素朴な疑問 - コーヒーブレイク

2003年11月 6日 築地

読者から以下のメールが寄せられました。
Q&Aで答えるよりも、コラムとして書いた方が多くの人に読んで貰えると考えて「素朴な疑問」と言うタイトルで書いてみたいと思います。
先ずは読者の質問をお読み下さい。


築地 様

いつも楽しく読ませて頂いております。

散弾銃の弾道学や、その他の記事を読ませて頂いておりますと、スプリング1つ、弾頭1つ、引き金1つなど、およそ全てのパーツに理屈があって、無駄には設計されていないのだなと、超初心者の私としては、非常に勉強になる内容ばかりで感服しております。

ところで、初心者ならではの恥ずかしい素朴な質問にお答えいただければ幸いです。
上記のように、あらゆるパーツ、設計に工夫を凝らされた銃器ですが、散弾銃にはどうして照門がないのか、疑問で仕方がありません。
友人の所有するレミントン系の銃身には(銃身によっては)銃身の中ほどにそれらしきものがあって、「中間照星」と友人は説明してくれました。しかし、照門がない散弾銃が大半ですね。

クレーなどで使うことが前提なので、照準を合わせている暇がないから?
そういう文化だから?と、首をひねってみましたが、説得力のある説明は出来ません。
友人、先輩も、身近な人は誰も「なるほど」という説明を持たないようです。

今まで持ってきたおもちゃの空気銃、ピストル、ライフル、果ては夜店の射的の銃にも照門らしきものがありますし、火縄銃にもそれらしきものがあるのを、近くの居酒屋に置いてあった模型で確認しました。
非常に疑問で、気になって仕方がありません。
頬付けをしっかりしたら当たるからといわれればそれまでですが、でもいまいち納得できません。
狩猟中などで居鳥をゆっくり狙って撃つとき、照門があればなあと思うことがあります。(ヘタだからですが・・・)

なんだか締まらない質問ですが、これも初心者ならではとお許しください。
お時間の許すときにお答えをいただければ、喉のつかえが取れます。
よろしくお願いいたします。

さて、これからが私の回答です。

散弾銃でもちゃんとサイトの付いた銃はあります、例えばボルト式散弾銃等はそうですね。
モズバーグ695、ミロクのSS20等がそうです。
木の枝などに留まっている鳥などを狙う場合、50m以内なら100発100中でしょう。
多くの場合、ボルト式散弾銃にはスコープが取り付けられています、これは単弾のスラッグや、サボットを撃つための物です。スコープを使えば、サボット弾で150m位の湯飲みにも簡単に命中させる事が出来ます。
この様に狙った所に当たると言うのは、あくまでも標的が固定して居る場合の話です。
ところが、目標が移動している場合、その命中率は極端に悪くなります。
何故ならば、銃をスイングさせて撃つと、目が視認してその情報を神経が脳細胞に伝達し、脳の中で情報処理して指先に指令を出して、引き金を引くまで百分の数秒かかります、さらに千分の3秒のロックタイムで雷管を激発して銃口から弾頭が飛翔しても、銃口がスイングしながらの離脱した弾頭は必ず流されます。

この流されるという感覚は、当社のHPの入り口に、マウスポイント追尾型のムービーでご確認下さい。
このシステムは円盤を任意に変形させて、それがマウスポイントを追尾します。
このムービーはイメージ的にはクレーをイメージして作っていますが、いわば弾の流れを表現しているとも言えますね。
標的が固定している場合は驚異的な命中精度を誇る銃も、目標が移動すると命中させる難易度は極端に悪くなります。

現在ではほとんど起こりえないことですが、戦闘機と戦闘機が機関銃で空中戦をする場合、空対空の機銃モードにウエポンシステムを選択すると、戦闘機のヘッドアップデスプレイにはファネルサイトと言うモードが表示されます。
ファネルサイトとは戦闘機独自のモードで、ファネル、つまり漏斗と同じ様な形状が表示されます。漏斗ですから上が広くて下が狭い2本のラインで構成されています。
このモードはその2本の幅に相手の戦闘機の翼端を合わせれば自動的に照準調整され命中するように作られています。ですから目標が遠ければ遠いだけ、目標の翼端は小さくなる訳ですからファネルサイトの下の方で狙うことになります。つまりその分上を狙う訳ですからそれだけ狙い越を付けていることになりますね。
ファネルサイトの一番上の部分、つまり幅の広いところに相手の翼端を合わせると、その時点の距離は300mです、戦闘機のバルカン砲のサイテングは、300mに設定されていますのでこの距離で撃てれば完璧なのですが、現実の先頭ではこういう状況はほとんど無いでしょうね。

このモードは戦闘機に搭載されたコンピューターで演算されてデスプレイに表示されますから、零戦の頃の固定式のリチクルと違い、目標が旋回して回避する場合、ファネルモードの下端は旋回と逆方向にグーット変形します。
旋回方向と逆方向に変形するわけですから、その分相当先を狙わないと命中しないと言うことです。
私は弾が出る物は何でも好きですから、このシステムを戦闘機のフライトシュミレーションで何度も試した事があるのですが。
相手の戦闘機が500m以上離れた距離で限界ぎりぎりの回避中に、機銃を撃つとすれば、飛翔している戦闘機の100m以上先を撃たないと絶対に命中しません。
現実にはそれ位弾は流されるのです。
もしこれが、真っすぐ飛行していたら、簡単に100%命中しますね。
固定している目標と、移動している目標ではこれだけ違いがあることを認識して下さい。

さて、話をまた散弾銃のサイトに戻しますが、言うまでもありませんが散弾銃が固定的を撃つのであれば照星照門を使うのが圧倒的に有利です。
今まで説明した様に、飛翔物体を狙うには、目標の先を撃たないと命中させる事が出来ないのです。この理屈はお解り頂けましたよね。
さて、問題の先を撃つ場合、つまり狙い越をして撃つ場合ですが、照星は有っても良いのですが、照門があると、何故か人間は先を撃てなくなるのです。
それは何故かと言いますと、照星と照門があれば、人間の特性として先ず照星照門を正確に合わせることに意識が集中して、狙い越して撃つという作業が極端に遅れるのです。
飛翔物体を撃つ場合、射撃のタイミングこそが一番重要なファクターですから、正確な狙いを求めても目標が遙か遠くに飛んでいけば射撃そのものが成り立たないのです。
クレー射撃で言えば、クレーが土手に着いてから「ドカン」と撃つような物です。
いくら正確な狙いでもこれでは駄目ですね。
ですからスピーデイな射撃をするためには、照門を見ないで、照星だけで目標を狙い、そして追い越しざまに撃つのが一番利に叶った撃ち方なのです。
照門が無い分、脳細胞の情報処理がかなり軽減されるから目標に意識を集中できるのです。
そして、早いタイミングで射撃することが出来るのです。

この場合の射撃は「正確な射撃」ではなくて「思い切りの良い」射撃の方が遙かに有利なのです。

目標が大きい内に素早く撃つ、これが散弾銃で照門を使わない最大の理由なのです。

人間の情報処理能力と言うのは見方を変えれば、極めて脆弱だと言うことが出来ます。
車を運転しながら携帯電話を使うと、事故率が激増しますね。
これも人間の脳は同時に二つの作業をこなすことが出来ないと言うこと物語っています。
照星照門を使わないで、照星だけで目標を狙う事もそうした事が理由なのです。

ガールフレンドも同じでしょうかね? 一人なら何とかなっても複数のガールフレンドをを処理しようとすると自らパニックに陥ったり、言語がしどろもどろに成ったりしますね。
私はこういうパニック状態にはまると、いきなり難聴になったり、惚けた振りをしてパニックを回避しようとしますが、回避できないときはあえなく撃墜されます。

撃墜されたときはフライトシュミレーションと同じでまた簡単にリセットします。

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