ウエザビー マークV ウルトラライト - 裏側まで、徹底解説

2000年11月11日 築地

上記の文字はマークV(ヴイではなくて、ファイブ)です、アラビア文字の5と言う意味ですからお間違いの無いようにお願いします。
マーク*と言う言い方は、改良型*号と言う意味ですから、当然最初にはマーク1があったはずですが、ほとんどの人が1,2,3,4,は知らないはずです、ほとんど社内的な改造のレベルでほとんど市販された銃はありません、従って最初に市販された銃はマーク5だったのです、それからオイル仕上げ銃床のユーロマーク、とかレーザー光線で彫刻をしたレーザーマークとか、銃身をフルート加工したアキュアマークとか、銃身の太いバーミンターとか、マーク5を更新できるモデルが色々リリースされましたが、名称が相変わらずマーク5ままなのは語呂が良いからなのでしょう。車で言えばトヨタのマーク2と同じ感覚なのでしょう。

全体図
全体図

さて、当社では長い間ウエザビーは取り扱って来なかったのですが、一昨年、計量のウルトラライトがリリースされてから取り扱うようになりました、それは私の目から見てなかなか出来の良い銃であったからです。
なによりも軽量なのが最大のポイントです、元々ウエザビーは細い銃身をしているので重量としては軽かったのですが、機関部が重すぎました。ボルトラグの外径がボルトボデーの外径と同じ寸法のため、ボルトの重量が思いの外あったため軽量化に限界があったためです。ボルトボデーの外径を細くしないと軽量化は限界があるのです。しかし308や、30-06口径のウルトラライトがリリースされて、マグナム口径みたいにボルトを太くする必要性が無くなり、機関部自体も細くすることが出来て2.6キロと言う非常に軽量のボルトアクションライフルが作れる事になったのです。

重量
重量

ウエザビーライフルの取り扱いを躊躇していたもう一つの理由、それが銃床の折れです。
強烈なウエザビーのマグナム口径を撃つのに、銃床のグリップは数あるマグナムライフルの中で一番細いのです。その為グリップの中にはアルミの角棒を挿入して補強していますが、それでも折れると言うことは避けられないトラブルでした。
ウエザビーの工場ではクレームで返品された、グリップの折れた銃床がゴロゴロしています、アメリカ国内ならスピーデーな対応が可能でしょうが、日本からこうしてクレーム処理をするのには、いちいち通産省の輸入許可を取得しなければならないし、相手もアメリカ国務省の輸出許可を得なければなりません、これではスピーデーなサポートが出来ないので取り扱いを躊躇せざるを得なかったのです。

銃床テンション部
銃床テンション部

しかし、軽量のウルトラライトのリリースにより取り扱いをしてみる事にしました、それは先ず銃が軽いこと、こんな軽い銃は外のメーカーではありません、それに銃床がシンセテック銃床になったことで銃床折れの心配が無くなったからです、しかもそのシンセテック銃床にはアルミのフレームが鋳込んであります、これなら銃床折れは発生しせず、安心して売ることが出来ます。
また品質が昔より良くなったことも取り扱いを開始した理由の一つです。

銃床アルミフレーム
銃床アルミフレーム

1960年代、ウエザビーはドイツのサワー社で作らせていました。このころのウエザビーは非常に良い品質の銃でした。ウエザビーの社長、ロイ、ウエザビーと設計者のフレッド、ジニー氏はドイツの帰りに日本に立ち寄り、豊和工業を訪問しマークVの図面を見せて見積もりを取らせました、その当時の為替は¥360です、工員の平均給料が¥5000程度の頃でしたから、豊和工業はJ。P。サワーの半値で作ると言うことになり、1970から豊和工業で生産を開始する事になったのです。
しかし、それには相応のコストダウン製造方法が加味されていたのです、当時サワーで製造されていたウエザビーのトリッガーガードはスチール製の物でした、フライス加工の手間を十分にかけて非常に手の込んだ作り方をしていました、それが豊和工業で作るとアルミのダイキャストに変わったのです。それまでのウエザビーは最高級の銃と言うことを売り物にしていたのでトリッガーガードがダイキャストではいささかイメージダウンを避けられないでしょう。
実を言うと最も今回リポートしたウルトラライトもトリッガーガードはダイキャスト製です、これはコストダウンと言う意味もありますが、何よりも軽量を売りにしている銃ですからこれならばお客様にも充分容認される事でしょう。
さて、今のウエザビーはアメリカのサコーと言う会社で作られています、おっと、フィンランドのサコーと勘違いしてはいけません、アメリカのサコーはこの会社とは何の関係もありません、元々軍事産業の会社で、米軍の他用途機関銃M-60E3を作っていた会社です、ソ連崩壊以後軍需産業は仕事が激減し、この会社も民間用の銃を製造せざるを得なくなり、ウエザビーライフルの製造を引き受けることになったのです。
ここの会社は試射場すら持っていないので試射的は豊和製のウエザビーみたいに付いていませんが、命中精度は問題ありません、100メートルで1インチ以内に集弾します。
ウエザビーのカタログでは冷えた銃身から撃った最初の3発だけは1.5インチ以内に当たると書いていますが、実際には20発くらいまでは1インチにまとまります。しかしこんな事を書いて当たらないと困るので私もカタログにはウエザビーのカタログとおり書いていますが、本当はもっと命中精度がよいと考えて良いでしょう。

豊和工業で作られたウエザビーは銃番号の頭にHの文字があります、アメリカのサコーで作られたウエザビーはWBの刻印が打たれていますので簡単に識別出来ます。
それに、何よりも機関部の横にMADE IN U.S.A.と刻印してあるので簡単に見分けらます。
残念ながらこの銃の何処にも、これがサコーで作られたと言うことは一言も書いてありません、サコーは完全に蔭のメーカーとして忍んでいるのでしょう。

USA 刻印
USA 刻印

機関部の構造は昔と同じである、多くの会社が銃の反動を受けるラグの部分をより簡素化して来ているのに対して、ウエザビーはあくまでも頑固な作り方である。
レミントンは銃身と機関部の間にラグを挟み込んでいる構造だし、サコーも機関部に溝を切ってそこにラグを挟み込んである、いずれもコストダウンのためである。
ウエザビーがレミントン、サコーなどより高いのは、こうしたコストダウンをしないで頑固な製造しているからである。

ボルトのロッキングラグは昔から変わらない、マグナム系統のボルトは3個のロッキングラグが3列、合計9個に配置されているが、スタンダード口径のボルトはラグが2個ずつ、3列に配置され合計6個のラグで反動を受けている。

ボルトラグ
ボルトラグ
ラグ
ラグ

ウルトラライトが如何に銃を軽くするために苦心しているかというのは、ボルトの後端の上をほんの僅か削り取っている事からも容易に推測できる、またボルトハンドハンドルの中もくり抜いている、念のために言うが、これには技術的な意味は全くない、単なる軽量化の為である、これで何グラム軽くなったかは解らないが、極力軽く作らねば、と言う製造サイドのニュアンスは十分に伝わってくる、こういう徹底したところが所が私はこの銃を気に入っているのだ。
ウルトラライトの機関部はスチールですが、銃身はステンレスです。そのため錆びません。

軽量化ボルト
軽量化ボルト
ボルト穴
ボルト穴

銃身はフルート加工したあとステンレスの黒染めをされ、その後外側を研磨してまた地肌を再現させています、かなり面倒な行程を踏んでいますが、ボルトと同じように白黒パターンを付けるのはウエザビーの伝統です。勿論白黒をつけるのは見栄えだけの問題で技術的な意味は全くありません。白黒にするのは見栄えだけだが、フルートを加工することにより銃身の重量を軽減することが出来る、この加工だけで150グラム程度は軽くなっているのではないだろうか。

フルート溝
フルート溝

銃身はさらに軽くするため極限まで細くしてある、銃口の先端で14ミリである、普通の銃は細い銃身でも16ミリ程度であるから相当補足まで削り込んである。
この細い銃身の命中精度を確保するため、サコーみたいなフリーフローテングではなく、最初から銃身を銃床で下から押し上げ、極端に言うなら銃床のテンションで少し曲げてあるのである、細い銃身の場合、フリーフローテングにすると逆に銃身が安定しないので強制的に銃床で押さえて曲げてあると言う訳である、その銃床が銃身を押し上げている部分は銃床の先端にあり、銃身の当たる部分が少し盛り上がっているのである。
これがウエザビーの特徴で、ウエザビーライフルはすべて銃床をこのように工作している。

銃身計測
銃身計測

この押さえつける重さも3ポンド半とかで、設計上決められているのである。
ウエザビーは非常にデザインにこだわる会社です、銃身と先台の細い線、それに異常なまで細くしたグリップ、銃床が折れやすいと言うデメリットを押さえても細いグリップに拘ったのはデザインの問題です、もう少しグリップを太くした方が良いのではないですかと、設計者のフレッド、ジニーに言ったところ、"これがアメリカ人好みのデザインなのだ"と逆にたしなめられてしまった、日本人が握っても細いグリップだからアメリカ人が握ればさらに細いはずである、アメリカ人向けの銃は銃床が長くグリップは太いと言っている人に、私が知らない振りをしてウエザビーは何でグリップが細いの? と聞いたら、寒いところで手袋をして使うために細くしてあると言ったが、じゃ、アフリカで使うときはどうするのだと逆に聞きたくなった。
そんな屁理屈ではなくて、アメリカ人の目から見て、ウエザビーはカッコ良い銃なのである、そして多くの日本人もカッコ良い銃であると思っているのでは無いのだろうか?
それは銃身から先台に流れる細い線、細いグリップ、豊かなチークピースの盛り上がり、このスタイルこそがウエザビーの伝統デザインなのであろう。
私はかってこのウエザビー社でエンジニアとして修行をしていた、ある時、社長のロイ、ウエザビーが、世界中に色々なメーカーがある中で何故わざわざ日本からウエザビーに来たのと聞くので、マークVが世界中で一番カッコ良い銃だからです! と言ったら、社長のロイ、ウエザビーも、設計者のフレッド、ジニーも顔をくしゃくしゃにして喜んでいた、今頃天国で2人は何をしているのだろう、まさか天国でハンテングなど罰当たりな事をしている訳もないと思うが!

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マウントネジ
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