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装弾の相談を読んだ方からの装弾の相談の続編です

2003年11月27日 築地

築地 様

あまりにしろうとの質問で恐縮ですが、築地先生の電脳社会のみの情報で銃を所持しかかっている者ゆえお許し下さい。

装弾についての質問なのですが、たとえばクレー射撃用装弾で24グラムとありますが、これが散弾(粒)の重さで、グラム数(粒の量)が変わっても火薬の量は変わらないという知識でよろしいでしょうか? また、装弾の長さに種類があるようなのですが薬室の大きさにより正しい長さのものを使用しないとまずいと言うことですか?
また、マグナム装弾云々というものを聞いたものがあるのですが、これはどのようなものでしょうか?AL391でも発射可能ですか?自分の場合AL391でスキート射撃をやりつつ、スラッグ弾等を使って色々な射撃を試してみたい欲求があるのですが、チョークとの関係等においてどのような注意が必要でしょうか?
「装弾の相談」続編と言う事で、お手隙の時に格調高いご教示をいただければ幸いです。


以下私の回答です。

散弾銃の装弾はグラム数が変化しても、装填してある火薬はあまり変わりません。
あえて絶対に変わらないとは断言しませんが、弾道学の常識で言うと、装弾の重さが重くなるごとに、火薬の燃焼速度を落として、火薬量を少しずつ増やすのが常識です。
その常識よりも、装弾メーカーの経済常識の方が会社にとっては優先順位が高いのだと思います、従って散弾の量が変わっても火薬の種類も、火薬の量も同じだと言っておきましょう。何故こうなるかと言いますと、火薬量の増減は装弾を作り機械で簡単に調整できますが、火薬の種類を変更するのは容易な事ではありません。

火薬の製造は1釜と言う単位で作られます、その1釜の火薬量は装弾の数で言うと25,000発~40,000発くらいに該当します。ですから意外と細かく作るというのは合理的でないのです。少なくとも量産するのと比べればコストアップになります。
今のように装弾の値段が1円安ければそれになびくという使う側の理論が優先する現在では、その散弾の量に合わせた合理的な火薬を装填するというのは会社経営の経済理念から言うと避けたいところでしょうね。

ライフル銃の火薬の場合、多種多様の火薬が用意されていますが、散弾銃の場合、通常燃焼速度から判断すると2種類くらいの火薬しか用意されていません。(私はそう思います)
従って射撃用の装弾も猟用の装弾も同じ火薬を使っていると考えるのが自然な考えです。
射撃用の装弾でも、同じ装弾でも火薬を変えているところは数社ありますが、外見上は使用する火薬が違っていますが、両方を燃焼させると燃焼速度は同じです。
つまり名目上の違いはありますが、燃焼実験すると特性は同じと言うことです。

メーカーによっては火薬をミックスさせているようですが、事実関係は確認できておりません。火薬をミックスして使うことは火薬の世界では「禁手」ですので、間違ってもメーカー側では事実関係は認めないとは思いますがね。
早い火薬と遅い火薬をミックスして使うと、ちょうど中間の燃焼速度が得られるのですが、この様な使い方は極めて危険と火薬会社では力説していますので「よい子の皆さん」は真似しないようにしてくださいね。

散弾銃の火薬が明確に違うのは散弾の装弾と、サボット弾の装弾です。
サボット弾は、コアと呼ばれる弾頭の部分をサボットと呼ばれるプラスチックの外皮でくるんだ装弾の事を言います。
この装弾は銃身に切られたライフリングの溝に添って回転して撃ち出されます、散弾銃であっても、性能的にはライフル銃と同じような物です。そのために命中精度も、そして威力も大きいのです。限りなくライフルに近い散弾銃装弾と言えます。

サボット弾の装弾は燃焼速度の遅い火薬が、約、倍量が入っています。
サボット弾は雷管のスパークで火薬に点火された後、最初の圧力で弾頭部分はライフリングに食い込みます、そして徐々に上昇する火薬の圧力に耐えきれずライフルの溝に添って前進を始めます。

装弾の前進に伴い、火薬はさらに燃焼を続けます。こういう燃焼の方法はライフル銃の推進薬と同じ発想で、ゆっくり、そして長く燃える火薬を採用しているのです。

サボット弾を撃つと解りますが、結構強烈な反動があります。
反動が強いと言うことは威力が強いと言うことです。
通常の装弾の倍の火薬量と言うことがその威力の強さを物語っています。

レミントンのサボット装弾には銃身肉厚の厚いヘビーバレル銃身以外には使用不可と注意書きが書いてありますが、レミントン社ではヘビーバレルは製造していないので、レミントン銃にレミントンのサボット装弾は使えないことになります。

実際問題は多くの人がレミントン銃にレミントンのサボット装弾を使っていますが、事実レミントンの銃身が避けた事例を私自身は数例見ています。
通常の使用で突然銃身の破裂が起こりますが、レミントン装弾を使うと起こりえる事なのです。ウインチェスターやアポロ装弾を使うと、弾頭の直径が小さく、火薬圧力の上昇も低いのでこうした問題は起こりませんが、そのかわり命中精度は最悪になります。
「初速が早く、火薬の圧力が高くないと当たらない」という私の理論を裏付けるような事実なのですね。
絶対に銃身が避けないのはハステング社のヘビーバレル銃身です。
ヘビーバレルでなくても、通常の銃身でもハステング社の製品では銃身破裂はありません、それはレミントンの銃身材料より、かなり堅く丈夫な鋼材で出来ているからなのです。
使用されている鋼材は、レミントンと同じクロームモリブデンですが、堅さ試験をすると明らかにハステングの方が堅くできています。熱処理が違うのでしょうね。

弾頭自体にライフルの切ってある物がスラッグ弾です、ライフルが無くても弾頭の内部に風きり羽があったり、自ら回転するような工夫がされていますが、これをチョーク付きの銃で撃ったら危ないのでしょうかと?よく質問されます。
結論から言うと、フルチョークで撃っても大丈夫なように作られています。
この弾頭をフルチョークで撃つと、チョークの部分で弾頭がつぶされて発射されます。
そのために、スラッグ弾頭の形状は、中が中空で出来ていたり、外側が力が加わると潰れるように出来ているのです。

24グラム射撃用装弾は2:3/4の薬室で使いますが、マグナム装弾は装弾の量が多いので薬室はそれよりも長い3インチで出来ています。
2:3/4の薬室に3インチマグナム装弾を使うと、装弾の先端のスタープリンプした部分が薬室の中に収まらずボアーの部分にかかるので、散弾が撃ち出される抵抗が異常に大きくなり、雷管突破や、異常高圧の原因となります。最悪の場合銃身破裂と言うことも起こりえます。

それでは、全ての銃の薬室を長めに作ればと言うことになりますが、3インチの薬室に通常の装弾を使うと、わずかな間ですが散弾が通過するときに隙間のある部分を通過することになりますが、これにより散弾のパターンが悪くなると言われています。

規定以上にパターンが広がったり、「死に弾」が出るようになると言われております。

装弾の相談を読んだ方からの装弾の相談です

2003年11月19日 築地

貴社にMX8を発注し現在所持許可待ちの**と申します。
所持許可待ちの間、はやる気持ちを築地氏のコラムを読んで気を紛らわしている今日この頃ですが。銃の選択および購入もネットですませ、射撃に関する具体的な情報は全てネットという非常に非現実的空間の中ですませてきたので、これから射撃を始めるにあたり装弾に付いての知識が無く、唯一知っているのは、教習射撃で使用したNIKEというブランドの装弾だけです。
つきましては、築地さんの豊富な射撃経験から、装弾のメーカー(ブランド)、使用経験上の感想など(出来れば値段なども)、これから射撃を始める人間にとって、装弾を選択するアドバイスを頂ければ有りがたいです。


以下、私の格調高い回答です。
私はライフル射撃の初体験は14歳ですから、異性関係との初体験より銃器関係の経験の方が2年だけ早いことになります。
こうした豊富な体験から言うと、ライフル銃と装弾の関係は、新婚ほやほやの仲の良い夫婦、あるいはラブラブのカップル、そうした相性以上により密接な相性が大切な事が解りました。
ですから、いくら命中精度の良い銃身があっても、マッチングしていない弾を使うと命中精度は良くならないのです。
逆にマッチングしない装弾でも別の銃身だと優れた命中精度を示したりします。
これは、人間の男女関係と極めて似ていますね、私などは何度女性に振られても、あるいはボロ雑巾の様に捨てられても、果敢に再チャレンジする内にまた新たな女神に出会います。で、結局また捨てられるのですが、また再チャレンジするのです。
この様に相性さえ良ければ、何とかなるのが男女の関係です。
人間の男女関係はライフルの場合の銃身と装弾の関係と同じなのです。
男性が装弾とすれば、やはり薬室を備えた銃身は女性と言うことになるのでしょうね。
念のためにドイツ語で銃弾の事を調べたらMunition(ムニツイオーン)と言うのですね、ドイツ語の場合には全ての名詞に性がついていますのでそれを調べたら、何と銃弾は女性名詞ですね!ウーム、ドイツの文化は奥が深いですね。

ところが散弾銃の場合、銃と装弾の関係というのは、それ程の相性を必要としません。
たまたま立ち寄ったキャバクラで、たまたま席に着いたオネーチャンと、適当に話をしてあわよくば、オトーサンの方は、オネーチャンのお体の微妙な部分にタッチ出来れば上出来と言うような、極めていい加減な関係にあります。
つまり相性なんかどうでもよく、最初からそれぞれの目的が違うと言うことであります。オネーチャンの方は「お金」、オトーサンの方は「タッチ」と言うことで、お互いに男女が協力して何かを成す、その場にはそういう高尚な目的は微塵もありません。
散弾銃と装弾もそうした密接な相性は要しないのです。
たまたま射撃場で売っている弾、たまたま銃砲店に在庫であった弾でも、ちゃんと当たるのです。散弾銃は決して装弾の選り好みをしないのです。
私はシドニーオリンピックの時に双眼鏡を持参して、オリンピック選手の使用している装弾を子細に観察したのですが、一つの装弾に「操をとおす」というような律儀な射手は居なかったように思います。
こちらの会社の方のファイトマネーが良い、あるいはサポート金額が大きい、そういう不純な動機で使っている人が少なくないように思いました。
やはりオリンピックの場でも一番影響力が大きいのは「お金」ではないでしょうかね。
オリンピック会場では、残念ながら日本製の装弾は皆無でしたね。だからといって日本製装弾が悪いとは思いません、むしろ世界的なレベルで見ると一流どころに位置しているのではないかと思えます。
散弾銃の装弾で一番大切なことは初速が安定している事です。
私は日本の装弾を使って雷管突破等というアクシデントにはあまり出会いません。
しかし、イタリアの装弾では雷管突破が多いですね。
雷管突破は銃の撃針が長いのではなくて、火薬の圧力が異常に高いので火薬ガスが雷管を通して後ろに吹き戻してくる現象です。火薬の圧力が高いと言うことはワッズの抵抗が大きいか、さもなければ火薬ガスの圧力が異常に高い事を意味します。
すなわち製品にばらつきがあると言うことです。
私が、ここの装弾は良い、とか、逆にこの装弾は劣悪とか言うと、多方面に色々影響があるかも知れませんので、雷管突破があるかどうかは実際にお使いになって自らご確認ください。
雷管突破は装弾の出来が悪いだけでなく、散弾銃の撃針を痛める要因にも成りますので、雷管突破が発生した装弾は、私は極力使わない様につとめています。

巷でよく言われる事ですが、銃口内が汚れると言うことは装弾の性能とは直接関係はありません。また銃口から煙が出るかどうかもあまり火薬の性能とは関係がありません。

但し、500発で\15,000以下の安物装弾のご使用も避けてください。

高い弾でも安い弾でも起こり得る事ですが、装弾のリムの整形がちゃんと出来ていなくて、薬室に装填したときにエジェクターの部品をくぐり抜けて装填されるとんでもない弾があります、こうなるとエジェクターは装弾の上にあり、機関部を閉鎖しようにもエジェクターが閉鎖できないために機関部は閉鎖できなくなります、また排莢しようとしてもエジェクターが邪魔して排莢出来ません。
装弾が薬室に装填されて、閉鎖も排莢も出来ないなんて冷や汗が流れます!

こうした装弾に遭遇したら、今後その装弾は出来るだけ使わないようにするのが無難です。
こういう装弾との出会いは、相性の良くない女性から「責任とって」と詰め寄られる様な悲劇なのです。 

装弾の相談!

2003年 5月26日 築地
更新 2003年 5月30日 築地
更新 2003年 6月 1日 築地

12番実包についてご質問いたします。
よくこの弾は、薬莢が硬いとか、柔らかいからだめだとか、言われますが何のことでしょう、又安い弾は、あまりクレーにあたらないのですか、私は今B&Pコンペと言う一番安い弾お使っておりますが、高い弾の方が良いのでしょうか、もしランクを、上げるとすれば、どのような弾が良いのでしょう、ちなみに私は、トラップ射撃で、銃は、ミロクの6000TR1です。

回答
私自身は、薬莢が硬い、柔らかい、と言う言い方には遭遇しておりませんが。実際に装弾を撃った感じの話ではないかと思います。これは散弾銃実包に限らず、ライフル銃の実包でも同じ事が言えます。同じ初速なのに撃った反動を軽く感じる弾と、強く感じる弾が存在します。これは弾の優劣ではなく、使用している火薬により感じる体感なのです。散弾銃の装弾の場合は、使用しているワッズによっても違うと言う理屈もありますが、それは全て装弾メーカーの一方的な言い分で、私自身は散弾銃装弾の手詰めをしないので、ワッズによる違いを断定することは出来ませんが、ワッズによる違いはほとんど無いと言うのが私の密かな印象ですが、この際あえて断言はしません。

今回はあくまでも使用される火薬による違いを説明してみます。22口径競技用ライフルに使われる装弾として、ドイツのRWSとイギリスのテネックスがありますが、これらの弾の撃った感じを説明すると、同じ重さの弾頭を、同じ初速で撃っても、反動の感じが全然違います、究極の命中精度を競うベンチレスト射撃競技に於いても、同じ6ミリPPCを使い、同じ弾頭を、同じ初速で撃ち出す場合でも、IMR4198の火薬と、H322の火薬では、反動のフィーリングが違います。

この様に反動のフィーリングに違いがあることは、ライフル銃の場合、散弾銃みたいにワッズを使わないので、使用される火薬により反動が違うことは明白です。早く燃焼する火薬の場合、反動の感じが強くなり、遅く燃焼する火薬の場合、反動にフィーリングがマイルドになります。
反動が違っても何故初速が同じかと言いますと、弾頭を薬室の辺りで「ドーン」と一気に加速するのと、銃身の中で徐々に加速するのとの違いです。
しかしながら明確に断言しますが、これは弾の優劣ではありません。火薬の種類を厳密に言うならば、ニトロセルローズを主原料としたシングルベースの火薬と、ニトロセルローズ、ニトログリセリンを主原料としたダブルベースの火薬がありますが、シングルベースの火薬の製造コストが安い反面、ダブルベースの火薬は製造コストが高くなりますが、ダブルベースの火薬が性能的に優れていることは言うまでもありません。西側諸国の中ではイタリアは最後までシングルベース火薬しか作れなかった火薬後進国だったのですが、アメリカや日本の技術指導で現在は全てのイタリア製装弾はダブルベース火薬を使用するに至りました。
言うまでもなくダブルベース火薬の方がよりパワフルなので、装弾として優れていることは言うまでもないのですが、値段の安い、シングルベースの火薬の方が反動はマイルドになります。従って反動のフィーリングを以て装弾の優劣を断定するのは明らかに間違いです。
ライフル銃の場合、弾の優劣を断定するのは極めて簡単です!  当たるか、当たらないかだけです。
オリンピック射撃競技では、RWS,テネックス、ラプア、フェデラル、等のメーカーがオリンピック選手に自社の弾を使って貰おうと必死です、しかしながら射撃選手の立場からすると、誰でも一番当たる弾を使いたがるのは当然のことです。アンシュッツやファインベルクバウの試射場に行くと、何種類もの弾が常に用意されており、製造された銃に対して、試射の時点で思うような命中精度が出ないと
きには、弾を変えると希望する命中精度が出ることがあります。
これは銃身により、必ず相性の良い弾、相性の悪い弾が存在するからです。
現在オリンピッククラスの選手は、それぞれの装弾メーカーに自分の銃を持参して、色々製造された装弾の中で、どのロットの弾が一番自分の銃に合っているか、適性を見極めるためにわざわざ工場まで出向きテストを繰り返します、そうして一番適性だと断定した弾を何十万発と言う単位でまとめて買い占めます。
しかし、その弾が他の銃に合うかどうかは別の話なのです。
メーカーによって違いますが、ある会社の例を説明しますと、火薬は大きな釜で色々な原料を混ぜ合わせて作りますが、1回の製造で2.5トンの火薬を製造します。火薬の場合、同じ成分を同じように混ぜ合わせて作っても、完璧に同じ物という物は絶対に出来ないのです、それぞれの火薬の特性は単に燃焼速度だけを取り上げても全部微妙に違うのです。さらにその火薬を使い、1ロット25万発の装弾を作りますが、同じ火薬を同じだけ装填しても初速が微妙に違うのです、そのため装填を開始した段階で弾の初速を計測し、弾の初速に合わせて火薬量を微調整するのです。これにより命中精度の優劣が変化するのです。また火薬だけでなく、雷管の火薬はさらに微妙なのです、一般的に雷管の火薬については、ほとんどの方が無関心ですが、雷管の燃焼速度に応じて火薬の燃焼速度も変化するのです。ライフル銃の場合、スタンダード雷管、マグナム雷管、ベンチレスト射撃用雷管が存在することからも、用途に応じて雷管を微妙に使い分けていることがお解り頂けますでしょうか?

これと比較すると散弾銃用の装弾でそこまで考えて使っている人は皆無です、せいぜい反動が硬いとか柔らかいとか、弾の性能からは全く関係のないことですが、銃口が汚れるとか、そう言う幼稚なレベルで装弾の優劣が論じられています。私自身散弾銃でも色々な装弾を使いましたし、シドニーオリンピックの時は、双眼鏡でオリンピック選手に使用されている装弾を子細に観察しましたが、散弾銃の場合、何を使っても結局同じと言う結論になりました。はっきり言うとお金をサポートしてくれる会社の装弾を使っていると言うことです。
ライフル射撃の場合には考えられない発想です、ですから散弾銃の場合、装弾による優劣は皆無だと断定出来ます!
何を使っても同じなら、せめて雷管突破の起きない装弾、リムの成型不良の装弾を使うべきですが、私の体験では、全ての装弾で雷管突破が起こりえます。
これは火薬量が多いかではなく、ワッズの抵抗が大きかったり、あるいは先端をクリンプしたときに抵抗が大きすぎるときに起きると思われます。

多くの人は雷管突破が起きると、撃針が長すぎた等と、とんでもない勘違いをしますが、撃針が長すぎれば毎回雷管突破するのが当然ですし、撃針は長すぎると言うことはないのです。散弾銃の場合、良い装弾というのは何を指すかと言いますと、常に安定した初速が出ている事です、初速が安定していると言うことはパターンが常に同じという事になります。
散弾銃の初速が変化するとパターンが変化すると言うことは、多分理解して頂けると思いますが、ほとんどの人はパターンが大きくなるか、小さくなるかしか考えが及ばないと思いますが、「銃器研究の異常者」を自認する私の場合、散弾銃の初速が上がると散弾のパターンは「ドーナツ状」になり、真ん中がスカスカのパターンになると断言します!
ですから装弾は初速が早ければ良いという物でもないのです。
しかしながら、かなり安い弾を使っても火薬によりパターンが変化するほど初速に違いはありません。従って、散弾銃の場合、値段によって当たる弾と、当たらない弾は存在しませんが、あえて言うなら散弾の粒が綺麗な丸状をして、チョークを通過した衝撃で変形しないことが言えます。
チョークで散弾が変形すると、それが空気抵抗になりちゃんとした形状の弾に遅れて飛翔するようになり、ひいては「死に弾」となってパターンを悪くする事になります。

質問者はB&Pの装弾をお使いだと言うことですが、この会社のF2と言う通称フラッシュと呼ばれている一番高い装弾の先端をカッターで切り、中の散弾粒を取り出して観察してみてください。
1粒1粒がベアリングみたいに綺麗に作られている事に驚かれると思います、これも単にパターンを均一にする目的なのです。そう言う意味ではこの会社、なかなか根性の入った作り方をしていますが、リムの長さが外の弾より長いので火薬の圧力が高いときにここの部分が膨らみ排莢出来なくなる事もあります、散弾銃用装弾の場合、この部品にお金をケチって鉄を使っているのでちゃんとスプリングバックで戻らないのでこうしたトラブルが起きるのです。
鉄を使ってもその上に真鍮メッキしてあるので真鍮と見間違いがちですが、この部分はれっきとした鉄製なのです。

会社によってはこのリムの部分の成型不良で、銃のエジェクターの中に潜り込む装弾に遭遇することがあります、そうした場合エジェクターが閉鎖しないので銃を閉鎖することもさりとて装弾を取り出すことも出来なくなる事があります、私はこうした装弾は二度と使うことはありませんが、装弾の優劣を断定するならせいぜいこうした製造上の問題だけでしょうね。

散弾銃の場合、値段によって優劣は有りませんが、一般的に言うと500発で\15,000以下の弾は往々にして成型不良の弾が多く混入しています。高速代金、クレー代金、射撃場使用料金は均一にかかるのですから、弾の値段を数円安く切り下げたために起きる、銃が損傷するリスクを私なら絶対避けますがね!


更新 2003年 5月30日

昨日誤字を訂正したのですが、ついでに装弾のコラムについてもう少し書き足してみたいと思います。火薬の燃焼速度が速いか、遅いかを見分ける方法ですが、一番てっとり早いのは実際に燃やして見ることです。ほとんどの方が火薬も燃やすと言う体験はしておられないと思います。それは火薬は火を付けると爆発するのではと言う誤った考えがあるからです、でもそれは映画の見過ぎです!

 でも、念のために忠告しておきますが、黒色火薬は火をつけると爆発しますから、黒色火薬に火を付けるのは論外ですよ! 幸いなことに現在の装弾で黒色火薬を使っている装弾は皆無ですから、無煙火薬には火を付けても大丈夫です。
幸か不幸か、このコラムは多くの行政の人も閲覧していますので、装弾をばらして火を付けるという行為は、装弾の目的外使用で火薬類取締法違反になります。私は順法精神の鬼ですから違法行為を推奨する事はありません。
装弾の火薬に火を付けろと言う行為は、たまたま不発弾に遭遇した場合の処置です。
勿論不発弾に遭遇した場合でも、それをばらして火薬に火を付けると言う行為は、違法行為には当たります、ちゃんと処理するには不発弾を(銃砲店ではなく)警察に提出して警察は自衛隊に依頼して海中投棄するのが火薬取締法の趣旨ですよね。
 でもね、警察で装弾を保管すると言うこと自体、火薬類取締法違反ですよね!、警察には火薬類を保管できる保管庫は無いはずですし、県警レベルでも火薬取締法で定めた火薬類の保管庫は備えていないはずです。(キッパリ)
とすれば不発弾を警察に届けて、結果的にですが県警に違法行為をさせるわけにも行かず、仮に警察本部が"超法規的承知"で火薬類の保管をしたとしても、現在ではそれを自衛隊に廃棄依頼する事は出来ないことになりますよね、何故なら新しい法律では火薬類の海中投棄は禁止されていますから、自衛隊は永遠に海中投棄による廃棄は出来ないことになっています。
そのため、装弾の購入者がたまたま不発弾に遭遇したため、自らの判断で「超法規的処置」により、装弾を分解して火薬を燃焼廃棄させ、雷管は再度激発して廃棄させる承知をとったとしても、違法はとられないと考えています。そういう特別な場合を想定した話ですからネ!
さて、散弾の装弾をカッターナイフで切りますと、散弾がバラバラと出てきます、その散弾には鉛だけでなくてアンチが含まれています、アンチと言う物質を混入させることにより散弾の硬度を上げます。散弾を硬くする目的は、散弾が銃腔内のチョークを通過するときに変形しないようにするためです、散弾の粒が真円の場合は問題ないのですが、それがわずかでも変形すると他の散弾より空気抵抗が大きくなり、飛翔する間に他の弾より遅れることになるからです。しかしながらアンチは鉛よりも10倍も高価な金属なので、そうそう大量に混入させることが出来ません、安い弾は1~2%、高い弾は4~5%混入させています。
装弾が高い安いかの一番の要因はこの辺にあります、理屈の上からは高い弾は当たる、安い弾は当たらない、と言うことは言えますが、今まで15枚しか当たらない人が、16枚になるわけではありません。しかしながら199枚当てる人が200枚になる可能性は"あえて否定しません"しかし、高い弾と安い弾の違いはその程度の効果しかないことを良く認識してください。
メーカーの言い分ですと、アンチの量の多い散弾はより遠くまで破砕力があると言うことですが、私の体験ではほとんど認識する事は出来ませんでした。その程度の違いでしかありません。
散弾を抜くと、中からワッズが出てきます。このワッズの形状についても、これでパターンが良くなると言う意見もありますが、私自身は、論理的に確認しておりません。
メーカーサイド、あるいは知ったかぶりの販売店では、ワッスの形状によりパターンが良くなると言う説明はありますが、ではどうしてそうなるのでしょうか、物理学的な説明が抜けていますので、私自身は新興宗教団体並みのかなり怪しい理論だと考えております。(但し、物理学的な弾道飛翔の論理説明提示がされたら記述を改めます)
ワッズを取り出しますと、やっと火薬が出てきます、色々な装弾を比較しますと、同じ装弾メーカーでも色々な火薬が使ってあることがお解りいただけると思います。火薬の形状は円盤型、真四角型、色々ありますが、それぞれ製造工程の問題で優劣ではありません。
火薬の表面積と燃焼速度は密接な関係があります、火薬の表面積が多い方は燃焼速度が速いのです、「なるほど、表面積が多い方が酸素と結合しますからね」などと言う理論は当てはまりません、火薬の燃焼は、鉋屑と薪の燃焼とは違うのです。火薬の中には燃焼する事で酸素を発生する薬剤が混入されていますので、外部からの酸素を必要としていません。
単に面積が大きい方が早く燃えると言うだけの話です。散弾銃、22口径ライフル、30カービンライフル実包、その他、拳銃実包等の装弾は、弾の直径と薬莢の直径が同じですよね、こうした装弾の火薬は早く燃焼させませんと、弾頭の前進に対して火薬のガス発生が追いつきません、そのために速燃性の火薬を使うのです。
ひるがえり、ライフル用の装弾、とりわけマグナムライフルと呼ばれる威力の強い装弾は装弾の弾頭の部分は7.62ミリしかないのに、後ろの方は大きなスペースがあり、火薬も散弾銃の10倍も装填できます、こんなに多くの火薬を装填しても、火薬は一気に燃焼するのではなく、火薬は順次燃焼してすぐに燃え尽きないようにしてあります、そうする事により弾頭が銃腔の中を前進する間でも、常時ガスが大量に発生して弾頭を加速し続けるのです。勿論それぞれ火薬の燃焼速度は全然違います。

さて話が飛びましたが、いよいよ装弾から火薬を取り出して燃やして見ましょう、火薬の燃焼をさせるためには出来るだけ広い屋外で、コンクリートの上みたいに水分や余計な物が無いところに出来るだけ火薬を集めて置きます、そこにマッチで火を付けると、黄色い炎を出して瞬時に火薬が燃焼します、間違っても爆発はしません。
"ボッ"と燃えるだけですね、2種類の火薬を同時に燃やすと、わずからながら燃え方に変化があるのが解ります、その燃え方の早いほうが速燃性の火薬なのです。

意外と原始的な方法で火薬の燃焼速度を決めているようですが、実際の火薬の燃焼速度もこうした燃焼実験で判定しているのです。
さて、一番最後に雷管が残ったはずですが、銃に装填して激発すると雷管が点火して安全な状態になります。
本当は、雷管の炎を視認できる方法で激発すると炎の発生に違いがあるのも視認できるはずです、散弾銃の場合大差はないのですが、それでも雷管の爆速が早いと火薬の燃焼はそれに連れて早くなります、爆速が遅いと火薬の燃焼も遅くなるのです。


更新 2003年 6月 1日

(読者のメールです)
さて、ショートコラム拝見いたしました。
アンチとありましたので最初び・びっくりしました。
アンチモン(アンチモニー)の事だったのですね。
ご存知の通り、チャカにテッポウ(釈迦に説法)ですが、
ご参考迄にSpec,を記します。

品名元素記号原子(20℃)密度(比重)原子容量融点(℃)沸点(℃)線膨張係数
アンチモンSb121.766.69118.4630.513800.045
Pb207.2111.3518.27271.317250.083
Cu63.548.947.091083259516.5
Fe55.857.877.11536300011.76
モリブデンMo96.9510.29.39261055604.9

12番紙薬莢

2003年10月31日 築地

当社の譲渡承諾書の適合実包欄には、散弾銃の12番の場合には、12紙薬莢と書いていますが、時折、警察官の方から、今時紙を使う薬莢と言うのは有るのですかと質問されますが、この適合実包の欄に記載する紙薬莢と言う名称は、使用する薬莢の材質を書いているのではなく、適合実包の名称を書いているのであります。
つまり紙薬莢もプラスチック薬莢も全て、適合実包としてのい名称は"紙薬莢"なのであります。これ以外の適合実包としては"黄銅薬莢"と言う名称が存在しますが、これはいわゆる手詰めの村田銃に使う装弾なのです。
それぞれがJIS規格で決められた装弾で、それぞれ寸法が違うのです。
ですからJIS工業規格ではプラ薬莢とか、12番とか、そういう名称の物は存在しないのであります。
12番紙薬莢が唯一、一番正しい表記方法ですが、いちいち、そのいわれを警察官に説明するのも時間の無駄ですから最近では適合実包の欄には12番とだけ書くようにしています。この方が面倒が無くて助かります。
本当は、12番と書くこと自体が間違いだと指摘してもらうと、行政に対する信頼度もグン上がるのですが現状では致し方ないでしょうね。
さて、12番紙薬莢と書くと、"今時そんな弾があるか "と警察官に言われたと書きましたが、フェデラルで今度、紙薬莢装弾を作ってくれたので、今後はそのような言い方はされなくて済みそうですね。

装弾
装弾

過日、京都国際射撃場で発撃ちして12番紙薬莢装弾を撃って「反動が軽い」と感じたので、早速その理由を知りたくて中身をばらして見ました。
紙薬莢だから、ワッズの代わりに厚い棉で出来たコロスでも入っているのかと期待したのですが、やはり中身は今までとおりのプラワッズでした。
装弾をカットした画像でご確認ください。
ワッズは散弾銃のパターンを決定する大きな要因のパーツですからこれはさすがに触れなかったようです、散弾は画像でおわかりのように銅メッキをしてあります。
これは銃の性能の為と言うよりは、環境対策では無いでしょうかね?
そうすると紙薬莢も環境対策と言うことになるのでしょうか?
私は反動が軽かった理由を火薬に求めたかったのですが、火薬は特段違いは有りませんでした。
画像をごらん頂くとおわかりいただけますが、火薬、ワッズ、散弾、紙薬莢、プラ薬莢とも中身は全く同じです。

装弾内部
装弾内部

火薬は燃焼させて確認していますが燃焼速度も他の装弾と全く同じでした、紙薬莢とプラ薬莢が同じだと言うだけでなく、他の装弾の火薬と比べても同じだと言えます。
但し、雷管は違います、雷管の臭いで他の装弾とは違いますね、但し、フェデラルのプラ薬莢の雷管も紙薬莢の雷管の臭いも同じなので、フェデラル同士は同じ雷管を使用していることになりますね。
どうやら反動が軽い原因はワッズの形にあるようですね。
ワッズの形状を子細に観察すると、私は今まで見たことのない形状をしています。
ワッズは単なるプラの円柱で支えられています、そして先端は外側にめくれているのです。このまま力がかかると円柱はさらに外側にめくれることが容易に推察できます。
今までのワッズは波形のプラで反動を軽減するように出来ていましたが、これらとは明らかに異なる形状です、どうやらこれが効果的に激発時の反動を軽減しているようです。

散弾とワッズ
散弾とワッズ

紙薬莢装弾と内部構造が全く同じ、フェデラルのプラ装弾で撃ってみたところ、やはり「反動は軽かった」ですね、反動が軽いのは紙薬莢の所為でも、火薬の所為でも無かったのですね、ほんの少しだけ雷管の影響も有るかもしれませんが、その影響は5%程度の微細な影響でしょう。
最大の影響はワッズの形状にあったとするのが私の結論です!

フェデラルは紙薬莢にこだわる必要はなく、プラ薬莢でも非常に軽い反動で撃つことが出来る優れ物の装弾です。

フェデラル装弾は私の知る限りNo1の装弾です。

さすがアメリカチーム公認弾ですね。

「こういう風にヨイショすると、國友さんにお世話になった、祇園での恩返しを、ほんのわずかだけした気持ちになりますね」

「まだ全然元を返してもらってないよ」と言う國友さんの声が耳元でしますが、いつの間にか、その声も、爽やかな秋風が消し去ってくれました。

装弾の話

2000年10月15日 築地
追記 2000年10月24日 築地

ベンチレスト射撃ではハンドロードしないと命中精度の良い弾は絶対に出来ませんが、22口径ライフル射撃、クレー射撃、では100%既成の装弾を使うことになります、今回のコラムはそうした完成実包の話をしてみます。22口径、大口径、散弾実包と、全てのジャンルの話をしますので最後まで読んでくださいね。


22口径

22口径ライフル射撃競技では100%完成実包を使うのでどこのメーカーの弾が良いかは射手にとって最大の関心事です、その前に何故22口径リムファイヤーはハンドロードが出来無いのか説明してみます。
22口径リムファイヤーの弾は作り方が非常に難しいのです。恐らく色々ある弾の中で一番製造が難しい弾と言うことが出来ます。とてもハンドロードで出来るような領域では無いのです、22口径の弾の弾頭を取り外すと簡単に解りますが、弾の中に火薬は半分以下しか入っていません、これ以上火薬を入れると命中精度が出ないのです、火薬量が極めて少ないと言うことは火薬量の計測はかなり厳密に行われていると言うことです。私の推測ですが計量は0.1グレインまでは計測されているはずです、これほど厳密に火薬量を計測されているのは22口径ロングライフルだけです、この火薬燃焼速度が極めた早い、そのため火薬量を間違えると大変な事になるのです、あの小さなキャパシテーの中で火薬は半分以下しか入っていないのだから火薬をダブルチャージすると間違いなくボルトのエキストラクターが吹っ飛びます。
念のために言いますが、エキストラクターが吹っ飛ぶだけで人身事故にはならないので心配はありません。
ハンドロードが出来ないもう一つの理由は弾頭のクリンプです、22口径の弾は弾頭対して薬莢の先端が絞ってそれが弾頭に食い込んでいるのがお解りだろうか、多くの人がどうやって弾頭を取り付けたのか疑問に思うようで、私もよく質問される、薬莢は始めから先端が絞ってある訳では無く、最初はストレートである、そこに弾頭を入れて、弾自体を回転させながらナイフの刃先の様な物で薬莢の先端を絞り込んで弾と一体にするのである、この絞り込みが無いと撃針を叩いたときに雷管の圧力で弾頭が簡単に簡単に抜けてしまい、火薬がチャント燃焼しないことになる、そうなると威力もなくなるし、当然命中精度もバラバラになる、この様に弾頭のクリンプは22口径ライフル実包にとって極めて大切な要素なのです。
22口径に付いてもう一つ素朴な疑問として聞かれることがあります、それは22口径のリムの部分はどうして作られるかと言うことです。機械的に考えると非常に難しい製法なのです、単にリムを作るだけならプレスで成形すれば問題ありません、最大の問題はこのリムの間に爆粉を塗らなければならないのでその隙間をもうけなければならないことです。
機械的に製造したと考えると極めて複雑な構造になるし、第一、薬莢には機械工作の痕跡が全くないのです、とても私の頭では考えられなかったのでヨーロッパに行った時に長年の懸念問題をテネックスの技術に聞きました、答えは、"空気で膨らまします" と言う答えでした、なるほど空気で膨らましたのなら機械工作の後がないのがうなずけました、長い間、本当に長い間私の頭の中に巣食って居た疑念が一気に溶解しました、この喜びはとうてい他人には解らないでしょうが、解って貰わなくて結構です、でもその夜に飲んだビールの美味かったこと、私、少し変態でしょうか?

昔のテネックスは当たったと言う話の真偽!
一部の射手の間で昔のテネックスは当たった、逆に言うと最近のテネックスは当たらないと言う話がある、テネックスの名誉のために言うが、別にテネックス独自の問題では無くダイナマイト、ノーベル社のR-50も昔の方が当たったのである。
最新の工業技術を以して昔の方が性能が良かったと言うことは考えにくいのだが、この話、実は本当の事なのです、メーカーサイドは絶対に認めていませんが、昔の弾が命中精度が良かったという原因は火薬の製造方法に最大の問題があります。
もっと正確にいうならリムの所に塗る爆粉の製造方法に問題があるのです、昔はこの爆分を作るのにあまり溶剤を使わずに製造していたようなのです、そのため業界の間ではこの頃の爆粉をドライプライマイーと呼んでいます、この爆粉、性能は良いのですが唯一の欠点は製造過程で爆発の可能性がある火薬なのです、実はこの爆粉の製造過程で事故がありエレー社で数人の死者が出たことがありました。事故原因調査の結果この爆粉が原因とされ以来ドライプライマーの製造は中止されたのです、これはテネックス社だけの問題ではなくヨーロッパ中の火薬製造過程が変更されたようです、以後ウエットプライマーと呼ばれる溶剤の多い、そして危険性のない爆粉が使用されるようになったのです、で、その結果、当たらなくなった、と言われています。


大口径ライフル装弾

一番命中精度の良いのは。
大口径ライフルの装弾は、厳密に言うと150種類くらいあります、従ってそれらの性能や特性等を全部話すと、あまりに膨大な話になるので、誰もこのコラムを読んでくれません、従って装弾の全般的な話をお話しします。
市販されているレミントンやウインチェスターの装弾は、1発¥300~¥400しています、この値段、わたしからすれば異常に高い値段です、もし購入目的が狩猟ならそれほど多くの数を必要としないでしょうからこの値段でも良いかも知れませんが、射撃を練習を十分にするには高すぎます、もしハンドロードすれば100円以下で出来ることを記憶して置いてください。
ライフル装弾の問い合わせで一番多いのはどこの弾が一番性能が良いですか? と言う質問である、性能を威力と言い換えると何処の弾も威力は同じである、しかし命中精度と言うと、私は "ラプア" と断言できる、この弾はフィンランド製のたまであまり世の中に知られていないが世界選手権で優勝した弾で命中精度は完成実包としては世界一であろう、値段は1発¥160である、レミントン、ウインチェスターの半値である、最も海外の値段はレミントン等より高い、日本では逆転現象が起きているのである、但しこの弾は一般の銃砲店では取り扱っていない、逆に言うと取り扱っていないから安いと言えるのだろうが、この装弾を取り扱っているのは東京の銀座銃砲店だけである、電話は 03-3571-2639 なので一度問い合わせられると良いと思う、銃もそうだが、装弾も通信販売で購入できる、使うならこのラプアが一番命中精度が良いので、私の一押しのお勧め品である。

(追記)ラプアに関しては國友銃砲火薬店でも輸入販売しておりますとのことです。 
     國友銃砲火薬店 電話 075-351-3037
     http://www.kunitomogs.co.jp


軍用装弾の評価

値段の安いと言うことで軍用装弾も流通しています、価格的には1発¥150ですからまあまあの値段なのですが、この弾、アメリカ国内では1発わずか¥30の弾です、おっと誤解の無いように言いますが、軍隊から流れた古い弾ではありません、出来たての新品がこの値段なのです、この値段で売れるカラクリを言いますと、軍用品として政府に買い上げる弾の余剰品だから安いのです、どこの国の政府もそうですが軍事力と言うのは保有する武器の総数は勿論ですが、武器の生産能力が大切な要因です。従ってどこの国も戦時に大量の装弾を製造できるように生産能力を確保しています、しかし、確保しただけでは民間会社は潰れてしまいますから、決められた量を買い上げ、過剰分は販売を認めているのです、従って223レミントンと308ウインチェスターに限って言えば、軍用の過剰生産分がアメリカでは¥30で流通しているのです。
軍用装弾は雷管の所に赤いペイントが塗ってあり、雷管の周りはクリンプされています、多くの人が気づいていませんが弾頭はコールタールみたいな溶剤で僅かに接着してあります、これらの理由は、まず防水性能を高めるためです、私が実験した訳ではありませんが、数年は水の中にしたしておいても使えるはずです。
雷管をクリンプしてある理由は、言うまでも雷管が抜けるのを防止する目的ですが、何故この様な処理をするかと言いますと、機関銃でベルトにリンクされた弾の場合、その振動で雷管が抜けないとも限らないからです、機関銃なら不発か回転不良で済みますが、これが戦闘機の場合、給弾中に飛び出した雷管が摩擦で暴発したばあい、1発¥30の弾のおかげで100億の戦闘機が墜落してはかないません、そうした理由があるのです。
弾頭を接着している理由は、防水効果の面と、初速を上げる効果があります、弾頭は接着されているので火薬の圧力が相応に上がるまで弾頭が動きません、そのため同じ火薬量でも初速は100フィート位、早くなります。但し命中精度は悪くなります。


散弾の話

弾の事を書き出すと書くことが多くてすでに相当長いコラムになりました。
これから散弾装弾のことも書きますが少し押さえ気味の書き込みにしますのでもう少しおつきあい下さい。
先々週シドニーオリンピックから帰りましたが、持参した双眼鏡で選手達の使用装弾をつぶさに観察しました、結果、何でもありでした。
ライフル銃の場合、使用する弾で命中精度は少なからず影響を受けますが散弾銃の場合装弾による優劣はあまり認められません、特に昔は劣悪だったイタリアの装弾が最近飛躍的に性能が良くなり性能の差が無くなったのが特徴です。
昔のイタリアの弾は、ごく一部の装弾を除いて不発はほとんどなくなりました、これは雷管の性能が良くなったと言う一言につきます、プライマーの性能としては、規定の衝撃をかけると必ず激発しなければならないことと、それと矛盾しますが、ある規定の衝撃では絶対に激発してなならないと言う二面性を持っています、これは実用性と安全性から要求された性能なのです、これらの性能が劣悪なのは共産圏の弾です、最高なのはアメリカ、ドイツ、イギリスなどの弾でしたが、最近では共産系以外の国ならほとんどが技術的な差は無くなりました。
ショットガンシューターの多くが弾の善し悪しを判断するのに、銃が汚れるとか、汚れないかで評価をしましが、この評価は的を得ていません、評価すべきは当たるか当たらないかだけです、しかしながら20枚そこそこしか当たらない多くのシューターはその弾が当たるかどうかの評価は出来ようはずもありません、勿論私も同じです、ですから少なくとも論理的に技術的に優劣を判断してみましょう。
まず銃口内が汚れるかどうかですが、散弾の火薬は硝石をベースにニトログリセリン、ニトロセルローズ、を主原料に作りますが、その中に安定剤や、火薬の装填をスムーズにするため、グラファイトを表面にまぶす場合があります、グラファイトはいわば鉛筆の削りかすみたいなものです、表面の滑りは良くなるので火薬を装填するとき誤差が少なくなりますが、火薬と一緒に燃焼しないので黒い物がのこります、しかし銃口が汚れると言ってそれを敬遠するのは間違いです、グラファイトは火薬の装填誤差を少なくするためには貢献しているのですから、それから燃えかすが残るのも何の問題もありません、次の弾を撃つときにはこれらが吹き飛びますので銃には何の問題もありません、勿論燃えかすが無いに越したことはないのですが、火薬の燃焼速度を上げれば火薬の燃えかすの問題は解消しますが、燃焼速度を上げることは射撃に関してはあまり良いことではありません、燃焼速度が上がると薬室には大きな力がかかりますがだからといって弾を押し出すにはあまり効率的に作用しないのです、理想的なのは弾のスピードに合わせて徐々に燃焼していくことです、ニトログリセリンは元々爆薬的に秒速8000メートルの爆速で燃えるものを、色々なコーテングをして燃焼速度を遅くしたのが火薬ですから燃えかすが出るのは、いわば当たり前の話なのです、ですから火薬の善し悪しを燃えかすがあるかどうかで判断すべきではありません。
  昔、イタリアの弾は性能が悪くその最大の原因だったのが火薬の問題でした、イタリアの火薬はシングルベース火薬が主流だったのであまりパワーが無かったのですが、最近ではほとんどが(あるいは全てが)ダブルベース火薬になったのでアメリカや日本の弾と同じように初速が出るようになりました。そのためかイタリアの銃は昔と今では同じチョークでも少し寸法が違います。それは初速による変化のためパターンが違ってくるためです。
初速が早い方が良いのか遅いほうが良いのか即座に判断は出来ませんが、最近ではほとんどの装弾が410~430メートルあたりで落ち着いているようです。
メーカーによっては "マイルド"と言うクラスの弾を製造している所もありますが、反動がマイルドと言うことは火薬の特性もありますが一般論としては初速が落ちているので少しは不利かもしれません、私はほとんどレミントンばかりを使っているのでレミントンを例にとってお話ししますが、同じレミントンでも値段の違いがあります、高い弾はリムの部分の金属が長くなっていますが、あれは何の意味もありません、いわば化粧ですから長いというメリットは何もないのです、散弾については高い弾は鉛の中にアンチが混入されています。アンチは鉛の10倍の値段がしますので少し混入させただけでもコストが高くなります、アンチを混入させる目的は鉛を硬くするためです、何故鉛を硬くさせるかと言いますと、散弾がチョークを通過する時衝撃がかかるので弾が柔らかいと変形するのです、変形した散弾は決められたパターン以外の所に飛んでいく、いわゆる死に玉の原因になります。
初速の違いによりパターンが変化すると言いましたが、初速を上げるとパターンが小さくなると考えるのが常識ですが、実は逆の現象が起きるのです、初速を上げるとチョークでの衝撃が大きくなり、お互いに弾同士か干渉しあい、パターンは広がるのです。

まだまだ書くことはあるのですが、今回は話が長くなりましたので、これでおしまいです。

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