ぺラッチ MX8 - 裏側まで、徹底解説

2000年11月 6日 築地

今年のシドニーオリンピックでは、トラップ射撃に関しては圧倒的にペラッチMX8を使用している選手が多かった。日本で圧倒的に使われているミロク、SKBなどはオリンピックでは皆無と言う状況である。昔はオリンピックなどでもブローニングやメルケルなど機関部の重たい物が使われていたのであるが年々影が薄くなってきている。
昔は公式でも32グラム装弾を使っていたが現在は24グラム装弾を使用しているため、当時とすると、射撃時の反動が劇的に軽くなってきているので昔みたいに重たい銃を使う必然性が無くなってきた。反動は軽くなっている事に加え、クレーの飛翔スピードは早くなって来ているので軽い、バランスの良い銃が好まれる様に成ってきたのである、軽いと言えばSKBでも軽いのだが、残念ながらペラッチとSKBとでは銃の完成度が格段に違う。

射撃を仕事にしている人なら安い道具を使うことも必要かも知れないが、趣味で射撃をしている人の場合は銃に対して思いこみと言うか、愛情を感じていないと道具として使う気になれないのが人間の感情と言う物であろう。
上下2連銃はビギナーでも折った瞬間に解る、摺り合わせが根本的に違うからSKBなどは"パコン"と言う感じで折れるが、ペラッチは"シャキッ"と言う感じで折れる。

機関部
機関部
ロッキング部分
ロッキング部分

これは機関部の内部と銃身の摺り合わせ部分を研磨で仕上げないと再現できない感触である、SKBに言わせると"値段が違う"と言うことになると思う、値段の割にSKBは良くできている、ウェザビーブランドのSKB散弾銃はアメリカでは15万円くらいで売られている銃なのでペラッチと比較する方が酷だとは思う、15万円でアメリカで販売するには国内の工場出し値は7万円位と言うことになる。工場出し値が7万円なら国内でも適正な利益を取ったとしてもアメリカと同じ15万円程度で売れるはずなのであるが、まだまだ高値での流通が継続しているようである。
さて、話が飛んだが、摺り合わせが良くできていると言うことは使用中に摩耗することが少ないと言うことが出来る、何故なら接触している部分が接触面全面で当たっていると摩耗する事が少ないからである、摺り合わせが良くできていないと一部分だけで接触していることになり、結果的に摩耗が早くなる、それだけ耐久性が無いことになる。
ペラッチと同じクラスの銃であるベレッタと比較しても、ペラッチの方に耐久性がある、MX8とそれよりもっと高いSO5と比較しても、ペラッチの方が耐久性がある、それは機関部と銃身の接触部分がペラッチの方が多いのでより耐久性が増すと言うことにつながる。話が少しそれるが、私はペラッチのSCOサイドプレートと、FNのDグレードを使用している、FNの場合、A,B,C,クラスは新品の時は作動部分がかなり堅い、折るときも、戻すときも相応の抵抗がある、新銃の場合当然の事だと思っていた、ところがFNの最高クラス、Dグレードを購入したとき、最初から軽い力で使うことが出来た、最初は中古銃と見まごうほどの軽さだった、しかしながらこれは徹底的に作動部分を研磨した結果である。Dグレードは国内定価480万円であるのでこれくらい手間をかけていないと私としては納得できない値段である、逆に言うと使ってみて初めてその価値が実感できたのである。こうして徹底的に摺り合わせをしてあり最初から作動は非常に軽いのだが、ほとんどと言って良いほど摩耗が無い、A,B,C,クラスだと使い込むに従い作動が軽くなる、Dクラスは最初から軽くそして逆に摩耗は極めて少ないと言うことである。
これが高級銃の違いである。

機関部を真上から写した写真を御覧頂けるとお解り頂けるがトップレバーが中心に無いことがお解り頂けるだろうか、良く問い合わせで聞かれるのだがトップレバーが中心に戻らないのですがと言うことがある、これは新品の内はみんなそうなのである、数万発の弾を使うとだんだんかみ合いがうまくなじんで最終的にトップレバーが中心に来るようなる。
新品の内はみんなトップレバーが中心にないのが正常である。

トップレバー
トップレバー

ペラッチの偉いところは、基本的な構造はMX8でも最高級のエキストラでもほとんど違いがないことである、勿論外見、および内部の研磨は全然違うが、肝心な摺り合わせはほとんど大差がないと言うことである。ごくごく細かい点でのフィーリングの違いは認めるがメカ的な違いは少ない、そういう意味ではMX8は完成度の高いお買い得な逸品である。

ペラッチが他の銃と決定的に違うのは銃床を注文で作ってくれると言うことである。
日本では悪しき風習として商社が物流に介在しているため輸入物価が外国とすると法外な値段でにされてきた、これは何も日商岩井だけの事を指しているわけではなく、三井も、三菱も、住友も同罪である、日本の物価を高止まりさせた大きな原因は商社にあると言ったら言い過ぎだろうか! 
(商社マンの中で反論があったら、どうぞ自社のホームページにしつかり書いてください)
話が脱線したが商社が暴利を得るためにペラッチの銃床は日本人向けに作られていると言う宣伝文句で高い銃を売りつけてきた、日本の射手も、幼いというか、無知というか、あるいは純朴というか、その商社の宣伝文句をコロリと信じてしまうので簡単に懐に付け入られてしまう、ペラッチでは特別注文の銃床も、既製の銃床も全く同じ値段なのである、当社ではMX8を¥690000と言う、涙物の値段で販売しているが特別注文の銃床も同じ値段である。特注品は3ヶ月の納期で注文を受けます。
当社ではトラップ銃に関してはプル365、グリップと引き金の距離は70位で作らせています、スキートはプル360、グリップは75位で作らせています、この辺りが、多くのシューターに好まれる寸法のようで、私は間違っても日本人向けと言う言い方はしませんが、一部の銃砲店みたいにファーイーストの銃は外人向けの大きい銃床だという悪質なデマは全くの的はずれですので誤解のない様にお願いします。

デタッチャブルトリッガーについて。
サイドロックの銃が何故高いかお解りだろうか? 勿論工作が複雑なことは当たり前だが何故わざわざ複雑なサイドロックを作るかと言うことである。実はサイドロックの場合、撃発機構がサイドプレートに組み込まれているのでサイドプレートを外すと撃針スプリング、撃針が簡単に交換できると言うことである、逆に言うと昔の銃は簡単にスプリングや撃針が折れたのである、それは昔は雷管の性能が良くないため今の銃よりさらに強い力で叩かないと激発しなかったのである、それともう一つスプリングや、撃針の熱処理が完璧に出来なかったことも最大の要因である。現在の焼き入れは真空状状態で焼き入れしたり、ガスの中で焼き入れしたり、また完璧な温度管理がなされている、そのためバネが折れるという劇的に少なくなってきたのである、バネが折れなければサイドロックにする必要はない、むしろサイドロックはスプリングも撃針も片側の支えなので構造学的に言ったら決して良い構造ではない。

デタッチャブルトリッガー
デタッチャブルトリッガー

前書きが長くなったが、デタッチャブルトリッガーはボックスロックの銃で、スプリング交換を容易に出来る新しい機構なのである、代理店扱いのペラッチは予備のスペアートリッガーを付属で取り付けているが、全くの無駄なことである、単に値段を高くするための手段でしかない(キッパリ)

外国で売られているペラッチで予備引き金の付いている銃は一丁もない、何故なら全てのMX8には予備のスプリング、予備の撃針がそれぞれ1セットずつ付いているのでもし折れても射撃場で簡単に交換できる、もしスプリングが折れたのなら、引き金を外してスプリングを取り替えれば良いことなので引き金を交換する必然性は全くない、むしろ引き金を交換すると引き味が変わるではないか、オリンピックに出るようなトップクラスの射手がそんな無謀な事をするわけがない。

当社では年間かなりのペラッチを販売しているが、撃針折れのため、予備の撃針スプリングの販売をするのは年間2~3本である、つまりほとんど銃はスプリング折れが起きていないと言うことになる、しかも当社からスプリングを販売しているお客の半分は、当社以外でペラッチを買われた方である。先程述べたがスプリングの熱処理は最近になって格段に改善された技術なので残念ながら10年くらい前のペラッチはいまのペラッチより撃針、およびスプリングの耐久性はいくらか劣る。

予備スプリング
予備スプリング

ペラッチはスプリングが折れやすいと言う人は間違いなく10年前の銃を使っている人達である。
これからしてもスペアーの引き金を持つ意味は全くない、どうしても引き金が欲しいと言われる方は別売で20万円で販売している、当社はMX8を69万円で販売しているが、時折"スペアーの引き金の付いていますか"と聞かれることがある、そういう場合は返事もせずにこちらから黙って電話を切ることにしている、その行為をして私が常識無しと言われる前に、そういう無謀な事を聞く方が常識無しと私は考えているのでご無礼をお許し願いたい。

引き金
引き金

ペラッチの引き金は通常は松葉バネを使っているが、MX8Bと言うモデルはコイルスプリングを使っている、耐久性としてはコイルスプリングの方が優れているが、しかし引いた感じは松葉バネの方が、切れ味が良さそうに感じられるかも知れないが、本当の事を言うとどちらも大差がない。松葉バネの方が"パチン"と言う音が強いのでそう感じるだけである、引き金を引いてからハンマーが撃針を叩くまでの、いわゆるロックタイムはいずれの3/1000秒前後である。
さらにロックタイムを早くすると誤差が出やすくなる、ロックタイムを遅くするとロックタイムが安定すると側面がある、ではロックタイムが早いほうが良いのか、ロックタイムが安定している方が良いのかその事について説明してみよう。
世の中のシューターがかなり勘違いしていることにこのロックタイムの優劣がある、松葉バネの方がロックタイムが早いので射撃に有利であるとか無いとか、色々噂をしているのを耳にすることがあるが、いずれも無駄な会話である、ロックタイムを早くするのはほとんど命中率とは関係のないことなのである、何故かというと人間が目でクレーを視認して頭で認識し、指に引き金を引けと神経を介して指令を与えて指が反応するまで3/100秒かかる、ロックタイムの時間の10倍である、これはどんなに訓練しても早くなると言うことはない、従ってロックタイムを早くしても神経の伝達スピードが早くならない以上なんの意味も無いことがお解り頂けるだろうか。最近レミントンからライフル用の電気雷管が発売になったので、これがいかにもロックタイムが早いとメリトがあると勘違いされる原因になった様であるが、ライフルの電気雷管は激発時の振動を無くすために作られた物である、レミントンのカタログにはこれによりロックタイムが無くなると書いてあるがロックタイムが0秒になっても命中精度から言うとなんに効果もない。ロックタイムに関しては昔、国体で使う光線銃の開発に関わったとき、電気回路の設計者であった菊池さんがロックタイムを0にした光線銃を作られて何人かの現役の射手に撃たせたところ、成績がかえって悪くなったと言われていた、これは射手は知らず知らずの内に、ロックタイムを自然に計算して、銃が動いていてもここで引き金を引けば、10点にあったところで弾が出ると言うことを、人間は自然と"予知"しているのである、つまり銃が3時方向から中心に向かって真横に動いているときには、10点に照準が合う前に9点の所で引き金を引いているのである、そうすれば銃口はそのまま動き、10点の所で弾が出ると言うことになる、従ってロックタイムを0にするとその"予知"能力が働かず、銃が動いて10点に合う前に引き金を引いてしまうのだそうである。この様にロックタイムが早いという事は全く意味のないことである。
ちなみに私の使っているFNのDグレードはロックタイムは遅いほうである、しかしコイルスプリングを使っているため安定性があり、スプリング折れも起きにくい。
そんな訳でロックタイムが0になっても、下手が直るわけではないのである、残念ながら!

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