ライフル銃入門講座 - 銃について

2003年 2月 1日 築地

この所、散弾銃関係のコラムが多かったですが、私の本来の専門はライフルです。

専門がライフルなので、今まではあえて散弾銃関係のコラムを書いていたのですが、この辺りで専門のライフルについて少し書いてみます。
私の所には毎日50通ものメールが送信されてきます。そうした中で比較的質問の多かった事、あるいはライフル銃で誤解されている事等を、頭の中で反芻しながら書いてみたいと思います。

当社のHPへのアクセスポイントは勿論日本が一番多いのですが、最近気になる事にほんの僅かですが、米軍がアクセスしています、警察関係や、行政関係者がアクセスすると言うのならまだ理解できるのですが、しかしこれらの人たちは通常の閲覧者達の中に埋没しているので誰がお役人か全然判別が出来ません。
しかし、米軍だけはアクセスポイントが違うので明瞭に判別できるのです。米軍が閲覧していると言うと、ライフルの事もいい加減な事は書けませんが、それでも兵隊さんよりも私の方がライフルについては詳しいと自負していますので、気にしないでこのままコラムに突入します。では突撃・・・・・・・

ライフルが始めてと言う方からは時々、こちらが絶句するような質問をされる事があります。 "やっぱりライフルは試射はしたほうが良いですかね?" なんて聞かれることがあります。
確かに散弾銃の感覚で言えば、散弾銃は試射をしないでいきなり使ってもそこそこ当たる物ですからそう思われるでしょう、しかしながら、これは私の想像を遙かに超える質問です。ライフル屋の常識としてどんなに照準調整をしてあっても、ライフル射撃競技では必ず試射をするのは当然ですし、ライフル射撃でいきなり本番の射撃は絶対考えられません、それ位ライフルの初弾と言うのは微妙な物なのです、しかしながらハンテングの場合、試射なんて出来るわけもありませんので、
実際にはそのまま使うしかありません。しかし微妙に狙点は違うものなのです、射撃場で照準調整をした後でも、気圧が違うと着弾が違いますし、気温が違うと空気の密度が変化するので着弾が変わります、当然使用する弾が変われば着弾は当然変化します。
上向きや下向きに狙う場合でも、水平に撃ったときとは明確に着弾に変化が出ます。
確かに散弾銃の場合は、弾によって着弾が変化すると言うことはありませんし、散弾銃の場合、狙い上げ狙い下げ、水平でも着弾を気にする人は居ないでしょう、その感覚から言えば、 "やっぱりライフルの場合は試射はしたほうが良いですかね?"と言う質問は異常な問いかけではないことが解ります。ですから、ライフル銃の場合は必ず試射をして弾着を確かめる、これはライフルを使う上で絶対的な条件なのです。
なんか当たり前の事書いてますね~

あまりにも当たり前の事を書きましたので、今度はもう少しステップアップします。
ライフル銃の照準調整をする道具として、ボアーサイターがあります。

ボアーサイター
ボアーサイター
ボアーサイター本体
ボアーサイター本体

これは銃口にアーバーと呼ばれる棒を差し込んで、銃身の軸線とライフルスコープの軸線を合わせる道具です。
ボアーサイターのアーバーの部分と、本体の中にある光学的な軸線は一致していると考えてください、そのためボアーサイターを差し込んで、取り付けたスコープを覗くと、ボアーサイターの格子模様が見えます、その格子模様の1目盛りが、100ヤードで1インチ、つまり2.5cmのずれを意味しています。
少なくない人が、このボアーサイターの基準は絶対的な物であり、これこそが正照準の基本であると勘違いしているのです。
これはあくまでも "簡易" 照準装置なのです。
従ってこれで照準調整しても、せいぜい100mで標的の黒丸内には入るでしょうが、それ以上の精度は望めないのです。時折、射撃場で照準調整して帰って、ボアーサイターで見たら狂っていたので再度ボアーサイターに合わせて照準調整した方が良いですかと、聞かれることがあります。
私は、"とんでもない"と言って即座に否定しますが、射撃場で照準調整した状態が間違いなく照準調整が完璧に出来ている状態なのです。ボアーサイターを付けると狂っていると言う事は、逆にボアーサイターが狂って居ると言うことなのです。
逆にその狂った状態で、何目盛り狂っているかちゃんと把握しておけば常にその目盛りに合わすことにより正常な位置を確認することが出居ます。
この目盛りは個々の銃により微妙に違いますのでそれぞれの銃の正常値は目盛りの何処の位置、また別の銃の正常値は目盛りの何処の位置と把握しておくのが正しい使い方です。
ライフル銃と言うのは使用する装弾を替えただけで着弾位置が変わります、また火薬の量でも、弾頭の重さでも、また弾頭形状でも、そして外的要因として、外気温度、気圧でも変化します、また射撃の方法でも変化します。依託射撃なのか、同じ委託でも先台を保持するホールデングなのか、伏撃ちか立ち撃ちか、そうした事でも微妙に変化するのです。
ですから、射撃の条件でもボアーサイターの位置は変化するのが当然なのです。

もし1丁の銃しか使わないのであれば、このHPをご覧の方だけに裏技調整方法を伝授します。射撃条件が同じであると言うのが前提なのですが、射撃場で完璧に照準調整をします、完全に出来た状態でボアーサイターを装着します。

これからが裏技です、ボアーサイターの後ろの部分がネジになっており、これが取り外せます、そうすると透明のグラスが出てきます、よく見るとガラスの中心に格子柄模様の微細な升目が印刷されているのが視認できるはずです、これがボーサイターの格子柄の本体です、さてそのガラスの外周に、上下左右に微細なネジがあるのがお解りいただけますか、これがボアーサイター側の調整ネジです。そうです、ボアーサイター自体も組み立ての段階で調整して出されているのです、但しこの調整は特定の銃に合わせた物ではないため、相当大まかな調整しか出来ないのです。

ボアーサイター
裏蓋取り外し
ボアーサイター本体
ガラス格子模様
ボアーサイター本体
ガラス格子模様

ですから、今度はご自分の銃に合わせて特別調整すればいいのです、正照準が出来ているのであれば、現在調整されたスコープこそが唯一の基準ですから、ボアーサイターの中心がスコープの中心に来るように、ボアーサイターの上下左右のネジを調整するのです。
完璧に調整が出来たら、また後ろの蓋をねじ込みます。
これで、貴方の特定の銃に完全に調整されたボアーサイターが出来上がりました。
これで、スコープを取り替えたときも、ほとんど正照準に近い精度で合わすことが出来ます。

ボアーサイターの調整は100mで合わせたあります、貴方が射撃場で照準調整した場合も、多くの場合が100mでしょう、また射撃場自体も多くの場合が100m射撃場です。しかしながら私は100に照準調整するのではなく、300mでの照準調整をお奨めします。その理由は100mで照準調整しますと、100mを過ぎると弾頭は落下の一歩で、よほど考えて狙い越しないとなかなか遠距離の場合は命中しません。
内地の猪猟専門なら100m照準調整でかまいませんが、それでも何かの折り向かいの尾根にいる鹿を狙わないとも限りません、そうした場合を想定すると照準調整は300mに合わせておく方が有利だと思います。
参考までに30-06で、弾頭165グレインを使って、初速2800フィートで撃った場合、100m照準と、300m照準の違いを表にしてみました。

照準の違い

青色の線が300m照準の弾道です、赤線が100m照準の弾道です。
弾の命中した所から特定の範囲、つまり細胞を破砕する範囲ですが、これをバイタルゾーンといいます、使用する弾頭、初速、距離に応じてこれは変化しますので、煩雑ですから少し乱暴ですが、着弾の上下25cmをバイタルゾーンと仮定しますと。
300m照準の方がより遠くまでバイタルゾーンが確保できていることがお解りでしょうか、それに300m以内であればほとんど狙い越の必要はありません、僅かに下を撃つだけで命中させる事が出来るはずです。
つまり、ボールを投げる場合、遠くに飛ばすにはほんの僅か上に投げるのと同じ事です。

地元に300m射撃場が無いと言われる方も少なくないと思いますので、これから100mで300m正照準に合わす方法をお教えします。
以下の弾道表をご覧ください。
一番上の枠は銃口から標的までの距離です。
距離の下は300mの弾道表です、300mの所の数字が0になっている事を確認してください、一番下は100mの弾道表です。100mの数字が0になっていることを確認してください。さてこの表の見方ですが、300mで0の数字の行は、100mでの数字は15.75です、つまり100mの標的で、狙点より、15.75cm上に着弾すれば、それはとりもなおさず、300mに正確に照準調整出来ていると言うことです。
つまり、射撃距離に応じて任意の距離で照準調整できることになります。ご参考にしてください。

0m25m50m75m100m125m150m175m200m225m250m275m300m325m350m375m400m
-3.812.467.8512.315.7518.1619.4619.5918.4716.0412.216.890-8.75-18.93-31.19-45.48
-3.81-1.5-0.070.440-1.44-3.91-7.46-12.18-18.06-25.19-33.62-43.41-54.62-67.32-81.59-97.49

ハンテングの場合、必ずしも何時も水平で射撃できるわけではありません。
銃口を上向きにしたり、下向きにしたりして撃つ場合も多々あるはずです。
ではその様な場合、弾着はどう変化するのでしょう。
今までの私の経験では半分以上の人が間違って考えています。正解は上向きに撃っても、下向きに撃っても弾着は必ず上に着弾します、地球の引力を一番大きく受けるのは水平の弾道です。真上と、真下は、銃身軸線に対して、真上と真下に行くわけですから銃身軸線に対しては全然ドロップしません、水平が一番影響が大きいのです、ですから45度の角度で撃った場合、ドロップ量は水平撃ちの半分だけ影響される事になります。
そうなりますと、数字で上げられる人はほとんど居ません。ではどれくらい影響があるのは表で説明します、今回のデーターも30-06を使い、弾頭重量は165gr、初速は2800フィートで演算しました、言うまでもありませんが、上向き、下向きとも弾のドロップ量は同じですからね!

水平射撃と上下撃ち

どうです、黒線の水平に撃ったときの弾道より、赤線の45度上向き、下向きに撃った弾道は狙点よりかなり上を飛翔しているのがお解りいただけましたか。実際の数値でもご確認ください。

0m25m50m75m100m125m150m175m200m225m250m275m300m325m350m375m400m
-3.812.467.8512.315.7518.1619.4619.5918.4716.0412.216.890-8.75-18.93-31.19-45.48
-3.812.568.2613.517.8721.5324.4126.4527.6227.8427.0825.2622.3217.1912.796.05-2.14

言うまでもありませんが上の枠が水平撃ち、下の枠が45度上下撃ちです。
45度傾けて撃った場合、本来ならば命中すべき300mで、22cmも上を弾頭は飛翔していたのです。
"だから外れたんだと" 今頃膝を叩いて納得されても手遅れですが、次回からはヨロシクお願いします。これが散弾銃とライフル銃の大きな違いです。
ライフルには弾道があると言う事をお忘れ無きよう。
弾道学の話が済みましたので、それと関係の深い照準装置について話して見ましょう。
ライフル銃の照準装置は照星照門付きの物がありますが、実はこれが一番難しい照準装置です、この照準装置は照星と照門を極めて正確に合わさないと絶対に的に当たりません。
私は昭和58年からライフル射撃の教習射撃指導員をしています、神奈川県、伊勢原射撃場で実施した教習射撃の時は、警視庁や千葉県警の方も見学に来られていました、当然関東圏では私が最初だったはずです。あるいは日本で初めてのライフル銃の教習射撃だったかも知れません、爾来多くの方に射撃教習をしましたが、教習射撃の銃が照星照門付きなので、最初、この見方をしつこいくらい説明しました。
散弾銃の方は、照星と目標を合わす事は出来ても、照門を合わすことはあまり慣れていないのです。照門をいい加減に合わすと言うことは、クレー射撃で言うところのヘッドアップと同じです、ですから照星照門を合わすことは何よりも大切なことなのです、これらの調整が完璧に出来ないのに、やれベンドが低いだの、ああだこうだと言うのは論外です、ライフル銃の場合、照準さえ合えば "必ず" 当たります!
ですからベンドはどうでも良いのです、もしライフルスコープを取り付けた状態で、散弾銃と同じようなベンドにしたら、ボルトアクションの場合、間違いなくボルトが元台に激突して絶対に抜けません。ボルトが抜ける寸法で銃床を作れば、散弾銃の感覚ではベンドは相当深いはずです。しかしながらベンドの深い銃で照準をすると言うのは相当抵抗があると思いますが、その場合の元台の当て方は、散弾銃でやっていたように頬骨の下に当てるのではなく、もっと下に当てるように心がけてください、不自然さは残るでしょうが所詮は慣れです。

ボルト、銃床
ボルト、銃床

新しくライフル銃を購入される方も、装薬銃10年の経験を要すると言う、我々鉄砲撃ちにとってはとんでもない悪法のおかげで、かなりの方が実際にライフル銃を所持される頃は相応の年齢に達せられて居ますので多くの方が視力が落ちている場合があります、そうした場合は躊躇なくライフルスコープの使用をおすすめします。猪などの近射の場合は、1.5倍~4倍程度の低倍率の物、50m~300m位の射撃の場合は3倍~9倍くらいの倍率をお使いになるようにおすすめします。それ以上の倍率の場合は、射撃用か、300m以上の遠距離射撃用とお考えください。

ライフル銃の命中精度は通常のハンテングライフルで、100mで2cm~3cmくらいとお考えください、当社で販売している銃に関しては全てこの範疇で収まります。
自動銃、ボルトアクションの優劣はありません。
また自動銃だからと言って弾頭の初速が落ちる事もありません、同じようにマズルブレーキを使用しているからと言って、同じように弾頭の初速が落ちる事もありません。
これは、自動銃の場合、弾頭が完全に銃口から離脱してから、火薬ガスの圧力が完全に落ちてからでありませんと、ボルトは解放されません、そうでないとボルトは火薬ガスの圧力で開くことが出来ず銃は壊れてしまいます、自動銃の作動メカニズムは、弾頭が銃身の中程以上に進んだ時点で、火薬ガスがガス穴に導入され、そのガスがピストンを作動させます、ピストンの作動は慣性の法則で、直ぐに作動するわけではなくごく僅かなタイムラグが存在します、そしてピストンが作動して後退を始め、ボルトのロッキングを解放して、なおかつボルトを後退させているときは、弾頭は銃口からとっくに発射された後なのです、ですから自動銃のメカニズムを構成している作動エネルギーは、弾頭を飛翔させるのには使われない、無駄なエネルギーを利用していると考えてください。
同じように、マズルブレーキも、銃口で火薬ガスを抜くので弾頭の初速に影響を与えそうですが、全然無関係です。弾頭が銃口から離脱した後に銃口から吹き出す火薬ガスは、いわば全く無駄なエネルギーです、弾頭は銃腔内ですでに充分加速されており、弾頭が銃口から離脱する寸前に解放されるガスには何の影響も受けません。従ってマズルブレーキは反動を軽減するメリットがある代わりに、音が大きくなると言うマイナス面以外は弾頭のは影響はほとんど及ぼしません。
しかしながらマグナム口径の銃にマズルブレーキを装着した場合は、かなりの音が発生するようです、私自身は耳栓なして体験したことはないの何とも言いようがありませんが、ハンテングの場合は耳栓などはしていませんので、耳栓無しで撃つのは一般的に大変のようです、ですからメリット、デメリットを考えるとどちらが良いとも断定は出来ません。

口径の選択ですが、内地の獲物に関する限りマグナム口径は必要ありません、しかしながら500mを超える遠距離射撃の場合は、マグナム口径でないと弾頭に残存エネルギーが充分ないので命中しても半矢にしてしまう可能性があります。北海道の蝦夷鹿猟では、300mを超す遠距離射撃も多いのでマグナム口径の方が有利なのです。

ショットガンシューターをライフルシューターに矯正するのには、一番大変だったのが"ガク引き"の癖の修正です。
クレー射撃の場合、"潔く引く"と言うのが信条ですから、ためらいがちに引き金を引きますと、クレーがどんどん飛んでいってしまいます。
そのためショットガンシューターの場合、何方もライフル銃を使うとガク引きをされるのですが、ライフルの場合、静止状態からの射撃ですからガク引きしますと、弾が出る前に、簡単に銃口が下を向いてしまいます。標的に横転弾が出るのは、割合こうしたガク引きが原因です。
ガク引きしますと、弾が銃口から離脱する前に銃口が下を向くため、銃口から発射された弾頭はまず地面に向かい、地面でリバウンドして、不規則回転をしながら標的に命中するので横転弾となってしまうのです。
ある老齢な猪猟師の方から質問されたことがあるのですが、ずいぶん猪を転がしましたが、弾頭が全部斜めに当たるのはどうした訳ですかな? なんて聞かれたことがありますが、これなどは怪我の功名で、地面にリバウンドした弾がうまく猪に、それも毎回命中していたという奇跡的な事例でした。これが遠距離の鹿だったら保証付きで外れていたところですね。ライフル銃の場合、クレー射撃みたいにあんなスピードで銃を振ることがないのでどうしてもガキ引きすると簡単に銃口が下を向いてしまうのです。
散弾銃みたいにスピーデイーなスイングをしている限り、慣性の原則で、下に銃口が向くことはありません。ですから、ライフル銃の場合はついついガク引きしてしまいがちです。
次にライフル銃は何故威力が強いか、について説明して見ましょう。
散弾銃が平手で叩くのと同じ程度とすれば、ライフル銃の場合はアイスピックで突き刺すくらいの差があります、散弾銃の口径は18.5ミリです、それと比べてライフル銃の30口径の直径は僅か7.62ミリしかありません。
至近距離では散弾銃も破壊的な威力を示しますが、弾自体が小粒の鉛弾ですから、元々あまり大きな質量がありません、そこへ銃口から離脱した後は猛烈な空気抵抗に押されて、ほんの数秒飛翔しただけでエネルギーは激減します。
散弾銃と比べるとライフル銃は何倍もの火薬が詰められています、散弾の火薬は瞬間的に"パッ"と燃えて弾を撃ち出しますが、ライフルの火薬はロケット火薬のようにゆっくり"ボボボボボ"と燃えて行くのです、火薬が燃焼している間は、常に弾頭を押し続けるわけで、弾頭が銃口から離脱する時のスピードは、散弾の1400フィートと比べて、ライフルの30-06、弾頭180グレイン装弾で2800フィートになります。
同じ180グレイン弾頭を使っても、マグナム口径になるとさらにスピードを増して、3200フィートにもなります。このスピードと弾頭の質量こそがライフル銃の威力の源泉なのです。30年くらい前に発刊された写真雑誌"瞬間"を見ますと、ライフル弾頭がアルミ板を貫通した写真があるのですが、その破片の衝撃波の角度を見ますと、ライフルの弾頭よりもさらに速い速度で飛んでいます、つまりライフル弾頭は質量が大きいですので、質量の軽いアルミはさらに速い速度で飛翔しないと、物理学の理屈がつかない事になります。と、言うことはライフルの弾頭が、人間や獲物の細胞に命中した場合、当然同じ事が起こっていると考えるべきです、弾頭が命中したところは僅か7.62ミリですが、その命中した部分を基点に円錐状に細胞が破壊され続けることになります。
それは鉛で構成された180グレインの弾頭の質量と生物の細胞の質量とでは全然違いますから、質量の軽い方は弾頭が命中した時のスピードよりさらに速い速度で隣の細胞を破壊していることになります。弾頭が鉛だけなら鉛自体が粉砕され、瞬時にエネルギーの拡散は停止しますが、ライフルの弾頭は周りを銅のジャケットで覆われていますから鉛は分散することなく、どんどん突き進んで行くことになります。
その破砕効果をさらに効果的に上げるために、ライフル弾頭の先端は適当な大きさにつぶれ、自らの直径を大きくしてさらに進みます。このつぶれ方が大きすぎると瞬時にエネルギーが分散されるので、せいぜい直径の倍程度の大きさしかならないとうに、工夫されています、その工夫は鉛の種類を先端は柔らかく、後端は堅くしてあるとか、弾頭の中心は銅でつながって、それ以上開かない様に出来ているとか、各弾頭メーカーで色々な工夫がなされています。
数年前、捕鯨船団用に鯨のとどめを差すために、375口径のバーンズのソリッド弾頭を大量に納めたことがあります、ソリッド弾頭とは、弾頭が開かないように弾頭全体が銅あるいは銅の合金のムクで出来ている弾頭です。そうでないと通常の弾頭を使ったのでは、弾頭が広がり鯨の脂肪層のところで弾頭が止まってしまい、さらに余計に鯨に大きな苦痛を与えることになります。
捕鯨の映像を見ますと、100%鯨は死んでいる画面しか出ませんが、捕鯨砲でしとめた鯨で死に至らしめることの出来るのはたったの25%と言う公には公開をはばかる資料があります。つまり残りの75%の鯨は全部半矢と言うことです。
この事を考えるとグリーンピースが反対する理由も解らないではありません。
文字通り血の海で75%の鯨が半矢でのたうち回っている映像を、家庭の茶の間に放映したら、ご家庭の皆さんは凍り付くでしょうね。
そう言う非道な事をしないためにも出来るだけ速やかにとどめを差す必要があるのです。
鯨の体内から回収した弾頭を見ますと、375口径のソリッド弾頭ですら潰れていましたね、こんな事を書きますと、"似非平和団体"からクレームが来そうですが、驚いたことに捕鯨には大反対のグリーンピースですら鯨から余計な苦痛を取り除くと言うことでバーンズ弾頭の使用には反対をしなかったと言うことらしいです。
そう言う訳で、鯨にとどめを刺せるのは捕鯨砲も駄目で、唯一ライフル銃しかありませんでした。鯨はちゃんと急所に当たれば1発で死に至るそうですが、半矢で暴れている鯨を荒れた船の上から撃つわけですから、平均3発の弾を撃ち込んでとどめを差すという、公には公開をはばかる資料があります(どうも、今回は公に公開をはばかる資料が多いようですが)

まあ、そんな具合でライフル銃の威力と言うのはこれくらい強力なのです。

バーンズ ソリッド
バーンズ ソリッド

次に命中精度について説明して見ましょう。
通常のハンテングライフルではここまでの命中精度は必要ないでしょうが、オリンピック等の射撃競技を考えた場合、命中精度は究極まで求められいます。
空気銃もライフルですから空気銃の命中精度から説明しますが、現在オリンピックで使われる射撃用の空気銃は、ファインベルクバウ、あるいはアンシュツがほとんどを占めていますが、両社の工場を訪問して試射を見せて貰ったとき、10発撃ち込みの標的に全く1個の弾痕しか空きませんでした、1個の穴と言っても見る人の感覚で色々でしょうが、10発撃った標的に、新品の空気銃の弾をそーっと挿入しますと、空気銃弾のスカートの部分で引っかかって落ちないと言う驚異的なレベルです。
空気銃の標的の10点は10mで僅か1ミリです、同じように両社でスモールボアの試射も見ました、言うまでもなく全弾10点に命中します、ただし、どんな弾でも大丈夫と言うわけではなく、当たる弾と当たらない弾が存在するのです、そんなの当たり前だと言われそうですが、同じメーカーの同じモデルの銃で、銃身によって当たる弾と当たらない弾が存在するのです、ですから両社の試射場には常時数種類の弾が使われているのです。
何故そう言う事が起こるかと言う論理は、さらにもう少し上のレベルですから、今回の様に入門講座の場合は割愛します。

さて、私が目下熱中してるライフル射撃は、ベンチレスト射撃競技です。
これこそ究極の命中精度を競う競技ですから、はっきり言って、アンシュッツ等のオリンピック競技銃より当たります、スモールボア競技は50mで行いますが、ベンチレスト射撃は100mと200mで行います。
ベンチレスト射撃の場合、100mでの命中精度と言うと最悪でも5ミリ、通常は3ミリ、最高の時は1ミリのグルーピングを出します。長瀞では300mも撃てますので、300mで5発の弾痕が全部10円硬貨で隠れます。これくらい当たるのです。
100mで数ミリの物体が視認出来るでしょうか?
300mで10円硬貨が視認できるでしょうか?
絶対に見えないはずです! 逆に言いますと、肉眼で視認できる物は精度の良いライフル銃なら100%必ず命中させる事が出来るのです。

獲物を視認出来て外れる! それはライフル銃の性能から言って絶対にあり得ないことです。しかし、私に、猟場でそれを実践して見せろ等とは、間違っても言ってはいけません!

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