メルケル303 - 実鉄砲自慢

2003年 1月22日 築地
更新 2003年 1月28日 築地
更新 2003年 1月31日 築地

私は、人に自慢できるような物は何一つ無いが、私自身マニアのなれの果てなので唯一、鉄砲だけは自慢できる、と言うよりはこれしか自慢する物が無いと言うのが現実です。
多くの人は、クレー射撃や、ライフル射撃をやっておられても、常々点数がどうしたこうした、と言うスコーアの話になるが、私自身は点数よりも色々な銃を使いこなすことに密かに喜びを感じている。
まあ、変態といえば言えなくもない、しかしながらそうした性癖のおかげで、それを生業にするまでなったのであるから、これも怪我の功名と言うところであろうか。

私は14才から射撃を初めたので、現在で、すでに40数年この世界にどっぷり浸かっていることになる。射撃技術についても、相応の体験は積んでいるが、何よりも多くの知識の源泉となっているのは今まで色々多くの銃を使い切ってきたという体験である。
私は射撃選手と言うよりは、ガンスミスとしての血の方が遙かに濃いので、射撃の成績よりも、銃器そのもの方にどうしても、より興味をそそられる。今でも毎週射撃場には出かけて、行くたびに数万円のお金を射撃場の肥やしとして蒔いているが、これは射撃の腕を上げるためと言うよりは色々な銃を撃ち比べる事の方に興味をそそられるので、多分にトリッガーハッピー的な要素を潜在的に含んでいることは否定できない。

射撃場に行って、弾を激発した後に漂う、ほのかな雷管の臭い(火薬の臭いではない)を嗅ぐ時などは至福の瞬間である。私は雷管の臭いの方が、婦人の色香よりも遙かにエクスタシーを感じる。これは、今まで婦人の色香では何時も悲しい体験をしているので、知らず知らずの内にそういう異常体質になってしまったのかも知れない。
その体験を通じて、人に自慢できる唯一の事例、鉄砲を自慢する事によりこのコラムは成り立つ、従ってひんしゅくを買うような記述があるやも知れぬが、それはこのコラムの体質である特性であるの、なにとぞご容赦を。

それでは短期連載コラム、鉄砲自慢、メルケル303の巻き、始まり始まり。

実を言うと、メルケル303を購入したのは、これで3丁目である。
最初に購入したメルケル303は、まだ東西ドイツが統一されていない頃、共産圏国がガラクタな製品を産出している中で、唯一西側の製品に勝るとも劣らない製品を作っていたのが東ドイツ、ズールにあるメルケル社の銃である。
銃器に関心を持った頃から何時の日かメルケルを手にしたいと考えていた、その想いが募り3丁ものメルケル303を購入する事になったのである。

メルケル全体図
メルケル全体図

当時のメルケル303のジャパンガンの定価は470万円である、もっともこんな値段で購入する気は無いので、直接ドイツの商社に依頼して注文をした。チークピースが付いていないだけの、特別注文ともいえない程の極ありきたりの製品であったが、それでも注文してから入手出来るまで2年を要した。
銃の入っていた紙箱も、そしてぺらぺらの取り扱い説明書も、こんな紙が存在するのかと思えるほど、粗雑な紙で作られていた。今時、北朝鮮でしかこんな紙は使わないだろう。
そしてその粗末な紙そのものが唯一、この銃が共産圏の製品である事を如実に物語っていた。
箱はお粗末だったが銃の出来は私を充分うならせる出来であった。
特に、粗末な機械設備しか無かったであろう共産圏で、どうやって機械工作したのか解らないような箇所が何カ所もある。

機関部四角穴
機関部四角穴
機関部四角穴銃身無し
機関部四角穴銃身無し

たとえば機関部の下にある四角の穴、これは銃身の薬室の下にある、ロッキングが機関部とはまり合う所である、ロッキング部分なので丸穴では具合が悪い、強度を考えると四角穴でないといけないのである。丸穴ならドリルでもめば簡単に穴あけ出来るが、四角い穴は非常に工作が難しい、理論的に考えられる唯一の方法は、ドリルの様な形状をしたフライスの刃で、少しずつ穴を空けて極力四角穴に近づける、しかしながら回転するドリル状の刃物なので、角はどうしても残ることになる。その角をスロッッターと呼ばれる、刃物が前後に動く機械で角を削る、あるいは油圧で作動する、ブローチと呼ばれる刃物を使い、それを通して角を落とす、それくらいしか加工方法が見あたらない、現在なら放電加工と言う方法も取れるが、まだ放電加工が発明されていない頃からメルケルは四角穴を作っていたのである、従ってスロッター加工か、ブローチ加工以外、加工方法が無いはずである。しかしながらいずれの四角穴にも刃物後が全く無いのである、現在であっても機械工作で加工後を残さないで作ることは事実上不可能な事なのである。
さらに驚くのは、その四角穴は真っ直ぐ開いているわけではない、銃身のラグは真上から降りてくるのではなく、機関部先端のピンを軸に斜め上から回転するように動きで入ってくるわけで、その動きに合わせて穴加工がされているのである、銃身の2個のラグの形状を見て貰いたい、これと同じ形状の穴を空けているのである、こうなるとスロッターでもブローチでも加工は困難である、どうやって加工したのか、未だに解らない。

しかも穴の何処にも機械加工した痕が全くないのである、そうなると膨大な手間をかけ丁寧に研磨をしたとしか考えようがないのである、研磨すると言うことは穴自体を最初から小さめに作る必要がある、その穴を手作業で正規の寸法に仕上げると言うことは膨大な作業時間を必要とする、しかも熟練した労働者でないとこうした加工は出来い。

銃身ラグ
銃身ラグ

だからこそ共産圏の製品で、470万円と言う値段で売られていたのである。
子細に調査した訳ではないが、この値段だと共産圏で売られていた、トラバントと言う東ドイツ製の乗用車は少なくとも10台は買えたはずである。
恐らく、東ドイツの市民でメルケル303を買えた人間は居なかったのでは無いかと思う。
それくらい共産圏の東ドイツでは論外の値段だったはずである。

最初にメルケル303を購入したのはこれで3丁目だと書いたが、最初のメルケル303はどうしたかと言うと、ある射撃場のオーナー氏が、どうしても私の持っているメルケルを譲って欲しいと、私が射撃場に行く度に懇願するので、"貴方が自分で使うのなら"と言う条件で、50万円で売ってあげた、相場からしてもかなり安い値段だったので、相手も非常に喜んでくれた。
しばらくすると、知らない人が私のメルケルを使っている、他の人にさり気なく聞いてみたら、その射撃場オーナーから250万で買ったという話である。
どうもその射撃場オーナー氏は、お客からメルケルの注文を受け、私に狙いを定めて必死に買い取り作戦を始めたらしい。こうした行為は確かに真義にはかけるが、腹が立つ前に、そのビジネス手腕に感心するばかりであった。

2丁目のメルケルは東西ドイツが合併してから購入した物である、正確に言うと注文時点ではまだ東西ドイツが存在したのであるが、品物が送られてくるときは合併した後であった。当時、東ドイツと西ドイツは賃金に相当差があった、多分5倍以上の開きがあったのでは無いかと記憶している。併合された後は当然値上げされる物と思っていたのだが、値上げなしで注文は継続された。値上げがされなければ当然どこかをコストダウンしなければ理屈に合わないのであるが、逆にどこをコストダウンしてくるのか、そこが不安だった。しかし送られてきた製品を見て、ほとんど品質が落ちていないことに安堵した。
しかしながら、"ほとんど"と書いたように、全く変わらないと言うわけでは無かった。
無視しても良いような所だが、がさつな加工が随所に見られた。実際に使うには全く問題は無いのであるが、私は射手としてよりも、ガンマニアであることを自負しているので、どうしても愛着が持てず、早々に手放してしまった。
現在使っている3丁目のメルケルは非常に珍しい東ドイツ製のメルケルと言うので、やっと手に入れた逸品である。

メルケル303はメルケル社の最高級品で、撃発機構はサイドロック式である。
共産圏で作られた銃であるので、当時の劣悪な共産圏の弾を100%点火させるために非常に強いハンマースプリングが使われている、その為にもあるが、それにスプリング折れが出やすい、共産圏の国では金属材料と熱処理は西側と比較すると遅れていたので、東ドイツ製の頃のスプリングは、現在のメルケルの物と交換した方がトラブルは少ない。それにスプリングが強いために引き金のシエアーの部分の負担が大きく、絶対に引き金調整をしないようにしないといけない。引き金を軽くしたり、遊びを無くしたりすると、同発の原因になる。

サイドロック
サイドロック

別に引き味に問題は無いので私はオリジナルのまま使っているがこれをいじくるといろいろなトラブルに悩まされる事になる。
メルケル303のサイドロックメカの優れている点は、手で簡単に取り外す事が出来ると言うことにある。右側のサイドプレートの所に隠しネジが取り付けられている。

隠し蓋
隠し蓋
蓋を開ける
蓋を開ける
つまみを持つ
つまみを持つ
ネジとサイドプレート
ネジとサイドプレート

隠しネジの蓋を持ち上げると、それがつまみになりネジを回転させることが出来る。
ネジを外すとサイドロック機構が取り外せる。この撃発機構の全ての部品にも機械加工の跡はない、どうやって作ったかは想像力で分析するしかない。

左右のサイドロック機構
左右のサイドロック機構

ハンマーをロックしているのは2個のシエアーである、1つはハンマーをロックしているシエアー、もう一つは引き金を 引かないときに初矢の振動で引き金が落ちないようにするためのロック機構である、ロック機構は引き金を引いたときに一番最初に作動しハンマーロックを外す、そしてその後を追うように引き金のロックがはずれ、このハンマーが作動する訳である、この様に微妙なシステムなので、メルケルの引き金調整はしてはいけないのである。サイドプレートの内側は、きれいな文様が描かれている。
これはエンジンターンと呼ばれる物で、ボール盤を使い、ドリルの替わりに棒の先端に硬質ゴムを取り付け、それにエミリー粉と呼ばれる、グラインダの素材となる研磨剤を付け、金属表面に文様を付けていく手法なのである。

サイドロック内部
サイドロック内部

本来は単に文様を付けるという目的ではなく、細かい溝を付けることにより油ためて置く目的でなされたのであるが、現在ではあまりそうした目的は認識されていない、ほとんど単なる文様であるが、イギリス等の高給銃には例外なく施されている手法である。

外見からもこの機構は非常に複雑な形状をしている、その為にこの機構を銃床に組み込むためには非常に複雑な加工をしなければならない。現在ではどんな銃器メーカーでも銃床加工は100%機械加工である、そうでないと正確な加工が出来ない。また互換性もとれない。そんな時代にあって、メルケルの銃床加工は完全に手加工である、全ての部分にノミの後が歴然と残っている。この部分だけは絶対に機械加工が出来ないらしい。

銃床内部
銃床内部

銃床の内部加工を、大きくとれば機械加工も簡単に出来る、しかしながらこの複雑なメカを組み込んで、メカと銃床の間は1ミリ程度の隙間しかないのである。出来るだけ多くの木部を残すと言うことは、それだけ木部の強度を保つことになる、その為にこうした非常に手間のかかる作業を厭わないでやっているのである。
手作業にこだわるもう一つの理由は、これだけ複雑な加工になると、機械で加工した場合、木の順目と逆目を配慮して加工することは出来ないからである、機械加工の場合、エンドミルで削るので削る方向は常に一定方向だけである、そうすると順目の部分は綺麗に削れても、逆目の部分はむしり取られるように削られる、その木くずが激発機構に入ると作動不良を起こすし、木の強度も保てない、しかも、こうした高給銃に使われる銃床材料は、良い材料になればなるほど、木目が入り組んでいる、日本では高級材料と信じている人も多い、虎目の銃床は、こうした順目と逆目が織りなしている模様でこれだけでもかんなで削れば模様の度にかんなが引っかかると言う扱いにくい材料なのである。
従って、手作業で加工するのが最良の方法なのである。

機関部と銃身のロッキングは、2個のロッキングラグと、クロスボルトで止められている。
常識で考えれば、ボルトが穴に入る場合、ボルトと穴の両方か、少なくともどちらかはボルトが入りやすくするために先端をテーパーに作るのが常識だが、メルケルの場合、そのテーパー部分は全くない、こういう機構の場合、穴とボルトが完璧に一致しないと絶対に作動しないわけだが、テーパー部分を全く設けていと言うことは、加工精度に絶対的な自信があるからに違いない。こういうほんの些細な事で私みたいなメカ好きは完全に脱帽してしまう銃なのである。

クロスボルト銃身側
クロスボルト銃身側
クロスボルト
クロスボルト

こういうクロスボルト式の銃は色々あるが、メルケル以外の銃は例外なくトップレバーを開いたときには、それをロックするための装置が必ず設けてある。そうしないとトップレバーが自動的に戻れば、クロスボルトの上に銃身の穴の部分が激突することになる。
しかしながらメルケルにはその装置はない。トップレバーにかけた親指を放せば何時でもトップレバーは自動的に戻る、つまりクロスボルトも閉鎖したままである。
普通の銃ならこれで銃身を閉鎖させれば、銃身のロック部分がクロスボルトに激突するわけであるが、メルケルはそうならない。それは銃身に付いているロッキングの一つが、機関部側のラグに連動して銃身を閉鎖しようとすると、ラグが後退するのと同時に、トップレバーも動き、同時にクロスボルトも開くのである、これこそ完璧なメカニズムである。

トップレバー
トップレバー
銃身ラグ トップレバー連動部
銃身ラグ トップレバー連動部

当社では中古銃の取り扱いもしているので、SKBの上下が入荷したときなど、組み立て中にトップレバーを開かないで、そのまま組み立てようとして、銃身のロック部分がクロスボルトに激突してしまうことが間々起こる。SKBの中古だからさほど心は痛まないが、こんな時にはメルケルの優秀さをあらためて実感する。

SKBクロスボルト1
SKBクロスボルト1
SKBクロスボルト2
SKBクロスボルト2

メルケルのサイドリブは空気穴が無い、その為か、連続して射撃すると銃身が熱くなるのが早い、まあ欠点とは言えないほどの事ではある、私の感覚では我慢できる範疇に属する。
メルケルの先台は上下分離式である、ほとんどトラブルは無いが、私が最初に買ったメルケルは経年変化により先台の先端が2ミリ程開いてしまった事がある、仕方ないので銃を収納する時は、ここの部分をプラバンドで収束して収納しなんとか改善したが、銃床材料の良い物を使うとこうしたトラブルが出ないとも限らない。

分離式先台1
分離式先台1
分離式先台2
分離式先台2

最近は、上下の銃身、そしてリブを止めるのにハンダではなく、銀蝋を使う銃が増えている、ミロクもそうだし、ベレッタのDT-10もそうである。
銀蝋は剥がれにくいと言う利点がある替わりに、逆に剥がれた時には補修が聞かない。
勿論ミロクは日本のメーカーだから修理は出来るだろうが、ベレッタ等はお手上げである。
勿論本社工場に送り返せば修理できるが、かなり修理期間をとられる。
それも完璧な故障なら修理と言うことも出来るが、修理と言えないようなトラブルの場合、は非常に困るのである。
たとえば、DT-10の場合、ベレッタは銃身の基部に銃身の筒を挿入して銃身を完成させている、この部分は圧入ではなく、銀蝋がよく回るように僅かな公差を設けて作られている、ここに完璧に隙間を埋めるように銀蝋が流れてくれれば良いのだが、時には僅かな隙間が出来ることがある、これは製造上の事で容認されるレベルの事なのだが、私が体験した事例は薄い油をたっぷり塗ったのであろうが、射撃をして銃身が熱くなると僅かに油がにじむ事でクレームとして持ち込まれた。製造現場での感覚で言うとトラブルとは言えないのであるが、通常のハンダの場合は修理で対応できるのだが、銀蝋の場合は鉄が赤くなるまで焼かないと銀蝋が溶解しない、そのため事実上修理は出来ないのである。
真っ赤に焼いたら再度熱処理をしなければならず、熱処理をするとなると金属材料の組成が解らないとやりようがないのである。従って日本では手も足も出ないことになるのである。
仮ににベレッタに送ったら、こうした程度のクレームは向こうの感覚では修理対象とは認識してくれないだろう。従って説明のしようが無くなるのである。
リブなどが変形した場合も同様である、これがハンダ付けなら修理も容易だが銀蝋の場合は国内での補修はほとんど絶望的である。

そういう意味ではメルケルは当然してハンダ付けなので、補修も容易と言うわけである。

メルケルの銃床はベンドが深く、グリップも細い、最近では***は日本人向けに銃床を作っている、だから正規代理店で購入しないといけない等と、無知なシューターに吹き込む業者も多かったが、元々銃床サイズは日本人向けと言うおおざっぱなサイズがある訳ではなく、同じ日本人でも多種多様な人が居るわけで、背の大きい人も小さい人もいる、太った人も痩せた人もいる、体力のある人も非力な人も、男性も女性もいる。
一体日本人向けとはどういう体躯の人を対象としているのか、代理店はそのデーターは一切公表していない。
当社ではペラッチはいろいろなサイズで多くの日本人が好む寸法で作らせている。
そもそも銃床の寸法というのはそれを設計した人が、どうした射撃スタイルで撃って貰いたいかを考えて作る物である。
またオリンピッククラスの射撃選手が依頼する銃床の型を参考にする場合もある。
あるいは、その銃のポリシーというか、外観を重要視して決める場合もある。
例えばウエザビーライフルの場合、グリップは極端にまで細くしてある。
この銃はアメリカ人に販売するために作られ銃であるが、グッリップは本当に細い、私は1970年、ウエザビー社でガンスミスの修行をしていたので解るが、ウエザビーライフルはこの細いグリップでマグナム装弾を撃つのであるから、グリップが頻繁に折れる。グリップの部分にアルミの棒を挿入して多少防止策を図ったが、それでもグリップ折れは無くならない、ある時ウエザビーの設計担当の副社長と話したときに、ウエザビーではグリップが折れるからグリップを太くすると言うのは出来ない。何何故ならば、それによってウエザビースタイルが阻害されるから、そう言う話だった。
先台の細さ、グリップの細さ、そしてチークピースに広がるふくよかな形状、それがウエザビーの命だとも話していた。
ウエザビーの散弾銃はSKBでOEM生産されているが、日本向けに出荷される銃よりも、ウエザビー社に出荷される銃の方がグリップは細いのではないかと思う、ミロクの銃は外この国向けも国内向けも同じグリップな筈である。
日本人向け銃床?????
製造現場では誰もその様な与太話は信じていないはずである。

私の原稿は頻繁に話が横道にそれるが、そちらの方が退屈しないで良いのでは無いかと勝手に解釈して、また話をメルケルに戻す。
メルケルのベンドは深いので、普通の銃しか撃ったことの無い人は"これじゃ使えない"等と簡単に判断してしまう事になる。

ペラッチを例にとって話すが、ペラッチの銃は銃身とリブが平行に出来ている。
そのためベンドを高くしてリブを斜め上から見るような構造になっている、つまりそう言う見え方をすることにより、銃身が上を向いているので照星で狙った所より、上に着弾する様になる。

元台写真
元台写真

狙った所より上に着弾しないと、トラップ射撃で上に飛び出すクレーは相当上を狙い超ししないと命中しない事になる、我々が飛び出したクレーを視認して、弾を撃つには、目で視認するとその情報が脳に入り、それを脳が判断して人差し指に"引き金を引け!"と指令するまで相応の時間がかかる、正確な時間は失念したが、100分の3秒くらいだったと思う、その後ハンマーがリリースされて撃針を叩くまで、いわゆるロックタイムという時間だが、これだけでも1000分の3秒くらいかかる。
そのために目で視認して弾が出るまで、あるいは弾が飛翔して目標に当たるまで、当然にし相応の時間がかかる、そのため前に出るクレーには見越しの時間が必要なのである、狙い腰とも言うが。弾は狙ったところより上に着弾するように出来ているので、必然的に横に飛ぶクレーはクレーの下を狙うことになる。
メルケルの場合のリブは、銃身と平行ではない。
リブの平行線から見ると銃身は僅かに上を向いている、メルケルのリブを銃身の真ん中と先端で比較すると、先端のリブが薄くなっていることがおわかりいただけるだろうか。
そのためにリブは斜め上から見る必要は無いのである、リブをほとんど平らにして見ても狙点よりも必ず着弾は上に行くように出来ているのである。
であるから、メルケルの場合、リブを斜め上から見る必要はないのである。リブを平行に見てもちゃんと弾着は照星の上に着弾する事になる。

リブ
リブ

逆に言うとペラッチやベレッタ等の銃身と平行のリブの銃はは、リブを斜め上から見るようにしなければいけないのである、従ってこれらの銃に中間照星を付ける事は私は推奨しない。
もし中間照星を付けて、それが8の字状に見えたら明らかにベンドは削り過ぎである。
照星と中間照星の間は相当離れていないとリブを正しく視認している事にはならない。
それなら最初から中間照星を付けない方が絶対に正しい狙いが出来る、なんて書きながら私はペラッチに中間照星を付けてしまって、しまったと思ってが手遅れで、さりとて一端付けた物を外すわけにも行かず現在も付けっぱなしである、私のペラッチをみてこの原稿内容と言うことが違う等と誤解をしないようにお願いしたい。

あまり知られていないがメルケルのチョークは他の上下よりも絞りがきつい。
一番大切なのはスイングだが、チョークの絞り具合もグレーの粉砕時には影響が大きい、実際にメルケルで射撃すると、スイングが完璧で、狙点も正確だと、パターンだけでなく散弾の隊列とも言うべきコロンが飛翔するクレーに次々に当たっていくため、クレーは粉々に粉砕する。これはメルケルの特徴である。
しかしながらコロンが長いと言うことは当然パターンは小さいと言うことになる。

彫刻1
彫刻1
彫刻2
彫刻2

メルケルの彫刻はこうしたハンテングシーンの他に、唐草模様の彫刻があります、1丁目も2丁目も唐草を使ったのですが、唐草は表情に乏しいので飽きがきます、それで3丁目はハンテングシーンを選択しました、ペラッチなのの繊細な毛彫りと違い、ドイツの彫刻は全部深彫りです、毛彫りと深彫りとは一長一短があり一概にどちらが良いとは断言できませんが、些細な質感を表すには毛彫りが一番である。、しかしながら長年使うと彫刻が薄くなってくるという欠点もある。メルケルの深彫りは彫刻が薄くなるなんて事は絶対にあり得ない。

彫刻3
彫刻3

メルケルのグリップもめちゃめちゃ細い、画像でごらんいただけるであろうか。

グリップ写真
グリップ写真

アメリカに売られている銃も、ヨーロッパで流通している銃もメルケルはみんなこんなにグリップは細いのである、これがメルケルの標準寸法なのである。
この様に銃メーカーによって、グリップの細い物もあれば太い物もあるのである。


更新 2003年 1月28日

Sさんの感想文です

HPのメルケル303のコラム、とても興味深かったです。
実は私も10数年前、中古のメルケル303を所有していて少しスキートを撃ったのですが、スプリング折れ、撃針折れなどトラブルに悩まされ、やむなく手放した経緯があります。
どうも前オーナーがかなり、いじっていたようです。
私の父が射撃場に通っていた30数年前はメルケル303といえば全シューター憧れの銃だったそうです。ちょっと普通の人は手が出なかった価格だったようです。
普通に射撃をやるにはベレッタ、ペラッツィで十分で、かえってメルケルは今や扱いにくい銃と見る人が多いようですが、イタリア銃とは異なるドイツ鉄砲職人の魂というか鉄砲鍛冶気質の結晶のような魅力があると思います。
私もお金に余裕があれば是非貴社にオーダーしたいのですが、この不況下では・・・・・・。
でもいつかは、持ちたい銃です。
今後益々の貴社のビジネスのご発展をお祈り申し上げます。

Kさんの感想文です。

いや~メルケルはただ高いだけでなく、本物の名銃だったんですね。いまだに機械を凌駕する、職人が存在することに敬意を払いたいと思います。素晴らしい技も、これを評価する人や解説できる人がいないと、何時の間にか消えてしまうことが、間々あります。ぜひ、すばらしい技と技術について解説をお願いします。「出物情報」もまってます。


更新 2003年 1月31日

築地様のHP、いつも興味深く拝見しております。
そして鉄砲自慢メルケル、興味深く読ませて頂きました。

私は昨年の夏から射撃を始めまして、今日に至るのですが・・・
父の勧めもありまして、中古のメルケルスキート銃を購入致しました。
購入当時は、何故こんな重くて、古い銃・・・しかも今時どこにもない26inc。
と思っておりましたが、鉄砲自慢のコラムを読ませて頂きようやく東ドイツ製メルケル銃の価値を知りました。

父はもう20年前ほどに射撃をやめていますが、メルケルと言う銃は本当に憧れの的だったんですね。
父の若かった頃には、とても手が出る銃ではなかったと聞かされました。
私が自宅に持ち帰った銃を手にとって、「これこれ!初めて手にした」と言って、私以上に嬉しそうでした。
何十年も前、射撃場でメルケルを横目でチラチラ見ながら撃った経験があるそうです。
また気のせいか、メルケルの銃は他の銃とは違った重みのある銃声に聞こえたそうです。

自分が持ちたくても持てなかった銃・・・息子の私に持たせて、若かった頃を思い出しているのでしょうか・・・
父の話だけでは、メルケル銃の優秀さと価値を信じきれなかった私ですが、コラムを読ませて頂きようやくこの古いメルケルに愛着がわいてきました。

さ~週末もこの古いメルケルで練習してきます!
メルケルの詳細な解説、どうもありがとうございました。

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