海外遠征 (ベンチレスト射撃大会)の最近のブログ記事

スーパーシュート参戦記 ( 2004年)

2004年 6月 3日 築地

ホリデイイン エキスプレス329号室にて

5月23日、日曜日
昨年、カクタスシュートに参加した時に、ユナイテッド航空を使ったら、成田空港のカウンターでライフル銃には追加料金がかかると騙(だま)されて、現場のスーパーバイザーと称する「黒服」から一人頭\21,000のお金を巻き上げられましたが、後でユナイテッドのマニアルを"子細に"読んだら、ライフル銃には追加料金はかからないことが判明! その後、騙されたお金を取り戻すために国民生活センターに相談して、巻き上げられたお金の還付請求作戦を開始、結果的に無事お金を取り戻すことに成功しました。何故お金を巻き上げられたかと言いますと、「黒服」がマニアルの英語を読めなかった事、驚いた事に、ユナイテッド本社の日本人スタッフすら英語が理解できない事が解りました。マニアルの意味をユナイテッドのアメリカ本社に聞いて、やっとマニアルに書かれている日本語への意訳が理解できたと言う、ていたらくです。その顛末に関して、ユナイテッドから詫び状をとり、マニアルを書き直させ、併せて担当した「黒服」の名前を聞き、最悪な接客態度を厳しき指摘しておきました。そうした顛末は過去のコラムに書いてありますので興味のある方は過去のコラムをご覧ください。

今回の旅行もユナイテッドを利用しました。不愉快な思い出よりも、そうした痛い経緯を体験している会社を使う方がかえってうまく行くと考えたからです。
成田に行ったら、その「黒服」がちゃんと居ましたね。昨年の慇懃無礼と言う不遜な態度とは豹変して私を揉み手で出迎えてくれました。荷物の受け付けもファーストクラスで受け付けてくれて、私に対して付きっきりで世話してくれます。
今まで何度もユナイテッドのファーストは利用していますが、今回は別にファーストクラスで行ったわけではないのですが、ファーストクラス並以上の好待遇を受けました、こんな待遇を受けたことは過去において皆無です。
黒服には余程私の反撃が堪えたと思いますね、ははははは

(この追記は6月2日に書いているのですが、実は帰国した昨日、なんと荷物の受け取りカウンターまで出迎えて居てくれました。今までファーストクラスも含めて何度もユナイテッド航空を利用していますが、こんな好待遇を受けたのは初めてです。
私はこれ以上黒服君をいじめるつもりはないのですが、今後、我々ベンチレストシューターに対してあまりなめた事をしないように対応してくれればと思っています。)

アメリカには毎年銃を持ち込んでいるので感じるのですが、年々、検査が厳しくなります。
今回は経由地のシカゴで税関検査を受けましたので、そこの検査だけが特別厳しかったのかも知れませんが、シカゴの税関では銃番号までガッチリ調べられました。
一応検査は無事終了したのですが、私の持参したATF(アルコール、タバコ、銃器、取り締まり局)の輸入許可の事を、税関の担当者が全く理解できていなくて、書類を見ても「何これ」と言う有様です。
実はATFはアメリカの役所関係でもあまり評判が良くなく、毎年連邦予算の大幅請求に対して、毎年、予算はバッサリ切られているのが現状です。それは銃器取り締まりに対して反対のNRAのロビー活動が有ることも一因なのですが、全ての役所からATFが煙たがられる存在なのもその理由の一つです。全米中の政府組織から見れば、ATFは「ろくな事をしない」という風に見られているのかも知れません。
ATFはともかく、アメリカの税関職員がスカ太郎なのは、本当に困りました。
なんせ、担当の黒人の税関職員はATFの住所をコンピューターに打ち込むのに、人差し指で「ええと」なんて感じで一文字一文字打ち込みますので、私のイライラは極限まで達して居たはずです。顔は平静をしていますが心の中では、このここに書けないような黒人に対して最悪の悪態を吐き続けていたことも事実です。
飛行機の乗り継ぎ時間がぎりぎりまで迫っているので、待っている間は本当に胃が痛くなりました。
ですから目的地のクリーブランドに付いたときは、本当に一安心してします。
世の中のツアーコンダクターの方達の気苦労がよく理解できる一瞬でした。
今回もレンタカーはハーツを利用しましたが、カーナビが昨年より進化したので大助かりです、しかし、目的地に宿泊先のホテルを入れようとしても、他の古いホテルしか表示されないのは本当に困りましたがね。それもと更新が極端に悪いのでしょうかね?

日本のカーナビを使い慣れていますと、ハーツレンタカーのカーナビは10%程度しか機能していないですね。でも、カーナビは無視して、地図を頼りに多少の遠回りをしながら、何とか宿舎のホリデイイン エキスプレスに到着、明日からいよいよ練習開始です。

ホリデイイン エキスプレス
ホリデイイン エキスプレス

5月24日
実はホテルからケルブリーの射撃場までの地図は無かったのですが、ホテルのフロントに聞けば、そんな事は簡単だろうと考えていたのが大間違いでした。
ホテルに聞いてもケルブリーなんて会社は知りませんし、当然射撃場なんて当然知りません。
住所を言って、奥から地図を引っ張り出してきたのですが、それでも全然解りません。
最終的にホテルマンは何処かに電話をかけてケルブリー迄のルートを調べてくれました。
彼はそのルートを説明する前にこう言ったのです。
「今、貴方はとんでもない田舎に行こうとしているのですよ」まあ、私としても、町の真ん中に射撃場が有るとはこちらも思ってはいないのですが・・・・・
車にはカーナビも付いていますので、同行の井上さんが、ケルブリーの住所から、住所検索と言うモードで、目的地を呼び出してセットしてくれました。取り敢えずはそのカーナビの通りに出発、ところが向かう方向がクリーブランド市内方向になっているのです。目的地までの距離も150キロとなっています。ドライブしながら明らかに間違いに気づき、途中でUターン。どうやら井上さんの入れた地図の住所、アメリカには何処にもあるありきたりの名称だったらしいですね。日本で言うところの**銀座と言う感じでしょうか。
定かには知りませんが、九州でも北海道でも**銀座と称する所は無数に有るのでは無いでしょうか。これもその類であったと思います。
しかもケルブリーの辺りの住所は同じ名前でも検索にヒットしない事が明白でした。
こうなれば、ホテルマンの説明通りに行くしかありません。
その時、ホテルマンの言った、「今、貴方はとんでもない田舎に行こうとしているのですよ」と言うフレーズが頭によぎります。
最悪の場合、ターク高野氏に携帯で連絡すれば何とかなるのですが、この時点でタークはまだテキサスからの長距離ドライブの最中で、まだオハイオ州にも入っていなかったのです。
ホテルマンの説明通りに進んで行きますと、何だか昔に通った道みたいな懐かしさがだんだん湧いてきました。
そうです、数年前に初めてスーパーシュートに来たときの同じイメージです。
車を進めるごとにその思いは強くなる一方です。同行者達がだんだん田舎になるので不安になる中、私は行こうとしている場所に確信が持てるようになってきました。
「今、貴方はとんでもない田舎に行こうとしているのですよ」、そうだ、私はとんでもない田舎に行くのです! 

マーシャルビルと言うとてつもない田舎の町からさらに辺鄙な田舎に抜けて行きます。
ちなみにマーシャルビルの町の中心地をご紹介しておきましょう、右側の煉瓦建て建物は郵便局、左側の白い建物はライオンズクラブのビル、一応格式の有る建物が町の繁華街の中心に有るのがご理解頂けるでしょうか。

中心地
中心地

マーシャルビルと言うゴーストタウンみたいな町中から、さらに田舎に向かいます、私は同行者達に、道脇に小さな看板があるので見落とさないでね、と声をかけます。
看板を見落とさないようにスローで走る私の車の後から、恐らく地元の人なのだろう、猛烈なスピードで追い越していく、アメリカでは超希な片側1車線道路ですから、まともに走るには追い越すしか無いのです。どうやら私の運転は地元のドライバーに少なくないフラストレーションを与えたようですね。
「あった、ケルブリーの看板だ」同行の湖東教授が叫びます!

私はあわててハンドルを切る、タイヤが悲鳴を上げながら、脇道のさらに細い道路に突っ込んで行く、「今、貴方はとんでもない田舎に行こうとしているのですよ」再度ホテルマンのフレーズが頭をよぎります。

脇道
脇道

しばらく進みますと、とんでもない田舎には全然相応しくない、膨大な車が駐車している所が見えて来ます、その部分だけが完全に田舎では無くなっているのです、とんでもない田舎の中にポツンと存在する、とんでもない喧噪の場所なのです。
その喧噪の場所がケルブリー射撃場なのです、やっとケルブリー射撃場に到着しました。
とんでもない田舎で、駐車場所に苦労します、アメリカ人と言うのはとてつもなく早起きで、私はホテルを5時に出て来てもすでに駐車場は満杯状態なのです。
早起きと言う言い方がシューターだけに限定されるのかも知れませんが、シューターに限って言えば、本当にあきれるほど早起きなのです。すでにリローデングするテーブルは満杯で、7時の段階で我々日本人シューターのリローデングベンチは皆無です。
我々日本人が一番苦手なのは、こうした中に入って、何とか皆さんに融通して場所を空けて貰うと言う作業である。一番苦手なのでケルブリーの社長に依頼して、事前に6人分の作業テーブルを確保しておいてと依頼しておいたのですが、この時間ではまだ肝心な社長が出社していないのです。
しばらくしますと、会長のジョージ、ケルブリーがいたので再会の挨拶と、日本で製造しておいた、ベンチレスト射撃協会のピンバッジを渡します。
相好を崩して受け取り、早速スーパーシュートのTシャツに着けます。
このピンバッジ、国際親善、あるいは皆さんとの交流の為に作成した物なのです。
会員には全員1個ずつ配布しましたが、数百個は、私が全部自費で購入したのです。合計金額で8万円程でしたが、ピンバッジの効用は現場で痛切に感じる事になります。
多くのアメリカ人は我々日本人に対して、あまりフレンドリーだとは思っていないのは事実です、それは何と言っても言語の壁が大きく立ちはだかっているからなのです。
アメリカ人は、たいていの人間は英語が理解できる物と勝手に解釈している節があります。
だから誰でも、英語は出来るのは当たり前と考えている様です。だから、誰とも口をきかない日本人はフレンドリーでは無いと感じるのであるのも無理からぬ事なのです。
でも、日本人自信にも本質的に深刻な問題があると私は考えて居ます、何故なら、いい年をした大人の中でも、あまりにも、まともに口のきけない人が多すぎます。
私の昼飯はほとんど近所のそば屋で済ましていますが、昼時は非常に混み有るので相席なることも度々です。
その事自体は何の問題もないのですが、相席で私の前に座る人は大半が無言なのです。
大半が黙って、ボーッと座る、当然無言、視線は合わせない。まるで幽霊ですね。
「こちら、よろしいですか?」とか「失礼します」とか、たった一言言うだけでどんなにお互いの気持ちが和むことか、こんな簡単で常識的な事ですら、多くの日本人は言えなくなっているのです。これも日教組の所為だといったらいささか言い過ぎでしょうか。
アメリカ人の場合なら、絶対にこういう事はありませんね。
もしアメリカ人で黙って目の前の席に座ったら、完全に脳の回路が崩壊していますね。
その場合は、逆にその席から素早く立ち上がって席を替えた方がいいですよ。
着席の時に相席の人に挨拶が出来ません。こういう人達は脳細胞の言語分野に何らか致命的な欠陥を抱え込んだ人たちだと思います。
こう言う人たちがアメリカに行ったら、それこそ、フレンドリーでないと言われるに間違いありません。日本語でもまともに口をきけないのですから、英語では絶対に無理ですね。
私自体も、英語でジョークを飛ばせるほど、饒舌という訳ではありません。英語でイラク問題に関して自説で言い負かす、なんて夢の夢です。
それでも顔見知りの人間に挨拶する事ぐらいは言えます。でもそれだけなのです!
挨拶だけで、その後の言葉が出ない時、そういうフリーズしそうな時に、「これ、日本のベンチレスト射撃協会のピンバッジ」ですと行って差し出せば、ぐっとお互いの関係が増すのです。
もとより、ピンバッジを交換する、そういう風習はヨーロッパで育った習慣です。
過度に高い物は自分を卑下させる、貰う人間にも抵抗が出来る、貰う人間が全く抵抗のない物、でもレアな物、そういう物がプレゼントとして効果的なのですが、何をプレゼントするかはその人のセンスとしてか言いようがないがないですね。ピンバッジをあげると言う事はお互いの心を開かせる絶妙の裏技ではないかと考えています。

ピンバッチをあげる、これも過度に至ってはいけません。貰った人間が自慢できる範疇で渡さないといけないのです。貰った人間はすぐに帽子やシャツに付けます。誰でもこれを付けている訳ではありません。つまり値打ち付けです。出来るだけ値打ち付けして他の人に渡しますと、さらに効果的なのです。私はピンバッジに8万円のポケットマネーを使いましたが、その効果はそれ以上であった事は言うまでもありません。ピンバッジ一つでその瞬間、いい大人が感激して急激にフレンドリーになっていくのです。
いやはや大変効果的な使い方でした。

ピンバッジ
ピンバッジ

射撃場で撃っていますと、後ろに一人の日本人が立っており、聞くと近所で寿司屋をやっていると言うのです。単なる寿司屋の営業かと思ったら、何でもケルブリーに銃の事で相談に行ったら、「今日、日本人が来ますから」と言うことでわざわざ遠くから会いに来たと言うのです。
この、とんでもない田舎で日本人に出くわすのは極めて珍しい事なので、わざわざ射撃場まで出かけ来たと言うのもうなずけます。早速名刺の裏に地図を書いて貰い、そのお店「寿司勝」に全員で出かける事にしました。名刺に書いて貰った地図なので、歩いても行けそうな錯覚を覚えますが、やはりアメリカ、実際に寿司勝迄の距離を走りますと、ホテルからは間違いなく50キロ以上の遠方にありましたね。東京から横浜以上の距離です。
寿司勝の店主の名前はTony Kawaguchi。話を聞きますと、生まれは北海道の炭坑町、美幌町、寿司屋の修行をしたのは東京の立川。出前から初めてやっと寿司を握らせてもらえるようになり、アメリカの寿司ブームに乗って渡米、ホノルル、ニューヨーク、シカゴ、ロスアンジェルス、コロラド、アリゾナ、と転々とし、最終的にこのオハイオ州のアクロンに居着いたそうです。その経緯を聞いただけで私にはその店主のバックグラウンドのストーリーが見えたような気がしました。

来年も世界選手権だから来ますよと言ったら、「自分、ヘルプしますよ」「家に泊まってください」と言う。その彼の気持ちが何となくわかるような気がしました。
その感情は、実際に1970年、アメリカで修行していた私には、そう、何となく解る気がします。この解るという感覚には深い深い意味が有り、かつての自分の、アメリカでの修行中、苦労した事と、寿司勝の店主のTony Kawaguchi氏のバックグラウンドが重複し「苦労したんでしょうね」そんな感傷を思わず感じた夜でありました。
苦労した人間は人に親切に出来るのです。
苦労して人に親切になります。苦労していじけた人生をおくります。
人間には2つのタイプがありますが、私もTonyも明らかに前者のケースですね。

寿司勝
寿司勝

寿司勝の住所は、1446 N.Patage Path Akron,Ohio 44313  Tel (330)867-2334 です。
アクロンにおいでの際は是非とも寿司勝にお立ち寄りください。

5月25日
この日は2日目の練習日です。
早朝6時、全員が出発するのですが、但し私だけはホテルの部屋で居残りとなります。
実は、今年のカタログの版下の期限が6月の始めなのです。
5月の最後の週は、版下のチェックと、カタログ解説書の書き上げをしないとどうしても時間的にやりくりが付かないのです。今年のカタログ解説書は40ページにもなりますので、その膨大な量の原稿をどうしても今月中に書き上げないとならないのです。
その為に多くの資料とパソコンをここまで持ち込んでいるのです。出来れば射撃をした後に、時間を見つけて書き上げようと計画していたのですが、その計画は到底無理だと言うことが解り、練習日の1日を原稿書きの為に空けたのです。
早朝から深夜までかけて、カタログ解説書は、何とか書き上げました。今はその余暇を利用してこのリポートを書いているのです。カタログ解説書とリポート、同じ書き物でもそれぞれ別物なので、互い違いに書いていきますと、あまりストレスが溜まらず書き上げられるのです。物書きは私の隠れた趣味の一つなのです。
ですから、この日の射撃場リポートはありません。
明日からは、いよいよ大会本番と言うことになります。

原稿書き
原稿書き

5月26日
大会1日目
開会式では昨年のチャンピオンの人たちが紹介されました。常連のトニーボイヤー氏も出ていますね。

オープニングセレモニーは、ケルブリーの会長が車を引いて、名前は知らないのですがお金持ちのベンチレストシューターで、毎回参加している常連さんです。
この人は大会に参加すると言うよりも、こうしたアトラクションに命をかけているようです、勿論この出し物は彼のポケットマネーで作られました。

昨年のチャンピオン
昨年のチャンピオン
アトラクション
アトラクション
アトラクション
アトラクション

射撃を始める前に、弾頭、火薬、雷管を購入します。
会場ではN133の火薬も8ポンド缶で売っています。8ポンドで$135です。
アメリカ人からこれは日本で幾らするのだ? と聞かれたので日本円で\25,000、つまり$で238と答えますと、ヒューと口笛を鳴らして肩をすぼめます。
ついうっかりして、すみません!「8ポンド缶ではなくて2ポンド缶で・・・・」と訂正しようとしましたが、ついつい言いそびれてしまいました。
2ポンド缶ならわずか$32ですが、これが日本では\25,000となるのです。
価格差で言うなら、インドと日本のヘロインの値段差。北朝鮮と日本との覚醒剤の値段差に匹敵する価格差です。私も金に困ったら火薬の密輸に走るかも知れませんが、現在の所は、何とか理性で踏みとどまっています。
この火薬の輸入元、国友銃砲の社長からは祇園で御馳走になった恩義がありますので、国友銃砲の名誉の為にあえて説明を加えますが、火薬の輸入は船便で、しかも専用のコンテナを使わないと出来ないのです。
散弾銃の実包なら、1コンテナで45万発入ります。火薬なら10トンは搭載できるでしょうね、10トン搭載しても1ポンド搭載してもコンテナの搬送量は同じだという事をご理解ください。火薬も10トン、輸入しても瞬時に捌けるのなら、火薬の値段も劇的に安くなるのでしょうが、10トンのライフル用火薬と言うと、現在の需要者が今の1000倍の火薬を消費してもとても消化できない程の膨大な数量なのです。

日本チームの参加者全員がこの火薬を個人使用分として持ち帰りたいのは山々ですが、火薬類ですからアメリカの手荷物検査で引っかかるととんでもないトラブルになるので泣く泣く持ち帰りを諦めた商品です。

N133
N133

ベンチレスト射撃では、標的交換は一仕事です、勿論射手が自ら交換するとなると不正行為が起こらないとは言えませんし、第一大変煩雑です。
そのため、大会をサポートするためにターゲットクルーと言う人たちが標的交換を支えていてくれます。15分以内に60的ある的を全部交換します。
射座では、射撃中止1分前、30秒前、5秒前、とコメントが流れますから、「射撃中止」のコメントと同時にターゲットクルーが飛び出して行きます。
ターゲットクルーと言っても半分は子供達ですから、近辺の関係者の子供達でしょうか?
いずれも有り難い存在です。縁の下の力持ちと言うのでしょうね。

ターゲットクルー
ターゲットクルー
ターゲットクルー
ターゲットクルー

射撃中の井上さんです、射座と標的の間に無数の風旗が有るのがお解りでしょうか。
この風旗は全部射手が持ち込んだ物です。それぞれの射手は風に対して独特の読み方がありますので、こうして自分専用の物を設置しているのです。

井上さん
井上さん

風の流れを読まないで、漠然と真ん中だけを撃って居たのでは、絶対に良い成績は出せません、間違いなく最下位レベルですね。
ここでの射撃は風の流れを考えてほんの僅かずつ、狙点をずらして射撃しているのです。
そして5発の弾痕を出来るだけ小さく撃った人間が優勝するのです。
究極の命中精度を競う射撃競技です。ベンチレスト射撃を始めるとよく解るのですが、5発弾痕の内、4発はほぼ同弾痕で、1発だけが飛ぶと言う体験をほとんどの人が体験します、そしてその泣き言は大会の間、多くの射手から常時聞かされることになります。
これを私の命名で「泣きの1発」と言っています。ここでベンチレスト射撃競技が何故5発なのか説明しましょう。逆に3発競技であったら、ほぼ全員がワンホールを達成しているでしょう。ライフル銃の特性なのでしょうか、何らかの神に支配されているのでしょうか、不思議なことに3発は奇妙によく当たるのです。これは私の体験ですが、4198等の燃焼速度の火薬を使い、弾頭を60グレインくらいの軽い弾で撃ちますと、特によく当たります。
所が、こうしてよく当たる弾は同じように1~2発だけ大きく飛ぶと言う逆の特性を備えて居るようです、逆にN133やベンチマークなどを使い65~68グレインの弾頭を使い、3~5ミリ程度のグリーピングの装弾は大きく飛び跳ねる事がありません。と、言っても絶対的な事実ではなくて、私が体験した、体感した上で感じる長年の経験です。
4発、狂った様なワンホール弾痕を体験しますと、それから僅かに飛び出た1発の弾痕は無視しがちですが、しかしそれがその弾の特性と見なければいけません。

4発はワンホールになりますが、1発だけは外れる弾。
ワンホールにはなりませんが、飛ばしの出ない弾。

このどちらを選択するかで、成績も世界観も大きく変わってきます。
ベンチレスト射撃もそうですが、射撃と言う世界では往々にして神懸かり的な事を言う人が少なくありません、実際の射撃で外れの出た薬莢は「外れる薬莢」なんて除外して居る人も居ます、多分その人には当たる薬莢と言うのも存在するのでしょうね。
ネックターニングでも神懸かり的な領域に落ち込んで居る人も少なくありません。
まあ、射撃はある意味での宗教みたいな物ですから信じても構わないのですが、残念ながら信仰だけでは当たりませんね。
話は戻りますが、命中精度の特性を逆に利用した話ですが、ハンテングライフルには、付属で付いてくる試射的がある場合もあります。しかしそれは全て3発の弾痕であることにご注目ください。
何故3発なのかと言いますと、何故か3発なら本当によく当たるのからで。
もし1発外れる事があっても、それは無いことにして、再度3発撃てばほとんど当たります。射撃の世界の不思議な現象なのです。これは皆さんも体験していることでしょうから、思わず膝を打った人もおいででしょう、そしてその当たった事実だけが現実として認識されているのです、でも、外れた2発も貴方が撃った弾痕です。
この様に、3発と5発では命中精度の結果が全然違うのです。
ですからベンチレスト射撃競技は1圏的に5発撃ち込みさせているのです。
ベンチレストシューターがベンチレスト射撃を初めて、3発のワンホールを体感したとしたら、急に神の存在を感じたとしても不思議はありません、そういう不思議の国の世界なのです。
ですから、私から見て全く意味の無いような奇怪な作業が「奥義」あるいは「秘技」として口伝で伝わって居るようです。もっともさすが私には聞こえてきませんがね。
あるいは、こういう事を馬鹿にしている私には、裏では逆に築地はベンチレスト射撃の事は何も知らないと言われているのかも知れませんね。
奥義、秘技が、虚飾の技術だと解るには人によって大きな違いがあると思われます、命中精度の現象を、物理的な現象として把握できるでしょうか、あるいは神懸かり的な現象として捉えかにあります。ですから命中精度のテストでも、意外と3発は当たりますのに、5発撃つと1~2発が外れる特異な現象を、どう認識しているかによります。
命中精度に関して、少しだけ腕の良い誰かが、何か神懸かりな事を言いますと、多くの日本人は簡単にはまってしまうのですね。
合理的なベンチレスト射撃の世界でもこうなのですから、クレー射撃の世界はさらに神懸かり的な事を言う人が少なくないですね。そして簡単に引っかかります。
あまりこういう事を書きますと、反撃が大きいのでこれで口を閉じます!(オシマイ)
話を戻しますが、5発の内に1~2発外れる要因の多い、狂った様に当たる「悪魔」の装弾よりも、頂点は極められませんが、そこそこの当たりをする「地道」な装弾を選択しますか、この選択肢は非常に大切です。

射手が射撃をしている後ろには多くのギャラリーが見学しています。
彼らは射手の弾痕と風を見ていますので、見学イコール学習と言うことが出来ます。
我々は銃と、レスト、リローデングキットだけで膨大な機材となっているので、こうした余分な観的スコープは持参できません、その分学習効果は少なくなりますね。

ギャラリー
ギャラリー

会場には全米から集まったキャンピングカーで一杯です。
ベンチレスト射撃競技は全米の至る所で開催されていますので、こうしてキャンピングカーで転戦しているのです、キャンピンングカー自体も何千万円もしますので、結構お金のかかる競技なのです。私もキャンピングカーの中を見学しましたが、窓にカーテンを引くと、中は普通の家と見まごうばかりです。案外、日本の様な土地の狭い都会では、キャンピングカーよりも狭い家に住んでいる人も少なく無いかも知れません。キャンピングカーの中は、普通の家に有る物はほとんど揃っています。

キャンピングカーの中
キャンピングカーの中
キャンピングカー
キャンピングカー

こう言うキャンピングカーには全部トイレが併設されています、いわゆる落としではありません、ちゃんとした水洗トイレです。誰でも考えると思いますが、タンクが満タンになったらどうするのでしょう? 少なくとも彼らは10日以上ここに止まっているのですから。
それがここに来てから毎日気になっていたのですが、私達が射撃場に行きますと、何時も謎の車が射撃場から出てくるのです、不思議な車だと思っていたら、運転手のお兄―さんが、ホースを持って、キャンピングカーに接続しています。なーる程、これがくみ取り屋さんなんですね。こうして毎日くみ取り屋さんが呼ばれているのです。
でも、この車、くみ取り屋さん独自の臭いがしないのです。全くの実は無臭なのです。
車には色々な仕掛けが有るのでしょうね、だから全く気付かなかったのです。
でも毎日くみ取り屋さんを呼びつけているのですから、キャンピングカーて本当にお金がかかりそうですね。

くみ取り屋さん
くみ取り屋さん
くみ取り屋さん
くみ取り屋さん

すでに皆さんはお気付きかと思いますが、ここでは全然成績の事を話して居ませんね。
実を言うと私も含めて全員が、とても公表できる様な成績ではないのです。
アメリカの底の深さを感じます。実は我々がスーパーシュートに参加した、最大の要因は、来年ここでベンチレスト射撃のワールドカップが開催されますから、その予行演習、あるいは下見と言う目的があるからなのです。
ですから成績は公表しなくて良いのです。なんて勝手な事を言っていますが、インターネットの世界では全ての大会成績は公に開示していますので誰でも見ることが出来ます。
ですから成績をご覧になりたければそちらのサイトを覗いてください。
全くの言い訳でしか無いのですが、我々が翻弄されているのはオハイオの風です。ここは非常に天候が変わりやすい土地なのです。
我々がオハイオに着いてからは毎日初夏の様な陽気が続いて居ていますが、ジム、ケルブリーの話だと先々週は雪が降ったそうです。この様にここは陽気が激変する場所なのです、ですから風も多く、色々なタイプの風に翻弄され続けているのです。
特に我々が悩まされているのが、無風状態での風です、無風状態で風が有るわけ無いと言われると思いますが、風旗がなびかない無風状態で撃ちますと、弾痕は上下に大きく振られるのです。無風状態とは、風旗はなびきませんが、その分、上下の風が雑然と存在して、その存在が我々には見えないだけなのです。
大会が進んで来るにつけて発見したのは、アメリカ人は、無風状態の時は決して撃たないのです。ぎりぎりまで粘り、制限時間が無くなると致し方無く撃つのですが、やはり弾痕は上下に振られています、しかしながら我々日本人シューターよりは明らかに振れは小さいのです。
彼らは無風の中で風の息を読んでいるのですね。さすがに脱帽です!
最適な風は、そよ風が横方向から均等に吹いている状態です。
勿論私もその絶好のタイミングを逃さず射撃するのです、4発ワンホールを出すような場面でも、何処かの場所でささやかな逆風が吹いていて、1発大きくよそに持って行かれるのです、そよ風の中には何処かに逆風と言う悪魔が居着いて居るのです。
特に、ここの射撃場には、多くのアメリカ人はその悪魔の存在していない僅かな間隙に引き金を引いているのです。悔しいことですが、どんな風の中でも巧い人は巧いのです。
この無風状態の翻弄は追い風の時にも体験させられます、無風、追い風、はこの世界では鬼門なのです。
ベンチレスト射撃の世界は、たった1発のミスで全て終わります。どうも我々の人生模様に似ていなくもありません、バブルに浮かれて、1発のミスですべてオシマイ。そういう人たちを沢山見て居ますからね。ここでは悪魔のテクニックなんて存在しませんね、地道に努力を積んだ人だけしか神様は認めてくれないのです。

3日目の大会は200ヤードの競技が行われました、毎回5回の射群をこなして大会は進みますが、1回から5回までの射群の中で、常に自分の順位が張り出されます。
これはコンピューターのおかげで採点さえ済めば瞬時に成績が判明するからです。
私は1射群では、63位でしたが、次の射群で風に翻弄され、わずかなミスで281に転落、その後ミスを犯さず、109位、58位と順位を上げて来たのですが、最終回はまた風に翻弄されて369位に転落。最終的な順位は94位と言う結果になりました。
ほんの僅かなミスでこんなに劇的に順位が入れ替わる競技はそうそう無いでしょう。
これこそ人生の縮図そのそのものではないでしょうか。
「勝って奢らず、負けてめげず」これがベンチレスト射撃競技から学んだ貴重な教訓です。

ベンチレスト射撃競技をやっている人間なら、トニーボイヤーの事は誰でも知っています。本当に神様みたいな射撃の名人です。リューポルドのカタログの1ページにはトニーボイヤーの写真も掲載されています、それ程の伝説的な人なのです。

射撃の神様
射撃の神様

そのトニーボイヤーのトレードマークは何と言っても「帽子です」何時もこれを被っています。言うまでもありませんが、私はピンバッジをあげたらちゃんと帽子に着けてくれました。証拠の写真を公開しますね。

トニーの帽子
トニーの帽子

これで我々、日本ベンチレスト射撃協会は一気にメジャーになる筈です。
同行の井上さんは、持参のブルゾンの背中にサインを貰いました。
一番上がトニーボイヤー、真ん中がターク高野、一番下がドクター、リチャード モレッゾ、この人は古い古いベンチレストシューターで、「アキュラシー ライフルの」表紙に出ている人です。

サイン
サイン

ベンチレスト射撃では、4日間で4種目行われ、最終成績はその総合点で競いますが、幾ら1種目目の成績が悪くても、決してめげる必要はありません。

「Tomorrow is another day」これは映画「風と共に去りぬ」の中で、主人公のスカーレット オハラが、南北戦争の廃墟の中、実家のタラで人生の再起を力強く誓う言葉です。
「ツモロー イズ アナザー デイ」日本語に訳すと、明日は、また今日とは違う別の日。そう言う意味です。
「Tomorrow is another day」の一番適切な日本語は「仕切り直し」と言う事になるのでしょうか。ベンチレスト射撃競技では、競技は4種目ありますから、これは4回仕切り直しが出来ると言うことを意味しています。
人生も同じですね、順風満帆に行っていた人生もたった1回のミスで簡単にコケますが、その場合何度でも「仕切り直し」すれば良いのです。倒産、解雇、左遷、離婚、失恋、死別、病気、等いかなる絶望の底でも決してめげてはいけません。そうした悲劇的な現実の後は再度「仕切り直し」をすれば良い事です。
ある意味でベンチレスト射撃は人生の縮図その物ですね。
今日の射撃でも、私は右から左に流れる風を正確に読みながら1発、2発、3発、4発とほとんど同弾痕を記録し、あと1発でベストグループを達成出来るかどうか、と言う時ほんの僅か風が強くなったのを肌で感じたのですが、「今日の俺はついている」「せいぜいあと1発、たった1発だけだ」「今の俺には神が付いている」と信じ込み、「南無八幡大菩薩」と心に念じて、弾を放てばあやまたず、物の見事にスパーンと流されました。
取り返しの付かない大失敗です。
私はショックのあまりしばらく顔を上げる事さえ出来ませんでした。

その日、私はケルブリー射撃場に落ちる夕日を見ながら、「Tomorrow is another day」と密かにそう呟きました。

カクタス シュート参戦記 (2003年)

2003年 4月10日 築地
更新 2003年 4月14日 築地
更新 2003年 4月15日 築地
更新 2003年 5月 1日 築地

最近の新聞報道によると、イラク戦争開始の影響で航空会社の収益が大幅ダウンして大手の航空会社ですら倒産寸前の状態らしいですね。
私は、外国への大会参加は何時もユナイテッド航空を利用していますが、昨年の9月11日、ニューヨークのテロで客足が落ち込み、この航空会社昨年事実上の倒産をしました。
しかしながら現在も営業をしているのは、日本の民事再生法にあたるアメリカの法律のおかげで、債務を棚上げして日銭として入る航空運賃で最低限の支払いをして現在も凌いでいるのです。最低限のカスリとなる運賃収入は日銭で入るので過去の債務を棚上げすれば日常の営業は出来ると言うことらしいです。
しかしながら会社の健全経営のため、従業員の給料は20%カット、整備士組合は給料カットに抵抗したため、全員解雇して、再度20%ダウンの給料で再雇用すると言う荒療治をやってのけたようです、乗務員組合も20%カットを受け入れています。
とは言っても、ユナイテッドのパイロットの給料は相変わらずの高給で、70時間のフライトで、給料は2万5千ドル、アメリカ国内で順調に業績を伸ばしている、サウス、ウエスト航空のパイロットは90時間のフライトで、給料は1万5千ドルと言う状態なので高コストは誰の目から見ても明らかです。と、言いながらも他人の懐の心配などする必要は無いのですが、過去のユナイテッド航空は社員はおおらかで、私の好きな航空会社の一つであったのですが、その私の熱い思いに対して、私は思いっきり冷水を浴びさせられる事になります。

事の発端は、我々が持ち込むライフル銃に対して、超過料金をかけると言うとんでもない裏技を仕掛けて来たことにあります。数十年前に書かれたユナイテッドのレギュレーションに日本から持ち出すライフルは全部超過荷物として扱うと言う規則があるのです。しかしながら何処の航空会社にも、そんなトンカチな規則は無く、ユナイテッド自体に調べさせても、他の航空会社では超過料金を徴収していないと言う事実関係をユナイテッド自身が確認しています。そういう規約があっても、私たちは過去に何度もユナイテッドを利用してきて、一度も超過料金を徴収されたことがありません。それは当たり前でそんなことをしたらユナイテッド航空なんか使うわけがありません。驚いたことにその規約、外国の場合は問題ありませんのに、日本国から出入国する場合にだけに特別に加算すると言う信じられない代物です。しかも猟銃は駄目だが拳銃はOKと言う、どこの馬鹿が作ったレギュレーションか知りませんが、その規約が亡霊の如く生きていたのです。

チェックインカウンターでいつもの様にチェックインを済ませ、搭乗口に向かおうとしたら、ライフル銃ですからエクセスチャージがかかりますと言うではありませんか、¥500か¥1000か知りませんけれど、ここは太っ腹な所を見せましょうと、お幾らですか? と聞いたら。
片道¥21,000、往復で¥42,000ですと言うではありませんか、私は大会参加者全員7名分だと考えた、それでも充分高いのですが、全員でですかと念のために聞いたら、そうすると、な、な、な、な、何とおおおおおお~ お一人様です、と言うではないですか!
何!!!!!!、思わず私は聞き返しました。
普段穏和な私ですが、気が動転して、折角のルックスも夜叉の如くなっていたに違いありません、また驚きのあまり、私の肛門の皺は瞬時にのびでツヤツヤになっていた筈です。
本来ならば従業員の高賃金のカットで会社を運営しなければなりませんのに、この航空会社は、お客にとんでもない裏技をかけてきたのです。
¥42,000と言うと、他の航空会社ならアメリカ往復出来る値段です。値段の高いユナイテッドの航空運賃ですら、我々の購入した正規運賃でアメリカ往復¥78,000ですから、如何に別料金¥42,000と言う料金が暴利かお解り頂けるでしょうか。
銃に対して別料金を加算する根拠は実は何もないのである、別の飛行機をチャーターして銃だけ運ぶと言うのならばまだしも、サーフボードよりも小さく、ケースを入れるとせいぜいスキー程度の大きさでしかありません。物に別料金を徴収しなければならない根拠などあるわけがありません。勿論荷物も銃を入れて2個におさめています。
それでも、私は普段の穏和さを失わないように、殊更穏やかに・・・・・
今まで徴収されたことは一度もないのですが?
他の航空会社でも徴収していないのですが?
こうした事実を理路整然と述べても、金を払わなきゃ荷物を載せないと言う一点張りである、驚いたことに拳銃なら無料ですと言う始末です。
何でもレギュレーションにはそうなっているらしいです。
ひょっとしてこれって逆さまじゃないのでしょうか? 
日本は猟銃はOKですが、拳銃は駄目でしょう。これが日本だけに特別に決められたれ特別のレギュレーションのなりますと誰が考えても逆ですよね。
このレギュレーションは、ユナイテッド航空のアメリカの本社でアメリカ人が決めたレギュレーションですから間違ったんでは無いでしょうか?
まともな日本人から見ればこれって逆でしょう! ねえ皆さん!そう思いません????
拳銃は無料預かりですが、許可を受けたライフルは別料金だと私は訳がわからなくなって来てしまいました。まるで、北朝鮮か歌舞伎町の暴力バーに舞い込んだような気分です。キャンセルすればすでに支払い済みの¥78,000が逆にユナイテッドに丸儲けになる事になり、泣く泣くと言いますか、相手の言い分を聞くしか他に選択肢が無くなったのです。
スカ太郎みたいな社員に案内され、料金カウンターに行って、興奮で震える手でクレジットカードを差し出しました。私は真面目そうな女性社員に、あなた、こんな事をしているとユナイテッドは本当に倒産しますよ!と話しかけました。
女性は悲しそうな顔をして、突然立ち上がり、キットした目で私を見返しますと、「もう一度聞いてきます」と言って小走りでスカ太郎のもとに駆けつけました、少しして、力無く肩を落としてかえって来た女性社員は「申し訳ありません」と深々頭を下げました。この女性社員の一言で、まだほんの少しだけこの会社に最後の良心が残っているなと感じました。

結果的にユナイテッド航空は、レギュレーションに書かれた裏技を駆使し、何の営業努力、何の企業努力もせず、またお客に対して何の追加サービスもすることなく、まんまと¥264,000を只でパクッたのです。ヤー公顔負けのパクリ技ではありませんか。
世界の翼、アメリカの誇り、ユナイテッド航空も、こうしたせこいパクリをやるようになったらお終いですね。ユナイテッドにとっては、我々からパクッた金額は、本当に僅かな取るに足らない金額ですのに、しかしながら我々の脳裏にはしっかりとユナイテッドのパクリ技が刷り込まれましたからね。この屈辱は絶対忘れません!

憤懣やるかたないと言う気分のまま、サンフランシスコで入国手続きを済ませ、フェニックスに着いて荷物を受け取ってさらに驚愕した!我々のスーツケースの鍵が壊されているのです。しかもスーツケースの中は強盗に遭った後の様に引っかき回されています。
後でアメリカのユナイテッド関係者に聞いてみますと、何でもユナイテッドではスーツケースには施錠をしないで預けないといけないらしいです。
鍵をしているスーツケースは検査のために全部鍵を壊してでも開けるのだそうです。
しかしながらこうした肝心な事の説明は日本のカウンターでは一言もコメントはありません! 昔のユナイテッドの良き時代は完全に過ぎ去り、現在の社員達によき時代の対応を求めるのは最早不可能と言う所まで来ているようです。

不愉快なユナイテッドの体験を早く忘れ、頭のスイッチを射撃大会に切り替えます。
今回の大会参加者は7名の参会者がありました。年々増加しています。
奈良県から井上氏、竹本氏、神奈川県から川村氏、長野県から石田氏、秋田県から加藤氏、高橋氏、そして私もツアーコンダクター、運転手、雑用、通訳をかねて選手として参加しました。皆さんの為にやっていない仕事はポン引きくらいの物です。
本当はその仕事をお願いしたかったと竹本さんが不埒な事を申しておりました。
普通なら国際的な射撃大会に参加という事になりますと、何回も選抜を繰り返し、おおよそ1年がかりで選手を選出するのが普通ですが、我々ベンチレスト射撃協会では、手を挙げた人は誰でも参加できると言う、懐の深いところを見せています。
その上、文部省から紐付きの補助金を得ている訳ではありませんので、「勝たなければ」と言う余計なプレッシャーもありません、その代わり「NHK」の取材もありませんがね。
射撃場はフエニックス郊外にあるベンアレー射撃場である、広大な国立公園の中に設置された射撃場で、ゲートを入ると最初にスモールボア射撃場があります。私は6年前世界選手権で初めてこの射撃場を訪問したとき、最初に見たこの場所こそがベンアレー射撃場であると思い、誰もベンチレストシューターが居ないのを怪訝に思い、拳銃の射撃練習をしていた警察官に聞いたら、ベンチレスト射撃場はまだまだこの奥にあると言うことで、私が見たスモールボア射撃場はあくまでも、極々この射撃場の一部でしかないことを思い知らされました。

ベンチレスト射撃場
ベンチレスト射撃場

ゲートから射撃場の道を進みますと、最初にスモールドア射撃場、1000mポジションシューテング射撃場、300mシルエット競技射撃場、トラップ、スキート射撃場等々、多くの射撃場がこの広大な敷地に点在していることが解かりました、我々の目指すベンチレスト射撃場はその広大な射撃場の一部に存在しているに過ぎなかったのです。
その広大な射撃場の中のベンチレスト射撃場の中の、ごく一部を画像でご覧下さい。
何となく奥の深さを感じ取って頂けるでしょうかね?

さて、射撃場に到着すると加藤さんがサンドバックにいきなり砂を詰めだしました、我々の持参する荷物は非常に多岐にわたりかつ重たいので、荷物の軽量化のためにサンドバックの中の砂を捨てて、皮袋だけを持参したのです。そして現場で砂を詰めて、大会が終わったらまた砂を捨てて帰ろうと言う作戦です。加藤さんの詰めている砂は、一見すると単なる、何処にでもある砂と勘違いされると思いますが、実はこれは本当の砂ではなく、工業用のサンドブラストに使う砂です。

普通に何処にでもある砂を使いますと、使用する間に砂の粒子が微細化し、サンドバックの縫い目から微細な粉末が永遠に噴き出して来ることになります。当社ではヘビーサンドという名称で金属粉の粉末を¥5,000で販売していますが、使い終わったらサンドバックの砂を捨てると言うことは、それなりにお金のかかる行為なのです。

砂入れ
砂入れ

さて、私は今回の大会のために特別注文のストールパンダを用意しました、機関部の右側にエジェクションポートがあるのがお解りでしょうか、通常のベンチレストライフルは、左側に装填口があり、そこから弾の装填と、薬莢の取り出しを行う、しかしこれでは頻繁に変化する風の影響を避けるために、タ、タ、タ、タ、と連続して射撃をするのに排莢の時間を取られるのです、そのため特別に注文した銃は左から装填して、右から排莢する特別注文銃の製造を1年前から依頼していたのです。銃床にも日の丸を書き込んで貰いました。

日の丸
日の丸

画像エジェクションポートをご覧下さい、こうした具合に左から装填して、撃った後は右側のエジェクションポートから排莢するのです。

エジェクションポート
エジェクションポート
エジェクト
エジェクト

排莢した薬莢はこうしてタオルを敷いて受け取ります。

注文時に日本の国旗という風に文書だけで注文しましたので、ひょっとして間違って北朝鮮の国旗でも間違って書かないか非常に心配していました。
北朝鮮の旗が間違って書かれていたら、私は今回の大会には参加しなかったに違いありません。この画像を撮影してくれたのは、私の友人、ターク高野氏です。
さて今回使用する弾もこの銃の薬室に合わせて特別にリロードした弾を使います。

画像を見て貰えればお解り頂けますが、薬莢のネックの周りを削り込んで居るのがお解り頂けるでしょうか? これは薬莢の内径の中心を基準に外径を削った跡です。何故薬莢の外周を削るかと言うと、実は薬莢のネックの厚さは必ずしも均等で無いからです。

ネックターニング
ネックターニング

肉眼で見ると同じ厚さに見えるが百分の数ミリ必ず偏芯しているのである、だからそのままでは弾頭は軸線から偏芯した状態で薬室に装填されます。百分の数ミリの偏芯でも、ベンチレスト射撃競技は100m先での0.1ミリ単位のグルーピングを競う射撃競技なのでその些細な誤差が勝敗を決める大きな要因となり得るのです。
この薬莢のネックを削る作業をネックターニングと言うが、言うまでもないがこの削り込んだ寸法で最初から薬室の寸法を決めていますので、薬莢を削り込んでもここの部分に寸法のマイナスは起きず、その為にネックの寸法が小さくても火薬ガスが吹き戻す事は無いのです。

日本選手がこの大会でチャンピオンになる可能性は極めて小さいですが、多くのアメリカ人達は我々の事を、ショッピングのチャンピオンと密かに呼んでいます。
会場には地元のブルーノのお店が出店していますが、アメリカ人たちは買い物と言ってもせいぜい1ドル程度の洗矢ブラシしか購入しませんが、引率した選手達はこの時とばかりに一気に買いに走るのです、何しろ雷管は1個2円、火薬は1ポンド2千円、こういう値段で売られているのでお金の価値が何倍にもなったように感じられるからです。
私の推測ですが、日本人選手達は今回の試合1日で100万円程度の買い物をしたことは間違いありません。

そういう環境の中で我々日本人は最も歓迎される人達なのです。

弾
スコープ
スコープ
銃身
銃身
火薬
火薬
銃床
銃床
店内風景
店内風景

射撃場の後ろではリローデングが行われています。
事前に弾を作り置きしないのは、射撃場の環境に応じて微妙に装弾を作り替えているからである、気圧、気温、湿度、そうした環境に応じて、火薬の種類、装填量、弾頭の重さ、形状、そうした物を微妙に組み合わせているからです。
どういう組み合わせがベストであるのでしょうか、その指標は存在しません。

この大会には黒人は一人も参加して居ないのですが、参加できない規則が在るわけではありません、なぜだか黒人の参加者は皆無ですね、その為と言っては黒人の人達にはなはだ失礼ですが、ここの射撃場にはみんな高価なリローデングの機械をおきっぱなしです。
どんなに高価な物を放置していても絶対に無くなることはありません。

リローデング
リローデング

ワトソン氏の手作りの弾頭を販売しているところで、私が居たらアメリカ人が来て、ワトソンさん居ないの? と聞くので今射撃中みたいですと私が言ったら、$100をテーブルの上に置いて、風で飛ばないように弾箱をのせて立ち去りました、彼は私も含めて誰もこの$100を盗まないことを知っているのです。普通のアメリカの社会では考えられない行為です。

射撃場の中は色々な風旗が乱立していますが、それは個人個人の射手が持ち込んだ物です。
大会が始まる前にそれぞれの射手は自分の風旗を設置します。

風旗立て
風旗立て

マッハ3以上の速度で飛翔する弾頭も、風の影響で微妙に流されます。
ウインドイフェクトと言うチャートをレストに取り付けている射手もいます。
一般の人が考えると3時方向から吹いてくる風があれば、弾頭は反対側の9時方向に流されると考えるでしょうが、弾頭は1分間に10万回転以上の速度で回転していますので、その影響の為に9時方向ではなく、少し上にホップするのである、従って流される方向は10時方向と言うことになるのです、前から来る風には12時方向に流され、後ろから吹く風には6時方向に落ちるのです。我々はそれらの風を読み、1発撃つ毎に狙点を微妙に変化させて撃っているのです。

ウインドイフェクト
ウインドイフェクト

5発の射撃を終了した後は、10回くらいブラシを通し、を浸したボアソルベントパッチを20回くらい通してカッパーファウリングを除去します。
命中精度の維持と、銃身寿命の為と言うことなのですが、未だに私にはこの効果が完全には理解できません。

クリーニング
クリーニング

同行した奈良の井上氏の話では、日本国内での射撃はクリーニングするのは射撃の後、ここでの射撃みたいに頻繁にすることはありません。それでも現在すでに5000発以上のの弾を撃ちながら命中精度の劣化はおきていないのです、多くのアメリカ人達は銃身を2000~3000発で交換しているのを考えますと、本当にクリーニングが銃身寿命に効果があるのかどうか今でも疑念は深まります。
命中精度と言うことに関して言うならば、すでに5000発以上の弾を消費している井上氏なのですが、その銃身で何と、第1日目の大会、100ヤード競技の第2射群目にいきなりトップ10に躍りでました、引き続き第3射群では第3位です。

井上さん
井上さん

このまま行けば優勝か、どんなに悪くてもトップ10に入り込めそうな快挙です。
このレベルは今まで日本選手が誰も到達したことのない最高峰の所です。
ところが第4群でいきなり我々の集う、100番台に落ちてきてしまいました。

どうやら井上氏は高所恐怖症らしく、あまり高いところに長時間滞在することに慣れて居ないらしいです。井上氏の話では、トップ10に入り込めば、お祝いにホッターズと言うお店で祝賀会をやろうと私が提案し、言うまでもありませんが勘定は井上氏に持って貰うことになると言ったため、「それなら外すしかない」と言う訳でその一言が効いたと言う事ですが、しかしながら本当の理由は現在にも不明です。
今後二度と高いところに登ることが無いであろう井上氏の為に、大会の優勝者のカップを持って居るところを画像として残してあげました。

虚像
虚像

言うまでもありませんが、これはあくまでも井上氏の家族向けの虚像画像です。
他の選手達にも虚像画像を撮影してあげようと思ったのですが、嘘がバレバレなので止めました。

店内1
店内1
店内2
店内2

画像はホッターズでの写真ですが、私は金髪のオネーチャンに寄られますと、目の焦点が会わなくなるのはどう私の習性らしいです。この画像を見て、金髪とイッパツなどと言う妄想は抱かないようにお願いします。
画像で私が指を1本立てているのは、イッパツではなくて、ピッチャー1本と言う注文なので改めて誤解の無いようにお願いします。
その夜は、オッパイが1つ、オッパイが2つ、オッパイが3つ、オッパイが4つ、等と数を数えて寝よう試みました、逆になんだか興奮して寝付けなくなりました。

うるうる
うるうる

寝不足の状態で2日目を迎えま
した。 この日も井上氏は、トップ10のグループに食い込みます、このままトップグループに居ると友達を無くすと思い、私も少しだけいつもより丁寧に撃ち込みました。
そうすると、どういう神の采配でしょう! 200ヤード競技の3射群に置いて私はトップに躍り出ました。私にすればカクタスシュート参加6年目の快挙です。

証拠
証拠

この原稿は冷静に、淡々と書いていますが、200ヤード競技の3射群でのトップと言うのは私に取ってはあまりにも出来すぎの事件です。
この事実を永遠に伝えるために当社HPのバナーを書き出したい気持ちで一杯です。
バナー広告は兎も角、この事実は人に嫌がられても今後何年でも語り告ごうと思います。
射撃場で「話したっけな~ 30年前カクタスシュートで俺がトップを引いたの」なんて貴方に言っても嫌がらずに聞いてくださいね! そして「えっ凄いですね」と必ず驚いてくださいね。

今回の大会では初参加の長野県の石田さんです。
この方は初めての参加なので、何事も体験と言う感じで参加されました。
最初の日の1射群で、「射撃はどうでしたか?」と聞いたら、1発だけ的に入り、後は弾痕不明ですと力を落とされている、ベンチレスト射撃競技では5発弾痕をミリ単位でまとめ無ければならない、その中で弾痕不明と言うのは致命的な取り返しの効かないミスです。

氏は、何事も経験ですからと落ち着いて話して居られましたが、後で回収された標的が開示されたので解ったのですが、なんと5発の弾痕はみんな1つ穴に入って居たのです。
石田さんは5発撃ったのに弾痕が1つしかありませんので、4発の弾は弾痕不明と勝手に思いこんで居たのです、当人の思惑と違い思いがけない成績になりました。
勿論記念の標的はちゃんと日本にお持ち帰りになりました。
家族からは相手にされないでしょうが、当人は額に入れて毎日拝みたい状態かも知れませんが間違ってもご家族に強要しないようにお願いします。

石田さん
石田さん

前回の大会で驚異的な記録を達成し、地元新聞にも記事を書かれた加藤さん、今回は奮いませんでした、同郷の高橋さんを引率されて来られたのですが、高橋さんが到着当日風を引かれ、高橋さんが「医者に行きたい」と言われたため、真夜中にタクシーを手配し、大病院で診療を受けさせ、24時間営業の薬屋で薬を買い与え、ホテルに帰ったのが深夜の2時ですから当日は疲労困憊という状況だったのです。
目の焦点が合わず、スカ太郎の様な表情になっているのはそのせいで、決して自顔でないことを加藤さんの名誉のために付け加えておきます。

加藤さん
加藤さん

この日のデイナーは、GUN誌のライターとして、そしてガンスミスとして著名なターク高野氏を呼んでシーフードで盛り上がりました。タークしも大会選手として参加しています。写真に加藤さんと高橋さんが写っていないのは、このとき病院に居たからで、私が映っていないのは写真撮影をしているからです。

デナー
デナー

翌日は病欠していた高橋さんが参加されました。
シャカリキになってクリーニングをしているのが高橋さん、付きっきりでお世話をしているのが加藤さんです。加藤さん本当にご苦労様でした。

高橋さん
高橋さん
記念撮影 1
記念撮影 1
記念撮影 2
記念撮影 2

全ての競技を終え、日本選手全員とターク高野氏と記念撮影しました。
この画像は、川村氏の一言でタークが引いている、そして普段は笑顔の少ない高橋さんが大爆笑している写真ですが、皆さんで勝手の思いつくせりふを書いて遊んでください。
私が映っていないのは私がカメラマンだからです。
しかし今回の日本選手団のヒーロー(当然ですが私の事です)が居ないのもおかしな話なので、私の代わり加藤さんに撮影をお願いしました、私の顔が何となく偉そうにしているのは、やはりトップを引いたせいでしょうね。
画像を見て解ったのですが、川村さんはタークのお尻をまさぐり、タークは屁をこいて体をねじり必死にその手から逃げようとしてるのも解ります。

大会にはネシカの社員達も沢山参加しており、社長のマイケルとも1年ぶりに再会しました、私は300WSMのタクチカルライフルを2丁注文しました。
スコープ無しですので販売価格は¥900,000の予定です。この値段を考えるとえらい高い銃に見えると思いますが、機関部と、ボルト自体を大きなブロックから放電加工と、放電ワイヤーカット技術で切り出して作っていますので、想像を絶する化工時間と、膨大な費用がかかります。工業技術に精通している人間から見れば、¥900,000はむしろ安すぎる値段です。現物を見ると、現在考えられる最高の技術水準の銃です。銃身はハート、6本フルート、特殊表面処理(私には何か解らないのです)、弾倉交換式機関部、等々の当社の特注品です。

何とか夏のセールまで間に合えば良いのですがね。
この銃、品物が到着する前に売約済みになる可能性が在りますので、現物を見てから購入しようと言うお客様は取り敢えず、予約だけは入れておいてください。
予約と言っても現物を見た後のキャンセルは自由です、予約しても予約金は不要です。
せっかく買う決心をしても、入荷前に売約済みではあまりにも情けないですからね。
その為の予約です、お気軽にお申し出下さい。


更新 2003年 4月14日

カクタスシュート参戦記を読んだ読者の方からメールを頂きましたので開示します。
どうやら、私はユナイテッドの社員にはめられたようです。
何故そういうことになったかと言いますと、驚いたことにユナイテッドの社員、予約受付係、ユナイテッド航空受付カウンター、スパーバーザーと名乗る馬鹿、いずれもローマ字程度なら読めるのでしょうが英語力はからっきし駄目なのです。
私はてっきり、ユナイテッドの社員は全員学校を出ている人達だと誤った先入観で見ていました。
私より英語が出来なかったとは考えもしませんでした。
受付カウンターでは英語のマニアルとやらを見せてくれず、日本語での対応だったのでまんまと騙されました。
私のように、聖人の如くそもそも人を疑うことを知らない人間は、ユナイテッドの様な詐欺師集団にとっては赤子の手をねじるごとくと言うことでしょう。

以下、読者の方からお送り頂いたメールをご紹介します。


築地さん、私がお送りしたUAの運送約款をご覧になっていますか?
みごとに、UAのグランドクルーに「騙され」ましたね。
ライフルは無料です。

-Charges
追加料金
-To/From Japan: Only Target Pistols for use at international athletic meets are allowed and then always treat as one item excess bag.

日本発着:国際スポーツ大会で用いられる標的射撃用ピストルだけが許可され、常に超過荷物1個として扱われる。

すなわち、標的射撃用ピストルが有料です。
築地さんは間違った訳を教え込まれています。
課金されたエクセスチャージをを取り返してください。
後に続く者のためです。詐欺師は懲らしめなければ被害者を次から次へと産みます。

私は話していて気付いたのですが、UAのグランドクルーは成田も関空も英語が読めません。信じられないでしょうが、事実です。

上記のメールを受けて本日ユナイテッド航空日本支社宛に簡易書留で以下の内容を送達しました。
ユナイテッドから回答があったらまた開示します、さてどの様な展開になるか、ワクワク・・・・・・・・・

以下ユナイテッド宛の手紙の内容です。


私は毎年射撃協会のメンバーを引率して大会に参加しております、今回も私を含めて7名でまいりました。(4月3日~4月8日)

前回のトラブルはライフル銃の搭載拒否でしたので、それに関しては全くトラブルは無かったのですが、私が予想もしていなかったことですが、成田のカウンターでライフル銃は全部超過荷物と言うことで追加料金を徴収されたのです、私も出来るだけ穏便に対応したのですが、窓口の社員の上席の人間でしょうか? スーパーバーザーとやら名乗る人間が出てきて私との対応に当たりましたが、慇懃無礼と言うか横着と言うか聞く耳を持たないという態度で、屈辱的な対応をされました。この屈辱は生涯忘れませんが、いずれにしてもこれは私憤ですから問題はさておきます。

問題はライフル銃に対して超過料金をかけると言うことですが、残念ながら私は窓口でその根拠となるマニアルを見せてもらえませんでした。

しかしながら、平成11年9月16日付けの御社のお手紙の中で御社のマニアルを頂戴しておりますので何故追加料金を加算されるのか怪訝に持っております。

マニアルが変更になったのなら致し方ないと思い、アメリカでのチェックインの際にエクセスチャージがかけられるのか念のために確認しましたところ、アメリカではエクセスチャージはかけられませんでした。

マニアルの読み方に対して、御社のアメリカスタッフ、そして私の読み方が間違っているのでしょうか、それとも御社の社員の読み方が間違っているのでしょうか?

もし御社の方に間違いがあれば課金されたエクセスチャージの返金と謝罪を求めます。

築地恵


更新 2003年 4月15日

ネシカでは色々なタイプの銃を製造していますが、当社の注文はアーバンタクチカルを注文してあります。
スコープは付属ではありませんのでご注意下さい。

口径は:300WSM(銃身長26インチ)2丁と 308WIN(銃身長24インチ)2丁です。

ネシカライフル
ネシカライフル
銃身母材
銃身母材

更新 2003年 5月 1日

今日に至るもまだユナイテッドからは返事が来ませんね、一体どうしたと言うのでしょう。
奴らは一旦ポケットに入れたお金はこのまま頬被りするというのでしょうか?
時間が経過すれば経過するほど問題が大きくなり、ややこしくなるのは間違いないのに奴らは危機意識が欠如していますね。
恐らく私の手紙を受けて、ユナイテッド社内に英語の分かる社員が居ないので即答出来ないのでしょう。
ですから多分、英語の出来る人達の居るアメリカ本社に問い合わせているはずです。

もしユナイテッドから返事が来るとすれば、「返事が遅れて申し訳ありません、事実関係についてアメリカ本社に問い合わせていたため回答が遅れました」なんて言ってくるはずです。間違っても英語が読めないので本社に聞いていましたなんて事は恥ずかしくて言えないはずですからね。

さて、話は変わりますがカクタスの主催者から成績表が送られてきましたが、成績表の上にウエルスファーゴー銀行の小切手があります、私の分は$82.00 井上さんの分が$51.00です。
怪訝に思い成績表を見たら、なんと私は総合成績で29位、そして賞金として$82.00もらえたのです。井上さんは37位です。
これでユナイテッドの不愉快な思い出が一掃された快挙です。
目下の所、私が全ての射撃競技で日本での賞金王と言うことになりました。
そして、そう遠くない内に射撃のトーナメントプロとしでデビューするに違いありません・・・・・

Cash Option Summary

1.GaryOcock $1,406,61
2.Ed Adams $495.72
3.John Hom $417,73
4.Bill Hallam $414,37
5.Chuck Miller $375.46
6.LowelI Frei $335.91
7.Cecil Tucker $318.96
8.Lester Bruno $261,15
9.Larry Scharnhorst $232.57
10.Mustafa Bilal $150.73
11.BiII MeIIor $149.00
12.Don Neilsn $144.41
13.Steve Henager $144.00
14.Jim Erickson $140.56
15.Don Gentner $139.08
16.Bob McGmw $125.91
17.Skip Otto $119.10
18.Bruce Black $118.00
19.Jef Schopper $115.00
20.Gary Sinclair $103.16
21.Henry Pinkney $100.00
22.George Raymond $97.00
23.Adam Savage $90.16
24.Tom Martin $85.00
25.KarI Hunstiger $85,00
26.Gene DeLoney $84,00
27.Richard Carpenter $84.00
28.Darryl Whittman $84,00
29.Megumi Tsukiji $82,00
30.Jack Jackson $82.00
31.Randy Pumphry $81,00
32.Russ Hardy $76.82
33.Roy Damron $76.82
34.Camlyn Libby $61,00
35.Norm Lindley $57.16
36.Dennis Wagner $55.16
37.Akiraln inouie $51,00
38.BmnditGurr $51.00

カクタス シュート参戦記 (2002年)

2002年 4月12日 築地
続編 2002年 4月17日 築地
追記 2002年 4月18日 築地

毎年、アリゾナ州、フェニックスで開催されるこの大会に参加しているが、我々は最初の大会参加では箸にも棒にも引っかからないような惨めな結果であったが、毎回参加する内に多少は学習効果を積み重ねたと見えて、今年辺りは全員が参加者全員の中で、何とか中頃までに這い上がることが出来るまでになった、それにしてもアメリカのハードルはまだまだ相当高い所にある。

今年の大会から、昨年9月11日のテロの影響だろうか、アメリカで銃器の取り締まりを担当しているATF局(アルコール、タバコ、銃器取締局)の新しい規則が2月19日から施行された。
従来まで銃器のアメリカ本土への持ち込みは原則自由だったのであるが、如何なる理由が在ろうとも事前に許可を取らなければ成らなくなったのである。
私がこの事を知ったのは、3月に入ってからである、しかもATFに申請して許可されるまで平均約60日かかると言うことで、今から動いても逆算するととうてい4月、7,8,日の大会まで間に合いそうもない。

私の友人でベンチレストシューターのターク高野氏に連絡したところ、何とかATFと折衝してみてくれると言うことになり、とりあえず我々は飛行機の予約をし、私は政府の輸出許可を申請した。ATFは何とか大会までに許可を出してくれると言うことに成ったのであるが、送った筈の招待状が添付されていないとか、訳の解らないことを言い出してハラハラさせられた。
何処の行政も同じような物であろうが、遅々として進まぬATFの事務手続に対してターク高野は毎週2回以上電話をかけまくってくれた御陰で、何とか期日に間に合わせることが出来た。ターク高野は、多分何度も"切れそうに"なったのではないかと察するが、最後まで我々に愚痴を言うことは無かった。

ターク高野氏にはこの場を借りて、再度感謝の気持ちを表しておきたい。

いよいよ出発
いよいよ出発

アメリカに到着すると、国内線への乗り換えも、異常とも思えるようなセキュリテーチェックが待ちかまえていた、セキュリテーの後方には銃器を携帯した海兵隊員が警備している物々しさである。

厳重なセキュリテー
厳重なセキュリテー

私は1月のガンショーの時にこの異常なまでのセキュリテーを体験しているのでほとんどマークされるような荷物は持っていなかったが、川村氏は携帯していたサンドバックの中身まで疑われ、携帯していたパソコンには電源を入れてみろと言われ、あげくは靴の中まで調べられてしまった。私から見ると川村氏は遵法精神に富んだ好青年に見えるのであるが、セキュリテーの専門家の視点ではまた別の見方を抱いているのかも知れない。

フェニックスでのホテルは、射撃場の近く、滞在型のホテルで1泊$50のバジェットインに宿泊した。滞在型なので室内にはキッチンまで付いている、ご近所のスーパーで買い物をして自炊してお食事である、私はバドワイザーの瓶ビールを12本、それに同じ銘柄の缶ビールを数本空けて前後不覚になりその日の夜はそのままシートに倒れた!

ホテル
ホテル
お食事
お食事

翌日は練習日なので、それぞれ空いている射台で練習を開始する。
ベンチレスト射撃の場合は、射座が空いていれば自由に練習が出来る。
標的は張ってある物は自由に撃つことが出来るし、当然のことだが自分でも好きな標的を自由に張ることが出来る。

練習開始だ!
練習開始だ!

実際に射撃をしながら、最適のローデングを手探りで探す、我々は日本でローデングした弾を幾つか持参しているので、実際にアリゾナの射撃場で撃ったとき、どのように変化するのか試したのであるが、実際問題は日本でローデングした弾でも、ここアリゾナでも同じような精度があることが確認できた。

私自身は日本と全く同じ条件でリロードすることにしたが、人によっては0.5グレイン程度下げたり上げたりしながら最良のポイントを探していると言うことである。

リローデング中1
リローデング中1
リローデング中2
リローデング中2
リローデング中3
リローデング中3

ベンチレストの頂点を極めたと言われるトニー ボイヤー選手は、なんと2週間前から射撃場に入り、色々な気象条件でテストを繰り返していると言うことである。
昨日はぐでんぐでんに飲んだくれてしまった私としては反省することしきりである。

ベンチレスト射撃の世界では、5発ずつの射撃を5回繰り返し、それぞれのグルーピングで競う、5発撃つと射手は交代するので、その都度全員が銃身のクリーニングをする。
銅ブラシを使い、ボアーソルベントをブラシに浸し10回程度前後にブラシを往復させる、その後に、パッチと言う布でボアーソルベントを拭き取る。

射撃が終わればクリーニング
射撃が終わればクリーニング

それも半端な数では無い、射撃するよりも明らかにクリーニングをする時間の方が長いのである。地面に落ちたパッチの数を見て貰えば1回や2回のクリーニングでないことは容易に推測できるであろう。

今年のリューポルド社のカタログの見出しに、トニー ボイヤー氏が掲載されている、それほど氏のベンチレスト射撃に対する功績は大きいと言うことである。
彼の射撃方法は、極力同じコンデションで撃つと言うことを心がけている。
ベンチレスト射撃の制限時間は、5発に対して7分であるが、この中でほんのわずかな時間、風の条件が同じになることがある、試射をしながら風の変移量をチェックする、風が変われば絶対に撃たない、ひたすら同じ風が吹くのを待つのである、そして風の条件が同じになったと思えた瞬間に、わずか30秒程度で5発の弾を撃ち尽くす、但し風の状況に応じて狙いを微妙に変化させながら撃ち終えるのである。
我々から見たらまさに神業である!

パッチの数!
パッチの数!

同行した加藤さんが車の中で、日本のトニー ボイヤーさんは誰ですかねと聞く、私は、それは川村さんでしょうと答えた! 成る程ね~と相づちを打つ加藤さん。
私は心の中で、川村さんはトニー ボイヤーと言うよりは、どちらかと言うと、トニー谷ではないかと心の中で思った。

日本のトニーボイヤー
日本のトニーボイヤー

トニー谷氏、おっと、川村選手は射撃選手としてよりも、ショッピング チャンピオンとしてここアリゾナでは超有名なのである。何でも今回の大会で総額100万円近いお買い物をしたそうである。スコープを数本、バレルを数本、それに諸々の雑品を購入すると簡単にそうした数字になってしまう。会場には地元ブルーノが出店していて、川村様ご来店を手ぐすね引いて待っていた。

ブルーノ社のテント
ブルーノ社のテント
ブルーノ社の銃身
ブルーノ社の銃身
ブルーノ社の銃床
ブルーノ社の銃床

会場には、エド、ワトソン氏のキャンピングカーも来ており、ここで自作の弾頭を販売している。氏はこうして弾頭を販売しながら全米各地をベンチレスト射撃に参戦しながら回っているのである。

エド ワトソン氏のお店
エド ワトソン氏のお店

大会当日


試合初日は100ヤード競技である。
私は第1射群、川村、加藤氏と射群が続く、1射群目の私は射座について、射座のコンクリートが思いの外冷たいのを感じた、砂漠の夜は相当冷え込むことがこうした事からも解る、射撃場にはようやく朝の日差しが差し込んできているが、辺りには冷気が満ちている。

早朝、準備中の射座
早朝、準備中の射座
1射群目の私
1射群目の私

日の光の強さと、外気温の差がまだ大きくないので風は微風しか吹いていない。
射群が進むに連れて、日の光が増して地面が熱くなってくると、風が舞い出すのかも知れない。

標的がセットされると、初めのシリーズのみ制限時間は10分、試射は自由、1圏的5発打ち込みである。(コメント ファイヤー)の合図で射撃開始である。
ベンチレスト射撃では無風の時に撃つのは最もリスキーな選択である、無風と言っても旗がなびかないだけで、風自体はそこらに存在しているからである、しかもその吹く方向が解らないので弾が何処に飛ぶか解らない、一番コンデションの良い風は、弱い風が一定方向に吹いているときなのである、私は風が一定方向に吹いている時を見計らって試射弾を撃ち込む、"タン"と言う心地よい音を残し、4.8キロのベンチレストライフルを後ろに蹴飛ばしてマッハ3の速度で、65グレイン弾頭が銃口から飛び出して行く、弾丸は0.3秒間の飛翔後、遙か後方で砂のスモークが舞い上がる、弾頭がバックストップの土盛りに当たった、弱い"トン"という音が還って来る。

同じ風の条件で数発の試射を繰り返した後、風の条件が同じ内に出来るだけ素早く5発の弾丸を標的に送り込む。
その間、風は微妙に変化を続ける、右目でスコープを、左目で風旗を見る、同じ条件の風と言いながら風は常時微妙に変化し続ける、トニー ボイヤー選手みたいな超名人になると、その微妙な風に合わせて狙点をミリ単位で変化させて撃ち分けるようであるが、こちらは下手に変化させると命取りにならないとも限らない。
あまり余計な"読み"をしないで正照準で撃ち終える。
3年前に初参加の時は、全く風を読むという基本的なことすら知らなかったので、箸にも棒にもかからない成績であったが、だんだんこの世界でも"スレッカラシ"になってきた御陰で、現在では全員が中位くらいには食い込めるようになってきた。

射群が川村さんに回ってきた、氏は常に強気と弱気、強運と不運、躁と鬱が同時進行で進む事が多いので、成績に関しては良かった物も在る代わり、そうでなかった物も混在する。

春の珍事と言うか、青天の霹靂と言うか、空前絶後と言うべきか、言語道断と言うべきか、なかなか適切な比喩が見あたらないが、これから一生涯の加藤さんの幸運を全てこの瞬間に使い切ってしまったのでは無いかと思われるアクシデントが起きた!

それは最終射群の加藤さんがなんと、あろう事か! 
突然1位になってしまったからである!
私が言っても誰も信じないでしょう、当の加藤さんですら信じていないことなのですから、しかしながら成績表をご覧下さい、ちゃんと1位になっています。

頂点を極めた加藤さんと証拠
頂点を極めた加藤さんと証拠

人生の全てのラッキーポイントを全て使い切ってしまった加藤さんは、これを頂点に一気に下り坂を駆け下りることになるのであるが、それでも瞬間的に頂点を極めたことは間違いない事実なのである。

標的にズームイン!
標的にズームイン!

加藤さんの成績の事を書くと、これ以上私自身が文章を書く気がしなくなったので今回のレポートはこれにて終了!

成績表
成績表

続編 2002年 4月17日

カクタス参戦記、途中で終わるというのでは、築地さんの勃起能力を疑ってしまいます。前戯が終わって、先が埋まった段階で萎えてしまったような......

今回のカクタス クラシック参戦記を読んだ読者の方から上記の感想が寄せられました。

私の勃起能力を疑われては私のチンチンの名誉に関わります、しかしながら(前戯が終わって、先が埋まった段階で萎えてしまったような......)と言うご指摘には、私自身いささか思い当たる節が無いわけではありません。

最も、問題を指摘した読者の記述の方が、逆にかなり具体的でなおかつ真実味があるので、これは問題を指摘した当人が普段対峙している切実な問題なのかも知れません。

そんな訳でレポートの続を書く動機としては、いささかいささか問題の本質から乖離しているとは思いますが、さらに続編を書き上げたいと思います。

昨年フェニックスに来たときは日本で言えば初夏状態だったので、今年は他の物は忘れても海水パンツだけは絶対に忘れないように荷物にしまい込んだ。
夏になって泳がないと言うことは、射撃場に来て射撃しないとの同じ事である。
最初にアメリカに上陸したのはサンフランシスコであるが、ここの気温はほぼ東京と変わらない、ここで国内のシャトル便に乗り換えてフェニックス空港の着いたときの外気は、正しく夏であった、日差し、空気、そうした物がすべて夏の香りを放っている。

旅に出て一番面白いのはなんと言っても季節の変化を楽しめることである、桜の季節から一気に夏の季節に飛べることは海外旅行の最大の楽しみである。
5月にもオハイオ州のクリーブランドでも、ベンチレスト射撃の最大イベントのひとつ、スーパーシュートが開催されるが、ここは1回参加して懲りた! 何故なら5月と言えば日差しのいいときは日本でも初夏の陽気の時がある、そうした日本から北の地にあるクリーブランドでは日本で言えば3月程度の暖かさでしかない、何しろ湖を挟んだ対岸はカナダなので寒いわけである、そんなわけで季節が戻る環境と言うのを私は好まない。

毎月のように全米各地で開催される色々なベンチレスト射撃大会の内で、一番季節感を楽しめるのはアリゾナ州で開催されるこの大会では無かろうかと考えている

到着初日、練習日、第1日目、とほぼ初夏状態が続いていたが、大会2日目は朝から雨模様である、しかも寒い! 当然にして私は半袖しか持ってきていないが、大会参加のアメリカ人達は長袖を羽織っている。それぐらい寒い。

参考までに今回の大会成績を開示しますので、以下のアドレスに飛んで内容をご確認下さい。

http://benchrest.com/nbrsa/sw/reports/abrs0402a.htm
上記はライトバーミント100ヤード競技の記録です 私は139位です

http://benchrest.com/nbrsa/sw/reports/abrs0402b.htm
上記はヘビーバーミント100ヤード競技の記録です 私は159位です

http://benchrest.com/nbrsa/sw/reports/abrs0402c.htm
上記はライトバーミント200ヤード競技の記録です 私は93位です。

http://benchrest.com/nbrsa/sw/reports/abrs0402d.htm
上記はヘビーバーミント200ヤード競技の記録です 私は142位です。

http://benchrest.com/nbrsa/sw/reports/abrs0402g.htm
上記は大会の総合成績です、私は134位でした。

我々の成績は以上のとおりであるが、実は私自身は本当は失格しているのである、それは200ヤード射撃の時、早々と本射を撃ち終わり、最後の弾が1発残っていたので、試射的に撃ち込もうとして、レンジマスターの(リメイン 30セカンド)"残り時間30秒"の声を聞いた後、(シース ファイヤー)"射撃中止"のかけ声と同時に引き金を引いた。
射撃中止の声が有った後、射撃した射撃した場合は失格なのが規則だそうである。

レンジマスター
レンジマスター

私の反則射撃について競技委員の間で話し合いがもたれ、結局"お咎め無し"と言うことになった、考えようによっては、特段皆さんの成績に影響を与えるような成績ではないので大目に見て貰ったと言うことなのだろうと思う。

4年前から日本でも車の番号に好みの番号を選択できるようになったので、早速私も30-06と言う番号を"購入"した、手にした番号は(す)30-06である。
つまりスプリングフィールド 30-06である、カタカナは選択できないので単に偶然割り当てられただけであるが、偶然にしては出来すぎの話である。
アメリカは、車番の選択は一切が自由に選択できるようで、当然にして会場には6PPCと言う車番の車もあった、同好の志を見つけた思いである。

ナンバープレート
ナンバープレート

以前にもリポートの中に書いたことがあるが、射撃の世界ではほとんど黒人を見かけることはない、ガンショーに言ってもほとんど黒人は居ないはずである。
これは人種差別と言うよりは、それぞれの持つ文化の違いと言うことではないだろうかと思われる、今回の大会では唯一、一人の黒人選手が参加していたが、決して仲間から浮いているわけではなく、むしろ白人の選手達と和気藹々と接している。

但し、使用している銃も黒人が好むような派手派での色使いではなく、着ている服も黒人好みの服ではない、そうした価値観の問題、世界観の問題から白人と同化出来ているようにも見えた。

唯一の黒人選手
唯一の黒人選手

我々日本人選手も、日本人だからと言ってアメリカで疎外感を感じたことは一度もない。
あるとすれば、単なる語学力の問題だけである。このカクタスシュートの大会も、昔はオーストラリア、ドイツ、フランス、カナダ、メキシコ、と色々な国から参加していたようであるが、近年は外国から参加するのは我々日本選手だけで、世界的に不況だと言っても、世界的な尺度で見るとまだまだ日本は元気が有る方では無かろうか。

当然来年もカクタスに参加することになるのであるが、来年はもう少し参加者が増えそうな予感がしている。と言うことは日本の景気もやっと底を打ったと言うことなのであろう。


追記 2002年 4月18日

やったね加藤さん
加藤さんが地元の新聞に掲載されました

新聞記事
新聞記事

2001年 ベンチレスト世界選手権

2001年11月 7日 築地
更新 2001年11月13日 築地

日本は秋から冬に、ニュージーランドでは、春から夏に季節が変わり行く時期。
ニュージーランド、ネルソン市、ラザフォードホテル503号室にて。

ニュージーランドのネルソン市で、2001年度の世界選手権が開催されることになった。
我々ベンチレスト協会にもニュージーランド射撃協会から参加要請があり、会員の中から参加者を募集する事となった。
世界選手権と言うと、誰でも幾多の予選を勝ち抜いてきた強豪選手達が参加すると思っているかも知れないが、日本ベンチレスト射撃協会の場合は、暇と、多少の金のある人なら誰でも参加できるレベルなのである。勿論、外国の場合は違う、アメリカ等は猛烈な予選を勝ち抜いて選手が選抜されているが、我が日本では概ね希望者はだいたい選手として参加できる。
そんな訳で日本選手に関しては、世界選手権日本代表と言う名前が付いていても、町内会のゲートボール大会の参加選手と、資格、資質とも大差はないのである。
同じ世界選手権でも女子マラソンの高橋尚子選手とはこの辺が劇的にレベル違うところである。
この程度のレベルでの参加なのであるが、現実を知らないと言うのは恐ろしい物で、参加選手の一人Sさんからは、大会に優勝したときのスピーチを教えてくれと言われた。

勿論当人は、あくまでも"万一の場合"と念押しするが、我々日本チームはどんなに間違っても優勝することはあり得ない、この所は絶対と念押ししても大丈夫なくらいである。
Sさんは「あくまでも、万一の、万一の場合の事です」と食い下がるが、我々のメンバーが優勝する確率は、拾った宝くじが3億円に当たり、その3億円で北海道の原野を買ったら、そこから原油が噴き出したと言うくらいの確率である。
そもそもSさんは、我々のベンチレストの大会でも久しく上位に食い込んだ事がない、日本国内の大会ですら穴馬的存在なのに、世界選手権に出て優勝するなどと言う事は間違ってもあり得ないのだが、この当たりの雰囲気を皆さんに説明するにはどうしても私の文章能力では書ききれないので、ここはNHKのプロジェクトXのナレーション風に読んでいただく事で雰囲気を察していただきたいと思います。では、以下、山田トモロヲ氏のナレーション風に読んでください。

男達がいた・・・・・・・
それぞれが強烈な個性を持つ男達であった・・・・・・・
リーダーの築地は言った・・・「ニュージーランドで世界選手権があります、日本からも選手を送るつもりです、都合の付く人は参加してください」・・・・・・・・・
男の一人が言った・・・・・「私は参加しますが、優勝のスピーチは何と言うのですか」
築地は絶句した・・・・返す言葉を失った・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私にはSさんの心の中は全く読めないが、世界選手権に参加する心づもりを決めたSさんは、その時から優勝したときのイメージを大きくふくらませて居たのかも知れない。
普通の観光旅行と違い、ベンチレスト射撃では銃の外にレスト、ヘビーサンドの入ったサンドバックなど、色々余分な物まで持ち込むことになり、勢い全員が重量オーバーとなり、合計で14万円相当の超過料金を徴収される。
飛行機の中はテロの影響なのか、60%程度の混み具合である、大会が開催されるネルソン市までは飛行機の直行便があり、本来はそれを利用して行くのが本当であるが、我々の大会参加目的は大会参加の他に、物見遊山という目的もあるのであえて、クライストチャーチで飛行機から降りて、レンタカーでネルソンまで向かうことにした。
距離的にも、時間的にもこの間は東京~大阪間に相当する。途中、いたる所に牧場が続く、多くの牧場は羊を放牧しているが、中には牛、そして、鹿を放牧しているところもある、今回参加した選手の中に宮川雅雄氏がいる。かれは大藪春彦さんのビックハンテングに登場する人物で、本の中で大藪さんは"私の若い友人、宮川雅雄君"と言うフレーズで宮川さんを紹介している。宮川さんは昔ニュージーランドでハンテングガイドをしており、大藪さんのニュージーランドハンテングをコーデネイトしたのは彼である。従ってニュージーランドには殊の外詳しい。宮川さんにニュージーランドの人口は何人ですかと聞いたら、3000万人だという、物の本には300万人と書いてあったので、彼の頭の中では羊の数まで人口の中に入っているらしい。昔の船乗りは港々に"オンナ"が居たらしいが、宮川さんの場合はニュージーランドの山々に雌羊が居たのかも知れない。
宮川さんは大会の途中で友達に会いに行くと言って3日ほど姿を消したが、選手達の間では、宮川さんは、昔、ニュージーランドに残して来た雌羊に逢いに言ったのではと言う話が流れた、こういう事からしても、昔、宮川さんが日本に帰国するときに雌羊が飛行場に見送りに来たという噂は、案外真実なのかも知れない。

ネルソンに付いた時にはすでに夕暮れ時であった。
ホテルにチェックインを済ませ、その足で近くのレストランに直行した。
ビール、ワイン、をしこたま空けて、ビーフに、ラム、を平らげた、勘定を払って驚いた。合計金額を頭割りすると、一人頭2千円程度しかかかっていない、日本なら1万円と言われてもおかしくないボリュームであった。

翌朝、射撃場に向かう、ネルソンの射撃場は町の中心から僅か7分の所にある、町が大きくないと言うせいもあるが、町の周りに自然が多く残っているのでわずか7分の所に射撃場が存在できるのであろう、射撃場に向かう途中、最初公園がある、公園を過ぎるとクリケット専用の球技場がありその先にゴルフ場が見えてくる、ゴルフ場の先が射撃場である。

射撃場への道
射撃場への道
クラブハウス
クラブハウス

射撃場の周りには川が流れその周囲を山に囲まれた美しい射撃場である。
土地はネルソン市の所有で、そこを射撃クラブで借りて使っていると言うことである。


大会1日目、100ヤード ライトバーミント

大会前日に参加者全員で撮影した画像を見るとみんな一応に明るい表情をしている、この明るさが、大会が進むに連れて暗い表情に変化していくのであるが、この時点ではまだ誰も現実の厳しさに気付いていなかった。開会式は会長のスミス氏の来賓紹介から始まり、ネルソン市長の大砲の"ズドン"で開始された。

参加者全員
参加者全員
開会式の
開会式の"ズドン"

大会参加国はアメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、南アフリカ、スエーデン、フランス領ニューカレドニア、そして日本である。参加選手総数は78名である。
ベンチレスト射撃は5発の射撃を5回撃ってそのグルーピングの大きさの平均点で採点する、当然グルーピングが小さい方が上位になる。ベンチレスト射撃では弾痕を1,2,3,4,5,発と数えられるようでは到底勝負にはならない、5発撃って、弾痕は1発しかないのが普通である、つまり5発の弾は同じ弾痕の中に入るからである、勿論6ミリの弾を撃って弾痕が6ミリと言うことは無い、普通7~10ミリくらいの弾痕になる、つまり1~4ミリ程度は上下左右にずれると言うことである。

5発の弾が同じ弾痕に入れるなら、3発、あるいは2発でとぼければ解らないのではと言う疑問が湧くだろうが、そこは標的の後ろにバックターゲットと言う標的があり、これがモーターで常時動いているので、バックターゲットは絶対に同弾にならない、バックターゲットに5発の弾痕があって初めて成績として認められるのである。

バックターゲット
バックターゲット

ベンチレスト射撃は、銃の重さは10.5ポンドに制限されているが、射撃方法はライフルレストの上に銃を置いて撃つ、いわゆる依託射撃という方法である。ライフルスコープは36倍の物を使っている、この倍率だと標的に当たった弾痕が視認できる、弾痕が視認できないと、風の影響で弾丸がどれくらい流されたかを視認できないのでベンチレスト射撃用としては使い物にならない。ワールドカップと言う以上、参加している選手達は風さえ吹かなければ5発の弾を同じ弾痕に撃ち込める技術がある。従って順位の優劣を決めるのは風の動きをどう読むかで大方の勝敗が決まる。
標的の左右には横縞の線を引いたボードがある、これはミラージュボードと呼ばれる物で、これをスコープで覗くと、陽炎が見える、その陽炎の流れで風旗がなびいていなくても風の流れが読めるのである。
ベンチレスト射撃で一番大切な物は道具である、使用する銃身、銃身のツイスト、機関部の材質、銃床の材質、使用する弾頭、使用する火薬、どのくらいの重さの弾頭に対して、どこの火薬をどれくらい入れるか、そうした諸々の知識を総動員して最高に命中精度の良い銃器に仕立て上げているのである、だから無風状態なら5発の弾が1発の弾痕にしか見えないくらいよく当たるのであるのである、車で言えばF-1にあたるレベルである。そのために徹底した銃器弾薬の研究は欠かせない。
しかしながら、何よりもまして重要な技術は風の流れを読むテクニックなのである。
弾丸のスピードは速くなれば早くなるほど風の影響を受けにくい、この大会で使用される口径はほとんどが6ミリPPCである、ごくまれに6ミリBRと言う口径も存在している、初速は3200~3400フィートは出る。
銃器の世界で言えば、超高速弾と言う事になる。
これほどの高速弾頭をしても、風が"そよ"と吹くだけで、100ヤードで1センチはずれる、"そよそよ"と吹けば2センチはずれる。
"ブワー"と吹けば10センチはずれる。幾ら長瀞で練習してもこうした風を読む練習には全く役立たない。これが日本選手達にとって致命的な問題なのである。

我々日本チームも多くの装備のため荷物超過でオーバーチャージを取られたと書いたが、アメリカチームは我々より遙かに多くの装備を持ち込んでいた、風の流れを読むために自分たちが常時使っている風旗まで持参している。
ここの射撃場は峡谷の合間に出来ているので常時風が吹いている、ただ単に吹くだけではなく常にその方向と強さが変化する、また風の特徴として常に同じ方向に吹いているわけではなく、射座の手前と標的の当たりでは、吹く風が逆になっていたりする。

アメリカチームの荷物
アメリカチームの荷物

多くの人は無風状態が一番射撃の条件が良いと勘違いしているが、ベンチレスト射撃みたいに1ミリ2ミリを競う競技では無風状態と言うのは決してベストコンデションではない。
何故なら無風と言っても完全に風がないわけではなく、風旗がなびかないだけであって気圧の変化は存在する、つまり見えないところに風は存在するのである、風旗がなびかないのは、たまたまそこに風旗が無いからその風が見えないだけなのである、また無風状態と言うのは、風自体が色々な方向に勝手に舞っていたりして決して大気の状態が安定している状態ではないのである。であるから無風状態で撃つと以外と命中精度に乱れが起きる、一番理想的な風は、あまり強くない風が均等に、そして同じ方向に吹いてくれることある、

この状態だと当然にして風が舞うと言う現象は起こらないし、風による変移量だけを把握できれば必ず最高の命中精度を発揮できる、しかしながらこの様な安定した風が吹くのはホンの数秒である、極めてラッキーな場合は数十秒吹くこともあるが、1分以上吹くことはほとんど無いので、この決められたチャンスに5発の弾を出来るだけ素早く撃ち込むのがベンチレスト射撃の極意とも言えるのである。

理想的な風
理想的な風

今回のアメリカチームは新型の機関部を持参していた、新パンダアクションのブルーの銃床をご覧いただきたい、この銃を使っている射手は左利きである。従ってボルトハンドルは左側にある、弾を装填するポートは目で見て手で確実にそして素早く装填できるように右側にある、画像で言うと機関部の反対側から弾を装填するわけである。従来のベンチレスト専用ライフルは、弾を撃つと装填した手で薬莢をしていたが、これはボルトにエジェクターを取り付け、ボルトを下げると新規に作られたエジェクションポートから排出される、つまり右から弾を装填して、左から排莢するように作られている、これだと5秒~10秒程度で5発の弾を撃つことが出来る。5発の弾の射撃制限時間は7分間あるので、一番風の安定した一瞬を狙って、5秒~10秒程度で5発の弾を集中して撃つ裏技なのである。

新パンダアクション
新パンダアクション

風は3時方向から真横から吹く風に対しては9時方向の真横に流れるのではなく、時計で言うと少し上の10時方向に流される、9時方向から吹く風に対しては真横の3時方向ではなく、少し下の4時方向に流される、これはライフルの弾頭は猛烈なスピードで回転しているのでこの様な独自の運動を起こすのである、前から吹いてくる風に対しては、弾頭は上にホップし、後ろから吹く風には下に押される。このお約束を完璧なまでに頭に入れておかないとベンチレスト射撃競技では絶対に勝つ事は出来ない。
真面目に真ん中だけを狙って撃てば、先ず保証付きで最下位と言う事になる。
風を読むのも結構リスキーな選択である。ある一定の風が吹いているときに変移量考えて、2センチ位、狙点をずらして撃とうとした瞬間、風の向きが変わる、その時には逆方向に4センチずれてしまい、たった1発で優勝候補が最下位に直行と言うことになりかねない。
この大会は全てのトータルで競技成績が決まるので、4日間の大会開催中、たった1発で全てのチャンスを失してしまうことになる、私が常々、"泣きの1発"という根拠は正しくここにあるのである。
我々は、Sさん以外、総合優勝と言うことは全く念頭にない、残念ながらそれが我々の実力なのである、従って、私は、1シリーズの中の、その瞬間で良いからトップ20位以内に入るのを一応の目的としてきた。

ここの射撃場は山間にあるので非常に天気が変わりやすい、おまけにニュージーラをンドは季節の変わり目であるので非常に天気が変わりやすく、10分で快晴から豪雨に天気が激変する、夕立みたいに突然雨になり出すことが少なくない。しかしながら命中精度に対しては雨の影響は以外と少ないのである、雨に伴う風、これが最大の問題なのである。

突然の雨
突然の雨

テントで雨宿りしている日本選手の表情を見ていただくと、成績=表情として現れているので余計な説明は不用かも知れないが、選手達のひんしゅくを買うことを承知の上であえて発表させていただこう、大会1日目の、ライトバーミント、100ヤード競技での成績は、47位、上野選手、50位、不肖築地、53位、川村選手、55位、湖東選手、65位、平澤選手、71位、清水選手、78位宮川選手、この大会で宮川選手より以下の選手が居たかどうかについては彼の名誉のためにあえて言わない。

成績=表情
成績=表情

成績のふるわなかった我々は、その夜のデナーは海の上に建てられたシーフードレストランに突入、その夜はまるで優勝祝賀会のように盛り上がってしまった、なんせ全ての料金が日本の半額以下だったからである。

シーフードレストラン
シーフードレストラン

2日目、100ヤード、ヘビーバートライフル

ベンチレスト射撃の大会は、日本では1種目であるが、世界的には10.5ポンドのライトバーミントと13.5ポンドのヘビーバーミントクラスの2種目がある。
競技の内容は全く同じで、ヘビーバーミント競技の場合、少し重めの銃を使うことが出来るが重いからと特段有利と言うことはなく、私の感覚からすれば再度、勝負の士切り直しみたいな感覚でしかない、アメリカ国内の試合の場合なら、ほとんどの人が車で来るので何丁もの銃を持参してくるので問題ないが、こうした外国の大会に遠征試合するとなると、ほとんどの人が1丁の銃で2種目参加している。
勿論、私も1丁の銃で参加したのだが、K君の場合、ヘビーバーミント対応の銃身を持ち込んでいたので、それと銃身交換して大会に参加した。
ところが、この銃身交換が後にあって考えると命取りの結果になることになる。私は1射群であったが、風が強くて弾があちこちに振られた。
私の後はK君の番であった、大した風もなく撃ちやすい状態であったが、最後の4発目を撃ったときに火薬の圧力が高かったと見えて、雷管突破で、破片がボルトの中に入り撃針をスタッグしてしまった、最後の1発が撃てない・・・・・・・・・・
結果、時間切れでその回は1発撃たなかった分のペナルテーとして1インチが加算されてしまった、この1インチの加算はベンチレスト射撃では絶望的なペナルテーとなる、初回からK君は最下位にランキングされてしまった。
雷管突破が起きるのは色々な原因がある、初心者は激針が長いからと思いがちだが、撃針は幾ら長くても雷管突破は起きない、それはスプリングの強さを必要以上に強くしていないからである、撃針が規定上に出過ぎていても、スプリングの強さが規定以内で収まっていれば何の問題もない。これは銃器設計のイロハである、時折、別売りしている強いスプリングに交換する人もいるが、私から言わせると、これは結構リスキーな選択である、スプリングを強くしなければならないのは共産圏の雷管を使った時だけである、自由主義諸国の中で唯一だめなのがイタリアだが、イタリアは雷管を売っていないので心配ない、雷管で信頼できるのは、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本である。
話が横道に逸れて恐縮だが、私はトラップ射撃にはレミントン製の弾を使っているが、最近はイタリアで生産されるようになった、品質管理の技術者に聞いたら、全ての物はイタリアで調達しているが、雷管だけは日本製だそうである。
さて、話を元に戻そう、雷管突破のもう一つの原因は撃針の先端の傷にある、ここに目で見えないような微細な傷があると、何らかの理由でそこに雷管の真鍮が付着することがある、それが一定量を超えた瞬間、雷管突破が起きる。しかし、その衝撃で付着した真鍮は撃針から吹き飛んでしまうので原因は永久に解らないことになる。
私はアメリカでガンスミスの修業時代、撃針の先端はビカビカになるまでバフ研磨しろと厳しく言われた事を思い出した。
物理的現象だけでなく、気象条件によっても雷管突破は起きることがある、使用する銃身によっても火薬の圧力が変化する、たとえば銃身の公差は上と下とでそれぞれ5/100ミリ公差が認められている。同じ6ミリで作られている銃身でも100分の5ミリ口径が細い銃身もあれば100分の5ミリ口径が大きい銃身もある、それぞれの違いを考えると10分の1ミリになる、その違いは大きめの口径に合わせて作った限界ぎりぎりの弾の場合、口径の細い銃身で撃てばたちまち異常高圧が発生する。
もともと、ベンチレスト射撃ではローデングブックに書かれているマキシマムよりも多く火薬を入れるので、常時ホットロードで撃っている事を忘れてはいけない。
そのため、射撃場の条件により、気圧、外気温度、に応じてローデングデーターは微妙に変化する。別の射撃場で何の問題も無かった弾も、気圧の高いところでは弾に抵抗が生じる、温度が低いと空気は濃くなり、温度が高いと空気は薄くなる、勿論、標高差で空気の濃さが違うのは当然の事である。

当然、何の問題もなかったとして日本でローデングした弾を持ち込み、そのまま使うととんでもないアクシデントに見舞われることになる。そのためベンチレスト射撃では現場でリロードするのは大原則なのである、実際に撃ってホットロードだと感じたら火薬を減らすし、逆にスピードが足りないと感じたら火薬量を増やす臨機応変さが必要なのである。

リローデング
リローデング

ちなみにK君は2射群では頑張った、それでもやっと順位を一つ上げただけだった。順位は27位、28位の宮川さんと入れ替わった。
競技大会中、わずか1発でもおかしな弾を撃つと、天国から地獄へ直行することになる。
私は初回こそふるわなかったが、2射群、3射群、と撃ち込んでいく内に、3射群の結果はトップ20に食い込んだ、勿論多分にラッキーな結果ではあるが、瞬間的にせよ、世界大会で上位20位に食い込むことが出来たのは、私にすれば望外の結果である。
しかし、4射群では23位、最終の5射群では30位と順位を下げてきたが、これはプレッシャーとか、そういうたぐいの物ではなく、あえて言い訳を許していただけるなら、全てが風のせいなのであるが、しかし、泣き言になるのでこれ以上言うことは止める。
ヘビーバーミント、100ヤードの成績は、30位、不肖築地、65位、湖東選手、70位、清水選手、73位、上野選手、75位、川村選手、76位、平澤選手、78位、宮川選手である。

さあ、シーフードレストランに行くぞ!


3日目、ライトバーミント 200ヤード競技

何時の場面も私は最初の射群なので、朝、射撃場に到着するとあたふたと準備を進める、ニュージーランドの国旗掲揚の後、すぐに競技が開始される。
私は射座に入り、南無八幡大菩薩と心に念じ弾を放てばあやまたず、同弾、同弾、同弾、また同弾と、まるで講釈士の講談みたいに連続して同弾が続く、思いもしない間に5発の弾を撃ち尽くし、標的を見ると、驚くことに弾痕は1個しか見あたらない、ありがたや、かたじけなやと、柏手を打って東方に一礼する。
これは普段の善行の賜か、はたまた信心の賜か、遂に日本人としては前人未踏の快挙を成し遂げたりと、八百万の神に感謝しつつ静かに射座を降りる。

果たして結果をと、表示板に駆け寄ると、ななななんと、それがしが、なななななんと、3位にランキングされているではないか。
これは著者の私が驚くべき所ですが、どうか皆さんも私以上に驚いて下さい。これはあってはならないことなんですから。
あってはならないことが起きるのがベンチレスト射撃です。
私は、単なる一つの射群でしかありませんが、遂に日本人として初めてワールドカップで3位にランキングされたのであります。ところが冷静に考えると、最初の回はワームアップと言って、ベンチレスト射撃特有のお約束事で、ワームアップは成績の対象にはしないことになっているのである。

あっ、3位だっ
あっ、3位だっ

嘘だろ~って叫んでもむなしかった・・・・・・・・・・・
私は、これからの射撃の運を、いや、人生における全ての運をこの瞬間のために全て使い果たした。そう感じた・・・・・・・・・・・・
例えそれがワームアップであっても、私はワールドカップで、瞬間的かも知れないが、3位に入ることで人生における全ての持ち点を失ってしまった・・・・・・そう感じた・・・・・
事実、その後の5回の射撃で、最初の3発は文字通りの同弾で、後の1発、あるいは2発が、信じられない所に飛ばされると言うアクシデントに毎回見舞われた、風のせいとしか考えられないアクシデントなのだが、原因は今もわからない。
私は、未だに最初に自分の持っているラッキーポイントを全部使い切ってしまったためだと今でもそう信じている。
200ヤード、ライトバーミントの成績は以下の通りである。
39位、上野選手、41位、不肖築地、47位、平澤選手、48位、湖東選手、72位、川村選手、77位、清水選手、記録では78位、宮川選手となっているのだが、彼の名誉のために説明しておくと、彼はこの日は参加していないのである、この日の朝、大会が終わるまで帰らないと言い残して、ニュージーランドの何処かに旅立ってしまったからである、如何なる理由によって旅立ったか、私は知らない。

試合が終わって、我々日本選手団はネルソン市内のCUT(カット)と言うレストランになだれ込んだ。
さんざんワインを飲んで、ラムを食べて盛り上がっていたら、お店のお客が「これ、貴方達でしょう」と言って新聞を持ってきてくれた、新聞を見るとなんと! スポーツ紙の一面に我々の写真が出ているではないか! そういえば射撃場で、新聞社のカメラマンが色々と写真を撮っていた、(新聞取材)の画像を見て貰えば解るが、カメラマンが選手を撮影しているこの写真はオーストラリアの選手がベンチレスト射撃の世界新記録をマークしたので、その取材のための撮影である、当然にしてこちらの方がニュースとしての扱いは大きくなるのが当然なのに、世界新記録達成の記事は白黒写真で扱いも極端に小さい。

新聞取材
新聞取材

しかしながら紙面のトップを飾ったのは・・・・・・・・何と、我々だった。
カメラマンは会場で何十枚という数の写真を撮影していたが、他の写真は全部"没"扱いだったらしい。新聞社のデスクはどんな写真もあまりニュース性がないと感じたのだろう。

しかしながら、日本人がニュージーランドに来て射撃をする、それほど我々の事はニュース性が有ったと言うことである。日本人はゴルフとパチンコしかしないと外国では思われているのかも知れない。スポーツ紙の一面トップの扱いなので、ここニュージーランドでは、我々はイチロー並みの扱いである。

新聞に写真が!
新聞に写真が!

そういえば、前日、全ての選手が集まって射撃場の隣のゴルフクラブでパーテーが行われ、我々日本選手団は、フランス領ニューカレドニアの選手達と一緒に、わざわざ遠いところから来てくれてありがとうと言う事で、ニュージーランド射撃協会から記念品をいただいた、私はこの原稿を書くためにパーテーには欠席したが、日本でベンチレスト射撃をやっていると言うことは世界的な視点で見ると、なにやら大変な事をやっていると言う評価らしい。だんだんそういう事が見えてきた。
たとえば今日、会場でわざわざアメリカのトニー、ボイヤー選手が私の所に来て、ベンチレスト射撃で解らないことが有ったら、何でもEメールで聞いてくれて言って、名刺を渡してくれた、トニー、ボイヤーと言えば、この世界では伝説的な射手である。
しかし、決して愛想の良い方ではなく、日本選手の中には過去の大会で挨拶しても返事をして貰えなかったと言う射手も少なくない、到底ベンチレストの事を教えて下さい等と言える雰囲気ではない人なのである、それがわざわざ自分の名刺を持ってきて"何でも聞いてくれと"言われたときは、この人、愛想は悪いが、本当はいい人なのだなと思えた。
そして、アメリカで開催された第4回ワールドカップ大会参加から4年を経過して、やっと我々も世界で認知されたかと言う想いがよぎった。


大会4日目、200ヤード、ヘビーバーミント競技

大会がここまで進んで、我々日本チームは箸にも棒にもかからない状態でいる。こうなると楽しみはランチタイムと言うことになる。ランチには毎回色々な肉を焼いて、それでパンに入れてくれる、初日はビーフ、2日目はラム、3日目はチキン、4日目はポーク、と言う具合である、こちらで食べるラムは全く臭みがない、牛肉と間違いかねないおいしさである。大会のレポートを書いているのにこうしてランチの事を書かなければならないのは誠に残念ではあるが、唯一の朗報と言える出来事は、第1射群で、湖東選手が6位になったことである、いずれにしても私と同じであくまでも瞬間記録なので最終結果はいつものとおりとなる。そのいつもの結果は以下のとおりである。
48位、不肖築地、49位、湖東選手、58位、平澤選手、62位、上野選手、70位、川村選手、76位、清水選手。

ランチタイム
ランチタイム

大会5日目、200ヤード、ヘビーバーミント、10発競技

この試合は1個の的に5発撃つ競技ではなく、10発の弾を撃ち込んでそのグルーピングを競う、従って撃つ弾数が多く、射撃開始時間が30分早められた。

1射群、2射群、と撃っていく内に思いがけない奇跡が起こった、なんと、2射群で私がトップになったのである、読者の皆さんはすでに私が3位に入った時点で、強制的に驚いて貰いましたが、今回はもっと驚いてください!
瞬間的といえども、トップを極めたのです、その瞬間には確かに私は世界一になったのです。

遂にトップに
遂にトップに

何時の瞬間か解らないが、確かに、何かが私の頭の中でひらめいた。
長年考えていた難問が初めて解けた様な気がした。
それは、風の読み方である、今までは風を読もうとしていた、風を読むなんて人間の慢心以外の何物でもない。風を読むのでは無く、風に聞くことだ!
この事についてもう少し要点を詳しく説明しよう、この事こそベンチレスト射撃の秘伝とも言える、誰も教えてくれなかった事で、私自身、この事を理解するまで何年もの時間が過ぎてしまった。

射座
射座

射座に着いたら風の流れを確認し、今、吹いている風、あるいは自分の好きな風の時に試射的に1発撃ち込む、それが何処にあたってもかまわない、しかし、無風の時には必ず狙点に命中するように調整してある銃で有ることは絶対に必要な事である。
試射の弾が何処に当たってもかまわないので、風が変わらない内にそのまま本射に入る、風が変化しない間に出来るだけの弾を撃つ、しかし風の変化が起きない内に5発の弾を撃ち尽くすのは現実問題では出来ない、風は常に変化している。
風の強さが変わり、風の方向が変わったときは、直ちに試射に戻る。試射をしてその変移量を見る、風が変わらない間にその変移量を見越して狙点をずらして撃つ。
これだけである。これこそが秘伝である! 今までに技術書を見ると、この風の時にはこれくらい流される、如何に風を読むかと言うことが書かれていたが、風を読むなんてとんでもない事である。風に聞くこと。これが秘伝中の秘伝である。

ついでにもう少し補足すると、一定の風が吹いているときに、風が弱くなるときがある、つまり風が息をついて、この時はこれから風が変化しようとする時である、この瞬間には悪魔が住んでいる、この時に撃つと、狙いとおり命中することも有る変わりに、信じられないところに吹き飛ばされる事がある。
風が変わる瞬間は風旗では見えない風が何処かに潜んでいると考えた方がよい。

射座
射座

私は最終日の試合の2射群目でトップを引いた事は書いたが、実を言うと、次の回はさらに良いグルーピングを撃っていた。
10発競技であるが、5発よりいいグルーピングであった。このまま行けば前のシリーズよりもさらによくなる、またトップになれる、そう思った。
9発目を撃ち、最後の弾を撃つとき風は弱まり、無風に近い状態になった。風が変わる瞬間だ、本来ならばここで試射に戻るべき所だが、9発同弾を撃っていて、無風に近いので狙ったとおりに当たるはずである。それに、今の俺は"ツイテイル"そう思った。
その時、私の耳元で悪魔が囁いた、「そのまま撃っちゃいな!」
私は弾痕の真ん中を狙い、"タン"と軽い音を残して引き金から指を外した。
会心の射撃であった、完全に命中したと信じていた・・・・・・・・・・・
スコープを覗くと体が凍り付いた! 完全な同弾だと信じた的の、右2インチの所に小さな弾痕が見える、虫なら動いてくれて念じた、弾痕は動かなかった。
頭の中がホワイトアウトした!
風のせいであることは間違いないのに、見ると、風旗は動いていなかった。
風に聞けばよかった・・・・・・・
風を読んでやると思った自分がいけなかった・・・・・・

最終結果は29位に終わった。
しかし、私は試合で勝つことよりも多くの教訓を学んだ。
風を読んではいけない、風に聞くことだ。
そう思った瞬間、ネルソンの風が心地よく頬をすり抜けた。


追記

ネルソンでの最後の夜を我々はホテル内のスシバーで過ごしていた、そこに同じホテルに宿泊している、アメリカチームの選手が来た、手を上げて呼び寄せ隣の席に座ってもらい、色々と話が出来た。以下その要約です。
川村選手が、私はネックターニングの極限まで極めて千分の数ミリの精度を出しています、と言うことを通訳してくれと言ったが私は通訳をお断りした、何故なら、私自身は常々それが命中精度に関してそれ程は重要な要因ではないからと考えているからである、私自身の理論からすると納得していない。そのかわり別の言い方で聞いた、貴方達はネックターニングするときに、手でやっていますか、それとも電動工具を使っていますかと言う聞き方をした、機械でやると千分台の寸法までコントロール出来るが手の加工だとせいぜい100分台でしかないからである、答えは手でやっていますと言う答えである、つまり、ネックターニングはあまり重要視していないと言うことである。
逆に我々が聞かれた、貴方達は何回薬莢を使っていますか?
川村選手が答えた、15~20回です、アメリカチームの選手達は顔を見合わせ、r
両手を広げ、肩を持ち上げ、口をへの字に結んだ。アメリカ人がコメントしにくいときに見せる仕草である。
私が聞いた、「多いですか?」
アメリカ選手が答えた。多すぎる! それも異常に多すぎると!
アメリカ選手は言った、我々はせいぜい薬莢を使うのは2回だよと。
驚いた!意外な結果であった。千分の数ミリまでネックターニングを極めた、ネックターニングの巨匠、K君は驚きのあまり、血が逆流したかも知れない。
K君は薬莢を20回ぐらい使っているのでは無いだろうか。
それはネックテンションをいくら厳密に作っても、薬莢の使用回数が多いと、薬莢自体の材質が堅くなり、それにより、逆にネックテンションが変化するではないかと言うのが彼らの言い分である。
確かに、試合中にK君の薬莢はネックから切れ、残りが薬室に残り、次の弾が撃てない。時間が無い、K君はチャンバーブラシを取りに走る。何とか間に合ったが、薬莢が切れた瞬間は、K君の頭も切れたのでは無いかと思った。
いくらネックターニングの精度を競っても、日本で誰もネックの硬度に言及しないのは絶対におかしい、ネックターニングに関して神懸かり的な精度を求めての悪いことではないが、使用回数が増すごとに硬度が高くなる真鍮の特性を無視して、寸法精度だけを追いかけるのは意味がないと言う理論には返す言葉が無かった。
それと、貴方達はランドタッチしているのかと言う質問に対して、我々はランドタッチをしていないと答えると、ほんの僅かでもランドタッチした方が良いと言うアメリカチームの答えである。これも我々の常識と逆の考えだ!
その理由は、ネックターニングを幾ら正確にしても、使用回数が2回以上になると、薬莢のネックの堅さが堅くなり過ぎ、抜弾抵抗がバラバラになるとのことである。
それならばほんの僅か、ランドタッチさせた方が、抜弾抵抗はかえって安定しているとの話である。
つまり、ランドタッチの抵抗の方が大きいため、ネックターニングの誤差が有ってもうち消せると言う事である。つまりネックターニングの誤差など取るに足らないと言うことである。でも、と、私は食い下がった。ランドタッチさせると、何らかの理由で装弾を抜くときに弾頭が薬室に残り、火薬がこぼれて、その火薬が薬室や引き金に入り込み、撃てなくなるではないですかと聞いたら、弾頭を抜くときは銃口を上にして、ソーットボルトを引くと、火薬は一切こぼれないでエジェクション出来ると言われて、成る程と納得出来た、これこそ全くコロンブスの卵だと思った。
我々は、装弾を抜くときは必ず銃口は標的の方向に向けておくべき物と考えていたが、よく考えれば、ボルトアクションライフルの場合、ボルトを起こせば絶対に激発する訳が無く、その時点で銃口を上に向けてボルトを引けば、仮に弾頭がランドタッチして、弾頭が抜けても薬室に火薬をばらまくことは無い訳である。
今まで、なんで気付かなかったのだと思った!
これで我々の世界観が180度、急展開した。
明日から、ランドタッチOK、ネックターニングは重要で無いとの結論が出ました。
薬莢の使用回数はせいぜい2回です。
今まで私のHPを読んでいただいた皆さん、今日から頭のスイッチを切り替えて下さい。

"パチン" はい、私自身はOK、切り替え完了です!

今日から私、私、築地はベンチレスト射撃に関してのテクニカルな質問には、今までの定説と逆のことをお話しする事になりますが、これは私の頭の回線がおかしくなったからではありません。

ではネルソン市から"グッダイ"・・・・・・・・

ベンチレスト世界選手権にて
ベンチレスト世界選手権にて

更新 2001年11月13日

追記の記事中で、私は薬莢の使用回数はせいぜい2回と書きましたが、K教授から、アメリカの選手はそんなに沢山の薬莢を持ってきていなかった、また2回で廃棄しているのを見なかったと指摘を受けて、早速トニーボイヤーさんにメールを出して事実関係に付いて聞きましたところ、以下のような返事が来ました。

"アメリカの選手で2回しか薬莢を使わないと言う人は知らない、普通の射手は15回くらいは使う"

との返事を貰いました。従って薬莢を2回しか使わないと言ったアメリカの選手は、酒を飲んでいる場だったので、単なる冗談で言ったか、さもなければ、その選手だけが2回しか使わなかったと言うことでしかありません。

また2回しか使わないことで命中精度が向上するという合理的な理由もありません。

またランドタッチも、アメリカの選手が言ったからと言って必ずしも正しいと言うことにはなりません、アメリカでもランドタッチさせている選手もいればさせていない選手も居ます、私自身はランドタッチさせていませんし、これからもランドタッチさせないで使います、それはランドタッチさせない方が、より初速が出るからです。

カクタス シュート参戦記 (2001年)

2001年 3月31日 築地
更新 2001年 4月29日 築地

第1日目

なんと言うことだ! 3月18日の長瀞の大会では道路脇に残雪が残っていたと言うのに、翌々日の3月20日、ここアリゾナ州フェニックスでは季節はすっかり夏である。7月、8月、になり本当の夏が来ればここは灼熱地獄と化すのであろうが、今の季節は日本で言えば完全な初夏である。

コットンのワイシャツとカシミアセーター、その上にダウンジャケットを羽織ってきた私は汗だくで飛行機から降り立った。一刻の余裕もなくスカイハーバーエアーポート内のショッピングストアーで、$20程度の半袖シャツを買う。汗が止まらないのでシャツ1枚になり何とか体温を調整する。

いきなり初夏
いきなり初夏

私は海外に遠征するときは何時もゼロハリバートンのガンケースを使用している、他のメーカーのガンケースでは必ず何らかのトラブルに見舞われる、多くの場合銃床が折れたり、割れたりする事に遭遇する事になる、海外のハンテングに行かれる方は、必ずゼロハリバートンのガンケースを使用されるようお勧めしたい。

かなりタフなガンケースだが今回の遠征旅行ではついにハンドルが壊れてしまった、10年以上使ったガンケースだが、ゼロハリバートンといえどもハンドルはプラスチックなので、放り投げられて当たり所が悪いとこのように破損してしまう事もあり得るのである。

ハンドルが取れた・・・
ハンドルが取れた・・・

荷物を受け取り、日本で予約したレンタカーを借り受け、宿泊するプレミアインの場所を地図で探すが見あたらない、致し方なくハーツカスタマーセンターで聞くことにした。インターネットからダウンロードした地図を見せると、"お客さん、これはイリノイの地図ですぜ、ほらイリノイ大学から2時間とか書いてあるでしょう"と指摘され、ふらふらと放心状態で事務所を出た、そして私の体に冷や汗が流れた、こう言うのを文字通り鳥肌が立つと言うのであろう。ターク高野から教えてもらったプレミアインのアドレスは、フェニックスのプレミアインではなく、イリノイ州にあるプレミアインのアドレスだったのである。
これだけなら普通なら単なる笑い話で済ませられるが、この時に限りターク高野から、今のアリゾナは観光シーズンでホテルが混んでいるとアドヴァイスを受けていたので、わざわざカード番号を提示して予約したので間違いなくその日の4部屋分の宿泊代は私のカードから引き落とされて居ることになる。せめて引き落とされるのは今日の分だけで絶対に5泊分の宿泊代が引き落とされないことを密かに神に願う。こういう時はいきなり信心深くなる私だが、お彼岸に墓参りに行かなかった罰かもしれない。

不機嫌な私はみんなのドライバーをしながら"本当の"プレミアインにチェックインした、私の予想通りホテルは空いていた、要するに予約する必要は全く無かったのである。
初日から全くついていない、こんな事ではと大会の結果が頭をよぎるが、そうでは無く、これで悪い運を使い切ったと考えるべきかも知れない。残りは良い運だけだと考えるべきかも知れない。ターク高野に教えてもらったプレミアインのアドレスはwww.premiain.com だがこれだとイリノイのプレミアインに飛んでしまう、アリゾナのプレミアインは www.premiainns.com と最後にSが付くのである(さらに困ったことにこのアドレスでは何故か接続できない)。Sが付くかどうかだけで私は数百と言う単位の$を無駄にしてしまった。

不機嫌な私
不機嫌な私

ターク高野から連絡があり、7時にロビーで待ち合わせる。
ご近所のステーキ屋で再会を祝しバドワイザーで祝杯を上げ、そしてTボーンステーキをたいらげる、日本からここまで、飛行機で13時間かかるが、ターク高野の場合はテキサスからなので車で17時間ドライブして来たそうである。日本から行く場合、飛行機で一寝入りして起きたらアメリカという感覚なので疲労感はほとんどない、特に最近の私は修行中の時代からすると、かなりお気楽なぬるま湯人生なので飛行機もほとんどがビジネスかファーストである、このクラスだと本当に寝てこられる。感覚的には東京から横浜に行く程度の感覚である。射撃に関して寝不足が射撃結果にどういう影響を与えるかについて海兵隊で実験した事があるとタークが話してくれた、海兵隊員のチームを2つに分けて片一方は充分な睡眠をとらせ、片一方は睡眠不足の状態で射撃をやらせた結果、睡眠不足のチームの方が明らかに射撃の成績がよかったそうである。射撃の場合必ずしも最良の体調が最高の成績を出す訳ではないらしい、体調のいい私にはまた不安が横切った。

ターク高野はパソコン持参で来ていたが、何でも新しい弾道計算ソフトで色々な実験をしている最中との事であった、この新しい弾道計算ソフトだと、湿度、気圧、風向、射撃角度、高度差、外気温度まで演算の対象とするそうである、タークの話では中でも湿度は如実に弾道に影響を与えるとの話である、湿度が低いと初速は早くなる、湿度が高いと弾頭の飛翔に抵抗が出て初速が低下するそうである。勘違いしもらいたくないのだが、湿度が火薬に影響を及ぼすのではない、弾丸が飛翔するときに外気の中での抵抗値が変化するのである、乾燥したところでローデングしたからと言って湿度の高いところで撃つと外気の影響を受けるのである、ビギナーの中にはローデングする時に、乾燥機を使ったりエアーコンを使ったりして同じコンデションでローデングする事に心がけている人も居るが、これは全く無駄な努力である。ローデングの状況ではなく、射撃する外気の条件で弾道が変化することを理解しておいてほしい。
同じような気候のテキサスとアリゾナですら微妙に違うのだから、残雪の残る長瀞射撃場でいくら当たっても、アリゾナでは我々がへろへろになるのはそうした気象条件を計算しないで何時も単一条件で弾を作って居るからである、一般論として高い命中精度を得るためには通常のマキシマムロードを越えないと最高の命中精度を得ることが出来ないが、残雪の残る長瀞で当たるような弾は、ここ初夏のフェニックスでは明らかにホットロードになる、初速が上がりすぎるために、逆に命中精度が悪くなる事になるのである。
それが外気温度だけでなく、湿度と気圧が微妙に影響してくるので実際に撃たないと最高のローデングが把握できないのである。日本では命中精度を調べるために弾速計算機でテストする人も少なくないが、アメリカでは初速を計る人は全く居ない、それは特定の初速が必ずしもその場所でも最高の命中精度を約束している訳では無いからである。
 北のクリーブランドでは初速****が最高に当たっても、初夏のフェニックスでは初速****が最高の命中精度を示すからである。しかもその場所で気圧と湿度がお互い影響してくれば最高の命中精度の初速が微妙に変化するので現場で初速を計測してもあまり意味のないことになってしまうからである。
それと初速が安定している事と、命中精度とはあまり因果関係はない、"何!"と物理学の先生からクレームが付きそうだが、物理学の法則で考えると初速のばらつきが無ければ弾頭の落下率が変化しないと考えるのが常識だが、6ミリ口径の場合、3300フィートでも3250フィートでも弾着にはほとんど変化がない、しかし初速の遅い2800フィートと、2850フィートでは同じ50フィートの差でも着弾に大きな変化が現れる、低速の弾頭ほど初速の変化が如実に着弾に現れる。我々が初速を極限まで上げるのはまさしくその変化の少ない着弾を求めているからである。物理学ではなく我々は体験的にそうなることを知っているからである。私は現場で弾を作りながら色々テストしてみるつもりであるが、どのようなアレンジにするかは現在のところ試行錯誤と言うことになる。

3月21日午前2時、アリゾナ州フェニックス 本当のプレミアインにて。


第2日目

砂漠の朝はいきなり明るくなる、都会の夜明けみたいに空が白んで朝日がビルの隙間から差してきて、等と言うプロセスを踏まずいきなり強烈な日差しを浴びせられる。

射撃場はホテルから30分くらいの所にある ベン アレー シューテングレンジと言うところが会場である、4年前ベンチレスト射撃のワールドカップで初参加したのがこの射撃場だった、射撃場のゲートをくぐり、しばらく走ると大きな射撃場に出る、ベンチレスト射撃場と書いてある、4年前に大会で初めてここに来たときは、てっきりここが大会会場だと考えて周りをみると誰もいないことに気づき一瞬頭が白くなった。初めての射手を連れてくるとほとんどの人が"やっと着いた"と言う感想を漏らす。しかし、ここの射撃場の偉大なことは、ベンチレスト射撃場がここだけでは無いと言うことである、この射撃場を横目にみながらさらに車を進めると、ピストル射撃場がある、これをすぎるとポジションシューテングが開催される、射撃場に出る、そこを曲がりさらに進むと多くのキャンピングカーが駐車しているもう一つのベンチレスト射撃場に出る、ここが会場なのである。

射場内の道
射場内の道
射撃場に到着
射撃場に到着
ベンチレスト射撃場
ベンチレスト射撃場

日本にあるクレー射撃場などは100も200も入る膨大な敷地なのである。
ここの射撃場だけに限ったことではないがアメリカの射撃場の多くは全ての射台にコンクリート製のベンチが常設してあることである、それに射台の後ろに弾を作るためのリローデングのスペースが設けられている事である。ベンチレスト射撃はリロードしながら撃つと言うことが大原則なのである。

日本選手のリローディング
日本選手のリローディング
リロード開始
リロード開始

つまり気象条件で命中精度は微妙に変化するという何よりの証明ともいえる。
私は日本から50発程度の弾を持参していた、これで大会に出ようと言うわけではない、日本でローデングした弾がここではどのように変化するかをチェックするためである。
ベンチの上にレストを置き、その上に銃を乗せる、レストの高さを微調整して標的に照準を合わす、写真は秋田から参加された加藤選手である、ちょうどスピードスクリューを調整している所だが、このねじを締めたりゆるめたりする事によりレストの後ろ足の高さを調整する、そうすると銃が微妙に上下する事になる、極めて小さな微調整が可能になる、100メートルで1ミリ程度の調整が可能である。

照準調整
照準調整

ベンチレスト射撃の標的は極めて小さい、100メートルでのグルーピングが5ミリ以下でないと勝負にならない世界である、これ以上のグルーピングを出していると完全に番外と言う感じになる。ベンチレスト射撃を見ると多くの人が銃を台の上に乗せてスコープで狙うのなら簡単ですねと感想を漏らされる、その通りだと思うが問題は競争しているレベルの問題である、ミリ単位の勝負なので、射撃の知識だけでなく、火薬、弾頭、薬莢、気象条件、そうした多くの知識を要求されることなのである、そして最大の問題はそれらがどのように関係しあっているのか、ほとんど書籍が無いことなのである、したがった知識の吸収のためにはこうした大会に参加して、多くの射手がどのようなコンポーネントを使い、どのような手法でリロードしているのかを実践的に学ぶ必要があるのである。
厳冬の長瀞用に作った弾で早速試射をする、着弾は数ミリ上に着弾したが明らかに初速が上がっているのを反動で感じることが出来る、長年射撃をしていると1発撃っただけで初速がどのくらい出ているかを体感できる、初速と反動は正確に比例するからである。

射座をみる
射座をみる

ボルトを開けようとしたら、ハンドルが堅い、かなり圧力が上がっていることの証明である、火薬の圧力が適正かどうかより、当たるか当たらないかが最大の関心事なので50発の弾を全部撃ちつくし、命中精度をチェックする、長瀞の時より命中精度が落ちている、しかし劇的な低下ではなく数ミリグルーピングが悪い程度である。
火薬量をぐっと減らして適正な火薬の圧力にして再度テストを試みる。
命中精度はさらに悪化する、逆にまた火薬量を増やしてみる、日本から持ってきた弾と、減量してテストした今の弾と中間の火薬量である。
ここの会場では火薬量を何グレインチャージしているか以外と誰も秤を使用していない、どの種類の火薬を薬莢のどこの部分までチャージするかでローデングの目安としている。
ターク高野に、厳寒の長瀞用に作った弾を、初夏のアリゾナで使ったのに思ったほど圧力の上昇が起きなかったと説明したら、ここは湿度が高いので意外と圧力が上がらないと言うことである、テキサスのミッドランドあたりだと湿度が少ないのでアリゾナ最適な弾はテキサスでは雷管突破すると言うことである。

私は何時もベンチレスト大会では会場でリロードしているが、今年からは参加した日本選手団も現場でリロードを体験する事になった、日本射撃場では射撃場でリロードする環境が整っていない、多くの射撃場でリロードを禁止している有様である、管理者は危険性を感じて禁止しているのであろうが、リローデングが危険な訳はない、リロードが危険と言うのなら弾を持参していることも充分同じ程度の危険性がある、多くの射手がこうした環境に育っているため射撃場でリロードする事に今までは違和感があったのだと思う。

川村さんの簡易プレス
川村さんの簡易プレス

ここで実際のリローデングについて説明しておこう、多くの人がリローデングにはリローデングセットを購入し、自宅でリロードしていると思うが、会場にそんな大がかりなキットを持ち込むわけでは無い、会場で使われるのはアーバープレスキットと呼ばれる簡易リロードセットである、簡易といってもこの方法が一番命中精度が出ると言われている、但しベンチレスト射撃ではマグナム口径の銃など使う訳がないので、薬莢のフルレングスリサイズをしないと言うことが条件である。30口径以上の薬莢をフルレングスするにはアーバーフレスでは強度不足である。従って使用する薬莢は6ミリPPC等の小さな弾が主体となる。使用するのはアーバープレスト言う簡易プレスである、使用するダイスはウイルソン社のダイスである、昔ハンマーで成型する為に作られた簡易ダイスだが現在では一番精度の高いダイスとして考えられている。

最近流行の簡易プレス
最近流行の簡易プレス
ダイスセット
ダイスセット

ダイスの中に薬莢を入れてアーバープレスで圧入してネックのサイズを成型する、薬莢全体の成型はしない、成型するのはネックの部分だけである、ネックを成型しないと薬莢が弾頭を保持できないからである。
このネックの成型も5/1000ミリ単位で色々なサイズのネックブッシングがあり、使用する薬莢に最適のブッシングを装着して自分専用のダイスに作り上げている。
成型した薬莢に雷管を取り付ける、次に火薬を装填する、火薬の誤差は0.5グレイン以下なら無視してかまわない、なぜなら0.5グレイン以下の誤差は弾着に影響を及ぼさないからである、色々な会社から、火薬量を微妙に装填できる物が販売されている、RCBS社のパウダートリックラーなどもその一種である、これらの道具は本来無用の長物である、こんな物を使ってローデングしていたのでは時間がかかってしょうがない。

雷管装着
雷管装着
火薬を装填
火薬を装填

シーテングダイスの中に薬莢を入れて、上から弾頭を入れる、そして弾頭を規定の深さにシーテングするのである、弾頭シーテングの深さは多くのベンチレストシューターが気にしている事である、シーテングの深さはライフリングにタッチする寸前にセットする、いわゆるランドタッチした場合、何らかの理由で実包を出さなければならないとき、弾頭がライフリングに食い込んでいると、弾頭を銃身の中に残して来てしまうからである。こうなると火薬がそこら中にこぼれ、完全に清掃しないと2度と装填出来なくなってしまうからである。私も前回の大会ではこのミスを犯してしまい、最後の2発を撃つことが出来ず。苦杯をなめた、さてここまで原稿を書くと時間はすでに午前3時を過ぎてしまった、今日の大会は6時集合、7時開始である。そろそろシャワーを浴びて気合いを入れる時間である。では試合の準備を始めます。

弾頭を入れる
弾頭を入れる
弾頭を入れる
弾頭を入れる
弾頭シーテング
弾頭シーテング
3月22日、午前3時、アリゾナ州フェニックスにて
3月22日、午前3時、アリゾナ州フェニックスにて

第3日目


試合の第1日目、第1射群(リレイ1)はどうした訳か完全な無風状態のスタートとなった。
ベンチレスト射撃では如何に風を読むかで勝負の大半が決まると言っても過言ではない。
多くの人は、無風状態で撃つのが最高の条件だと思うだろうが、無風状態の場合は目に見えない風が存在する、風旗は動かなくても空気の流れは存在する、これに影響されると弾頭は上下にずれて着弾する、左右に散る事は少ない、弾頭が上にずれるか下にずれるか、あるいは全くずれないか、これは撃ってみるまで解らない、従って無風状態は必ずしも最良のコンデションでは無いのである。
最良のコンデションとは左右いずれかから、弱い風が均等に吹いている状態である、風が吹いてさえいれば澱んだ空気の流れは無くなる、しかしながら、射座から標的までの間を均等な風が吹くと現実問題として起こり得ないが、少なくともこれが命中精度から言ったら一番望ましい気象条件である。
ベンチレスト射撃競技の方法であるが、無制限の試射の外、5発ずつの本射を5回行い、一番離れた弾着の距離を計測し、全ての射撃の平均数値が一番少ない物が優勝する。

射撃準備
射撃準備
射撃準備完了
射撃準備完了

今回の大会は200名の選手が全米から参加している、その中で我々の成績はその中間くらいから下に位置している、長瀞では5発グルーピングが3ミリ程度だが、ここで撃つと10ミリのグルーピングを出すのも容易な事ではない。風の中の射撃がこんなにも難しい物だとは参加した選手の偽る感想であろう、実際問題ここの射撃場のような自然条件の中にある射撃場日本では皆無である、どこの射撃場でも総理府令の設置条項のため射撃場は四方に囲いがあり、ここの射撃場みたいに砂漠の中で遮蔽物が全く無い射撃場で撃つことを我々は日本では経験したことが無い。アメリカの雑誌で公表される記録だけを見て判断していたのでは全く異なる状況での射撃に多くの選手が当惑している。

パルマ大会の会場
パルマ大会の会場

早い話が日本の記録がここで出せれば間違いなく優勝できる、しかしながらほとんどの日本選手は上位に食い込むことはほぼ絶望的な状況にある。なんと言っても風と陽炎を読むことを知らない。これが致命的な欠点である。
試合の標的は計測の終わった物から標的ボードに掲示される、画像は大会をサポートしてくれている少年の写真だが、この様に大会では家族ぐるみでサポートしてくれる会員に支えられている。

サポート少年 標的開示
サポート少年 標的開示
成績発表
成績発表

また大会の会場にはベンチレスト射撃関連の用品を取り扱っている仮設店が開店していてい色々な物を販売している、我々日本選手団は普段から、通産省の決めた訳の分からない法律のおかげで我々が必要とする品物は個人使用の物でもほとんどが輸入制限をされるため自由に輸入する事が出来ない、従ってこの大会で必要な弾頭やコンポーネントを調達する事になる。そんな訳で多くの日本選手が、射撃よりもお買い物ですっかり有名になっている、これらの業者にとっては日本人は最高のお客様と言うことになっている。

仮設店舗
仮設店舗
移動仮設店舗
移動仮設店舗
弾頭とダイス
弾頭とダイス
銃身
銃身

我々日本選手の大会成績はアメリカ選手の中では平均以下であるが秋田県から参加した加藤選手の標的の中に光る1枚がありましたので紹介しておきます。

加藤選手の標的
加藤選手の標的

ここのベンチレスト射撃場の隣が600ヤードのメタリック標的の射撃場、その隣の射撃場がポジションシューテングの射撃場、ここでは革コートを着て射撃する選手を見かける事がある、今ですら半袖で快適なここアリゾナで、7月8月の猛暑時に革コートを着てここの屋根なし射撃場で射撃をしたら、自殺行為に等しい、事実今の季節は快適だが真夏は射撃をする人が居ないそうである、日陰は何とか過ごせるが、日の当たる所に出たら大変な事になるそうである。

3月24日、冷房の利いたプレミアイン、夕暮れ前の静かに時に。
3月24日、冷房の利いたプレミアイン、夕暮れ前の静かに時に。

第4日目

第4日目は200ヤードの射撃である、この日から日本選手団には種々の災難を体験をする事になる、最初にトラブルに会ったのは湖東選手である、100ヤードで照準調整した銃でリューポルドの36倍スコープを使うときは5クリック上げれば200ヤードの正照準になる、全ての日本選手団はその5クリックUPの照準で全員がびしゃり照準調整を合わせた、しかし湖東さんの照準は5クリック上げても標的に着弾しない、元々ベンチレスト射撃の標的は極めて小さいので標的上に弾痕が認められないと照準調整がほとんど不可能になる。最初の射群で照準調整が出来なかったため、ターク高野のアドヴァイスで照準調整用の大きな標的に撃ち込んで何とか照準調整をすることが出来た、しかし、照準の狂いは5クリックどころではなくクリックノブを2回転回したと言うのであるから通常の5倍もクリックを回した事になる、湖東さんの銃に何か異常な事態が起こっていると感じざるを得なかった、最もその前は湖東さんの銃は標的上の弾痕が2カ所に集中するという異常現象が起こっていた、弾痕が2カ所のに集まると言う現象はスコープのリチクルが故障した場合に起きる事がある。また火薬のマッチングが出来ていないと起きることもある。私はそのいずれかの原因ではないかと推測したのであるが、湖東さんが何気なく銃身をさわり、銃身の取り付けねじがゆるんでいることに気づいた、本来銃身は機関部に堅くねじ込まれて居るのであるがベンチレスト用の銃は銃身交換を前提としているので通常の銃よりは銃身は堅くねじ込まれていない、そのため航空機の振動、あるいは運送途中の車の振動で機関部と銃身の止めねじがゆるんで居たらしい、ねじを締め直して最照準したら、いずれの問題も全て解決した、但し、競技の半分はすでに終了していたので成績の回復は望めなかったが本来は棄権すべき所を最後まで競技を終了されたことは特筆に値する行為である。
この射撃場に来て初めて体験した事だが、砂漠の朝は寒い、しかし太陽が昇った瞬間から気温はどんどん上昇して大地もどんどん熱せられてくる、そうすると地表から陽炎が上り、標的の番号も、標的に描かれた同心円の丸も全く見えなくなるのである、標的の横に平行な筋が何本も横に引かれた板が掲示してあるのだが、これはミラージュボードと言うのだそうであるが、実際にライフルスコープから覗くとこれの横棒がぐじゃぐじゃに曲がって見える、また困ったことに陽炎が発生すると標的の実際にあるところより、上に標的の虚像が出来る。これだけならまだしも、これに横風が吹き込んできて弾痕を風の力で編流させる、風が吹くと陽炎は流されると考えていたが、いくら強風が吹いても陽炎が減少する事はない。風と陽炎が発生すると弾着はとんでもないところに着弾するようになる。
恥を忍んで私の恥ずかしい写真を公開するが、この標的は同じ照準で射撃した結果の標的である、馬鹿で無ければこんなに大外しするわけがないが、風の力でこの様に編流されているのである、上下ずれているのは陽炎の影響かも知れない。

こんなに自然の影響を受ける射撃場は日本ではほとんど存在しない。アメリカに来てつくづく知らされるのは自然の力侮るべからずである。ベンチレスト射撃は風の流れと陽炎の状況を見極めてそのずれを"予測"した行う射撃でとても世間一般の皆さんが考えるようなお気楽な射撃では無いのである。ポジションシューテングの世界でどれほどの人が風の編流や陽炎対策を考えているのだろうか、私の経験ではほとんど居ないはずである。逆の言い方をすれば、そうした現象を無視してもポジションシューテングは何とかなる世界なのかも知れない。ポジションシューテングお世界の人から見ると台の上に銃を乗せてライフルスコープを使って撃つと言うことはお気楽な世界に見えるかも知れないが、それはそれでまた奥の深い大変な世界なのである。

ベンチレストと銃の間には銃の滑りを良くするためベービーパウダーを振っておく。
これは銃の反動を力で押さえ込むのではなく、銃の自然な反動を阻害しない方が結果的に命中精度によい影響を与えると言うことを体験的に学んでいるからである。

パウダーまみれ
パウダーまみれ

銃の反動を出来るだけ自然な状態で受け流す方法をフルーリコイルと言う、グリップなどは握っていないに等しい、反動を受け止める射撃方法をホールデングというが、この射撃方法を採用している人も少なくない、いずれも優劣つけがたいようである。

大会の参加者は我々大人だけではない、写真の少年も親の引率で大会に参加しているのである。この様な光景はほほえましい光景であるが事故などが起きることは皆無である、しかしながら日本の現状ではこうのような事は考えられない、日本の役人は国民に対してお節介を焼きすぎる、それが国民の為を考えているのならまだ納得出来るが行政の多くが自分たちの仕事を作るためにやっているとしか考えられないし国民性悪説に基づいて行政や立法をしていると言うのは私の言い過ぎだろうか?

こんな坊やも・・・
こんな坊やも・・・

試合の最中加藤選手が一時的な銃器故障で最後の数発の射撃が出来ずに困惑していたときは隣の優勝候補の射手が自分の銃を差し出し、これを使えと言って弾と一緒によこした事があったが、加藤選手はそれを使って射撃をし、かろうじて棄権をせずにすんだ事がある、選手の機転により取られた処置であるが、日本では恐らく考えられない行為であろう、日本では銃の貸し借りが禁止されて居るが、銃刀法は第1条の規定にあるとおり、危害予防と安全の為にこの法律が施行されているのであるが、所持許可を持っている者同士が銃の貸し借りをして、この危害予防と安全に著しい問題があるとはとうてい思えない、
他人の銃を使うから著しく危険性が多くなると言うのなら、レンタカーを使うと事故が起きるというのと同じ発想では無いかと思えてしまう。
役人に愚痴を言っても始まらないが、むしろこれらの法改正の説明があったときに、断固として抵抗しなかった業界および団体の非力さに私は憤りすら感じる。
馬鹿な役人を持つと国民が迷惑し、馬鹿な先輩方を持つと後輩が迷惑を被る。

大会の会場では色々な出店があるが、ハンドロードを前提としている我々ベンチレストシューターに取って、今まで日本に輸入されたと事のない火薬をテスト出来るのも大会の楽しみの一つである、今まで日本に輸入されていない火薬の一つにヴィタバリ、N133がある、アメリカでは多くの射手に使われているが、その火薬の特性については全く情報が無かったのであるが、今回の大会参加中使用することが出来た。

新しい火薬と雷管
新しい火薬と雷管

燃焼特性はH322よりも早く、IMR4198より遅い燃焼速度を持つ、CCIの雷管もベンチレストシューター達に評判のよい雷管であるが、使ってみた感想はいずれも大差ないと言うのが実感である。大差ないと言うことが解っただけでも進歩と言うものであろう。大会の会場には色々新しいコンポーネントが登場してきている、新型のベンチレストはジョイステックタイプと呼ばれるレストで、このジョイステックを上下左右に動かすとレストの部分が微細に上下左右に移動するのである、つまり風の流れ、陽炎の状況に応じて銃を微細に上下左右に調整して撃つための物である。

新型ベンチ
新型ベンチ
微調整ウインデージ
微調整ウインデージ

また最近の新製品はレストの上部だけを微細に左右に動かす物も出てきた、油圧かメカニカルかは不明だが、ダイヤルを動かすとレストの上部が微細に左右に動く、これで風の編流を予測してあらかじめ銃を少しずらして狙いを付けて風の編流分を計算に入れて射撃するための道具である。我々がこうした世界的な射撃大会に参加しなければ解らなかった新しい技術の多くを学び取ることが出来た。

私の恥ずかしい結果
私の恥ずかしい結果

3月25日朝8時、フェニックス、ベンアレー射撃場車中にて銃声を聞きながら。


第5日目

200ヤードの最終日である、この日は朝から非常に気象条件の良い日である、ほとんど無風、有っても微風のさわやかな風が射場を吹き抜ける。今朝は射撃場に通じるインターステイツフリーウエイ、17番が6時から工事で閉鎖になるため早朝5時起きで射撃場に駆けつける、そのため射撃場の設置風景を写真に納めた。

標的の設置
標的の設置
標的から射座を見る
標的から射座を見る

標的の両側には平行線を何本も引いたミラージュボードと言う物がある、射座から見るとこれが陽炎が立つとぐじゃぐじゃにゆがんで見える、陽炎を見やすくするためのボードである、ベテランの射手になるとこのミラージュボードを見て撃つところを修正すると言う訳である。
ベンチレスト射撃では1個の的に5発の弾を撃ち込むので、多くの場合が同弾になる、100%がファエアープレイをしてくれれば問題ないのだが、中には4発しか撃たないで5発撃ったことにしようなどとよからぬ事を考える射手がいないとも限らない、悪意が無くても犯しやすいのが、圏的間誤射である、特にミラージュの発生しているときは像が揺らいで自分の標的番号を視認知ることは出来ない、そのため誤射が出やすい、実を言うと私もこの大会で1発誤射をしてしまった、こうした誤射をしたときに、どこの射座から撃ち込まれた誤射か、を判断するために本標的の後ろにバックターゲットを設置している。
本標的とバックターゲットを重ね合わせると誤射の場合は1発だけ極端にずれているのが見つかる。5発の射撃に対して4発しか撃ち込まなかった場合はどうなるかと言うと、バックターゲットには4発の弾痕しか無いから明瞭に判断出来る。
本標的5発の弾を撃ち込んで完全な同一弾痕が出たとしよう、本標的の後ろにはネットが張ってあり、これが電動で常時動いている、本標的の全く同じ場所に弾が集中したとしても、必ずネットの影響で弾道が少し曲げられ、バックターゲット上には同一弾痕として残らない、そのためバックターゲットを見ると、5発の弾痕が残るのである。
今日の大会では風があまり無かったので、思いの外我々以外の射手は成績がよかった。

泣きの1発と言う標的が多発したのでその一部をご紹介しよう、4発の弾痕はほぼワンホールになっており、1発だけが外れたため泣きの1発と呼んでいる標的である、この1発がなきゃ、射手の嘆きが聞こえる標的である、しかし、この手の標的は掲示して有るだけで何枚もある、これは単に射手が動揺したとか、風の影響だったとか言うたぐいの物ではなく、ベンチレスト射撃では5発の内1発が極端に外れると言う現象も必ず体験する、これは当たる弾は逆に外れやすい要素もっていること、あるいは火薬がマッチングしていない。等々色々な原因が言われているが、これこそ正解と言う絶対的な回答は出ていないのが現状である。

泣きの1発 ①
泣きの1発 ①
泣きの1発 ②
泣きの1発 ②
泣きの1発 ③
泣きの1発 ③

しかし日本の射手が泣きの1発の事をくどくど言うのはいただけない、ここの大会では多数泣きの1発が出ている、そして本当に当たった物だけがにこにこマークを標的に審査委員から書き込んで貰える、"大変よくできました"と言うマークらしい。

ニコニコマーク
ニコニコマーク

我々日本人のレベルと比較すると、アメリカのベンチレストシューターのレベルは極めて高い、どこが違うのかよくわからない、使用銃、弾頭、火薬、雷管、薬莢、ほとんど優劣が無いはずだが唯一違うところは、5発の射を撃ち終わった後は必ず銃口内のクリーニングを欠かさない、銅ブラシを通したあと、パッチを20~30回も通している、クリーニングをした後のパッチの数を見てもらいたい、こんなにパッチが落ちていると言うことは相当回数パッチを通したはずである。これが命中精度の秘訣なのか私には断言できないが効果は有るのかも知れない。

パッチの山
パッチの山

ベンチレスト射撃場のとなりから、タ、タ、タ、タ、タ、と拳銃の連続音がしているのでちょっと覗いてみると、こちらも射撃大会の最中である。
今日の最終日を迎え、隣の作業台で仲良くしていただいたヘルマンさんと握手をしてお別れすると心地よいアリゾナの風が頬を吹き抜けた。

ハンドガン射撃大会
ハンドガン射撃大会
隣のヘルマンさん
隣のヘルマンさん

夜になるとターク高野が最後の夜なのでと言うことで我々をデナーに招待してくれた、我々は食事とワインをとりながらいつもながらの銃器論に話が弾む、スナイパーライフル、ミリタリーライフル、勿論ベンチレストライフルの話にも及ぶ、ある会社が300WSMを使ったスナイパーライフルをある政府機関に売却すると言う未確認情報も得ることが出来た。我々の中では一番最年少の川村さんが実は多種多芸の人で空手は初段だと聞かされた、ターク高野は今年で57歳になる、常識的に言えば筋肉の力も落ちて来ている年齢である、川村さんはターク高野に"私は今まで腕相撲で負けたことが無い"とまでタークに言い切ってしまった、その瞬間、誇り高い元空挺隊員の目がきらりと光った、"川村さんに負けたら射撃をやめます"ターク高野が切り返す、なかなかおもしろい展開になってきた。(ワクワク) ターク高野の30年以上にも及ぶ射撃人生に終焉かけて川村さんの部屋に行きタークと川村さんが腕相撲対決することになる、川村さんはパンツ一つになり気合いを入れる、タークはいつものように平然と構えている、1,2,3,でスタート、結果、5秒で勝負が付いた。
ターク高野は言った、腕を巻き込まなければもう少し早く勝てると、で、腕を巻き込んで良いと言う条件で再勝負である、今度は2秒でけりが付いた、ターク高野はこれからも射撃を継続する事になった。

今回の射撃で色々我々のために親身になりお世話をし、川村さんの鼻柱を折ってくれた私の30年来の友人、ターク高野に感謝の言葉を述べ、このレポートを終わります。
最後まで私の駄文におつきあいいただきありがとうございました。

ターク高野氏と
ターク高野氏と

3月27日、ユナイテッド航空897便機内にて。    
日本ベンチレスト射撃協会 築地恵


更新 2001年 4月29日

私のカクタスシュートレポートを読んだ方からのメッセージです、追記しますので参考にしてください。 

カクタスシュート大会のレポートを大変楽しく読ませていただきました。
 その中で、いくつか気がついたことがありましたので、一応ご報告させていただきます。

 ①フィンランドのビサボリパウダー
このパウダーは今まで日本への船便ルートが確立されていなかったため輸入できなかったそうでしたが、現在、国友さんがアメリカ経由での輸入ルートを探しているそうです。近年中に、日本においても入手が可能になりそうです。詳細については国友さんへお問い合わせください。

 ②リローディング時の湿度
   これにつきましては少々物申したいことがあります。ですが、決して築地さんへの反論ではないので怒らないでください。この件については、あくまでも"22ロングライフル弾"を使用した"ポジション シューティング"に限り通用することだと思います。
   根拠1)
イギリス エレー社ではテネックス、エクストラマッチプラスを製造する際には、工場内を何十時間もかけて「大除湿」を行ってから、機械を動かし始めるそうです。そうしないと良い弾ができないそうです。従って、エアコンで除湿してから弾を作るということは、あながちウソではないと思われます。
   根拠2)
10年程前、伊勢原に中国のピストルナショナルチームのコーチが来日したときの話によると「湿度が高い状態で、弾を続けて発射すると、銃身の命中精度が落ちてくる」とのことでした。また、「乾燥した状態では3P-120を一度もクリーニングなしで撃ち続けてもかまわないが、雨が降っているとき(湿度の高いとき)は1回くらいクリーニングを行ったほうが良いかもしれない」とも言っていました。ただし、何発ぐらいで精度が落ちるのかは各銃身によってマチマチだそうです。ちなみにこの結果は、銃)アンシュッツ 弾)エレーテネックスによって出されたものだそうです。

カクタス シュート参戦記 (2000年)

2000年 3月11日 築地
改訂 2000年 3月13日 築地

アイ、ガット、トップ、トウエニー

アメリカから帰国したばかりなので、少しばかり英語圏の雰囲気でタイトルを付けました、日本語式に言えば、TOP20をゲット! てな感じでしょうか。

ベンチレストのアメリカ遠征はこれで3回目なので多少は状況も理解できるようになりました、特にフェニックスのベンアレー射撃場はワールドカップに次いで2回目の場所なのでここの射撃場の風の性質については他の日本チームのメンバー達よりは多少は理解出来ていると思います。勿論現地のシューターには全く及びませんが。

星条旗
星条旗
 カクタス シュート参戦記 (2000年)
 カクタス シュート参戦記 (2000年)
 カクタス シュート参戦記 (2000年)
 カクタス シュート参戦記 (2000年)

私の射座の隣は、ベンチレスト射撃の殿堂入りを果たしているレスター、ブルーノでした、彼はここが地元でここの射撃場に精通している射手なのですが、以外と私の方が良く当たっていたように見受けました。ベンチレスト射撃の場合36倍のスコープで狙っているので、すぐ隣の標的は簡単に視野に入るからです。

射座周辺
射座周辺
射座周辺
射座周辺
射座
射座
射座(湖東さん)
射座(湖東さん)
射座
射座
射座(加藤さん)
射座(加藤さん)

私の銃身は6ミリPPCの1:14のツイストのハートバレルです、ターク高野の説明によると、世界のトップクラスのベンチレストシューターである、レスター、ブルーノや、トニー、ボイヤー、ゲーリー、オーカックなどは1:15のバレルを使っているそうです。

射座(私・・・築地)
射座(私・・・築地)

単に命中精度と言う観点からツイストを考えると、1:15の方が命中精度は良いのだそうです、しかし、その分、風には弱いのだそうです。
多分、こうした超一流の射手達からすれば、何よりも増して大切なのは命中精度、風は読めると、踏んだのでしょう。

射座(川村さん)
射座(川村さん)

ベンチレスト射撃は5発ずつの射撃を5回繰り返し、そのスコアーで順位を決めます。
リレー1(1射群)が撃ち終わるとリレー2が撃ちます、ベンアレー射撃場は射座が64しかないの、4回転の射撃をこなしたとしても256人しか参加できないのです。
私はリレー1で、0.179を撃ち、いきなり29位からスタート出来ました。
リレー2では0.259で31位、リレー3では0.184で15位に入りました、この時点でTOP20をゲット出来ました。
ところがリレー4で風の読み過ぎで0.397を撃ってしまいました、この時点で54位に転落です、最後は0.2459を撃って32位に持ち直すことが出来ました。
本来の成績は最終成績が問題なので、アイ、ガット、トップ、トウエニー と言うのは実は正確な表現ではありませんが、瞬間でもトップ20に入ったのでまあ大目に見てください。

銃のクリーニング(川村さんと私)
銃のクリーニング(川村さんと私)
 カクタス シュート参戦記 (2000年)
 カクタス シュート参戦記 (2000年)
 カクタス シュート参戦記 (2000年)
 カクタス シュート参戦記 (2000年)

ベンチレスト射撃で、何よりにも増して勝敗を左右するのは風の読み方です。日本の射手に風の読み方について説明してもあまり良く理解が出来ません、ほとんどの射手は、火薬量を精密に計ってみたり、それ以外のテクニカルな面に心血を注ぎますが、そんな努力は射撃場で風が少し吹いただけで瞬時に不毛の努力に帰します。

標的群(風を如何に読むか・・・)
標的群(風を如何に読むか・・・)
射座から
射座から

多くの人は風は無風の時が最良のコンデションだと考えると思いますが、実はこのときが一番ヤバイのです。完全な無風でも空気の流れは存在していますので、無風でも着弾は上下に散布するのです、無風よりは弱い横風の方が遙かに条件は良いのです。横風が吹いているときは少なくとも弾着に上下のブレは起きません、左右の風の強さだけを読めばいいのです、左右の風で弱い風の場合は細心の注意が必要です、あまりにも弱い風の場合簡単に吹く方向が逆転していることが有るのです、特に射座付近の風は同じ方向でも標的付近が逆風だと見誤りを犯しがちです。こうしたときに不注意な一発が命取りになることがあります、私がリレー4で犯した過ちは、風速の読み間違いでした。写真でもおわかり頂けると思いますが、射撃場には無数の風旗が立っています、多くの場合はリボンが付けてありますが、このリボンは弱い風でも簡単に真横になびくのです。
本当の風の強さは、羽車の回転数で読むべきだと思います。私はリレー4では最初の4発はかなりのグループを撃っていました、当然トップ20に残れるグルーピングです、それにトップ20からどうしても落ちたくなかったのです、最終弾の時どうしても風が収まらないので、今までより強い風の中で撃つことになりました、リボンはほぼ真横です、弾頭の変移量を考えてかなり狙いをずらして最終弾を撃ったら、なんと思いの外弾頭は流されないでは有りませんか、よく見るとリボンは真横に流されていますが風車はそれほど早い回転ではありません、完全に風を読み間違いました。
私のTOP20はリレー3で簡単にたった1発で消滅してしまいました。
ベンチレスト射撃はこうした劇的な変動の繰り返しです。

ローディング中(私)
ローディング中(私)
ローディング中
ローディング中

多くの方が命中精度を上げるコツは、より精密な火薬の計量だと勘違いしています。
中にはパウダートリックラーを使い、0.1グレインまで正確に計量する人が居ますが、ベンチレスト射撃でそんな精密な計量をする人は一人も居ません、その理由は正確な計量をしたからと言って命中精度が良くなるわけでは無いからです。
私は今回の大会のためにフラワー製の66グレインの弾頭を使い、H322の火薬を27.5グレインチャージしました、常識から言えばかなり少ない火薬量です。
ベンチレスト射撃では、どの弾頭を使い、何の火薬を何グレインチャージするかで命中精度に変化が生じます、決して火薬を正確に計ることにより命中精度が得られるわけではありません。火薬量は0.2グレイン以内の誤差なら無視してかまわないと私は考えています。

ターク高野は最近発売されたベンチマークの火薬を使っていました、ベンチマークと言う名称からすると、いかにも当たりそうですが、他の火薬と大差はないと思います。
射撃場では全員が射撃場でリロードしながら射撃をします、何故現場でリロードするかと言いますと撃つ場所により条件が変わるからです、私は初めてアメリカでの大会に参加したときは試合に使う弾は全部日本で作って行きました、しかし、今回は全部現地でリロードすることにしたのです。

火薬
火薬

私は日本の寒い環境の中でリロードしてテストをしていたので、初夏みたいなアリゾナでは初速が上がると考えていたのです、日本では最高の命中精度でもアリゾナでは初速が早くなり命中精度が変化する可能性があったからです。しかしターク高野はここでも初速は変わらないと言うのです、その理由は気温は熱くても標高が高いので空気に粘りが無いので初速が変わらないと言うのです、実際撃ってみて本当にそのとおりなのでビックリしました。
ターク高野は全米を回って射撃をしているので、外気温と標高の差は徹底的に頭に入っているようでした、アリゾナの初日はまるで初夏だったのですが2日目は雨で、日本より寒くなりました、本当はこのときにローデングデーターを替えなければならないのですが、実際に撃ったデーターが無いので何グレイン増量すべきは全く解りませんでした。
それよりも寒すぎて集中力が散漫になります、私は射撃時以外は車のエンジンをかけっぱなしにして車の中で暖をとりました、防寒着の携帯を忘れた私は完全に作戦の失敗でした。
こうした失敗の積み重ねと経験がベンチレスト射撃の大会では必要なのかな? とも考えました。

食事の風景
食事の風景
結果の貼り出し
結果の貼り出し
湖東さん
湖東さん
雨中の愛銃
雨中の愛銃
ポジションシューティング1
ポジションシューティング1
ポジションシューティング2
ポジションシューティング2
ひそひそ話し??<br>(ターク高野氏 & 川村さん)
ひそひそ話し??
(ターク高野氏 & 川村さん)
気を取り直して<br>(ターク高野氏 & 川村さん)
気を取り直して
(ターク高野氏 & 川村さん)

と、ここまで書いたら一緒に参加した秋田の加藤さんから200ヤードで、リレー3で0.4のグルーピングを出しているので、この驚異的な記録を強調して書いてくれとわざわざ手紙で横槍が入りましたので、そんな訳で嫌々ながらここに追記しておきます。
凄い! 200ヤード 0.4! アンタは天才だ! 同じ人が撃ったとは思えない!
(書いたからね、加藤さん)

左から(私、ターク高野氏、加藤さん、川村さん、湖東さん)
左から(私、ターク高野氏、加藤さん、川村さん、湖東さん)

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