飛翔する弾を見る - コーヒーブレイク

2002年 9月 4日 築地

高速度写真で激発の瞬間を撮影すれば、誰でも銃口から飛び出たばかりの弾の映像を見ることが出来る。
しかしながら、それは停止した画像であり、私の言っているのはそうではなくて、実際に飛翔する弾頭、例えば22口径で撃った弾を見る、大口径で発射した弾を見る、あるいは散弾銃で発射した散弾を見ると言うことである。

空気銃の弾も視認できないのが現実なのにそんなことが出来るかと言うと、何故かこれが出来るのである。空気銃の弾が何故視認できないかと言うと、空気銃の場合、ほとんどの射撃場が室内で、しかも蛍光灯の明かりの中で射撃をしているからである。屋外で、早朝に逆光の中で撃つと空気銃の場合、案外簡単に視認できる、それも10mでなく、30m位で撃つとより明確に飛翔する弾が見えることがある。
しかし、空気銃弾の飛翔を見たところで別段どうと言うことはない。
意味があるのは空気銃以外の弾道を視認することなのである。

まず22口径ロングライフルであるが、これはアンシュツでも、ファインベルクバウでも、ワルサーでも、如何なる銃でも簡単に視認できる。
視認する方法は通常のアイアンサイトの代わりに、36倍程度の高倍率のライフルスコープで射撃することである、そうすれば誰でも簡単に自分の撃った弾道を見ることが出来る。22口径の弾道を子細に観察すると、単純に銃口を離脱した弾が、単純に上昇した後に、引力の力で下降して標的に吸い込まれるという単純な上下運動の挙動ではなく、僅かに捻り込みをしながら飛んで行くのが視認できるはずである、極端な言い方をすると、野球ボールのカーブみたいな動きをしているのである、これが何を言うかというと、射撃する距離が変化すると、単純に上下だけの照準調整ではなく、僅かだが左右の調整も必要と言うことなのである。
センターファイヤーライフルで言うと、100mで照準調整した銃で300mを撃つと、単純に上下だけの調整ではなく、左右の調整も必要だと言うことなのである。
ライフル弾頭は距離に対して単純に上下しているのではなく、すこし捻り込み運動をしながら飛翔していると言う事になる、これはライフルの弾頭が猛烈なスピードで回転している為に起こる運動なのである、この運動が右回転のライフルと、左回転のライフルでは逆の運動をするのは言うまでもない。

センターファイヤーライフルの弾道を見る。
一昨日、アメリカで行われた1000ヤード射撃に参加してきた、ベンチレスト射撃協会の小澤理事と飲んだのだが、「初体験でいきなりの1000ヤードだと、照準調整が大変だったでしょう」という私の質問に対して、「スコアラーがいるから簡単でした」と言う答えであった。
スコアラーを観的手と訳すと誤解を生むことになる、スコアラーは観的壕にいるわけではなくて、射手の後ろでスコープを見ている人なのである。
観的手に弾痕をみて貰う限りに於いては、少なくとも標的内に命中しない限り弾痕の位置は観的手には解らない。
スコアラーは射手の後ろで見ているので、撃った弾が標的よりどのくらい、どの方向に離脱しているか簡単に視認できるのである。
小澤さんの話では、外国の選手は慣れているので、射手の後ろで見ているスコアラーも実は次の射群の射手なのであるが、初弾を見ただけで、何クリック上とか、下とか、指示して一発で照準調整が出来るそうなのである。
では、射手自身がライフルスコープを付けて撃った場合弾道が視認できるかと言うと、これは弾道の視認は絶対無理なのである、それは如何なる倍率のスコープ持ってしても、撃った時の衝撃とそれから発生する衝撃波、そして銃口から吹き出す火薬ガスのため、絶対に自分の撃った弾道を見ることは出来ない。
しかし、射手から数メートル離れて銃の衝撃波が影響しない、そして火薬ガスの影響の無い所で、40倍程度のスコープで見ていると、射手の撃った弾が飛翔するのがはっきり視認できるのである、物理的に言うと、100~300m以上で7.62ミリの物体を視認するのは通常のスコープの分解能力を超えているので理論的に見えるわけはないのであるが、ライフルの弾頭はマッハ3近い速度で飛翔しているので、大気の中で膨大な衝撃波を出しながら飛翔して行くので、それが弾道として見えるのである、その現象はミサイルが飛んで行くのを後ろから見ているのと全く同じ映像である。弾頭が起こす衝撃波は弾頭の直径の10~20倍くらいはあるのだろうか、相当大きな大気の揺らぎを起こすので、弾頭は容易に視認できるのである。
但し、この現象は近距離の射撃、または室内の射撃では視認できない。
300m程度の距離が確保できる屋外なら簡単に新視認できるのでお試しあれ!

話は違うが、アメリカの海兵隊の狙撃チームは必ず2名で行動する、一人は狙撃を担当し、もう一人はスコアラーを担当する、(厳密にはそれぞれの別の分担もあるが)狙撃する当人には弾道は見えないが、スコアラーにはスポッテングスコープを使って、射手から少し離れて見ているので、目標に対して弾道がどのくらいずれたか明確に指示することが出来るのである。
一昨年、私は北海道での長距離射撃に挑戦したが、その時は撃つのは私一人と思っていたので観的スコープを持参しなかったが、これは大失敗であった。
観的スコープがあれば、前もって決められた所までの弾道調整が出来たのである。
しかしながら狩猟法では猟場での弾着調整は禁止しているので、少なくともその時点で狩猟法違反を犯すことは無かったのではあるが!
数百メートルと言う距離で、鹿を狙う場合、照準調整が出来ていないと、何発撃っても鹿はキョトンとしているはずである、しかし、射手の方は、自分の撃った弾頭が何処に行っているのか全然解らないと照準調整の方法は全くない!
こんな時には、別の人に少し離れた場所から40倍のスポッテングスコープで見ていて貰えば、弾道がどのくらい上か、あるいは下かを簡単に指摘して貰う事が出来る。
是非とも一度お試し頂きたいテクニックである。

さて、次は散弾銃の弾道を見る話をしよう。
ガンマニアの私にとって、雨の中の射撃は出来るだけ避けたいところである、銃が雨に濡れると言うことは自分自身が雨に濡れるより何倍も辛い体験である。
特に上下2連銃の場合、リブの中に雨が浸透すると思いがけない所に錆が出たりする。
雨の中での射撃で雨の浸透を防ぐには、ひたすら撃ちまくる事である、3ラウンドくらい連続して撃つと、銃身が手で触れないくらい加熱するので、撃ったあと直ぐに雨のかからないところに移せば、銃自体の熱で銃にかかった雨は全て蒸発してしまう。
雨の中で私が何かに憑かれた様に射撃するのはそのためである。決して雨女か何かが憑依している訳では無いので誤解の無いようにお願いしたい。
さて、雨の中の射撃は決して悪いことだけではない、通常の雨では見えないが、豪雨の中でクレーを撃つと、明瞭に散弾の弾道が視認できる、これは飛翔している散弾が雨と衝突して起こす現象である、こうした現象を視認すると、多くの人が「散弾銃のパターンは以外と小さいな」と、と思われるはずである。
ところが、パターンの外側の散弾は密度が薄いのであまり雨と衝突しないと見えて、実施あのパターンの半分程度にしか見えないはずである。
雨の中でも射撃で一番有用なのは、パターンを視認することではなく、銃がちゃんと振れているかどうか、つまりスイングが正しいかどうかを確認できると言うことである。
ある時、豪雨の中で初心者の人と射撃をすることがあったが、このビギナー氏の場合、クレーを追うスピードが遅いので、毎回明らかに後ろを撃っているのが視認できる。
初矢、二の矢、と撃つのであるが、2発とも毎回クレーの後を撃っている。
この様にはっきり銃のスイングが確認できるのが、豪雨の中の射撃である。

ちなみにライフル銃の場合、相当な豪雨でも弾道上の数カ所で弾道と衝突した雨が飛沫をあげるが、弾道を視認すると言うまでには言えない。
参考までに言うが、豪雨の中での射撃でも、雨は弾道に影響を及ぼさないと見えて、ほとんど弾着の調整は必要ない。(全くと断言しても間違いではないでしょう)

豪雨の中のクレー射撃では弾道の視認は出来ても、パターンは実際よりも小さく見えるので豪雨の中ではパターンを視認する事は出来ない。
長年ライフル射撃をやってきたおかげで、条件によってはスポッテングスコープを使わなくても、自分の撃った弾道を見ることがある。さすがにセンターファヤーの弾道を見たことは無いが、22口径ロングライフルの場合、初速が遅いので自ら視認することが出来る。
但し、これには条件があって、早朝に逆光で屋外の射撃場撃つと、何らかの加減で太陽光線が弾頭に反射して見えることが出来る、これも滅多に無いことなのでこういう条件なら必ず見えると、その再現性を指摘することは出来ない、しかしながら22口径の場合、自分の弾道を見たと言う人は以外と多いはずである、決して虚言癖で言っている訳ではない。

さて、ライフルでこうした体験をしたことがあるので、何とかクレー射撃でも見ることが出来ないか色々試してみた、その結果、どのようにしても自分の撃った弾は未だに視認できていないが、人の撃った弾は視認出来るようになった。
これも、早朝逆光の中でしか視認できないが、太陽光線の加減によっては見ることが出来るようになった、ライフル弾頭とちがって、散弾銃の場合の弾道は、薄い雲が猛烈なスピードで飛翔するように見える、何回か見ている内にパターンは勿論、コロンの形状まで見えるようになった、銃口から離脱した瞬間の映像はいくらでも存在する、その映像は、まだパターンと呼べるほど散弾が広がっていないので、先頭から順序よく連なっているだけでしかない、しかしながらクレーに命中する時点では散弾は充分拡散しており、私の視認した限りだと、上の丸い形状の蓋が、横になって飛んで行く様な形状である、球を半分に切ったような、そんな丸さでは無く、丸味を帯びた蓋と言う表現が一番的確であろう。
これを見ると、パターンの端でクレーと捕らえると、割れる力が少ないと言うか、堅いクレーだと割れないな、と言うことが具体的に実感できる。 

ブランド
カテゴリー
ページの先頭へ