バルカン砲の誤射 - コーヒーブレイク

2001年 6月27日 築地

今日のニュースで自衛隊のファントムからバルカン砲での誤射があったと報じていました。
私は軍隊に近親間を持っていますので特段自衛隊を非難する気にはありません。
念のため言いますが、このコラムは自衛隊にクレームを付けるためのコラムではありません。

 何故か解りませんが、多くの戦闘機はパイロットが意図しないのにミサイルが発射されたり、今回の様にバルカン砲が発射されたりします、知らない人が聞くとびっくりするかも知れませんがこれは事実です、過去にもF-15がミサイルモードになっていない状態でトリッガーを引いたらミサイルが発射され戦闘訓練中のF-15に命中して撃墜した事件がありました、これは加害者も被害者も本当に気の毒な事件でした、これも単に機械の故障です、ずいぶん昔になりますが米海軍では空母で整備をしていたファントムからミサイルが発射され、空母の上の戦闘機に命中し、空母が3日間炎上した事例もあります。

ミサイル発射するには、兵器モードを、安全→機関砲→長距離ミサイル→短距離ミサイルという風にそれぞれのモードに切り替えないと発射出来ないようなシステムになっているのですが、F-15の場合(外の戦闘機でもそうだと思いますが)ミサイルモードに切り替えなくてもミサイルが発射されることがあるそうです、(F-15の場合 メーカーの事後通知マニアルで明らかにされています)当然バルカン砲も同じ事が考えられます、ミサイルもバルカン砲も単に電源が入れば自動的に発射されますので、操縦桿のトリッガーを引かなくても何らかの故障で電源が入ればその必ず発射されます、戦闘機のほとんどは常時最小限の装備をしています。これは戦闘機では当たり前のことです、戦闘機は常時最小限のミサイルと機関砲に実弾を装填しているのは軍隊の常識至極当たり前の事です。
警察官が拳銃を携帯しているのと同じ事です。

今回の報道で不思議に思ったのは、自衛隊側は発射されたのが"模擬弾"と直ちに報道していましたが、画像で見る限りあれは模擬弾では無く、通常弾頭だと思います、自衛隊が模擬弾とわざわざ言っているのは危なくないよ、と言う意図があるのはありありですが、真意は不明です、バルカン砲の弾頭には火薬を装填した物、対戦車に使うような鉄鋼弾(劣化ウラン弾もその1種ですが)等がありますが、模擬弾と言うのはそれらの弾では無いと言っているのでしょうか? 意味が分かりません。
我々が通常"模擬弾"と言えばダミーを言いますが、米軍でもダミーと言えば火薬を装填して無く、雷管も無く、ボデーには穴をあけている物を言いますよね、ダミーから弾頭が撃ち出せる訳がありません。
場合によってはダミーには弾頭に木製の物を使って誰が見ても明らかに模擬弾としているのを通称、常識的には"模擬弾"と呼ぶのでは無いでしょうか?
自衛隊では歩兵科を普通科、駆逐艦を自衛艦、最大の間違いは軍隊を自衛隊と言う具合に、今日まで、まるで自衛隊は政治家の言葉の玩具にされた感じがあります、ちゃんとした軍隊を自衛隊と言いくるめられたとおり、単に口先だけの誤魔化しで来たため、そのため自衛隊自らが普通弾頭を模擬弾とマスコミに言いくるめたいのかもしれません。

しかし、後で嘘を繕うようになると自衛隊そのものの信頼が失墜してしてしまうのではと心配でなりません。
バルカン砲が発射されたのはロケット弾投下訓練中との話がありましたが、ロケット訓練中でも最小限度のミサイルと実弾を戦闘機に搭載しているのは軍隊では常識です、戦闘機が何時でも戦闘状態に入れるので無ければ軍隊じゃないし戦闘機でもありません、米軍の空母での着艦訓練でも、スパロー2発、機関砲弾500発は最低限搭載しています、空母への着艦訓練、特に夜間の訓練は極めて大きい危険性を伴います、着艦に失敗した時のことを考えると武器を搭載しない方が絶対良いのですが、武器を搭載しないで戦闘機を飛ばすことは考えられません。第一その時に敵に襲われたらアウトじゃないですか。

 話がそれましたが、爆弾や、ロケット弾の対地攻撃の場合、地上の機関砲に銃撃されないため戦闘機は高度を8000メートル以下に下げる事はありません、レーダーに発見されやすいと言う欠点を除けば、通常は出来るだけ高い高度を飛行する方が戦闘機はより安全に飛行できます、8000メートルまで高度を下げるのは単に爆弾のロケット弾の命中精度を上げるためです、とすると戦闘訓練に入る前は相応の高度で飛行していたのではないかと推測されます、その高度でバルカン砲の電気スイッチが入ったとして、発射された弾頭は飛行高度によりますが地上に落下するまでは20秒~1分位は飛翔すると思われます、初速890メートルで発射されたと仮定して、その時間飛翔すれば20キロ~40キロくらい楽に飛翔する事になります、機関砲と言えども思いの外遠方まで飛ぶはずです。
参考までに説明しますと、ミサイルと言うと飛んでいる戦闘機を何処までも追いかけて撃墜すると考えている人も多くいます、ミサイルのロケットモーターは一体どのくらいの時間燃焼すると思いますか? 短距離の空対空ミサイルはわずか**秒です(軍事機密なので内緒です)これだけの短時間しか燃焼しないのですが、何故遠距離飛行するかと言いますと、点火のあとミサイルはとりあえず高度を取ります、とりあえず高く高く上昇する訳です、ロケットモーターの燃焼が終わったら惰性で飛行して自らのレーダーまたは赤外線探知装置を使いグライダーの様に飛翔して敵戦闘機に命中します、ですからバルカン砲ですら高度があればびっくりするほど飛翔するのです。要はミサイルと同じなのです。

バルカン砲の命中精度は当然ですがあまり良くありません、回転している砲身からから撃ち出すのですから当然と言えば当然です、バルカン砲のミルスペックでは、300メートルで1メートル以内に80%の弾が当たる事となっています、この80%と言うのが問題ですね、あとの20%は何処に当たるかわからないのです、いずれにしても標的以外の弾痕不明弾です、しかしバルカン砲の場合、ライフル銃と違い命中精度が良いと言うことは戦術的に言うとあまり意味はないのです、バルカン砲で地上を攻撃する場合、あまり1点に集中しても周囲に対しても破砕効果と言う面から考えると有る程度散布して着弾する方が望ましいのです。
空対空の戦闘の場合対面交差する場合は戦闘機同士があまりにもスピードが早すぎで撃つ時間は無いのです、射撃のチャンスがあるのは追尾する時だけでです、バルカン砲の照準装置は機銃モードを選択すると自動的にファネルサイトと言って、丁度、漏斗の形をしたリチクルがヘッドアップデスプレーに表示されます、漏斗であるから上が広くて下に行くほど狭くなっています、この幅に相手の戦闘機の翼端を合わせます、下に行くほど狭いのは遠距離になるほど上を狙うことになるからです、一見狙うのは簡単そうに思えるかも知れないが相手も高速でGをかけながら回避運動をしているので射撃のチャンスはほんの一瞬しかないのです、
このファネルサイトはコンピューターで常時演算しているので横旋回すると、ファネルサイトも横にねじれて表示されます、その中に敵機をッサイテングして引き金を引くのは、ほんのわずかな瞬間でしかありません、丁度クレー射撃のトラップで、一瞬を狙って引き金を引くのと同じ事です、バルカン砲は1分間に4000発、別のモードでは6000発の射撃が出来ますが、戦闘機に6000発の装弾を搭載しているわけではありません、そんなに搭載したら弾の重さだけで何トンにもなってしまいます、通常は500発程度しか搭載できません、従って実際の射撃では1~2秒しか撃たないのです、何故短い時間にこんなにたくさんの弾を発射するかと言うと、勿論命中率を高めるためと、もう一つ破砕の相乗効果を高める為です、機体に1発の弾が当たった場合、機体は貫通するだけだが、最初の着弾と至近距離に2発目が命中すると機体が破砕されるからでです、その為のバルカン砲であるから、あまり命中精度を高めることは意味のないことなのです。
さてそのバルカン砲砲弾、自衛隊では飛翔距離が伸びたのは跳弾だったからとの説明をしているようですが、馬鹿を言っちゃいけないと言うのが私の感想です、自衛隊にすれば兆弾だから威力は有りません、と言いたいところだろうがこんなセコイ誤魔化しはかえってしない方がいい、嘘がばれたら今度は事実を説明しても信じてもらえなくなる、いまや情報公開の時代である、何でも正直に説明した方がいい。

しかし、跳弾、飛翔距離の事に対してテレビは勿論、航空評論家、軍事評論家、いずれもこうした当たり前の事を全く説明していないのでこのコラムで説明します。 

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