銃床材を極める - パーツ&アクセサリー

2004年 6月21日 築地
更新(インレット画像追加、油仕上げ追加) 2004年 6月22日 築地

外国ではこうした銃床材料をfancyu woodと言うのですが、日本には適切な訳文がありません、銘木という言葉は適切ではありませんね。これよりも全然レベルの低い材料でも銘木として売られているからです。銘木よりも何ランクも上の銃床材ですね。
ペラッチの最高級銃でも、FNの最高級でも使われていません。
あえて言えば値段の有って無いような、フェラッハのダブルライフルには使われています。ですから1千万円クラスの銃に使われているのですね。
詳細は拙著、IWAリポートをご覧下さい。
私がドイツで開催されたIWAに行った時、このfancyu woodの銃床を2本買ってきたのですが、誰も買う人は居ないだろうと思いながら、¥380,000と言う値段を付けたら、お客様の中でどうしてもその銃床材料が欲しいと言う方がおいでになり、結局2本ともお客様に御譲りせざるを得なくなりました。
2本とも手放したために、自分用に使う銃床材料が無くなり、急遽ドイツにメールを送り、追加で2本の銃床材料を購入しました。
ドイツの銃床屋さんとは画像でやり取りしましたが、そのやり取りした画像がこれです。

素材
素材

この画像の銃床素材を2本購入しました。左側の素材は私が使いましたが、右側の素材は神奈川県のMさんが購入され、ミロクスペシャルの銃床素材として作られました。
ミロクの銃ですから、高知のミロクに送られて加工されたようですが、私は未だ見せて頂いてないのですが、多分すばらしい出来上がりだと想像しています。
言うまでもなくミロクにもこのクラスの銃床材料は有りませんからね。
あれば私から購入する必要もありません。

私はこの銃床を手持ちのベレッタ451EELLに使用しました。
この銃をこの材料を使い、オイル仕上げで作り上げるつもりなのです。
この手の銃床はほとんど日本には輸入されていないと思います。何故なら私自身はこれと同じ様なレベルの銃床は未だに日本国内では一度も見た事がないからです。
こうした銃床材の木質は、巨木の木の根っこの部分僅か1m程度にしか存在しません、小さな丸い渦巻きはそこの部分から細い根っ子の枝が出ていたことを物語って居ます。また木目が波状に波打っているのは何十トンもの木の重量を支えているために導管が真っ直ぐ成長できなかった事も意味しています。こういう根っこの部分は何百年と経過た巨木でないとこういう木質になりません。
何百年のも間には落雷と言うアクシデントに遭うのは当たり前のことですが、落雷に遭うと木の中心が焼けこげ、その部分は腐ってしまいます。落雷に遭わなくても多くの大木は中心が空洞になっている物も少なくありません。大きな大木ほど落雷に遭う可能性は高くなります。ですから、こうした完璧な素材が入手できるのは極めて希な事なのです。
こうした貴重な素材は西側諸国では完全に枯渇して、この材料はかつての共産圏、アゼルバイジャンで入手出来た物なのです。かつての共産圏ではこういう貴重な素材を掘り起こしても売れる場所がありませんでしたので、幸いな事に現在まで持ちこたえていたのです。
でも将来的にはここでもいずれはいつかは枯渇することは明白な事実です。
こういう特選銃床が今まで日本に無かったと言うのは、銃床屋さんに持ち込むと簡単に解ります。多くの銃床屋さんは「割れが多いね」「ひびが有るね」甚だしい場合は「節があるね」とさえ言われかねません。そういう銃床屋さんは今までこの手の銃床の加工をしていないためにそう言われるのかも知れません。逆に言うとこういう銃床は今まで見たことがないと言う証でもあります。
でもこの手の銃床材料には割れは避けられないのです。割れと言っても致命的な大きな割れではなく、多くの場合、横で数ミリ、幅で0.数ミリと言うレベルです。

インレット1
インレット1

木の根っこの部分には多くの水分を含んでいますが、乾燥の途中で水分が蒸発しますと、必然的に細かい割れが発生するのです。木質が真っ直ぐなら簡単ですが、根っこの部分ですので導管が複雑に入り組んでいるため、全体的に小さなひびが存在しているのです。
普通ならこうした割れはエポキシや砥の粉を目止めして修正するのですが、私は同じ材料から切り出した木片を丁寧に1つずつ埋めていきました。

インレット2
インレット2
インレット3
インレット3

安物なら目止めで簡単に補正するのですが、高い材料ですからこうした方法を採るのです。
1970代、アメリカで修行中の私は銃床制作の過程で良くこういう作業をやった記憶があります。
多くの場合がくさび状に削りだした木片で、横幅数ミリ、先端は0.2ミリ程度です。
それをラジオペンチを使い空洞に押し込みます、有る程度挿入できたら、軽くハンマーでたたき込みます。ハンマーでたたき込むとほとんど隙間は視認できません。勿論接着剤も使いません。本来はこうした作業も銃床屋さんの作業なのですが、日本の銃床屋さんではこういう仕事の体験が無いために、私が自分でこなしているのです。

未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床
未完成銃床

画像では見にくいのですが、未完成銃床には細かい割れが無数にあるのです。
細かい作業ですが2日もあれば完成ですね。
あとは仕上げをしてチェッカリングをして銃床の外見は出来上がりです。

銃床油セット
銃床油セット  (¥14,000)

これからいよいよ、銃床の油仕上げに入るわけですが、銃床仕上げに使う油はわざわざヨーロッパから取り寄せました、私がIWAで購入してきた物と同じ物ですが、購入分は全て完売しましたので追加で輸入した物です。
銃床油セットは、シーラー、銃床油、硬化剤、800番耐水ペーパーのセットで、¥14,000です。
銃床油セットの、一番右側にあるのはシーラーと呼ばれる溶剤です。
何か特殊な溶剤かと思ったのですが、単に砥の粉を溶かしただけの物みたいです。
砥の粉ですから銃床の導管を目止めする物ですね。少し塗るだけで木が非常に乾燥しているのでどんどん染みこみます。

シーラーを塗る
シーラーを塗る

どんどん染みこんでどんどん乾いていきます。溶剤を調べたら水溶性です、その為に染み込みが良く、乾燥も早いのですね。
シーラーは手で塗りますが、手に付いたシーラーは水道水で洗うと簡単に落ちます。

有る程度シーラーを塗り込んだら、付属の180番の耐水ペーパーで空研ぎします。
つまり、何も付けないで銃床の表面にペーパーをかけるのです。そうすると余分な砥の粉が削れ、導管には逆に砥の粉がすり込まれます。
次のステップでいよいよ銃床油を擦り込みます。
銃床の表面に油をタラ~と流し、その上からコルクの板に巻いた、180番の耐水ペーパーで研ぎ上げていきます。
勿論木に巻いて研ぎ上げても良いのですが、コルクの方が木になじむので作業がはかどります。でも間違っても手で研ぎ上げないように注意して下さい。
手で研ぎ上げると表面を平面に仕上げることは困難です。

銃床油は、導管の粗いところはどんどん油を吸い込んで行きます、木質の堅いところはあまり吸い込みません、そうして銃床に綺麗なコントラストが生まれます。
銃床全体を銃床油と、180番の耐水ペーパーで研ぎ上げたらいよいよ仕上げです。

付属の硬化剤を銃床に垂らして全体に行き渡るように擦り込みます。
布を使っても良いのですが、手でやった方が細部まで完璧に出来ます。
硬化剤と言うと、これで銃床油がカチカチになると思われるでしょうが、そうではありません、銃床油が「シットリ」としてくるのです。不必要に染みこまないし全体的に表面にとどまり、全体的に「シットリ」した感じで完成します。

完成銃床
完成銃床
完成銃床
完成銃床

銃床の油仕上げと言うと、相当長い時間かけて完成させている様に思われるかも知れませんが、実はこの仕上げは8時間程度で完成させたのです。
ビジネスの場合、不必要に時間をかけるのは問題です。これくらいの時間で完成させるのが工場サイドでは常識なのです。この様に短時間で完成させるのには専用の銃床油セットが不可欠です。市販されているアマニ油を塗り込んで居たのでは1ヶ月かかっても完成しないでしょう。
何故なら1ヶ月擦り込んでも、まだまだ幾らでも油が染みこむからです。
逆に銃床が熱い場所に置かれると油が浮き上がってきます。油が「シットリ」落ち着くには硬化剤が必要なのです。

銃床油セットは、シーラー、銃床油、硬化剤、
800番耐水ペーパーのセットで、¥14,000です。
  *この機会に是非、御注文ください。

銃床油セット
銃床油セット(¥14,000)

私は銃床の取り付け取り外しは自分でやりましたが、一般の方は銃床の取り付け取り外しは必ず銃砲店、または銃床屋さんに任せて下さい。
散弾銃のネジは全て特殊なネジですから、間違ってネジの頭を滑らせると補修がききません。ネジの頭には彫刻があるので他のネジでは補修が出来ません。
また彫刻のスタイルがそれぞれ独自なので、他の彫刻師に依頼しても駄目なのです。
そのリスクを考えると、絶対に自分で銃床は取り外さないように注意して下さい。

完成銃床
完成銃床
完成銃床
完成銃床

最後になりますが、こうした難作材料なのに嫌な顔もせず、なおかつ非常に高度な工作を要求されるサイドロックの銃に最高の加工をして頂いた、栗原銃床製作所の皆さんに最大の感謝の意を表します。

皆さんも高度な銃床加工を依頼されるときは、栗原銃床製作所をご利用されると良いかと思います。以下、住所と電話、FAXを明記しておきます。

〒145-0066 東京都大田区南雪谷5-17-22
栗原銃床製作所
電話:03-3727-7203 FAX:03-3727-7219

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