銃身素材に付いて - パーツ&アクセサリー

2000年 1月 4日 築地

私の所では1丁数百万もする散弾銃から1丁数万円の散弾銃まで色々販売していますので、高い散弾銃は易い散弾銃と比べて銃の材質が違うのでしょうとよく聞かれます。 またカスタムライフル メーカーは特殊な鋼材を使っていると説明していますので多くの方が高い銃=材料が高いと勘違いして居られますので今回は材料と銃器について説明してみましょう。

ライフル銃でも、散弾銃でも、材料として使われるのはクロームモリブデン鋼です、これが唯一の銃器の材料です。数百万の銃でも、数万円の銃でも全く同じクロームモリブデン鋼です、部材の原価、つまり鋼材の値段で言うと銃身1本の鋼材原価はせいぜい2000円程度でしょう。銃1丁分の鋼材原価は5000位の物です。安い銃も高い銃も全く違いはありません。超高級銃はこれ以外の付加価値でその値段が決まります。

散弾銃の場合、ペラッチとブローニングの場合を例にとって説明します。

まずペラッチの場合です。最大の値段の違いは、彫刻の違い、そして銃床素材の違いがあります。彫刻の違いは職人の手間代ですから値段に違いがあるのは当然です。
何も彫刻がされていないのがMX8ですがSC3は彫刻があります、この上がSCOそしてSCOのサイドプレートモデルと続きます、最高級はエキストラモデルです。
基本設計はいずれのモデルも同じですが、スタンダードモデルのMX8の場合、たとえば銃を折ったとき一番折った時にハンマーがコッキングされるのではなく、その少し手前でハンマーがロックされます、つまり銃を目一杯まで折った時に力を抜くと、ほんのわずか折れが戻ります、この位置ですと初矢の弾を入れる弾のリムが機関部の上端に当たるときがあります。しかしSCO以上のグレードになると、銃を一番折った時にハンマーがコッキングされるように微調整がされています、この調整は極めてやっかいな作業ですし、後々部品がすり減るとハンマーがかからなくなります、そのためSCOの部品には硬質クロームメッキが施してあります。こうした調整がされているのも値段の高い理由です。

ブローニングの場合、グレードはA、B、C、D、とあります。
一番安いのがAグレード、一番高いのがDグレードです、A、B、C、のモデルとも最初の内はロッキングするときも硬く、いかにも新銃と言う感じですがDグレードになると中古銃の様に簡単に折り曲げる事が出来ます、これは決して使い込んだ訳ではなく徹底的に当たりと摺り合わせをやってあるため最初から作動部分が軽いのです、これだけ摺り合わせをやってあると、使い込んでも削れる所はあまりありません。勿論彫刻も最高級の物がされていますが。

ライフル銃で一番高い銃は水平のダブルライフルです、これが高いのは強力な圧力を水平二連の構造で持たす為のロッキング機構と、100メートル先で2本の銃身が3センチ以内に集弾するように調整するのが極めて煩雑だからです。
2本の銃身は鑞付けで付けられていますが、鑞付けしたときには平行だった銃身も、銃身が冷えると微妙に反ってしまうからその調整が極めて大変な作業なのです、このように銃が高いのにはそれどれちゃんとした理由があります、おおよそ材料が高いから銃の値段が高いと言うのはどう考えても理屈に合いません。

銃の素材として一番優れているのがクロームモリブデン鋼なのです。銃を作る上で一番大切な特性は、加工性と引っ張り強さです、銃が異常高圧になったとき、堅すぎて割れるような材料は危険すぎて使えません、ですから一番折れにくい、曲がりにくい材料を使うのです。ライフル銃を例に取ってお話ししますと、銃身、機関部、ボルトとある中で同じクロームモリブデンで作りながら、熱処理の過程で一番柔らかく作るのが銃身です、その次が機関部、ボルトは一番堅く熱処理します。これは異常高圧が発生したとき銃身が膨らんで危害を防ぐ為なのです。
ボルトのロッキングが折れると大惨事になることは皆さんも容易に想像がつくはずです。ですからいたずらに堅い材料を選択するのは大変な大間違いと言うことになります、勿論熱処理を間違って堅くしすぎることも大惨事になります。
ですから、私から言わすと、この銃は焼きが違うとか、材料が違うと言う理論は大間違いの理論と言うことになります。決してそのような話をありがたがってはいけません。
クロームモリブデン鋼は車のシャフトや、クレーンのフック、スパナ等の材料として使われています、クロームモリブデンより少し粘りも強さも強い材料としてクロームバナジュームがあります、40年くらい前に作られていたブローニングのハイパワーライフルの銃身はクロームバナジュームで作られていました。今まで作られた銃身の中では最強の銃身でしょう。しかし最強である分、加工性が悪いのです
私も一時期この銃を使った事がありますが、命中精度は決してよくありませんでした、はっきり言うと劣悪でした、ですから材料が堅いと言うことは銃として決して完成度が高いことでは有りません。
ベンチレスト射撃の世界では銃身はステンレスと言うのが常識ですが、これとて303や18-8ステンレスのような、流し台に使うような強靱なステンレスは絶対使いません、わざわざ隣や硫黄などの不純物を混入して堅さも粘りもクロームモリブデンと同じ物を使っているのです、その理由は加工性を良くして精密な加工をするためです、銃身にステンレスを使う唯一のメリットは、錆びないこと、ただそれだけです。ヨーロッパで作られるダブルライフルの多くは、その材料としてBuler(ボーラー)スチール使用と刻印されている事もあります、そんためこの材料は何か特殊な鋼材と勘違いしている人も居ますが、これもオーストリアのボーラー社で作られているクロームモリブデン鋼です。ボーラー鋼も昔は不純物の無い優れた鋼材でしたが現在の製鉄技術では国産でも遜色の無い鋼材が作られるようになったためボーラー鋼を使う意味は無くなりました。同じようにドイツではクルップスチール等、イギリスではビッカーススチールの名称もありますがこれもクロームモリブデン鋼です。 

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