ドクターサイト - 誰も書けない! 誰も書かない! 取扱説明書

2003年 3月 4日 築地

新しい、コラムのシリーズとして取扱説明書を徹底的に書くことにしました。
誰も書けないと言うのは、製品の利点も欠点もビシバシ書いていくので、とてもメーカーの取扱説明書では書けない領域まで踏み込むからです、だからといって書いたからと言って別に自慢になるわけでもなく、従って誰も書かない取扱説明書なのです。
従って誰も書けない、だれも書かない取扱説明書と言うタイトルを付けたのです。

元々は、当社の取扱説明書に日本語の取扱説明書が欲しいと言う要望が少なからず有りましたが、付属の取扱説明書を翻訳してもとてもユーザーの知りたい情報を提供できると思えなかったので翻訳はしなかったのです。特にアメリカ系統の銃の取り扱い説明書に至っては、裁判を起こされたときの予防策ばかりで、人に銃を向けてはいけないとか、常識以前の説明ばかりでしたので、とても取扱説明書のレベルではなかった事も事実です。
これを根本的に考え直して、銃の説明書と言うよりは解説書と言うレベルで書いてみたいと思います。
だからと言って、いいきなり銃の説明書では負担が大きすぎますので、最初はお気軽なサイトからスタートしたいと思います。

ドクターサイトとファイヤーポイント
ドクターサイトとファイヤーポイント

先ずは当社の一押しサイト、ドクターサイトの取り扱い説明書です。
ドクターサイトは昨年から取り扱いを始めた照準器です、類似のサイトとしては、イギリス製のファイヤーポイントが有ったのですが、この会社が倒産したため、急遽ドクターサイトの取り扱いを始めたのです。誰が見ても簡単に解りますが、ドクターサイトはファイヤーポイントの"パクリ"です。しかしゃながら一般的にパクリ物なら本物の半値くらいで良さそうな物ですが、逆に値段は倍近くします。
値段から考えても只のパクリでないことは容易に想像できます。ファイヤーポイントを取り扱っている時に気づいたのですが、ファイヤーポイントはあまり精度の高い射撃には向かない欠点がありました。
それは射撃の衝撃で赤点が少しずれる事が有るのです、何時もと言う訳ではないし、ライフル射撃の精密射撃に使われた訳ではないのでクレームにはなりませんでしたが、改良点であるなとは感じておりました。ドクターサイトが昨年発売され、この点が改良されていることでこのサイトの完成度が理解できました。それにこれを製造している会社は、東ドイツの頃はツアイス、イエナーと言う名称で軍用の双眼鏡などを作っていた会社ですから技術レベルはファイヤーポイントより遙かに技術的にはレベルが上と言うことです。
ファイヤーポイントは本体がプラスチックスでしたが、ドクターサイトは金属の削り出しですのでもともとボデーの剛性が全然違います、調整ネジを締めすぎてフレームが変形すると言うような事は全くありません。そういう意味でも基本的な基準になる精度が全然違うと言うことです。
ドクターサイトの裏側をご覧頂くと、金属削り出しと言うことがよくお解りいただけると思います。
電池を入れるときにお解りいただけるのですが、本体側に電磁石が入っており、電池を挿入するとき"バチッ"と本体側に吸い付きます。これで電池の接触不良を無くしているのですね、ファイヤーポイントとはここが違います。

裏側
裏側
仕組み
仕組み

電池を挿入すると自動的に赤点が点灯します。電源のスイッチは無いのですが、カバーを被せると自動的に電源はオフになります。
これは本体の先端に外部の照度を感知するセンサーが付いており、外部が真っ暗になると赤点は光らないのです、つまり電源が切られるのです。
逆に、クレー射撃の様に青空に向けて狙いを定めると、センサーが外の明るさを最大限に感知するため、赤点の光量も最大限になります。
この様に、ライフルスコープ仕様のものと違い、赤点の明るさは自動的に調整されるのです。赤点は本体内に設置された発光ダイオードを使い、それを前のスクリーンに反射させて照準するのです。通常のライフルスコープは十時のリチクル、または●の状態にエッチングで切り抜かれた、あるいはガラス板に印刷された物に反射剤を塗り、スコープ本体の中に仕込まれた発光ダイオードを反射させて見ます。そのためにスコープタイプの物はリチクルも、●も正確に縁取りされ、かつ、真円ですが、発光ダイオードを反射させる物は周りが滲んで見えてしまいます。
実は、発光ダイオードの発光部分と言うのは円では無くて、四角なのです。
これをレンズで拡大して、見た目の円にしているのです、従ってそれをスクリーンに反射させるとどうしても周りが滲んでしまうのです。

リフレックスタイプと呼ばれる、発光ダイオードを反射させるタイプの照準器はどうしても避けられない構造上の問題ですのでご承知おきください。
勿論、実用上は何の問題もないのですが、遠距離の標的射撃には赤点の周りが滲むので中心が捕らえにくいと言う感じはします。
しかし、そのために超軽量化、超小型化が実現出来ているのです。
参考までに、ニコン製のモナークサイトとドクターサイトをお見せします。
ニコンの方は赤点がくっきりしますがサイズはどんなに小さくしてもこれが限界です。
ドクターサイトは赤点が多少滲みますが、サイズはここまで小さくできます。

ニコンとドクターサイト
ニコンとドクターサイト

ファイヤーポイントの時は銃の衝撃で赤点が僅かにずれるという問題が有ったのですが、ドクターサイトの場合はその問題を修復しています。
ドクターサイトの正面に固定ネジが2本ありますが、このネジは発光ダイオードの取り付け部を固定するネジで、照準調整をするときは、最初にこのネジを緩めます。
これを緩めることにより、赤点の調整が出来るようになるのです。
照準調整をする前に、ドクターサイト本体をマウントに取り付けなければなりません、マウントがないと銃に取り付ける事が出来ないからです。
元々、この手の照準器は拳銃用に使われる場合が多く、マウントもそれぞれの拳銃用は色々用意されているのですが、ライフル、および散弾銃に使うにはウエーバータイプのマウントを利用して使うしか方法がありません。
ウエーバータイプのマウントは四隅にノックピンが立ててあり、これにドクターサイトをはめ込んでネジ止めするのです・・・・・が
このはめ込みがやたらきついのです、計器で寸法を計測してみたら5/100ミリ程度の公差しかないので、ほとんどガタの無い製品だと考えてください。
ガタがない=はめ込みがきついです。いかにも昔の東ドイツ製という感じです。
一旦はめ込むと次回にばらすときは大変な感じがしますが、通常の使用なら電池の寿命は5年間あると言うことなので、その時はその時で対応するしか有りませんね。

マウントベース
マウントベース
仕組み
仕組み

取り付け図をご覧頂くと銃に取り付けた状態をご確認頂けます。
目下の所、これ以上小さい光学照準器は存在しません。世界最小、世界最軽量ですね。

取り付け図
取り付け図
デスクにドライバーを差し込む
デスクにドライバーを差し込む

銃に取り付けると、今度は照準調整です。
照準調整をする前に、付属のデスクの中心に付属のドライバーを差し込みます。
勿論ドライバーだけでも照準調整は可能なのですが、調整量が解らなくなります、そこであらかじめデスクを取り付けておけば、照準調整の移動量を把握することが出来るのです。
照準調整の前に、正面2本の固定ネジを緩めるのは説明ししましたが、これを緩めて上下調整ネジを調整します、デスクの目盛りをドクターサイトの何処かを基準点に定めておきます、そこから1目盛り移動すると、100mで3cm移動することになります。

赤点固定ネジ
赤点固定ネジ
上下調整ネジ
上下調整ネジ

デスクの目盛りをドクターサイトの何処かを基準点に定めておきます、そこから1目盛り移動すると、100mで3cm移動することになります。
照準調整が終わったら、赤点の固定ネジを必ず締めておくことを忘れてはいけません。

デスクを使った上下調整
デスクを使った上下調整
デスクを使った左右の調整
デスクを使った左右の調整

射撃を終えたら、あるいは銃を収納するときはカバーをかけて収納します。
カバーはかけるときは簡単なのですが、問題は外す時です、これもが東ドイツの設計思想なのでしょうか、一旦はまったらなかなか外れません、それは蓋の内側にノッチがあり、それがドクターサイトの本体にがっちりはまりこむためです。
ですから蓋を外すときは蓋の両方を左右に開くようにして外すと簡単に外れます。
外した蓋は意外と無くす人が多いので、出来れば紐を付けておく方が蓋が外しやすく、なおかつ紛失の恐れがありません。お試しください。

本体とカバー
本体とカバー

ドクターサイトには赤点の大きさが3.5MOA(ミニッツ、オブ、アングル)と7MOAがあります、大きさの目安は3.5MOAは100mでの大きさが、約9cm
7MOAは100mでの大きさが約18cmです。
一般論としてライフルには3.5MOA、散弾銃には7MOAをお奨めします。

ドクターサイトの定価は¥55,000 マウントは¥7,800 ウエーバータイプのマウントベースは¥4,800ですが、機関部に取り付け穴が無い場合は加工料が¥5、000~¥6,000かかります。
散弾銃の換銃身で、カンチレバー付きの物はそのままマウントを購入するだけで取り付けられます。

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