ハンドロードを始めよう - リローディング

2001年10月17日 築地
更新 2001年10月19日 築地

最近は軍用実包が大量に日本のマーケットにも流れてきているので、結構安い値段で完成実包が購入できるようになった、最も308ウインチェスターだけに限った話で、他の実包は別に安くなってはいないが、それでも308の場合は、1発¥100位であろうか、ラプアなどの命中精度の良い弾でも、100発まとめれば1発¥150で買えるそうで、なかなか良い時代になってきた。
しかしながら308以外の弾は相変わらず高い、ウエザビー系統の弾は1発¥500近くする、ハンドロードで造れば1/4位の値段で出来ることになり、ハンドロードの経済性は卓越していることになる。

308が¥100で買えたとしても、私自身は308でも全てハンドロードで作っている、それは命中精度の良い弾を作るにはハンドロードが唯一の方法だからである。
軍用の308実包は、できたての弾でも、アメリカではわずか1発¥30で買えるのである、賞味期限の過ぎた古い弾ならわずか1発¥10である、これを日本では¥100~¥150で売っている訳だからこうした経済実体が解ると余りありがたがってもいられない。

軍用弾頭はその特性上、自動小銃、または機関銃に使用される、また全天候で使われるため防水処理が施されている、弾頭と薬莢はピッチの様な溶剤で接着してある、これにより湿気の侵入と、弾頭が機関銃などの振動で弾頭が動かないようにしてある、また弾頭が接着してあるので抜弾抵抗が強くなり初速は通常の物より100フィートくらい加速される、しかしその分抜弾抵抗のばらつきがあるため、命中精度から言うと良い結果は得られない。

はやい話、いくら軍用弾頭が¥100で買えるからと言って、同じ値段ならハンドロードの方が絶対にお勧めである。
308の場合、薬莢は1発¥38である、フルパワーをかけても最低15回は使える、仮に15回で廃棄したとしても1回辺りの原価は、¥38÷15回=2円50銭ということになる、弾頭が¥45,火薬が¥40、雷管が¥13として計算すると、大体¥100見当で収まることになる。
勿論、30-06でも、270でも、概ね同じような値段で出来る、マグナムの場合、薬莢の値段が¥75,火薬は¥100~¥150分くらいは使うだろう。
薬莢の値段は¥75でも、マグナムの使用回数はせいぜい3回である、3回使うとマグナムの薬莢は必ず切れる、もし3回で切れないマグナム弾なら、逆に言うと、全く初速が出ていないことになる、初速が出ないマグナムならばマグナムの意味がない、それなら30-06で充分である。だから3回で薬莢が切れるマグナムは正常なのである、3回以上使えるマグナムが異常なのである。

あまり使う人はいないが、6ミリPPCなどの特殊な弾の場合は、ハンドロード以外で製造する方法はない。

RCBS社から、マスターリロードセットと言うハンドロード機材が¥59000で売られている。これ以外に必要な物は薬莢を成形し、弾頭をセットするダイスセットが必要になる、ダイスセットはほとんどの口径の物が¥4500である。
それに薬莢をくわえるシェルホルダーが必要になる、これは¥800である。
さて、マスターリロードキットを購入すると、これをセットする机が必要になる。
出来れば専用の机にボルトでプレスを止めるのが一番理想的であるが、家庭の事情でそうもいかない場合は、机にCクランプで止めると言う方法もある。
Cクランプは1個¥500~¥1000で買える、これが2個あれば充分しっかり止めることが出来る、自宅以外でハンドロードする場合は、簡単に移動できる便利な方法である、弾を作るのには、必ずしも自宅で作らなくても法律違反ではない、
私のハンドロード機材を見て貰うと解るが、RCBSのロックチャッカーは机に据え付けであるが、これ以外に携帯用のプレス2台を使っている、海外にベンチレスト射撃の遠征試合に行くときは、現地で、そこの気候に合わせたリロードをする必要から携帯用のプレスを持参して、現場でリロードするのが常識なのである。
日本では多くの射撃場がハンドロードを禁止しているので、射撃場ハンドロードする場合は事前に確認しておく方が良いだろう。

工具一式
工具一式

ネックサザーとは、薬莢全体の成型をしないで、ネックの部分だけをリサイズするダイスであるが、ネックサイザーを購入するほとんどの人が、ネックサイズだけでリサイズした方が命中精度が良い、あるいは薬莢の保ちがいいと考えているようであるが、ネックサイズだけでリサイズしていると、薬莢が大きくなり、何時か薬室に入らない時が出てくる恐れがある、それと、フルレングスサイズをかけても308なら20回程度は使えるので特段薬莢の寿命に影響がある訳ではない。さらに説明するならば、どうしてもネックサイズを使いたいと言うのであればフルレンズスダイスを使い、最後の2ミリ位、クリアランスを付けて押し込めば、ネックの部分は成型し、ボデーは成型しないと言うことが出来る。ネックサイズだけならこれで充分効果を果たせる。この様にネックサイズダイスを購入する人は極めて少ないので、現在では、2個セットのフルレングスダイスセットよりも、1個しかないネックサイザーの方が値段が高いという逆転現象が起きている。

ダイスセット
ダイスセット

さて、ダイスのセッテングであるが、フルレンズスダイスをプレスにねじ込んでいく。

ダイスの適正位置
ダイスの適正位置

ダイスの下端と、シェルホルダーが接触するようにセッテングする。

ダイスのセット
ダイスのセット

ダイスの位置が確定したら、ダイスに付けてある外ねじリングを回してリングの位置を決める、そのリングが動かないように6角レンチで止める、これで次回からダイスをセットするときは何時も同じ位置にセットされることになる。

ダイスの位置決め
ダイスの位置決め

マスターリロードセットを購入すると、リザイジングオイルと言うのが付属で付いている、これをパッドと呼ばれるスポンジの上に塗り、その上で薬莢を転がし、薬莢全体に油を塗る、この油塗りの作業を怠ると、薬莢成形のフルレングスダイスに薬莢が焼き付いて抜けなくなる。
油塗りは絶対に忘れてはいけない作業である、油は外側に塗ると同時にネックの内側にも塗るのを忘れてはいけない、薬莢の成型は、ネックの内径と、薬莢の外形、この両方を同時成型するので両方に油を塗る事が必要なのである。
油は塗りすぎても弊害は無い、せいぜいショルダーの所が溜まった油で内側に凹むくらいで、凹んだ所で何の問題もない、むしろ塗り足らなくて焼き付いた場合はそのダイスは廃棄するしかない、(焼き付いた薬莢を取り除くスタッグケースリムーバーと言う工具も¥3800であるが、ダイスセットを改めて¥4500で購入する方が、面倒が無くていいかも知れない)

サイジングワックス
サイジングワックス

付属のリサイジングオイルよりも、私はリサイジングワックスの使用をお勧めする、この1缶で普通の使用頻度なら1年は持つはずである、このワックッスは必ず手で塗るので不必要に多くの油を塗りすぎることがない、使い勝手が非常に良いのでお勧めの商品である。
価格も¥1400とお手頃価格である。
私がこれを知ったのはアメリカのベンチレスト射撃大会に参加したとき、参加選手全員がこれを使っていたので早速試してみた結果、お勧めしているのである。

フルレングスとシェルホルダーはクリアランス無しで取り付けると書きましたが、弾頭をシーテングする、シーテングダイスの場合は2~3ミリ、クリアランスを空けてください、そうしないとシーテングダイスの場合は、マウスの先端をクリンプすることになります、クリンプとは軍用弾頭の用に、弾頭に溝の入っている弾頭を保持するために薬莢の先端をわずかに内側に折り曲げる事を言います。

通常の弾頭を使うときはクリンプをすると命中精度が悪くなります。

フルレングスにかける
フルレングスにかける
ケーススタンド
ケーススタンド

さて、通常ならこれから次のリローデングステップに入る所であるが、実際にはここで薬莢をターボタンブラーにかけて薬莢の研磨を行うのである。
薬莢の研磨は、同時にリザイジングオイルの除去を兼ねるので、フルレングスサイズしたあと必ずターボタンブラーで研磨することをお勧めする。
ターボタンブラーは¥19000である。
タンブラーで研磨する時間は最低でも6時間くらいは必要である、24時間かけっぱなしでも大丈夫である、1~2時間では全く効果がないのでご注意を。

タンブラーで研磨
タンブラーで研磨

研磨が終わった薬莢に雷管を取り付ける、雷管を取り付けるには、ロックチャッカーに付いているプライミングツールを使う方法もあるが、あまり使い勝手が良くないので、RCBSのハンドプライミングツール(¥3800)を使うか、リーのプレス用のオートプラアイムを使うか、いずれかの方法をお勧めする。
私はリーのオートプライムをプレスに取り付けて使用している、価格は¥3800である。

リー オートプライム
リー オートプライム

リーオートプライムのセッテングは、プライミングトレーと呼ばれるトレーの上に雷管を乗せて左右に細かく揺する、さらに小さな同心円の溝があり、ここに雷管の角がひっかかり、しばらく揺すると全ての雷管が上向きに整列する、この状態でふたをしてオートプライムに取り付ける。

雷管のセット
雷管のセット

このプライミングツールはプレスに取り付けて使用する。シェルホルダーに薬莢を取り付けてプレスのレバーを押し下げると、雷管がセットされることになる。

雷管取り付け
雷管取り付け

次に火薬の装填である、パウダーメジャーのレバーを1回上げ下げすると、規定量の火薬が出てくる、それをデジタルスケールのトレーで受け、デジタルスケールで計量する。

火薬のセット
火薬のセット

マスターリロードキットには天秤のはかりが付属で付いているが、デジタルスケールの方が使いやすいので、私はこれを使っている、デジタルスケールは¥25000である。

デジタルスケール
デジタルスケール

デジタルスケールで計りながら、パウダーメジャーの目盛りを調整して規定量の火薬のセッテングが出来たら、全ての薬莢にパウダーメジャーから装填する。

火薬を入れる
火薬を入れる

精密射撃を目指すあまり、パウダーメジャーで計量した火薬を再度デジタルスケールで計測し、パウダートリックラー(¥3800)を使い、火薬の微調整をしながらより正確な火薬計量を目指す人もいるが、実は火薬量を細かく計量してもあまり命中精度にから言うと意味はありません、少なくとも0.5グレイン程度の誤差は無視してもかまいません。
命中精度と火薬の因果関係は、どの種類の火薬を、どのくらい装填するかで決まります、火薬量の正確さではありません。それと一般論ですが、弾のスピードは早いほうが命中精度からは良い結果が得られます、ハンテングに使う場合でも初速が速いと言うことは絶対条件ですから、リローデングの場合、遅い弾より、速い弾を作るように心がけて下さい。

火薬を装填したら次は弾頭のセッテングです。

プレスにシーテングダイスを取り付け、弾頭を薬莢の上に置いたまま、ソーッとハンドルを押し下げます。
この時、特に注意しなければならない事として、弾頭が薬莢に挿入される時、ゆっくり挿入するようにしないと、ガツン、と弾頭を薬莢に押し当てると、薬莢のショルダーの部分が外側に張り出してしまい、見た目では解らなくても、銃に装填したときに装弾が薬室に装填できないと言うアクシデントに見舞われることになります。
ですから、この作業は出来るだけ丁寧に作業するように心がけて下さい。

弾頭のセット
弾頭のセット

これで、装弾の完成です、長文をお読みいただきお疲れさまでした。

装弾の完成
装弾の完成

これでリローデングの説明は終わりですが、マニアックな方のために少し追記しておきます。

多くの方から装弾の長さは? と質問されることがありますが、ハンテングライフルの場合、弾倉に入る長さが適正な寸法です。
装弾が弾倉から薬室に送り込まれるとき、場合によっては薬室の入り口で引っかかる事があります、これは使用する弾頭が尖ってるか、丸くなっているかでも違いますが、弾頭の長さを調整することで改善されることもあります、この場合トラブルの起きない弾頭の長さが適正な寸法と言うことが出来ます、ハンテングライフルの場合、装弾の長さはこういう事を基準に判断して下さい。
よく、ライフリングにタッチする、ランドタッチの寸法が最良だと言う人も居ますが、ハンテングライフルでランドタッチの弾を作ると、とてつもなく長い弾になります。
とうてい弾倉には装填できないし、必ずしも命中精度は良くありません。

命中精度を競うベンチレスト射撃専用銃の場合、ライフリングのスタートがかなり薬室の手前にあるのでランドタッチで作ることが出来ます。
火薬も雷管も入れていない状態で弾頭だけを長めにセッテングして、それを強制的に装填してボルトを閉鎖すると、弾頭はライフリングの所で止まっているので弾頭は薬莢の中に無理矢理挿入されることになり、そのまま抜き出せばそれが正しくランドタッチの寸法になります、これを専用のジグを使ったノギスで計測すると寸法を計測できます。

この基準弾頭を0として、いくらランドタッチから引くかを決めます。
私はランドタッチから0.5ミリ程度引いた寸法でリロードしています。
ランドタッチと命中精度の因果関係はまだ解っておりませんが、わずか0.5ミリでも、ランドタッチさせるか、させないかで初速が変化します、ランドタッチさせると初速が遅く、ランドタッチさせないと初速は速くなります。
火薬が燃焼するとき、0.5ミリ弾頭が動くだけで、火薬の息使いが出来ると言いましょうか、火薬が良く燃えるようになります、実に不思議な現象ですが現実です。

長さのチェック
長さのチェック

ベンチレスト射撃の世界では、命中精度を高めるためネックターニングと言う作業をします、これは薬莢のネックはミクロの単位で言うと、必ずしも真円でないから、薬莢の軸線に合わせて外形を真円に加工する作業を言います。
少しずつ削ると最初はマウスの一部だけが削れます、これでマウスが真円でないことが簡単に理解できます、こうして削る作業をネックターニングと言います。
そうして削った薬莢は通常の薬室ではネックの寸法がぶかぶかになります、そのため最初からネックターニングした薬莢を使うことを前提として薬室を加工した物を、タイトネックチャンバーと呼びます、これはネックの部分があらかじめ小さめに出来ています、ネックターニング加工をして初めて装填できる薬室です。

ブッシングダイスのセット
ブッシングダイスのセット

こうしたネックターニングして小さめに出来たネックの薬莢を通常のダイスで成型してもネックの寸法が小さいので全く成型が出来ません。そのためネックの部分だけさらに小さな寸法で成型出来るように、ネックの部分だけを交換できるようにしたのがブッシングダイスと呼ばれる物です。
ネックサイズに合わせて色々な寸法のブッシングが売られています。

ブッシングの色々
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