ライフル銃の遅発について - その他銃に関する情報

2000年 1月 11日 築地

火薬取り扱いの教本や、装弾の取り扱いの所に不発が出た場合、最低10秒待ってから解放しとあります、これはその間火薬がくすぶる事があるためと書いてありますが、実際にはこういう形態の遅発はまず有りません。それは共産圏の弾か、50年以上昔に作られた弾の場合はあり得ますが、現在流通している装弾ではまず起こり得ない現象です。私は過去にこうした遅発は見たことも聞いたこともありませんが絶対ないとも断言は出来ないので注意しておくことに越したことはないでしょう。

さて現実問題として頻繁に発生する遅発の現象についてお話致しましょう。
ここで書いている遅発は散弾銃ではおきません、ライフル銃でハンドロードした場合のみ起きうる遅発ですからその点をご理解下さい

皆さんよくご存じのように火薬の種類は数百種類以上の火薬が流通しています。
火薬を大別するとシングルベース火薬とダブルベース火薬に分けることが出来ます、さらに分けるとそれぞれ種類によって微妙に燃焼速度の異なる特性を備えています。
6ミリPPCなどに使われる、燃焼速度の速い4198等のファーストバーニングの火薬、308等に使われる4895等のスタンダードバーニングの火薬、マグナム弾に使われる、4350等のような燃焼速度の遅いスローバーニングなどの火薬があります。
では雷管はどうでしょう、スタンダードプライマー、マグナムプライマーとありますね、どこが違うのでしょうか? 実はこれも燃焼速度の違いなのです、スタンダードプライマーの爆速は一秒間に8000メートルです、しかしマグナムプライマーの爆速はこれよりずっと遅くなっているのです。
全く同じ火薬を使っても、雷管の爆速で火薬の燃焼特性は大きく変化します。早い爆速の雷管で点火すると火薬の燃焼も早くなるのです、遅い爆速では遅い燃焼をします。
スパークの長さはマグナムプライマーの方が二倍も長いのですが、意外ですがスパークの長さは燃焼特性にはあまり影響しません、ベンチレストプライマーもスパークは長いのですがこれも燃焼特性には影響が出ません。スパークが長い利点は、火薬の量が少ないときに均等に火薬に点火すると言う利点はありますが減装薬を使わない以上、実際には大したメリットはありません。

こうした利点の説明は多くはメーカーのセールストークだと考えてください。
このセールストークのおかげで、マグナムライフルを使う人は例外なくマグナムプライマーを使うようになりました、そのおかげでかえって深刻な問題が新たに起きるようになりました。それは遅発です。
マグナムライフルにマグナムプライマーを使うと 遅発 が起こりやすいのです。理由は爆速の遅い雷管で、燃焼速度の遅いマグナム火薬に点火すると燃焼速度が遅くなるからです。
遅発 と言っても、何秒か後に点火するというレベルではなく、1000分の数秒レベルの遅発です、条件によってはマグナムライフルを撃つとき、カチンと言う撃針の音が聞こえるときがあります、勿論聞こえた瞬間に弾は出るのですが、撃針の音が聞こえること、これが遅発です。
勘違いしないでくださいよ、撃針の音が聞こえたとしても、それは貴方の感性が研ぎ澄まされているのではなく、単に"遅発"が原因なのです。

こうした事が起きたときは、雷管をスタンダードプライマーに変更すると簡単に問題を解決できます。まだ少し紙面があるのでもう少し説明をします、同じ条件で作られた弾を使っても遅発の起こる銃と起こらない銃があるのです、ではどんな銃にこれが起こるかと言いますと、スロートの長い銃です、え、 スロートを知らない? それはスロート(素人)です。(苦笑)すみません、くだらないシャレでした。

ストーロとは薬室の前にあるライフリングの無い空間の事です、これを設ける事により雷管により点火された火薬は完全燃焼をする前に弾頭を3cmくらい前に押し出します。この3cmの空間がスロートです、そこからライフリングが始まるのですが、弾頭は一時的にライフリングがスタートするところで一時的に止まります、実は弾頭がライフリングに食い込むにはものすごい抵抗がかかるからなのです、何のためにスロートを設けるかと言いますと弾頭が前進した分、薬莢が拡大したのと同じ効果が得られからなのです。
ですから多くのマグナムライフルにはスロートがあるのです。火薬の燃焼が始まり圧力が3500気圧まで高まると初めて弾頭はライフリングに食い込み猛烈な勢いで前進を始めます。
この、弾頭が前進を始めるまで、一瞬火薬の燃焼がくすぶるのが遅発の原因なのです。

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