劣化ウラン弾 - コーヒーブレイク

2004年 5月 1日 築地

過日、Q&Aの質問で以下の様なメールが寄せられました。

最近、マスコミで劣化ウラン弾と言う言葉をよく聞きますが、これはどういう用途に使われるどういう弾頭なのですか?


本来は、こうした問い合わせに対しては、Q&Aの中で、わずか数行で回答するのですが、数行で回答するには極めて多くの問題を含んでいますので、あえてQ&Aではなく、コラムとして開示したいと思います。

以下その回答です。

私は銃器に関する専門家では有りますが、放射線の、あるいは核物質の専門家でもありません、それでも自然界に存在する放射線と、核分裂を起こす濃縮ウランの放射能被爆と全く別物だと言う事は理解できます。最低限この理解がないと話が進みませんので理解できない人はそれを理解して読んで頂くか、理解できなければ、誤解を生じますのでこれ以上このコラムを読み進まないで下さい。

理解出来る方は以下の文章に進んでください。

いかなる金属もラジオアイソトープとしての放射線は存在しています、その量は0.0001%位かも知れません。

普通に採掘されたウランは99.3%が238ウランです、残り0.7%のウラン235がラジオアイソトープとしてのウランです。この0.7%を3.5%に濃縮すると核分裂するウランが完成します、このウランを濃縮する技術は相当高度なレベルの技術で、アメリカが戦前に原子爆弾製造の為に要したマンハッタン計画では、町一つを構築する位の人間と、天文学的な金額を投入してやっと完成させた物なのです。

この濃縮ウランを生成する課程で、いわば絞りかすとしで出来るのが劣化ウランなのです。

名前こそウランと付いていますが、この中に金の何十倍も高価な、235ウランが存在していると言うことは絶対に有りません。もしそれが残留していたら、濃縮できていないと言うことに他なりません。しかしながら劣化ウランといえども、立派な放射性廃棄物なのです。
もう一つ明確に記憶して頂きたいのは、世界中で濃縮ウランを生成出来るのは極めて限られた国だけなのです。アメリカ、イギリス、ソ連、位の物でしょう。
パキスタンが出来たとか、インドが出来たとか、そういうのは単なる実験レベルの話であり、原子力発電に使う濃縮ウランを生成出来るレベルでないと、大量の劣化ウランは製造できないと考えてください。つまりお金持ちの国でないと劣化ウランは作れないのです。
当然、日本も作れません。この事が貧乏な国のネガチブキャンペーンに使われていると言うことも事実なのです。劣化ウランは放射性廃棄物では有りますが、原子力発電所で職員の着用していた衣服も放射性廃棄物ですが、そういうレベルの廃棄物だと考えてください。
ですから、劣化ウランにガイガーカウンターを近づけたら激しく反応したというのは、全くのデタラメなのです。確か、赤旗の記事の中で「鳥島の射爆場で、弾頭の着弾地点でガイガーカウンターの針が振り切れるほど激しく反応した」と言う記事を見たような記憶が有りますが勘違いだったらすみません。もし本当にこういう記事が有ったのなら完全にデタラメな捏造記事ですね。

その他に、TBSのイラク戦争の報道の中で、劣化ウランが撃ち込まれた場所で、ガイガーカウンターが反応したと言う報道が有りましたが、またもやったかTBS、と言う感じで、石原都知事のコメントをねじ曲げて報道したり、そんなことを平気でやる報道機関ですから視聴者も相当レベルが高くないとまんまと騙されますね。
ガイガーカウンターが反応したのなら、その場所こそ、核弾頭が有った場所に他なりません。この様に、放射線と放射能の違いが解らないから、こういう幼稚なやらせを起こすのでしょうね。その他にもテレビ朝日で同じような捏造報道をしていました。
いずれも、親会社が毎日新聞と朝日新聞ですから、こう言う捏造報道をしても「それが社風」と言うことでかたづけられるかも知れませんが、それを見ている視聴者には相当な見識がないとこういう左翼系統のポロパガンダに騙されるかしれませんからお気を付けてください。

実を言うと、誰も言っていませんが、劣化ウラン弾は、ポケットに入れて持ち歩いても安全な物なのです。何処のメヂアも劣化ウラン弾をポケット入れても安全だとは言い切っていません、そういう言い切りをしているのは私のコラムだけです。
しかし、その事を断言するには相応の知的バックグラウンドが有ることも事実です。
劣化ウラン弾等をポケットに入れて持ち歩くと放射線傷害を受けるという方は、その事実を証明できる資料を添えて反論されて結構です。

劣化ウランは鉛の1.7倍もの比重があります、しかも硬度が極めて高いのです。
ですから、戦車砲のサボット弾頭に使えば極めた有効なのです、射程4キロ位なら、ほとんど直進する位の超低伸弾道で飛翔します。サボット弾ですから105ミリ砲弾で撃ち出しても、コアの直径はせいぜい1インチでしょうから、初速4000フィートは軽く出るでしょうね。このコラムの読者ならライフル弾頭でも、30-06クラスで、初速は2800フィートだと言うことは常識的にご存じの筈ですから、4000フィートが驚異的な初速だと言うことは簡単にご理解頂けるところですね。

サボット弾のコアは、弓矢の矢みたいな形状をしており、コアの重さの割に断面積は極めて小さく、その長い飛翔物を安定して飛行させるために羽が付いているのです。
劣化ウラン弾等が初めて兵器に採用されたのは、艦船を敵のミサイルから防御する、ファランクスとか、ゴールキーパーとか呼ばれる、バルカン砲に搭載されたのが初めてです。
こうしたバルカン砲はレーダーと連動させて作動するのですが、その作動は敵ミサイルの飛翔方向に、バルカン砲から打ち出された弾頭を交差させると言うプログラムで構成されています、我々が銃を撃つように「狙って撃つ」と言うシステムとは異なるのです。
敵ミサイルにバルカン砲の弾道を交差させると言うためには、超低伸弾道の弾頭が必要なのです、その為には出来るだけ比重の重い弾頭を使うのはどうしても必要な事なのです。
劣化ウラン弾頭は原料が只だから使うというのは、明らかに左翼プロパガンダの間違いですね、現在、自衛隊では劣化ウラン弾頭の替わりにタングステン弾頭を使っていますが、この弾頭を使う事により、ファランクスの命中精度が低下したのは間違いない事実です。

それが事実かどうかは、自衛隊の艦船にミサイルが撃ち込まれるまでは立証出来ないのでがね。
さて、劣化ウラン弾等に関する些細な仕様は以下のページに記載して有りますので、必ず見てください、相当な分量の記述が有りますので出来ればプリントアウトして読んで頂けたらと思います。

このページを読むだけで正確な劣化ウラン弾等の知識が有られると思います。

http://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/Pub/29.html

IPSHU 研究報告シリーズ 研究報告No.29 武力紛争における 劣化ウラン兵器の使用

このページは研究期間として極めて誠実に書かれていますので、左翼のプロパガンダには全然害されていません。また劣化ウラン弾頭の画像も掲載されております。

ここまで書くと、私自身が米軍のプロパガンダの一面を、になっているように思われるかも知れませんが、必ずしもそういう事ではありません。
私はアメリカの報道番組、CBSの隠れたフアンです、特にドキュメンタリー部門の60ミニッツは毎週欠かさず見ています。CBSの報道番組は、ウオルター、クロンカイトを始め、現在はダン、ラザーを筆頭に誠実な報道番組を放送している会社です。
誠実なCBSの報道番組を、やらせのTBSが報道している所は苦笑せざるを得ないところですが、それは我慢して見るしかありません。

最初に劣化ウラン弾の傷害について報道したのはこのCBSの報道です。

湾岸戦争で大量の劣化ウラン弾頭が使われました。劣化ウラン弾等は対戦車攻撃に使用すると、敵戦車の装甲鋼板を撃ち抜くときに、猛烈な高温を発します。
その猛烈に燃焼したガスが、微細な微粒子となって空中をさまようと言うのがスプレー現象と言っている事です。ですから劣化ウラン弾等の影響は周囲数キロに及ぶと言うのが左翼プロパガンダの言い分です。
猛烈な高温と言うのは、何も劣化ウラン弾の特性ではなく、タングステン鋼でも同じです。

我々が使用するライフル弾頭でも同じです、弾頭が装甲鋼板で跳ねればエネルギーはさらなる飛翔の為に使われますが、貫通の為にエネルギーが使われると、弾頭が燃焼するしかエネルギーを放出する方法がないのです。ですからライフルの30-06弾頭ですら、装甲鋼板に命中すると激しく燃焼してガス化するのです、装甲鋼板に命中すると、劣化ウラン弾頭だけが高温で燃焼すると言われているのは間違いです。左翼プロパガンダだけでなく、普通の研究者もこうした間違いを平気でおこしています。この様に通常弾頭でも激しく燃焼します。エネルギーの放出は、車のブレーキをかけると、車を停止させるためのエネルギーが、デスクブレーキの高熱として放出されるのと同じ理屈です。

話が横道にそれましたが、湾岸戦争後、帰還兵の中に劣化ウラン砲弾が撃ち込まれた敵戦車の中に突入した、あるいはその敵戦車周辺で作戦を展開したアメリカ軍兵士の中に、明らかに放射能後遺症と思われる傷害が発生したと言うのがその報道の最初でした。
私の見たアメリカ兵は、下半身が異常な形状に発達しており、明らかに生殖体の異常と思われる症状をていしていました。染色体の異常は放射能障害にある独特の症状ですからね。
その時は私も相当の衝撃を受けたのですが、そうした染色体の異常を来した兵士はごくわずかでしか無いことも後で解りました。

そしてその時点で、国防総省は劣化ウラン弾等と染色体の異常は因果関係がないと断定していました。現在に至るもその因果関係は立証されてはいません。
しかしながら、湾岸戦争シンドロームと呼ばれる、原因不明の病気が存在することも事実です。それも劣化ウラン弾頭との因果関係は立証されていません。

しかしながら、立証されていないから無関係とも言い切れないところがあるのです。
ですから劣化ウラン弾等と、原因不明の病気との因果関係は、有るとも、無いとも、どちらとも言えないのが現在の判断だと思います。

現在科学的な分野からちゃんと分析しても、そういう結論にならざるを得ないことは厳然たる事実ですから、国防総省の言い分も、とりわけ左翼のプロパガンダもどちらの言い分にも、どちらにも断定を下す訳にはいかないのが現実なのです。 

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