銃床について考える - パーツ&アクセサリー

2000年 7月15日 築地

今回は銃床の寸法に付いて考えます、日本国内では銃床について誤った考え方をする人が少し多すぎるように思えます、私は射手として40年間射撃をやっています、ライフル射撃、トラップ射撃、ベンチレスト射撃、こうしたジャンルを徹底的にやってきました。
私は射手ですが、併せて銃器を製造するサイドにも携わりました、こうした経験の中で体験的に取得したのですがその人に適した最適の銃床の長さとはその人の射撃フォームで判断するのが最適です、そして、判断するのは貴方では無く、私です!

シューターに最適の長さを判断させると間違いなく最適の長さより短い銃床を選択します。これは当たる銃床ではなく、単に使いやすい銃床を選択するからです。
この間違った考えを助長しているのが、肘の内側に銃床を当て、それからグリップを握る、そうするとほとんどの場合引き金に適性に指が届かない、届くのが正しい銃床のサイズと誤解しているのでこのような大間違いをしでかすのである。

使用目的により銃床の長さは違ってくるが、銃床を肘に当ててグリップを握った感じで適性を決められるケースは、ライフル射撃競技の立射の場合だけである、これだけである。これは反動の無い銃を筋肉の緊張をさせないで(少しの緊張は要するが)タイミングを計って撃つ場合には最適な銃床の長さである、しかし膝撃ちや伏撃ちの場合は、完全に銃床は短くなる、そのため3姿勢射撃競技専用銃は必ず銃床の長さが調整出来るように作られている、こんな事はライフル射撃をやっている人間にとっては常識以前の常識なのだ、銃床の長さを短くして使うと使い易いのだが何故だか当たらない、伏せ撃ちの場合には銃床を立ち撃ちの時より1~2センチ伸ばさないと筋肉の緊張が保てないので、銃をうまく保持出来ない。この事はライフル射撃の体験者なら体験的に知っている。
間違っても外人向けの銃は大きく作られている等と言う人は居ない、そんな事を言ったら完全に馬鹿扱いされるに違いない。

ひるがえりショットガンシューターの中にはこうした経験を経ていないので、不必要に銃床を改悪するケースが少なくない、最悪なのは先程述べた肘を基準にして銃床の長さを判断する誤った考え、それに外国の銃は外人用に作られているという先入観がこうした誤りを助長する、お店の店頭で適正な長さの銃床と、切りつめた銃床の銃を交互に構えれば切りつめた銃の方が遙かに使いやすいはずである、しかし実際に撃つと、銃床を切りつめすぎた銃は何故だか当たらなくなる。

その銃が適正な長さかどうかは実際に銃を撃ってみて点数が上がるかどうかで判断すべきではないかと思う、スコアーが上がらなければ何の意味も無いでは無いか、仮に同じスコアーだったとしよう、銃床が短いと試合の時のように緊張した状態ではさらに結果は悪くなる、では何故こうなるかガンスミスの立場で説明してみよう。

銃を撃つ場合には全ての筋肉が緊張状態に無ければならない、筋肉が緊張していないと銃を適性にコントロール出来ないからである、私の経験論からすると射手が最適とする銃床からすると1~2センチ長くした銃床が最適な寸法である、別の言い方をするならば肘の内側にバットプレートを当てて、引き金に指をかけて、1~2センチ長い寸法が最適である、多くの方が大変な勘違いをしている事に外国作られた銃は外人向け、国産の銃は日本人向け、と言う大間違いがある、ミロクのホームページを読むと、ミロクで作られる銃の95%は輸出用なのである、つまりミロクでは5%しか国内向けに販売していないのである、では国内向けの銃は銃床サイズが短いだろうか? そんな事はない、全く同じである、としたら皆さんはミロクを使っている限り全員外人向けの銃を使っていることになるでは無いか! しかしご安心あれ、それでいて日本人に適正な寸法なのである、勿論長い銃床をそのまま使えと言うような暴論を吐くつもりは無い、私自身はFNのDグレードを使っているが、これは銃床を1センチ切りつめて使っている、同じくペラッチのSCOサイドプレートも使っているがこの銃の銃床は切りつめていない、昔メルケルが東ドイツだった頃、少し小さめの銃床で特別注文したらメルケルの会社から"止めなさい"と適切なアドヴァイスが届いた、アドヴァイスの通り作ったらなる程適正な長さであった。勿論ヨーロッパで流通しているスタンダードのサイズでありごく普通の寸法であるが物を知らない人に言わせれば"外人サイズ"の銃であることに間違いはない。

私はウエザビー社でガンスミスとして働いていた、ウエザビーのグリップは数ある世界中のライフル銃の中で一番細いだろう、もしこれを"外人サイズ"と言う人が居たら、日本人サイズのグリップとは割り箸サイズになるでは無いだろうか? はっきり言っておくが銃を設計するときグリップの大きさは使う人の手の大きさで決めている訳では無い!

ウエザビーを例にして言うと、グリップを細く作っているのはデザインの華麗さの為である、実際グリップの太いライフルはカッコ悪い、昔の軍用銃は銃床折れを防ぐためグリップは出来るだけ太めにして作られているが、丈夫ではあるが残念ながら華麗さには欠ける、しかしながら、グリップを細くするとここから折れ易くなる、特にウエザビーの場合マグナムライフルが売りなのであるから反動も強烈で本当は太くしたいのが山々なのだが、ウエザビーの場合はここに芯金を入れてまで、グリップの細いさにこだわった。

昔、設計者のフレッド、ジニー氏に聞いたところ、これがアメリカ人好みの銃床なのだと話してくれた。決して手の大きさで決めたわけでは無い。

話を戻してペラッチのグリップについて話そう、人によってはペラッチのグリップは大きい、あるいは遠いと感じる人が居ると思うが、グリップを細く、引き金を近くにする手に緊張感が無くなる、緊張感が無くなるから引き金の感じを敏感に感じるようにもなる、引き金を鋭敏に感じると良さそうに思えるかも知れないが、引き金に対して常に気持ちが行くことになる、いつも引き金が気になって気になって仕様が無い状態に陥る、こんな状態では絶対に当たらない、本当に射撃が当たるときは何も考えないで無心で撃っているときである。この様にあんまり射手のわがまま通り作ると使いやすいのだが、結局当たらない銃に出来上がってしまうのである。 

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