初速 - コーヒーブレイク

2000年 2月 4日 築地

弾の初速を計測するのには、弾速測定器を使います。
最初に使ったのはエラー社の測定器です、この測定器はほとんど全ての弾頭メーカー、ほとんど全ての銃器のメーカーが採用しています。アメリカ陸軍も採用している製品ですので私もこれを使用しております。エラーを英語で書くと、OHererと書くので、常識的にローマ字読みするとオーヘラーとなります、ですから今でもこれはオーヘラーと言う名前だと誤解されている方も居ますが、英語読みするとOHの字は発音しませんのでエラーと言う言い方になるのです。
さて、今から20年くらい前でしょうか、最初この測定器を使ったときに弾のスピードの1発1発があまりにも違いがあるので、本当にこの測定器の数値を信じて良いのかどうか相当悩みました。何しろこの計測器が正しいかどうかを計測する計測器が無かったからです、それに、構造もセンサーの所には、電球の壊れたような物が有るだけで、これで本当に弾速を検知出来るのか疑わしく思えたからです。もっともこれがフォトダイオードだと知るのはだいぶ後に成ってからです。
さて、話は飛びますが、光ケーブルで数万回線の電話が使えると言う記事を何かの本で読んだとき、何故単なる光で数万回線の電話回線が利用できるのかどうしても理解出来ませんでした。どう見ても光回線は回線が多いわけでは無く、1本しかありません、しかもどう見ても単純に点滅を繰り返しているだけで(点滅が見えるわけではありませんが)何故これで数万回線の電話が使えるのか、どうしても理解できませんでした。なぜならこれを解説した書物には出会わなかったからです。(勿論畑違いであることは認めますが)しかし、あるときコンピューター関係の本を読んでいるとき、インターネットはパケット通信にして情報を送受信していると言う記事を読んで初めて、光通信メカニズムのシステムが理解できました。私の理解では、光ケーブルを通過する光はあくまでも1本と言うことです。しかし1万回線の電話を送るためには、1秒を1万分の1秒に分解して、最初の1万分の1秒をAさん、その次の1万分の2秒目をBさんに配信することで、1万回線の通信を可能にしているのだと理解できました。
(筆者注:この記事を読んでいる頭のいい人のなかで、"それは違う"というご指摘がありましたら直ちにメールをください、すぐに原稿を訂正してしらばっくれますから)
で、その光をデーターに変換しているのがフォトダイオードだと言うことも理解できました、その時点で初めて弾速測定器の信頼度が理解できました。1発撃つごとにバラバラだった初速は100%弾による誤差で、計測器による誤差はほとんどあり得ないことが理解できました。

で、私が最初に考えたのは弾の初速のばらつきの無い弾を作れば結果的に一番命中精度の良い弾を作れるのだと! やりましたねー、色々、しかしテストを繰り返す中で初速と弾着が必ずしも理屈通りに成らないと言う現実に出会いました、弾着と言ってもミリ単位なのですが、初速が早くても下に着弾したり、初速が遅くても上に着弾したりする弾を発見しました。
そして、色々な実軒結果から、初速が安定していても命中精度が悪かったり、逆に初速が安定していないのに命中精度が良かったりする弾が有ることも発見しました。
(ただしこの誤差は秒速50フィート以内の誤差です、初速3000フィートの場合ごくわずかな誤差です、これ以上の誤差になると上下に変化します)
その結果、弾のスピードが安定しているからと言って命中精度が良いと言う訳では無いことが理解できました、命中精度は必ずしも地球の引力だけに支配されているのでは無く、もっと種々多彩の要因により影響されているのだと言うことが理解できました。
ですから、弾の威力と言う点から観察すれば初速のチェックは意味が有りますが、命中精度のチェックにはあまり役に立ちませんでした。

これから弾道学を研究する人に無駄足に成らないようにアドヴァイスしておきますが、初速を安定させることと、命中精度は因果関係はありません。

ちなみに、射撃競技専用の空気銃の場合、その初速は170~175メートルが一番命中精度は安定しています。一昨年、ドイツのファインベルクヴァウと、アンシュッツの工場に行ったとき、どちらの会社の空気銃も初速は173~174メートルでした。
それぞれのメーカーは体験的にこの初速が一番安定していることが解ったのでしょう。

さて、散弾銃の初速の話をしましょう、散弾銃の場合その弾の初速は1400フィートです、メーカーによって早い弾や遅い弾が有っても良さそうな物ですが、すべてのメーカーがこの基準で作っています。
それは何故かと言いますと、初速を変化させると弾のパターンが変化するからです。パターンが変化すると言うとほとんどの方は、弾の初速が早いと絞りの効果が強く現れ、初速が遅いと絞りの効果が薄れると考えられると思いますが、実は初速が早くなると、散弾のパターンはドーナツ状に中心が薄くなるのです。散弾は周りに集まってしまいます。
そのために初速は変えられないのです。
と、言いながら昔は射撃に使う散弾は32グラムでした、今はルールが変わり24グラム装弾です、当然、当時とすると初速は早くなっています。ですから昔の銃とすると現在の銃はチョークのスペックを若干変更していると思います。
ですから昔の銃の方が同じチョークでも絞りは少しきつかったはずです。

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