代理店制度を考える - コーヒーブレイク

2001年 1月27日 築地

どうも日本人はことのほか"正規代理店"と言う名前に弱いようである、そういう人たちにすればメーカーの正規代理店資格を得ることは、あたかも宝の山を掘り当てたような錯覚に陥るかも知れない、正規代理店と言う資格はそのメーカーの製品を独占的に取り扱う事が出来ると言う事を意味している、この事は40年くらい前の日本では確かに意味があった。それは日本政府が外国製品の輸入を抑えるため、正規代理店以外の製品に対して輸入許可を出さなかった時期があるからである。いわば第二次大戦度の、戦後処理政策の一環であったこである、パーカー万年筆など、正規代理店以外の並行輸入と言うか、輸入経緯が解らないような商品は東京上野の"アメ横"で購入したものである、ここで購入すること自体何かいかがわしい行為をしているような、半社会的な行為をしているような、そんな雰囲気に陥る、ここで購入した商品は、とうてい正規代理店に修理に出せないなと思わせる何かがあった。

しかし、この様な悪しき政策は日本経済が復興するとともに直ちに見直され、正規代理店資格を有する者は、その製品の修理を拒否できないと言う判例まででた、私の知る事例は、当時ベンツの輸入代理店であったヤナセに対して修理拒否をされたユーザーが訴えて、ヤナセ側が敗訴して事である、(この事例は私の記憶だけで書いていることなので事実関係に間違いであったら謝ります、事実の経緯について指摘があればこのページで公表します)
 これは海外でも当たり前のことで、これが世界の常識なのだが、当時の日本は正規代理店資格を得ていることはあたかも日本政府がその既得権を法律で守ってくれているような錯覚を持ったのである、頭の良い人たちは代理店資格の虚像についてすぐに現状認識できたのだが、悲しいことに我々銃砲業界には未だにこうした代理店資格についての誤った認識に支配されている人が多いように思えてならない。
私の亡くなった友人に、現代狩猟の奥城さんと言う方がいるが、この人がMTMと言う会社の代理店資格を得るために、大量のMTM製品を注文された事がある、MTMと言うと弾箱を始めとした色々なプラスチック製品を取り扱っている、ライフル用の弾箱など50発入りの物で、輸入原価は¥300位だったろうか、それを数百万円の単位でオーダーされたのである、そのおかげで代理店資格は得られたが、大量の製品がアメリカから送られ、倉庫代だけで毎月100万円払っていると話されていたが、冗談だったのか本当だったのかは私は知らないが、弾箱など消耗品ではない。事実私は40年前に購入した弾箱を未だに使っている、決してケチでやっているわけではないが、壊れようがないから捨てようもないのである。大量に仕入れられたMTM製品がなかなか売れなかったことだけは容易に想像がつく。その奥城さんに対して、MTM社は来年度の代理店契約を更新するには今年度の***%UPの注文をしないと代理店契約を取り消すと通告があり、事実関係は知らないが、多分契約をうち切られたのではないかと思う。
これが代理店契約の現状である、海外の会社から考えると代理店契約は終身契約ではなくたかが1年契約なのである、勿論代理店契約を数十年にわたり継続している事例は多々あるが、それはあくまで相手の会社がその方法が一番有利だと考えるからである。
代理店になった側はその代理店契約を失わないために、常に相当数の数を売らないといけないと言うジレンマがある、そのため代理店契約をしている会社は、日本全国に製品を売るため製品の値段を異常なまでに高くする必然性が出てくるのである。
つまり、輸入元自身利益を**%、商品を卸してくれる大卸の利益を**%、卸し業者の利益を**%、小売店の利益を**%、てな具合に乗せていくので、原価$500の物が日本の小売価格では20~30万円と言う値段に化けるのである。

しかしながらこういう流通システムを経由しないと大量に販売することが出来ない、メーカーにとっても大量に売れることは良いことであるから、こうした馬鹿げた代理店制度を後押しすることになる。結局一番馬鹿を見るのは消費者である。覚醒剤並の利益率を課せられた銃を騙されて買うわけである。正規代理店の製品というのは大半が流通マージンだと言うことを忘れてはいけない、銃本体の値段はその30%程度でしかない。

70%の価格は業界への寄付金だと考えた方がわかりやすい。

2年に1回、銃砲年間と言うカタログ誌が発行されているが、それには正規代理店のオンパレードである、この銃砲年間によると今回私が新製品として売りに出したウインチェスター 9410は¥250000である、これに対して当社の値段は¥89000である、レミントン、ペラッチ、の価格については、お気の毒なので正規代理店価格はあえて公表しない。
当社はどこの会社の銃器代理店資格も得ていない、それは代理店資格を得た瞬間から相当数の銃を販売しなければならない義務を負うため、どうしても流通経路に乗せる必要があり、結果的に高い値段を設定することになるのである。
ショットショーなどで、ペラッチを仕入れようとしてペラッチのブースに出向いて"売ってくれ"と言っても、ペラッチは日本の正規代理店****から買えと言われるだけである、しかし、アメリカで売っている店を教えろと言えば、親切に教えてくれるはずである。これは、直販は出来ないが、わざわざここから買えと言っているようなものである。こういう方法でいくらでも銃は買えるのである、私の知る限り、日本では6~8社くらいの会社はこういう方法でペラッチを仕入れて売っている、店頭で正規代理店経由として売っているかどうかは定かではないが、もしチャントした"定価"で売っているなら大した儲けと言うことができるであろう。

代理店資格をとれば輸入する原価は私の仕入れ価格より10%~20%は安くなるはずである、しかしながら、その反面、販売数をこなすと言う難問も抱えることになる。
よって私の提示価格より遙かに高い価格設定をせざるを得ないことがお解りいただけたであろうか、正規代理店から正規代理店価格で銃を購入すると言うことは、60~70%の部分が業界への寄付行為だとお考え頂きたい。
であるからして、私は生涯、いかなる親しい銃器会社でも正規代理店と言う看板を掲げることは無いと思う。これが私が正規代理店を受けない最大の理由なのである。 

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