レミントンの失敗 - コーヒーブレイク

2000年 8月25日 築地

日本の景気は回復したか? と言うことが色々な媒体で言われているが、私の個人的な意見で言うと回復した企業もあれば、さらに業績が悪化した企業もあるであろう、今までは概して横並びであった日本の経済は今大きな過渡期に立っていると思う、これからは業績の良い会社と悪い会社が決定的に選別されるのではないかと思えてならない。
私の生業とする銃砲業界も今年は昨年よりも業績の悪いところが大半ではないだろうか、それを裏付けるように東京都の統計によると都内の銃砲店は3割が閉鎖したそうである。
幸いなことに当社は毎月の統計で見てもここ数年間、常に前年比20~30%平均の売り上げUPが継続している。現在の所2位以下を大きくリードしてダントツの1位であることは間違いないであろうがこうして売れている間は調子に乗りがちだが、過去の経験からすると、案外ここに大きな落とし穴が隠れているものである。

私も来年は調子をこいて商品相場に手を出し、あえなく倒産などと言うことに成らないよう気を付けなければと想うこの頃である。
かつて私もバブルの頃は株式相場で数千万円の利益を上げたのだが、バブル崩壊後動きの少ない株式相場に嫌気がさして、値動きの早い商品相場に手を出し、数ヶ月で数千万円をすってしまった事がある、そのおかげで為替の読み方は今でも下手な経済アナリストよりもよっぽど確かで、現在も為替の読みでは大はずれしないですんでいる。
こうした事が銃の仕入れには多少役立っている現在である。

さて、アメリカの好景気は数年前から現在も続いていて、銃砲関係も好調な売れ行きである、当然レミントンも売り上げが上昇していた(のだがと過去形にしておく)、アメリカのビジネス方法としてボリュームデスカウントと言う方法が多くの場合に取り入れられている。5丁仕入れる銃砲店と、100丁仕入れる銃砲店では仕切り値段が違うのである。この値段が違うという事の外に、買い入れ量に応じてキックバックと言う、リベートが払い戻される。
従来の銃砲業界で言うと、このキックバックリベートを受け取れるのは、デストレビューターと呼ばれる、いわゆる問屋さんだけであった。
この問屋さんと同じ規模と言いたいところだがその何倍もの規模で大量購入するところが現れた、それはK-マート等に代表される、いわゆる巨大スーパーマーケット群である。
アメリカのスーパーマーケットと言うととてつもない大きな規模である、それが全米ネットで銃を仕入れたら、それこそとてつもない注文が舞い込むことになる、その総数に応じてボリュームデスカウントを実施するとなるとレミントン始まって以来の値引率になったことは間違いない、販売価格も常識はずれで銃砲店が仕入れる価格より、スーパーの店頭で売られている価格の方が安いという逆転現象が起きるようになった。当然銃砲店の店頭からはレミントンの銃は徐々に姿を消していくことになる。

異変が起きたのは銃を使った事件がテレビ等で大きく報道されるようになってからである、特に学校で銃を使った殺傷事件が多発するようになり、銃に対して風当たりが急に険しくなってくると、多くの家族がショッピングするスーパーマーケットでは徐々に銃の取り扱いを止めるところが増えてきた、特にチェーンストアーなどは本社が取り扱いを中止すれば全国的に中止するわけであるから、その影響は相当大きい数字となる。
そして現在では銃を取り扱っているスーパーマアーケットはほとんど存在しないところまで来ているのである。
レミントンとしても大弱りで、セールス担当の社員に営業に当たらせたのだが売れるところは銃砲店しかない、しかしながら今や銃砲店のオーナー達は、レミントンがスーパーマーケット群に銃砲店が立ち居かないような値段で銃を卸していた経緯があるので、今度はレミントンだけは意地でも売らないと言う雰囲気になって居ることにすぐに気付く事になる。レミントンボルトアクションライフルに対抗する銃としてはサコーがある、自動ライフルに対抗するにはブローニングがある、散弾銃に至っては、ベレッタもブローニングも、ウインチェスターもある。
銃砲店の方で、こちらの銃が故障が無くて良いですよと言えば、どちらにしようかと迷っているお客ならためらいもなくレミントン以外の銃を選択することになる。

その影響をもろに受けてレミントンの業績はがた落ちとなった、会社の格付けも落とされ、業績不振の会社と言うことになってしまった、このアメリカの好景気の時に絶好の稼ぎ場を無くしたことになる。おいしい所はみんな他のメーカーに持って行かれてしまったのである。ここまで書くとレミントンの銃はマーケットに満ちあふれていると思われると思いがちだが現実問題はそれと逆の現象が起きているのである、それはレミントンの製造システムに根幹がある、レミントンはライフル、散弾銃を合わせると60種類くらいの銃があるが、そのいずれも、1種類で8000丁の注文がないと製造にかかれないシステムが出来上がっているのである、もっとわかりやすく言うと1種類8000丁が採算ベースなのである。これ以下の数量で生産すると間違いなく赤字になってしまうのである、従っていくら注文があっても8000丁以下では作れば作るほど赤字と言うことになり、結局作れないため市場からレミントンが姿を消しつつあるのである。

今やレミントンは超品薄ブランドである。

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