リローデングデータの見方 - リローディング

2005年 1月13日 築地

前に2回ほど、コラムで「ハンドローデングのすすめ」を書きました。
これを読まれた方も数多くおいでだと思います。それを読んで実際にハンドロードを始められた方も少なく無い筈です。それは当社のハンドローデング用のマスターリロードキットの販売量を見ても容易に判断が出来ます。
しかしながら、その中でまだ説明できていない事があります。それはリローデングマニアルの読み方です。読み方と言うと語弊がありますので理解の仕方と言った方が適切でしょうね。ハンドロードを始める場合、どの種類の火薬をどのくらい装填するのが適当か、誰でも当たり前に考えられるはずです。
リローデングマニアルにはその事が細かく書いてあります。

幾ら大胆な人でも、あるいは世間で太っ腹と呼ばれる人でも、適当な火薬を適当に装填する人は居ないはずです。何しろ物が火薬ですから取り扱いを誤ると、とんでもない事故に繋がると考えるのは当然の事です。
火薬の取り扱いで一番危険な事、それは火薬の種類を取り違えることです。
例えば、拳銃や散弾銃に使う火薬をライフルに使えば間違いなく異常高圧を起こしてボルトが張り付くか、場合によっては機関部が破砕する事すらあります。
従って火薬の種類を取り違えないことは基本中の基本、リローデングで一番大切な事なのです。ライフル用の火薬でも、速燃性のIMR4198等の火薬を、遅燃性の火薬を使うマグナムライフルに装填すれば、先ず保証付きで異常高圧が発生してボルトはびくとも動かなくなります。
しかしながら、こういう間違いをされる方はほとんどありません、何故ならば火薬の選択間違いで当社に修理に持ち込まれる銃はほとんど無いからです。
これは皆さんがリローデングマニアルをシッカリと読まれている何よりの証でしょう。

所がこのリローデングマニアル、安全第一の為でしょうか、危険領域を示すマキシマムの決め方が結構いい加減なのです。
リローデングマニアルにマキシマムと書いてあってもその数字は決して本当のマキシマムではないのです。
ですから、多くの人がもう少し火薬量を増やさないとちゃんとした命中精度も、ちゃんとした威力も出せないのに、勝手にリローデングマニアルで決めた、仮定のマキシマムをそれが火薬量の限界だと勝手に決め込んでしまうのです。
そして真面目に物事を考える人ほど禁忌過剰にそれを頑なに守り通されるのです。
つまり結果として威力が無くて当たらない弾を沢山作ることになるのです。
私のコラムは、希にはおちゃらける事もありますが、基本的に私のコラムは真実を追究する真面目なコラムですから、間違いは間違いと的確に指摘します。しかし、私の説明よりリローデングマニアルに書かれている情報の方が確かに真実味はあると思いますが、取り敢えず私の言うことは本当です。
私自身も、雑誌あるいはインターネット上での情報で、リローンデングマニアルのマキシマムが低すぎると言う情報は今まで目にした事も聞いた事もありません。
皆さんもこうしたリローデングマニアルの間違いについてこうしたコラムを読まれるのは初めてだと思います。それに他の雑誌ではあまりこうした事は書きませんね。
アメリカは訴訟世界ですから、マニアルに書いてあるデーターが低ければ少なくとも事故は起きないので取り敢えずそれで良しとしているのでしょうが、火薬量が少ないと弾頭に本来のエネルギーも与えられないし、本来の命中精度も発揮出来ないのです。
工場製の装弾の場合は充分すぎる初速が出ているのでそれなりに命中精度も威力もあるのですが、リローデングマニアルとおりに装弾を作れば、工場装弾と比較して威力のない弾が出来上がるのです。ローデングデーターのマキシマムを厳守してリロードされている方の場合、一度工場製の実包と、自分でリローデングした実包の雷管の潰れ具合を比較すると容易に解ります。
私が何を言いたいのかと言いますとリローデングマニアルに書かれているマキシマムロードを越えないと、決してまともな弾は出来ないと言うことです。こういう事を書くとある意味危険な事のように思われるかも知れませんが、私自身は女性で間違いを起こした事は幾たびかありますが、火薬で間違った事は一度もありませんので安心して読んでください。
では具体的に説明を進めて見ましょう。

こういうテストに、さすがに人の銃は使えないし、人の実験させる訳にもいかないので、私の使っているサコー75、7ミリ、レミントンマグナムを使い、自らの体でテストしてみました。だからといって別に危険な実験と言う訳ではありませんよ。(ドキッパリ)
実験に使ったのはバーンズトリプルショック弾頭、7ミリ口径、140gr弾頭です。
ちなみにトリプルショック弾頭は新製品ですので、まだバーンズ弾頭のリローデングマニアルには記載されていませんが、ローデングデーターはXBT弾頭とほぼ同じだと考えてください。
先ず、バーンズのリローデングマニアルをご覧ください。

リローデングマニアル
リローデングマニアル

弾頭140grのページ、火薬はIMR4350の場合、XBT弾頭(トリプルショック弾頭も同じ)ではマキシマムロードは59グレインですね。
ではそのマキシマムで装填した薬莢をご覧ください。

バーンズ
バーンズ
59gr
59gr

火薬の圧力を判断する場合、雷管の潰れ具合で見るのが一番的確です。
画像を見て貰うと雷管の角にまだ丸みがありますね、つまり雷管を装填した時と同じ様な状態で雷管はほとんど変形していませんね。
火薬の圧力が高くなると、雷管は薬莢の中の火薬ガスでボルトヘッドに押しつけられ、ボルトヘッドの形状とおりに平たく変形するのです。
その変形が無いと言う事は火薬ガスがまだまだ低いと言うことを物語っています。
これがデーターブックのマキシマムなのです。
言うまでもありませんが、本当のマキシマムはもっとこれよりも上なのです。

ご注意
シェラなどの他のデーターブックの場合、マキシマムはもっと高いのですが、それは使う弾頭が芯に鉛を使って外側を銅のジャケットで覆った、いわゆる柔らかいジャッケト弾だからです。つまりこうしたジャケット弾は外側が凹み易いのでライフリングに食い込む抵抗が少ないのです、ですからバーンズ弾頭の時よりも火薬量は多くても良いのです。
それでも、ジャケット弾頭を使うと仮定したばあい、データーブックに書かれたマキシマムはやはり依然低い数字なのです。本当のマキシマムはもっともっと上の数字と言うことにを理解しておいて下さい。

使う弾頭によって火薬の量が変化すると言う事をもう少し詳しく説明してみます。
上の説明に書きましたとおり、ジャケット弾の場合は、弾自体の素材が鉛で銅弾より明らかに柔らかいので、純銅のバーンズ弾頭よりライフリングの食い込む抵抗が少なく、その為に火薬量は多くても良いのです。
ですからリローデングマニアルでは、バーンズとシェラでは同じ140grの弾頭を使う場合でもマキシマムの火薬量は弾頭が柔らかいシエラの方が火薬量は多いのです。
つまり、ジャケット弾の場合、火薬の点火と同時に弾頭がライフリングに食い込んでスムーズに前進するので火薬量は多くても弾頭の前進に合わせて徐々に火薬が燃焼して行くので火薬の圧力が異常に高くならないのです。
つまり弾頭が前進した分だけ火薬が燃焼していくと考えてください。
バーンズのリローデングマニアルをご覧頂くと解りますが、同じ7ミリ口径の140グレインの弾頭で、上に書いてあるXBTのマキシマムは59グレイン、下の方に書いてあるXLC弾頭の場合、マキシマムは66.5グレインです。
同じ純銅弾同士ですから何か変ですよね。弾頭の芯は間違いなく同じ純銅の弾なのです。但し、XLC弾頭は外側にテフロン、コーテング塗装をしてあります。
こうしたほんの僅かな事でマキシマムが容易に変化するのです。
テフロンは一種の潤滑剤です。テフロンは弾頭の滑りを良くしますから、ライフリングの食い込みも「スルッ」と入るのです。
比喩が適切でないと多くの女性からひんしゅくを書くことを承知で書きますが、ある種の行為の時にある種のゼリーなどを利用するとある種の挿入が楽になりますが、原理的にはそれと同じ理屈なのです、つまり「スルッ」と入るのです。
つまりテフロン、コーテングは弾頭の潤滑剤であり、ある種の行為をするときのゼリーと同じ役目を果たしているのです。
こういう比喩を多様して書くと、コラムの読者のおじさん達には極めて理解が早いのです。
すでに「成る程成る程」と大きくうなずいているおじさん達も多数居ます。(いません!)
私は決して自らの好みでこういう比喩を引用している訳ではありません。
本来は高尚な文章書きを心がけている私ですが、コラムの読者層に合わせて致し方なくこうした通俗的な書き方をしているのです。

さて自ら潤滑剤とも言うべきゼリーもどきを塗っているXLC弾頭君は何の躊躇もなくライフリングに挿入出来たため、XLC弾頭君は火薬の圧力に応じて、銃控内をどんどん前進し、その分火薬の燃焼がそれに応じて行き充分なエアースペースが確保出来ます。
従ってXLC弾頭を使った場合は火薬の装填量が多くても火薬は異常高圧にはならないのです。しかし火薬量が多い分、銃控内全体の圧力は相対的に高いのでその分初速が早くなるのです。
逆に火薬に点火しても潤滑剤を体に添付していないXBT(トリプルショック)弾頭君の場合、火薬の圧力がかかって後ろからグイグイ押されても、まだその時点でライフリングに挿入しようかどうか大いに躊躇しているのです。勿論、火薬の燃焼は万分の1秒と言うような瞬間の世界なので、弾頭の躊躇は人間世界の物差しでは測れない時間なのです。
出来ることなら挿入しないで済ませたいと思っているかも知れません、その様に大いに迷ってると言うことも出来ます。しかし火薬ガスの上昇に伴い、致し方なく挿入と言う行為に走るのです。言うまでもありませんが、XBT(トリプルショック)弾頭君の様に自らのボデーに潤滑剤が無い場合、ライフリングに挿入するときにかなり抵抗があるのです、有る意味でライフリングの挿入は「無理矢理挿入」と言う言い方も出来無くはありません。
無理矢理という行為ですからライフリングと弾頭の間に合意はありません、従ってスムーズな挿入というか、スムーズな前進と言うか、何らかの形で弾頭君の挿入行為が妨げられるのです。
そうこうする内に火薬の圧力は限界まで達してしまうのです。
これが理由でXBT(トリプルショック)弾頭君の場合は火薬量が多く装填できないのです。
潤滑剤の無いXBT弾頭には多くの火薬を装填できない、これが最大の理由なのです。
無理矢理と言う行為の後なのでライフリングは心に傷を負ってもいます(いません!)
火薬ガスが「オラオラ」と言って弾頭の後ろから暴力的にガンガン押している場面が想像できますね。XBT弾頭君は決して無理矢理挿入したくはなかった筈です。
出来るならば合意の上で、そういう想いが有った筈です。ひょっとしたら火薬にそそのかされてと言う無念の想いが有ったかも知れません。
この様に無理矢理とか、強引にとか、そういう行為は決して良くないのです。
あくまでも優しく、相手が挿入を許してくれるまで自然に待つ心のゆとりが欲しいのです、本能の赴くまま暴力的な挿入はするべきでは有りません、「あくまでも自然に」と言う行為を心がけたいとXBT(トリプルショック)弾頭君は思っているかも知れません。
すでに涙を流して、大きくうなずいているオトーサン達も居ます(いません!)
XBT(トリプルショック)弾頭君の前進がスムーズでないと弾頭が前進して充分なエアースペースが確保されないので簡単に火薬の圧力が危険領域まで上昇してしまい、多くの火薬が装填できないのです、結果的には初速が上がらないと言うことになるのです。
この様に同じ弾頭でも弾頭にテフロン、コーテングしてあるかどうかで火薬の燃焼特性も火薬の装填量も大きく変化するのです。

XLC弾頭
XLC弾頭

画像の左側はトリプルショック弾頭、右側は同じ銅弾ですが外側をテフロン、コーテングしているXLC弾頭です。
弾頭の中には、テフロンでは無く、二硫化モリブデンの粉末をまぶした黒いモリコート弾頭もありますが、モリコートも潤滑剤の一種、つまり、これも火薬の圧力を高くしない、あるいは初速を上げる為の物なのです。

話しはまたトリプルショック弾頭の事に戻りますが、トリプルショック弾頭のマキシマムロードは59grでしたが、火薬量をもう少し増やして、62grにしてみましょう。
これが火薬量62gr装填した装弾の薬莢です。

雷管は前よりも潰れていますね、でもまだまだマキシマムではありません。
この位の火薬圧力だと命中精度も充分出ていますし、弾頭の威力も充分です。
一応、この辺りが排莢もスムーズで一番使い勝手の良い装弾です。
グルーピングを確認してそこそこの命中精度ならこの辺りの所でOKとすべきでしょうね。

62gr
62gr

これは実験ですから火薬量をもう少し上げて行きましょう。
これが72gr装填した薬莢です。

雷管はかなり平たく潰れていますね、撃針の打痕跡の回りが盛り上がっていますね。
この盛り上がりは、ボルトの撃針と撃針穴の僅かな隙間に雷管が押し出されたために出来た盛り上がります、こうなると火薬圧力は高すぎ、排莢が困難になります。

72gr
72gr

火薬量をさらに増やして行きます。
これが74gr装填した薬莢です

雷管が完全に抜けましたね、これが文字通りの本当のマキシマムなのです。
この様に、実験の結果で比べると、データーブックで言うマキシマムとは13グレインの開きがありましたね。

これでローデングデーターのマキシマムは決して実態を表している事でないことがお解りいただけましたでしょうかね。

74gr
74gr

バーンズ弾頭は元々、近距離でマグナム装弾を使うために開発された弾頭です。
近距離で初速の早いマグナム装弾の弾頭を使うと、柔らかい弾頭だと初速が早すぎて獲物の体内で弾頭が破砕してバラバラになり、威力が激減するのを防ぐために作られた弾頭です、決して遠距離で命中精度を競うための弾頭ではありません。
マグナム装弾の弾頭は初速が早すぎるため、近距離で撃つと弾頭が獲物の体内でバラバラに崩壊します、丁度平手で叩いたのと同じ事です、平手よりも拳骨の方が痛いですよね、それはその方がエネルギーが集中するからです。そういう目的で最初の銅弾は作られたのです。
しかし、遠距離で撃つ場合はマグナム装弾の弾頭は丁度良い具合に弾頭が潰れます。

バーンズ弾頭はそうした目的で開発された弾頭で、決して日本の北海道の為に作られた弾頭ではありません。しかし、環境のために鉛弾を使わないと言うのは今や世界的な趨勢に成りつつあります。その為に銅弾であっても遠距離での命中精度も求められるように成りました。
最初は純銅のXBTと言う弾頭だけだったのですが、外側をテフロン、コーテングしたXLC弾頭が出来て、弾頭の初速を上げることで命中精度を向上させることになりました。
その後、弾頭の3本の溝を付けた新製品のトリプルショック弾頭が作られて、さらに命中精度が向上しました。
この弾頭の場合、100mで2cm以内、300mで5cm以内のグルーピングは可能です、もしどうしても命中精度が出ない場合は弾頭ではなくて別の要因だと考えた方が良いでしょう。

マッシュルーム弾頭
マッシュルーム弾頭

XBT弾頭は、弾の回りが全部ライフリングが食い込みます、その為ライフリングに食い込む抵抗が大きいのですが、トリプルショック弾頭の場合、ライフリングが食い込む部分、つまりドライビングバンドの面積がXBTより少ないのです、その為にライフルイングに食い込む抵抗がXBTよりも少なく、そのバランスの微妙な加減が思わないところで高い命中精度を出せる事になりました。また溝を設ける事により銃腔内の銅の付着、つまりカパーファウリングを減少させた事も命中精度を高めた要因だと私は考えています。
画像をご覧頂くと解りますが、弾頭はマッシュルームの状態で弾頭自体は全然崩壊を起こしていません、この状態で獲物の体内を貫通すると細胞に今までの弾頭には無い非常に大きな破壊を与えます。
ちゃんとした所に命中すれば大きな獲物でも一発で即死する事は間違いありません。

さて、改めてバーンズ弾頭の説明を付け加えますと、純銅で作られたXBT弾頭は弾頭自体に潤滑性はありませんから、同じ口径なら出来るだけ軽い弾頭を使うことにより初速を上げ、結果的に命中精度と破壊力を高めて使うには適した弾頭です。
30口径のマグナム装弾でも130grの様な超軽量の弾頭も多く使われています。
値段は1箱50発入りで¥4,200です。

XLC弾頭は弾頭自体に潤滑性があるので火薬量を増やして初速を上げて使うにの適した弾頭です、テフロン、コーテングしてある分値段も高く、1箱50発入りで¥4,700です。

私の一押しは、新製品のトリプルショック弾頭です、命中精度と獲物の破砕力は充分で一番使いやすい弾頭だと思います、ローデングデーターはXBT弾頭と同じと考えて下さい。
値段は1箱50発入りで、¥4,200です。

バーンズ、バーガー、シェラ、ノスラー、ホナデイ、等々いずれの弾頭を使う時でも、マキシマムロードは必ず雷管の潰れ具合で確認して下さい。
本当に本当のマキシマムロードは、リローデングデーターでは分かりません。
いずれにしても、本当のマキシマムロードは、リローデング データーに書かれているマキシマムロードより、数グレイン上であることは間違い有りません(キッパリ))
でも、ここまで「キッパリ」言い切って、後でトラブルを持ち込まれてもかなわないので、このコラムの最後は以下のフレーズで締めくくりたいと思います。

このコラムに書かれていることは全部真実です・・・・・・・・・なーんちゃって!

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