ブローニング BPR - 裏側まで、徹底解説

2000年11月23日 築地

BPRとは、ブローニング、ポンプ、ライフルの事である。

スライドアクションは別名ポンプアクションとも言う。ポンプアクション、ライフルと言うと、レミントン7600の独占市場だったのだが、ここにブローニングが参入したのである。元々ポンプアクションと言うのはあまり売れてはいない。自動銃100に対して、ポンプアクションの売れ行きは5~3丁と言うところであろうか。散弾銃でもそうだがライフル銃の場合でもポンプアクションは回転不良が少ないというのが最大の利点であろう。

自動銃は火薬の発射ガスを利用して回転しているので、火薬圧力の強い弾、弱い弾、つまり重たい弾頭、軽い弾頭で使用条件が大きく異なる、そのため使用装弾によっては回転不良が起きることは避けられないことなのである、しかしながら特定の弾頭の重さを特定したその装弾で回転することが確認できれば、その装弾を使う限りに置いてはあまり心配はない。しかし羆猟をするとなると自動銃を使用するのはやはり躊躇するのでは無いだろうか、少なくとも私なら猛獣を獲るのに自動銃は使わない。
話は逸れるが、先週ハンターとして名を知られた柳田佳久さんからご招待を受けた、奥さんの誕生日で私も同席させて頂いた、柳田さんは国内では70頭近くの熊と、180頭近くの鹿、それに外国ではライオン、象、サイ、ピューマ、ケープバッファロー、北極熊、等々の獲物を仕留められたハンターであるが、柳田さんの場合、猛獣を獲る場合使用銃はほとんどがウエザビーボルトアクションである、間違っても自動銃を使うことはあり得ない。(最も柳田さんも猟を始められて昭和30年頃は銃の種類も無かったのでレミントン742の自動銃で猟をされていた時期もあるが)。

すでに亡くなられた方なのだが、釧路では佐藤修さんと言うハンターがおられた、この方大藪春彦さんの親友で、私は大藪さんの紹介でお知り合いになったのである。佐藤修さんはレミントンのポンプアクションしか使われなかった、最も猟をされるのはいつも蝦夷鹿なので羆みたいに獲物に反撃される事がないのでポンプアクションの方が使い勝手が良かったのだと思う。
佐藤さんは亡くなられるまで生涯レミントンのポンプしか使われることがなかった、そのためこの1丁の銃を徹底的に使われて私が何度か再仕上げして新品同様に直したことがある。佐藤さんは徹底して忍びの単独猟をやっておられた、ポンプアクションを使われたのは自動銃だとボルトを戻したときに大きな音がして鹿が逃げてしまうからだと言われていた。忍びは絶対に音を立てないと言うのが大原則であるからである、これは柳田さんも同じ事を言われている。柳田さんはボルトアクションライフルを使われているがボルトの操作はソーット、音を立てないように操作されるそうである。
音を立てないで作動させるとなると、ボルトアクションライフルか、ポンプ式と言う選択になる、その中で素早く第2弾を撃てる銃となると、これはもうポンプ式しか無い。

そういう風に考えると忍の鹿猟となるとポンプ式しか選択の余地がないでは無いか、佐藤修さんはレミントンしか使われなかったが、それは佐藤さんの存命中はブローニングがまだポンプ銃の製造をしていなかったからである、もし佐藤さんが生きておられたら私はこの銃を使われるようにお勧めしたはずである。

全体図
全体図

何故これをお勧めするとかと言うと、絶対にレミントンよりは使い易いからである。
ブローニングの最大の利点は先台の移動距離の問題である、レミントンより大幅に先台が手前に移動する、つまり先台の持つ位置がレミントンみたいに先を持つ必要がないのである。これはレミントンみたいに真っ直ぐに後退するのではなく、ブローニングのメカニズムは真っ直ぐに後退した後、機関部を避けるようにして機関部の下に潜り込んで後退するかなり変則的な作動をするからである。また先台を作動させるための力も、ブローニングの方が軽い力で作動させることが出来る。外見を見るとお解り頂けると思うが、ほとんど自動銃と同じ格好である。

先台前進
先台前進
先台後進
先台後進

機関部も自動銃の軽量と同じで、素材はアルミ軽合金を使用しているのでレミントンなどよりは軽くできている。
自動銃もそうだが、ポンプ式も、マグナムカートリッジを使えるのはブローニングだけである、レミントのポンプ式は308,30-06だけで7ミリマグナム、300マグナムは使えない、使えるのはブローニングだけである。

BPRは照星照門が標準で付いているが、勿論スコープを使うことが出来る、そのためのマウントベースを止めるネジは最初から機関部に鉄製のブッシングをはめ込んで取りつけられている。

照門
照門

ボルトの外径は白いメッキをされた鉄板で覆われておりボルトは作動時以外露出していない、ボルトの先端は2個のロッキングが3カ所にあり、合計6個のロッキング、ラグで銃身後端にロックされている、先台を動かすと、ボルトが回転をはじめ、5度回転した時点で不用意に激発しないように撃針をロックする。60度回転したところでロッキングが解除される。解除されたボルトはそのまま後退し薬室内の薬莢を排出する。ボルトが完全に後退すると先台を前に押し出す。ボルトも連動して前に前進する。ボルトの先端は弾倉の装弾をキャッチしそれを押しながら薬室に装填させる。装弾が薬室に装填されたらボルトは60度回転してロックして止まる。この時点で初めて撃針のロックが外れ何時でも激発できる状態になる。これがポンプ式の発射一連のメカニズムである。

機関部
機関部

ブローニングは自動銃もそうだがこのポンプ式も予備弾倉の交換が面倒である、しかしながら実猟で予備弾倉を交換してやっと獲物を仕留めると言うことはあっては成らないことである、薬室に1発弾倉に4発、合計5発の弾が装填できているのであるからこれらの弾を全て撃ち尽くしても獲物に命中させられないときは獲物の勝ちというべきであろう。
もっとストレートに言うならば射手が下手糞と言うことに他ならない。

従ってブローニングの予備弾倉の装填が煩雑だと言う理屈はマイナス要因とは考えられない。ブローニング弾倉への装填方法を説明してみよう、マガジンキャッチを開いて弾倉を解放する、弾倉をヒンジに付けたまま弾を装填する、弾倉への装填が完了したらヒンジを閉鎖して装填完了である。案外慣れると簡単な作業である。

マガジンキャッチ
マガジンキャッチ
マガジン取り外し
マガジン取り外し
装填
装填

トリッガーガードの周囲は手前に安全装置が設置されている、トリッガーの前には スライドリリースと呼ばれるレバーがある、これはスライドを作動し引き金をロックさせた場合は引きを引いてハンマーを落とさないとスライドが引けないが、引き金をロックした状態でスライドを作動させるためにはこのレバーを押せばスライドが作動する、つまり装弾を薬室に入れた状態の場合引き金を引かないと排莢出来ないが、このレバーを引くと装弾は薬室から排莢出来ると言うことを意味している。

安全装置
安全装置
スライドリリース
スライドリリース

今まで説明したことがないが今回は照星照門の調整方法を説明してみよう。
初旬調整は全て照門で行う、標的の弾痕が下にあった場合、弾痕を上にやりたいわけであるから上下調整ネジを "UP"(アップ)の方向に回す、回す加減は1目盛りで100ヤード1/4インチ移動することになる。メートル法で言うと、約100メートルで、約0.6cm移動する事になる、6cm移動させたいときは10目盛り動かせば良いと言うことになる、左右の調整は弾痕が9時方向に飛んだ場合は、3時方向、つまり右に移動させれば良いわけだから、"R"の方向に回す、これも1目盛りで100ヤード1/4インチ移動することになる。メートル法で言うと、約100メートルで、約0.6cm移動する事になる、ブローニングはこの様に微調整出来るが、レミントンの場合微調整は出来ない。

さてここまで書くとポンプアクションには何の欠点もないように思われようが、これからポンプ式の最大の欠点というか、致命的な欠点をお話する、散弾銃の場合ほとんど問題視されないのだがそれは散弾の薬莢は撃ち終わった後は銃を逆さまにすると自重で落ちてくる、しかしながら、ライフル装弾の場合発射ガスの逆流を防ぐため薬莢が広がり薬室と薬莢の間をシールする、そのため弾を撃った後でも薬莢は自重で落下する様にクリアランスは無いのである、場合によっては薬莢が薬室に張り付いているときがある。ボルトアクションの銃はボルトを持ち上げたとき最後の所で強制的に3ミリ程度後退する、これで薬莢の張り付きを強制的に剥がすことになる、自動銃の場合、これは強制的に排莢するので張り付きがあったとしても薬莢を強制的に掻きだすことになるので問題はない。

ポンプ式の場合、この様に強制的に張り付を剥がすシステムは残念ながら備えていない、従って新品の時はあまり問題がないのだが手入れをしないで使っていると、薬室にカーボンが蓄積して薬莢が張り付いてしまうことがある、こうなると先台を引いたくらいでは簡単に動かすことが出来無い、これがポンプ式の最大の欠点である。
しかしながらポンプ式の場合、最悪の場合は両手で先台を持って"ヨイショ"と引けばまだ何とかなる、最悪なのは同じ原理で作られた直動式ライフルである。これも原理はポンプ式と同じ物である、薬莢が張り付いたら片手しか使えないのでどうにも成らなくなる。
直動式ボルトアクションライフルは100年前にスイスで作られている、それから最終的に製造中止に成ったのだが最近また復活した、しかしながら問題点が解決したわけではないのである、従って当社では、私の良識として今でも直動式ボルトアクションライフルは取り扱わないのである。

このブローニングの価格は¥115000、国内定価は約30万円である、勿論全く同じ銃なのである事は言うまでもない。未だに国内定価の30万円で購入される方も居るが、皆さんなかなか太っ腹な人達である。

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