レミントン700 チタニューム - 裏側まで、徹底解説

2002年 3月 9日 築地

現物を手にして初めて気がついた、それまでショットショー等でさんざん見ていたのにどうしたことなのだろう。ショットショーでは非常に混雑した中で見るので、かなり子細に見たつもりでもやはり見落としが避けられないのだろう。

チタニューム全体図
チタニューム全体図

私はショットショーレポートの中で、レミントンチタニュームのボルトもチタニューム製と書いた記憶があるが、ボルトを持った瞬間 "これはチタンじゃない" と解った!
ショットショーでは、展示品は機関部にボルトを装着した状態で展示してあるので、私はボルト全体の色で、ボルトはてっきりチタン製だと思いこんでいた、実を言うとチタンでは耐久性が大丈夫だろうかと言う懸念があったのだが、ボルトの先端が黒染めしてあるのを見て、この部分だけはクロームモリブデン鋼材を使っているなと勝手に判断していたのである。そうなるとボルトのメインフレームはチタン製だと勝手に思いこんでしまう。
特に、黒くなっている部分はボルト全体の中では別部品なので特に先端以外はチタンだと勝手に思いこんでしまった。
レミントンから当社に送られてきた銃は、箱の中では、ボルトは機関部から取り外してあるので、ボルトを持った瞬間、チタンではなく、クロームモリブデン鋼材で作られていることは瞬間的に判断できた。
念のために磁石をつけると、"バチン"と磁石が張り付く、間違いなくクロームモリブデン鋼材ではないか。ボルト本体を顕微鏡で子細に観察すると、旋盤加工した後200番程度のサンドブラスト加工をして表面を梨地に仕上げ、見た目チタンと同じような色になるように仕上げてある。私はすっかりこのチタン色に騙されてしまった。

ボルトはクロームモリブデン鋼材で出来てはいるが、それなりに軽量化の試みは色々なされており、ボルトハンドルのくり抜き、余分な部分の肉抜き、ボルトボデーのスリット、そうした試みはなされている。
レミントンのボルトはボルトボデーに先端のラグの部分、そしてボルトハンドルの部分が銀蝋付けで取り付けられている、つまり本来はそれぞれが別部品なのである。

ボルトの肉抜き
ボルトの肉抜き

私はチタンの蝋付けをしたことがないので定かではないが、チタンの場合、案外蝋付けがうまくいかない可能性がある、それもボルトボデーにチタンを使えない理由なのかもしれない。
要するに、チタニュームで出来ている部分は機関部だけである。チタニュームは私自身加工した経験があるので解るのだが、以外と割れやすい材料である、少なくともクロームモリブデンと比較すると粘りが無い、そのためだろうか機関部の刻印はエッチングでマーキングしてある。

もし機関部に銃身と同じように刻印を使い、深い打痕を打つとチタニュームの場合、割れてしまう恐れがある、以外とチタニュームは脆い材料なのである。
機関部の表面を顕微鏡で調べると、機械加工した痕に苦労の後が視認できる、それは加工表面の仕上がりが均一でないからである、これは加工時にバイト(刃物)で切り取った切り子がきれいに排出されたのではなく、バイトにくっつきながら削った事を物語っている。バイトに切りかすが付くと、その部分は深く削れ、切りかすが取れると本来の寸法に仕上がる、加工表面を見るとそれらが断続的に発生して加工されたことが解る。

機関部接写
機関部接写

軍用品ならともかく、民間用だと表面仕上げが悪いとクレームになるので、表面仕上げの荒を隠すために、加工後の表面にサンドブラスト仕上げをして、加工痕を誤魔化しているに過ぎないのである。
弾倉も軽量化のために固定式にされている。そのためか、ボルトを取り外した状態での重量は驚異的な軽さである。ボルト無しではなんと2.2キロである。片手で持てる軽さである。ボルトを入れると2.5キロである。

弾倉のタイプ
弾倉のタイプ

銃床は軽量化のために、プラスチックだけで作られている、こうしたプラスチック製銃床の場合は、内部にダイキャスト製のインナーを入れるのが普通だが、これも軽量化のために入れ込んでいない、但し機関部を止めるねじの部分にアルミのパイプを挿入してある、こうしないと銃床材料のプラスチックスがスカスカなので、ねじを締めればいくらでもねじが埋没してしまうからである。

銃床挿入されたパイプ
銃床挿入されたパイプ

銃身は基本的にフローテングされており、銃床の先端だけが銃身に接触している。
銃身の長さは22インチ、あと2インチ切りつめて20インチにすることも可能である、銃身を20インチにしても命中精度には何の影響もない。

銃床の先端部分
銃床の先端部分

銃身は長い方が命中精度は良いと考えがちであるが、究極の命中精度を競うベンチレスト射撃の場合などほとんどの銃は20インチの長さで作られている、あくまでもベンチレストライフルの場合であるが、この長さの銃身で100メートルでの命中精度は1ミリ~3ミリ程度の精度が出せる。
従って銃身が長いから命中精度が良いと考えるのは誤りである。20インチあれば少なくとも命中精度の観点から言えば十分な長さである。
銃身材料は416ステンレスである、日本には存在しない材料である。この材料の特性をもっと解りやすく言うと、通常のステンレスと、鉄の中間みたい無い特性を備えた材料である、従ってステンレスと言う名称ながら磁石は"バチン"と着く。鉄の成分であるクロームを大量に含んでいると言うことである、従ってステンレスでありながら、保管状況如何によっては"錆びる"事もあり得るのである。なぜ銃身材料には完璧なステンレスを使わないのかと言うと、加工が難しいからである、銃身内径の加工は5/100ミリ以上の公差があると極端に命中精度が悪くなるのである、従って加工性が良い材料を使わないと、肝心要な命中精度が出鱈目になるからである。
レミントン700チタニューム のロングアクションモデルの仕様は以下の通りである。
口径は30-06、270ウインチェスター、全長108.1cm 銃身長56.1cm 重量2.5キロ、そして価格は¥228,000である。

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