繰り返し、銃砲業界は20年位前から深刻な構造不況業種になってしまったのです。
銃器メーカーはこの間に、銀行管理になった会社、経営者が変わった会社、他企業の傘下に組み込まれた会社、倒産して別の資本家が再建した会社、ほとんどがこういう状態に陥ったのです。
特に軍用品売り上げの比重の大きかった会社ほどその影響が深刻でした、最近のソ連の崩壊をみてもご理解いただけるでしょうが、国際的な緊張感が薄れたため、新規の軍用銃の注文が激減したのです。正確に言うと、激減と言うよりは消滅したのです。
そのため多くの軍用品メーカーが民間市場になだれ込みました、その為に民間用の猟銃の値段はあまり上げられないのです、かと言って会社経営を危うくする、短絡的な増産はどこの会社もリスクが多すぎてやらないのです。それに現在のアメリカは好景気が続いており、現在は銃器の需要がかなり高いので常に人気の銃は品不足状態になっているのです。
最も売れない商品はいつでも即納ですが。
今月、アメリカのショットショーに行きましたが、超品不足状態を解消するため、当社ではレスキュー、インポート、システム(緊急輸入システム)を設置する事にしました。
名前は大げさですが、仕事の内容は大したこと有りません、品不足の銃はアメリカ中の銃砲店に片っ端から注文を流し品不足を解消するのです。
つまり購買専門のスタッフをアメリカに置いたと言うことです。しかしながら、非常時に買い入れる値段は業者価格ではなくアメリカの小売価格で購入するので、当社の利益はあまりありません、場合によっては完全な逆鞘になりますが、これからのビジネスは単価の安さだけが売りではありません、在庫の品揃えこそ最大のビジネス拡大のチャンスと私は捉えていますので、この機会に在庫を極力確保しようと考えています。
さて、下らない内輪話をしてすみません、また話を戻します。
BARがこれほど品不足になった最大の原因は軽量モデルを発売したため、その人気に拍車がかかったのが原因です。軽量モデルは銃身を22インチに短くし、機関部を軽合金で作って3.2キロにしました、銃身の長さはこれくらいが限界です。これ以上短くすると回転不良がおきるようになるのです。
では銃身を短くすると何故回転不良が起きるのか説明してみましょう。
自動銃を撃つと弾を発射したと同時に薬莢が排出されます、人間の目から見ると同時ですがメカ的にはチャントした"お約束"に基づいて順序よく動いているのです。
引き金を引くとハンマーロックが外れ、ハンマーは撃針を叩きます。
この時は、ハンマーが外れるにはチャントボルトが前進していることが"お約束"です。
ハンマーは撃針を叩きますが、この時ボルトが回転してちゃんとロックされていることが"お約束"です。
点火した火薬はどんどん弾頭を押して行きます、ガス穴を弾頭が通過すると、火薬ガスはガス穴から入り、ピストンを押し下げます、ピストンが動いてもこの段階で絶対にボルトが開いてはいけないのです、これは絶対的な"お約束"です。
弾頭はさらに前進を続けます、ピストンはさらに後退します、まだボルトは開いてはいけません、弾頭が銃口から離脱しました! ピストンは慣性でさらに後退します。
弾頭は銃口から数メートル先を飛翔しています、銃口内のガスはほとんど放出されました。
ここで初めてボルトが解放されるのです。
ですからピストンが動き始めてからボルトが解放されるまで、タイムラグがあるのです。
そのため銃身が短すぎると、ピストンが後退し切る前に弾頭が銃口から飛び出し、ピストンを後退させるガス圧が減少するからです。ガス圧が減少するとピストンを充分押せなくなるので回転不良が起きます。
機関部について説明してみましょう、機関部が軽合金だと言うと"強度は大丈夫ですか"と聞かれることがあります。機関部は軽合金でも、ボルトと銃身は鉄ですよね!
弾の強烈な圧力はボルトと銃身だけで支えられています。で、そのボルトは先端が回転して銃身と噛み合うように設計されているのです。
ですから鉄の機関部でも、軽合金の機関部でも安全性には何の影響も無いのです。
機関部は弾の圧力を受けると言う意味では何の役にも立っていないのです、単に内部部品を止めているだけに過ぎないのです。
ライフルスコープを取り付けるとき、マウントベースを機関部の上にねじ止めして取り付けます、ねじ止めと言うことに関しては残念ながら軽合金は強度不足です。
そのため、軽合金の機関部はねじの入る所は鉄のブッシングが内側から圧入されています。
これでねじ山の潰れるのを防止しています。

では次にブローニングに取り付けられているボスについて説明します。
ボスは反動を軽減するマズルブレーキの効果があります、おおよそ30%反動を軽減します、実際に撃った感じでは300マグナムは30-06の反動になります。
ボスの反動軽減効果は大きいのですが、反動を軽減する為に弾頭が銃口から離脱する前に火薬ガスを横から抜くため、音がかなり大きくなります。音が大きいと言っても射撃場で使う分にはあまり支障は無いのですが、実猟の場合耳栓をして居る人はいないので、猟場で撃つとかなり音が気になります。音が気になればボスを外すか、ボスの周りにテープをぐるぐる巻きにして、ガスが横から飛散しないようにするか、穴のあいていない別売りのボスCRに変れば簡単に解消します。
では一番問い合わせの多いボスの調整について説明してみます。
ライフル銃を撃つときには固有の銃身は振動を起こします、いわゆるヴァイブレーションと呼ばれる物です、ボスを回すと回転により銃身の全長が変化します、これによりバイブレーションの振動を変化させて命中精度を良くしようと言う装置なのです、銃身には固有の振動があると説明しましたが、その振動の一番小さいところを銃口の位置にするため、全長を変えて振動のリズムを変化させ、弾頭が離脱するとき、つまり銃口の部分で銃身振動が一番小さくなるように工夫した物なのです。
銃身の振動は銃身長で変化しますが、装弾の弾頭重量、使用火薬の燃焼特性、圧力でも変化します、ハンドロードする場合、使用する弾頭、火薬、火薬量を色々変化させて一番当たるところを探りますが、実はこれも銃身のバイヴレーションを変化させているのです。
ですから、ハンドロードする場合は、ボスの調整は無意味なのです。
で、現実問題ボスを調整する事でどのくらい効果があるかと言いますと、まず工場装弾を使い、100メートルで3センチ位に集弾させる事が出来ないとなりません。
工場装弾でそれくらい当たれば、ボスを調整することにより2センチくらいにグルーピングを小さくすることが出来ます。この効果、わずか1センチくらいしか有りません。
100メートルで3センチに集弾させる事の出来る人は100%ハンドロードをやっているはずです、ハンドローダーにはボスは無意味です。
グルーピングが3センチ以上の人、たとえばグリーピングは30センチの人は、ボスをどのように調整しようが命中精度に変化はありません、それは銃身のヴァイブレーション以前に、腕がヴァイブレーションしているからです。

レミントン

レミントンも長い間自動銃を作っています。昔のモデルは742、現在のモデルは7400です、しかしモデルチェンジと言っても何処が変わったのか解らない程度のマイナーチェンジです、弾倉は互換性が無いし、マウントリングベースのねじの位置が違いますが、内部的にはあまり大きな変更はありません。
変更が無いと言うことはタイムプルーフされ完璧なメカニズムに到達したと言いたいのですが残念ながらまだ問題を残しています。それは回転不良です。
元々の設計は30-06だったので、30-06の場合は回転不良はないのですが308口径は回転不良の発生率が高いのです。
それは30-06は装弾の長さが長いので弾倉から上がってくる角度があまり急でないのですが、308の場合全長が30-06より短いので、弾倉から薬室に上がる角度がより急になり、弾頭の先端が薬室の壁に当たり装填不良になりがちです。
これを解決するには使用する弾頭の形状を別の物にするのが近道です、一般的には先端が丸い弾頭の方が装填不良を起こしやすいので、先端が尖った、スパイヤーポイントの弾頭を使う方が良いでしょう。
また弾頭が軽い場合、スライドが下がりきらないため、装弾の上にスライドが乗り上げて装填不良になるケースもあります。
この対応策にはガスポートの穴を0.3~0.5ミリ程度大きくするか、レコイルスプリングを1~2センチ切断して、レコイルがより完璧になるように調整する方法もあります。
またレミントンの場合、ガス筒の工作が不完全なため、ガスが充分吹かないため回転不良になる事も認められます。いすれにしても調整連すれば改善できます。
レミントンの利点は、弾倉が5発だと言うことと、弾倉交換が容易だと言うことです。
猟場での安全性を考えると、簡単に弾倉が着脱出来ることは極めて大切なことです。

ルガーミニ30

当社ではルガーは取り扱いをしておりませんが、他店から購入される方のためにルガーの事についても説明をしておきます。
ルガーミニ30の外観をご覧頂くとお解りになると思いますが、外見はM-14そっくりです内部の部品もM-14を参考にして作られています、いわばM-14の小型版なのです、ですから回転不良なども起きない優秀な銃です。日本では当然にして狩猟用の銃として輸入されていますが、実はミニ14の多くの需要先は外国政府です。
イスラエルでも、カナダでも、最近ではタイでも採用されたと言う話を聞きました、それも軍隊ではなく、警察とか、国境警備隊とか、あまり銃器を使用しないですむ部門か、相手が銃器の装備していないと言う状況の場合が多いようです。
つまり滅多に銃器を使用しないが、銃器を携帯しないといけないような部門です、ですからどうしても軽量の銃と言うことになります。
これに使われる装弾は30X39と言う、ソ連の軍用銃カラシニコフ47の実包と同じ物を使用しています。ですから人間にとっては有効でも、狩猟には力不足の感じが致します、とは言いつつ、カービン銃でも猪撃ちに使っている人は居ますのでチャント急所を撃てば大丈夫だと思いますが、さすがに蝦夷鹿撃ちに使う人は居ません、蝦夷鹿の場合、カービンではほとんど半矢になってしまいます、30X39も同じような物だと考えてください。
実を言いますと、このカートリッジ人間に使っても半矢になる場合が多いのです。むしろそれを意図として作られているのです。戦場で戦士が戦死すれば、当然にして見捨てられます、ところが半矢の場合、つまり貫通銃創だだけで死に至らない場合は当然救護しなければなりません、そのため相手を戦士させた場合、戦列から離脱するのは戦士1名ですが、戦士が負傷した場合、その介護と搬送のため戦列から離脱するのは4名という数字が出ているのです、当然実戦では戦士させるよりも、半矢の方が戦略的には効果が大きいのです。 

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