銃の着色方法に付いて - その他銃に関する情報

2000年 1月29日 築地
改訂 2000年 2月25日 築地

銃の色を英語ではガンブルーと言います、そして着色作業の事をブルーイングと言います。
銃の色は黒いのにガンブラックとは言いません。これは何故かと言いますと、昔、銃の色はブルーだったのです。当時入手できた化学薬品では銃を漆黒に染めることはできす、銃の色は深い青色をしていたのです。最近では西部劇当時の銃を再現しているメーカーもあり、コストピースメーカーを、あえて深い青色に仕上げているところもあります。
現在は化学薬品が色々作られ、金属の表面を漆黒の色に染めることが可能になりました。防錆効果もブルー仕上げよりは、漆黒仕上げの方が皮膜も丈夫になっています。
この着色皮膜ですが、多くの人が金属の表面に何らかの物を重ねていると考えているようですが、メッキの場合は何らかの金属を重ねていますので、メッキの厚さが30ミクロンとか言いますが、銃の黒染めの場合は、金属表面の変化だけで着色していますので寸法的に重ねられているのでは無いのです。つまり寸法そのものは全く変化していないのです。
あの黒は、いわば金属の表面に出来た錆みたいな物です、ですからこの着色皮膜は酸化被膜と呼ばれています。酸化被膜と呼ばれながら表面はアルカリ処理されていますので、酸には極端に弱く、銃身に錆が浮いたときなど、どうかすると日曜大工道具店から錆取り溶剤を購入して来て、銃身表面に塗った途端"ギエッ"と言って溶剤を塗ったところが白く変化して大慌てと言う状態で相談を受けることがありますが、これは錆取り溶剤が酸性なため、瞬時に表面が中和されるからです。
これを補正するには再度着色のやり直しをしなければなりません、ですから銃身に錆が浮いたときは一番細かいスチールウールで油をつけながら丁寧に錆を除去するしかありません。間違っても薬品で錆を落とそうなど考えてはいけません。

着色方法

銃の着色には2つの方法があります、1つはライフル銃や散弾銃の自動銃などに着色される、通称ホットブルーと呼ばれる着色方法と、散弾銃の上下2連や、水平2連の銃に施されるコールドブルーです、これは2連銃のように銃身の接着に鉛を使っているかどうかでその処理方法が決まります。
昔、銃のメーカーは銃身を着色する溶剤をそれぞれの会社で独自の研究で作り出して使っていました、当然企業秘密でした、しかし世の中でメッキ業が盛んになるにつけ、金属の黒染めもメッキやさんの仕事となり、黒初めの溶剤がメッキ材料屋さんから販売されるようになると、これらの溶剤の方が遙かにコスト的にも、そして仕上がりからも遙かに優れた物が出されるようになり、メーカーの黒染め液の自作は無くなりました。
皆さんも目にされるチャンスは多いと思いますが、6角穴のボルトなどはみんなこうした黒染め液で染められているのです。
しかし、ボルトと比べると銃の仕上げは比較に成らないくらい真っ黒で美しい色をしていますよね、実はこれ、単に表面の仕上げだけの問題であのような色の違いとなるのです。
メッキ屋さんが受け取るボルトの黒染め費用は、1本1円にも成らないくらいの安い費用です。しかし銃身の着色となると、修理の場合は2万円くらい要求されるのでは無いでしょうか。

黒初めそのものはほとんど同じプロセスなのですが、銃身着色の場合は銃身表面を徹底的に磨き込みます、この磨き込み費用が銃砲店で請求される黒染め代金の大半だと考えてください。着色その物は大した手間では無いのです。
この着色溶剤の主成分は化成ソーダです、強アルカリ性なので皮膚に着くと皮膚が溶けます、衣服に付いたら衣服が溶けます。かなりヤバイ薬品なのです、ですからこの薬品をメッキ屋さんから購入するには、排水処理の設備が整っていると言う証明書を出さなければ購入できません。
この溶剤は常温では白い結晶ですが、水と混ぜると化学反応で温度が上がります、それをガスで摂氏140度まで加熱します。140度くらいが沸点ですから溶剤が沸くか沸かないかの間くらいで処理します。ピカピカに磨き上げた銃身をその中に浸すと、おおよそ10分くらいで漆黒の色に変化します。それを引き上げ温水の中で洗浄し、乾かした後油の中に付けで出来上がりです。
この溶剤もある程度の処理を重ねると劣化してきて、漆黒の表面に錆色の不純物が薄く付着するように取り替えなければなりません。この取り替えの時に溶剤を全部中和して処分しなければ成らないのでメッキ工場と同じ排水設備が必要となるのです。
この黒染め方法が使えるのは、ライフル銃みたいに全てが鉄で構成されている場合のみ可能です、上下2連や、水平2連をこの溶剤に入れると、それぞれの銃身の接着に使われている鉛が反応しブクブク泡を出しながら鉛が溶解してしまいます。
従って2連銃の場合はまた別の着色方法で着色されるのです。
これに使われる銃身着色剤は銃砲店で市販されているインスタントの補修着色剤、タッチブルー、ガンブルーなどの名称で売られている物と基本的に同じ物です、しかしアマチュアとプロがやった場合、その仕上がりに歴然とした差が現れます、誰が見ても全然仕上がり感が違うはずです、それがプロの技です、ではそのプロの技を公開します。
アマチュアとプロではその磨き込みに最大の違いがあります、アマチュアが大体この位で良いだろうと思う以上にプロの仕事は表面を磨き上げます、表面の仕上がりは鏡、もしくはメッキ仕上げした金属表面と同じレベルまで磨き上げます、この仕事、ほとんど忍耐の仕事です。
そして表面を完璧に仕上げたあと、着色する銃をお湯の中に入れて全体の温度を40度にします。実は、このコールドブルー溶剤は40度の時一番反応が良いのです、40度以上だと反応が早すぎ全体にムラが出ます、40度以下だと反応が悪く、これまた色むらが出ます。
こうしたテクニックは何処のメーカーも何処のガンスミスも絶対に公開しませんが、このHPでは最先端の情報も、秘中の秘のテクも全面公開です。

さて、コールドブルーで着色すべき上下や水平を、色鮮やかなホットブルーで着色しているメーカーがあります、それはミロクです、これは実にお見事な技術です、また最新の注意を払わないと出来ないハイレベルの着色方法です。
先ほど、ホットブルーの溶剤の中に鉛を入れると化学反応して溶けると書きましたが、完全に溶けるまでは多少の時間があります、鉛が溶け出す前に金属の表面着色が完了すれば直ちに中和する事により反応の進行がストップします、つまり鉛が溶け出さないですむのです、ミロクの銃の銃口あたりを仔細に観察すると鉛の露出部分の表面が梨地に成っていますが、これは溶剤の中で鉛が反応した後です。これをやるには着色剤が最大限に金属に反応するように温度管理を徹底し、なおかつ溶剤の劣化を絶対起こさないようにしなければなりません、ミロクの銃は事着色に関してはトップクラスの技術を継承しています。

下線の事に対して、東京の吉田銃器さんから間違いだとご指摘がありました。
私はミロクの上下は鉛で付けてあると思っていたのですが、これは銀蝋付けだそうです、鉛を全く使用していないのホットブルーで処理できるわけですね、銃口の所に鉛が露出しているのでてっきり鉛を使用していると思ったのですが、私の間違いでした。
鉛は後で挿入して居るみたいです。お詫びして訂正いたします (2月25日訂正)

燐酸被膜について説明します、この被膜はいわゆるパーカーライジングの事です。
この被膜は通常の銃には使われませんが、しかし軍用銃等は全ての銃がこの処理をされています。もともとこの処理方法は戦艦の砲身処理のためアメリカで開発されたものです、戦艦の砲身に使うと言うことは防錆効果が特出していると言うことです。この被膜は今まで説明した表面処理と違い、金属の表面に結晶が積層していくので寸法が変化します。従ってライフル銃の銃身に施す場合、銃身内部まで結晶が積層するので内径寸法が変化し、故に命中精度が劣します。
パーカーライジングの表面は白い結晶が付着したような仕上がりですのでそのままでは銃器の表面処理としてはいささか不都合が生じます。そのためパーカー処理した後、表面を着色するのです、第2次対戦用に作成されたM1ライフルには最初、グリーン系統の混ざった黒色の染料が使われました、最近のパーカーは全部黒色なので、コレクターの間ではグリーンがかったパーカーは貴重品扱いです。

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