ベレッタ S682ゴールド ベレッタ S682ゴールドE - 裏側まで、徹底解説

2000年11月 8日 築地

今回のレポートは趣向を変えて2丁の銃を比較しながらレポートしてみよう、レポートする銃はベレッタS682ゴールド、と新製品のゴールドEである、いずれもトラップ用の銃を用意した。
新製品というと多くの人は、新技術が取り入れられた新製品だろうと考えるだろうが、銃器の場合は技術的にはすでに完成され尽くしているので、残念ながら新技術と言う物は存在しないのである。銃器の場合は車のエンジンみたいに進化を続けている物ではないのである。それでも新製品を出さざるを得ないところにメーカーの苦悩があるのである。
今回は新製品が必ずしも優れているわけではないことを織り交ぜながら色々説明をしてみたい。

新旧の比較をする前に、ベレッタS682の説明をしてみたい。
ベレッタには色々なモデルの上下2連銃がある、多くの人はどれを選んで良いか迷うところだろうが、オリンピックに使われる銃はS682か、ASE90である、これから新製品のDT10も使われてくるだろうが、今までは上記の2種類が大半である、あえて言うならほんのわずかSO5を使っている選手もいる。
何故これらが使われて、他のモデルが使われないかと言うと、S682か、ASE90(DT-10)以外の銃は全て割高な銃であるからである、687ELとか、687EELLとかの銃は不当に高い銃であると私は考える、これらの銃は基本的な構造は687と同じであるのに、サイドプレート仕様にしていかにも高そうに装っていたり、手彫りの彫刻風の彫り物をして値段を高くしたりしている、彫刻も素人目には手彫りに見えるだろうが、複雑なところは機械のスタッンプである、"ガチャン" はい、出来上がりと言うわけである。
但し、全部機械スタンプと言う訳ではなく、周りの唐草は手彫りなので素人目には全部手彫りに見えてしまう、しかしながら値段は全部手彫りの値段と同じである、従ってベレッタがお金儲けするために作られた銃であると言うことが出来る。
逆に言うとS682か、ASE90(DT-10)は品質本意の銃と言うことになる。
よってオリンピック選手などはこれらの銃しか購入しないのである、勿論当社もこれらの銃しか販売しないのである。注文されればSO5も販売するが、687ELとか、687EELLとかは最初から取り扱わない。
S682は当社の値段は¥275000、ASE90の値段は¥800000であるから、耐久性で比較すると当然にしてASE90の方が耐久性は大きい、ASE90に付いてはまた別のレポートで取り上げてみるつもりなのでここでは解説はしない。

ロッキングピン
ロッキングピン
銃身ピン穴
銃身ピン穴

S682は耐久性では劣る科に思われるかも知れないが、オリンピック選手が使用している銃なので一般の人がウイークエンドに射撃する分には一生持つ程度の耐久性がある、しかしながら、これからが肝心なことだが、使い方を誤ると耐久性が劇的に低下する、銃の耐久性とはほとんどがロッキング関係関係に現れる、ロッキングがしっかりしているか、そうでないかは、保持している面積で違いが出る、S682の支持している部分は銃身のヒンジ部分と、機関部側にある2本のピンだけである。このピンは機関部が開くのを防止しており力は銃身をしっかりと下に押しつけるために作用している、丸いピンで下に押す場合、力のかかるところは丸棒の一番下端だけであるので、この様に保持している面積は極めて小さいと言わざるを得ない、従ってこのピンが摩耗すると少し大きめのピンに交換して修理することが出来る。

ヒンジ
ヒンジ

ASE90やSO5の場合はクロスボルトと言って横から平板の鋼材を貫通させて銃身のロッキングラグと交差させているので耐久性は格段に向上している。
全てのベレッタがそうだが、銃身のヒンジ部分は非常に弱々しい、ブローニングなどはヒンジには丸棒を貫通させている、最もそのために機関部全体が大きくなる欠点がある。
ペラッチやベレッタは機関部がコンパクトに出来ているためヒンジを銃身の左右の引っかかりで保持している、これだけで激発時に火薬の圧力で機関部と銃身が離れようとする力を押さえ込んでいる。ここにガタが出ると銃身を折ったときに "パコン" と言う感じで軽く簡単に折れるようになる、余りにもガタが大きくなった場合修理することが出来る、この場合ヒンジピンを少しサイズの大きな物に取り替えて対応する。
しかしながらその補修も自ずから限界があることをご理解いただきたい、従って銃を如何に長持ちさせると言うことは、ここに如何によけいな負担をかけないと言うことである、勿論発射した弾数により耐久性が落ちてくることは言うまでもないが、その10倍くらいの早さでヒンジが劣化することがある、それは銃身を折るときに勢いよく折る場合である、銃身を折ると機関部の先端に銃身の下端が当たってそれ以上曲がらないようになるが、その反作用をヒンジの部分で受けているのである、そのため勢いよく曲げるとヒンジに不必要な負担を与えることになる、さらに悪いのは銃身を戻すときである、勢いよく銃身を戻すと銃身の後ろが機関部の包底面で当たるが、その反作用がヒンジに集中する。
実はこの作動を勢いよくやった場合、弾を10発撃ったとき以上の負担をヒンジに与えているのである。以前、ビギナーの人に682を販売して半年も経った頃、調整で銃をお持ちになったことがある、銃も見てみるとすでに5万発撃ったようなガタがある、ビギナーが半年で5万発と言うのも解せない話なので試しに、銃の操作をして貰ったところ、案の定凄い力で銃身を折り、なおかつ戻していた、聞いてみるとまだ1万発も撃っていないとのことである、私は使い方を良く説明して銃を大切に扱うように諭した。
ビギナーの場合、射撃場であまりに当たらないとついつい銃に当たり散らすことになる、外れると銃を殊更乱暴に操作する人もいるが、当たらないのはそうした荒っぽい狙い、粗雑なスイングにより命中率が低いのであるから、もっと丁寧な狙い、そして何よりも丁寧な取り扱いを心がけて貰いたい。682Sは丁寧に使えば10万発以上使える銃である。
さらにガタ直し、オーバーホールをすることにより最終的には30万発は撃てるはずである、30万発と言えばクレー射撃に使った場合、弾代金、クレー代金とで総計2490万円にもなる、それから考えると銃の代金はほんのわずかな出費である。
そこまで使えれば682なら充分元を取ったと言うことが出来るではないか。

682ゴールドと682ゴールドEの違い。
新製品場合、旧モデルと比較すると必ず値段が高くなる、正規代理店の値段はどうか知らないが当社ではどちらも同じ値段で販売している、何故なら仕入れ価格が同じであるからである、仕入れ価格が同じで新製品となると、逆にどこかをコストダウンしていると考えるのが常識である、はてさて何処をコストダウンしたのか素人目にはほとんど解らないはずであるが、私は元々、銃器の販売よりも銃の製造経験の方が長い人間なので、私の目から細かいところを分析していこう。

ゴールドとゴールドE
ゴールドとゴールドE

まず両方が大きく異なるのは機関部の色である、写真では見にくいかも知れないが旧型は機関部の黒色があまりはっきりしていない、くすんだ黒色と言う感じである。
それと比べると新型の方は銀色に輝いている、何となく銀色の方が良さそうに見えるが実はそうではない。旧型の機関部がくすんだ色をしているのは表面が窒化処理されているからである、窒化処理とはガス炉の中で熱処理をすることにより金属の表面に窒化ガスを浸透させ表面を硬化させる技術である、金属表面が硬化すれば当然耐久性が増す、しかし当然コストアップにつながる、コストダウンをするとすればこれらの処理をしなければコストは下がる、新型の銃は間違いなく窒化処理はなされていない。ここでコストダウンをワンポイント稼いでいます、さて銃床に目を移しますが、銃床材質の低下はありません、前の物とほぼ同じランクの銃床を使っています、これは合格!

ではチェッカリングを見てみましょう、新型はちょっと変わったチェッカリングです、表面が魚の鱗見たですね、この魚の鱗みたいなチェッカリングは数百万円するようなダブルライフルには良く取り入れられています、魚の鱗と同じように瓦状に積層しながらハンドメイドでチェッカリング加工するのですが、もの凄い手間がかかり数百万円する銃でないと出来ません、このチェッカリングはそれとは少し違います、鱗が瓦みたいに積層していないからです、鱗状の間に溝が掘ってあるだけです、素人目にはどうやって工作したか解らないかも知れませんが、これはレーザー光線で焼いて作った溝なのです、昔はレーザーが高かったのでレーザー加工してもコストダウンが難しかったのですが、今やレーザーは劇的に安くなっています、これならハンドチェッカリングより安くできることになります。これでコストダウンを2ポイントゲットしました。

ハンドチェッカー
ハンドチェッカー
レーザーチェッカリング
レーザーチェッカリング
旧型先台
旧型先台
新型先台
新型先台

銃身の表面処理を見てみましょう、写真では見にくいかも知れませんが旧型は銃身の表面がつや消しになっています、新型は艶のある、そして黒色も深みのある仕上げになっています、一見すると新型の方が高そうに見えますね、でもそうではありません。
銃身を黒染めするときの作業を説明してみましょう、リヴやサイドリブをハンダで溶着した後は、表面にはみ出したハンダを完全に除去します、除去しないとそこだけ着色出来ないからです、表面が研磨できたら研磨剤を布製のグラインダーにかけて鏡みたいになるまで表面を徹底的に研磨します。

新型の銃はここで黒染め作業にかかります。旧型の場合は、研磨が終わった後、サンドブラスと言う機械を使って、圧縮空気で細かい砂を表面に吹き付けて表面をつや消し状態にします。それから黒染め行程に入ります、つまり旧型の方がサンドブラストの行程が1行程余分にかかっているのです、銃身の表面をサンドブラストするのは照準しているときに銃身からの反射を防ぐためです、ペラッチなどはサンドブラスト加工をしていないので必ずしも必要と言う訳ではありませんが、少なくともコストダウンにはなっています。
これでコストダウン、3ポイントゲットです。

銃身""

どうです、新型というだけで飛びつくとむしろ安物をつかまされる事にもなります、私は最初に新型を見たときに、旧型を相当数確保しました、案の定お客様の中には旧型がありますかとわざわざ指名してくる人も居ました、しかしその在庫品もそろそろ品切れです、20001年には全て新製品に取って替わられることになるでしょう。
そしてまた窒化処理をされた物が新製品として売り出され、今度は少しだけ値上げされると思います、チェッカリングもまたハンドチェッカリングになるかも知れません。

さて引き金に付いても説明をしておきましょう。
外見上は全く違いはありませんがメカ的には大きな違いがあります。
旧型は二の矢のセットは振り子式になっています、つまり初矢を撃った後その反動を受けて引き金内部の振り子が作動して二の矢のセットをします、引き金を戻して引くと二の矢が出ます、このメカニズムを振り子式と言います。
それと比べると新型は引き金を引くと最初に初矢、弾の出る出ないに関わらず引き金を戻してまた引くと二の矢が出ます。

アジャスタブルトリッガー
アジャスタブルトリッガー

ペラッチなどは振り子式、ブローニングなどはメカ式です、(ミロクはメカ式)どちらが良いとは断言できませんがそれぞれの特徴を説明しておきます。
振り子式の場合、初矢が出ないと二の矢が撃てないと言うことは同発が起きないと言うことです、その代わり初矢が不発だと二の矢を撃つことが出来ません。
メカ式は初矢が不発でも二の矢を撃つ事が出来ます、しかし引き金を極限まで軽くすると同発が出るようになります。
コスト的に考えても、メカ的に考えてもどちらに優劣があるとは言えません。

さてベレッタ682ゴールドは新旧のモデルとも、ガンケースは付属で、予備のトリッガーシェアー、予備の照星が付属で付いている。引き金は前後の位置へアジャスト調整が出来るように出来ているので、¥275000ならお買い得値段だと思うが皆さんの評価は如何に!

新型の銃はアジャスタブル銃床の写真を掲載してあります、アジャスタブル銃床付の銃床は¥310000です。

アジャスタブル銃床
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