裏側まで、徹底解説の最近のブログ記事

ジェームス ウッドワード

2003年11月 8日 築地
更新 2003年11月11日 築地
2003年11月22日 築地

ジェームズ ウッドワード君なんて、年下みたいに気楽な呼び方をしていますが僕よりグット年上なのです。確かな生年月日は不明ですが戦前生まれなのは間違いのないところです。80才?あるいは100才かも知れません。
お生まれはイギリス、ロンドン。うーん正統派ですね。

右全体図
右全体図
左全体図
左全体図

ジェームス ウッドワード君のトップレバーには、1番と言う数字が金象眼で入っています、つまり、ペアーガンの一つであったことを物語っています。

上彫刻
上彫刻

ペアーガンとは、全く同じ作りの2丁の銃が存在することを意味します。
イギリスのお金持ちがハンテングをするときに、自ら装填しないで、サーバントに装填させた銃を受け取り、「ドンドン」と撃ったら、装填された銃を受け取り、また「ドンドン」と撃って、また装填させると言う目的で作られた銃なのです。
そんなハンテングフィールドは、今時何処にもないと思いますが、かってはそう言うハンテングが出来た時代もあったのです。その時代の名残の銃ですね。
日本では最後の将軍、徳川慶喜さんですら、1丁の銃でハンテングされていますから、ペアーガンと言う発想すら無いはずですから、この銃、戦前の日本に有ったと言うわけではなく、多分バブルの頃、金の力に物を言わせて日本に輸入された銃ではないかと思われます。バブルの頃はこうしたロンドンガンが多数日本に輸入されましたね。
銀座の飲み屋で1日、300万円使ったとか言う馬鹿の居た時代ですから、お金の使い道が無かった頃の産物かも知れません。
バブリーな頃輸入されたジェームス パーデイのペアーガンを500万円で買わないかという話がありましたから、今はその位が相場でしょうね。
ところが、アメリカではまだバブルの影響が多少残っているのでしょうか、アメリカだったらもう少し値段が付く可能性があります。
この銃も日本国内で売りたいのですが、オーナーの希望する販売価格は200万円なので、何方か買って頂ければ200万円で販売しますが、希望者が居ないとアメリカに輸出される運命にあります。

当社のビジネスは、海外からの輸入だけでなく、米軍にもガラクタの安物中古を販売しますし、超高級銃の輸出もします。
あるいは、ロンドン製のダブルライフルや、水平二連銃の修理なども請け負っています。
こうした銃の修理は、日本国内ではなくて、製造元で修理させます。
数百万、あるいは一千万を超えるような銃ですから、修理調整は値段が高くても製造元での調整をオーナーが求めるためです。
こうした銃の修理代は原価、輸出入の当社の手数料は10万円ですから案外安いと私は考えています。下手に素人さんが手出ししたら税金だけでこれ以上のお金を請求されるはずですからね。もしロンドンガンなどをお持ちのお方が居たら何なりとご用命下さい。

さて、ジェームス ウッドワード君ですが、親元ははすでに無く、会社自体はジェームス パーデイ社に吸収合併されており、現在はジェームス パーデイ社のコントロール下にあります。かってはロンドンガンも数社あるいはもっと有ったのですが、現在はジェームス パーデイ社の独走態勢にあります。パーデイはニューヨークにも支店があり、現在でも納期は3年待ちと言う状況です。
パーデイと他のロンドンガンを比べても製品の出来自体には大差はないと思うのですが、そこはやはりブランドの違いと言うことになるのでしょうね。
自分で使う分には何の問題もないのですが、中古で売るとなるとジェームス パーデイを超えるブランド名は無いのです。

この銃のオリジナルのガンケースも付属しているのですが、あまりにも古いため取っ手の皮が切れてしまっています。ガンケースとしての用途よりも、当時のガンケースの作り方を知ることの出来る貴重な逸品ですので、その辺りを少し紹介してみましょう。

オリジナルガンケース
オリジナルガンケース

このガンケース、一見すると革製に見えますが、本体を構成しているのは樫材です。
樫材でガンケースの本体を作り、その樫材の外側を牛革で補強して居るのです。
現在もこれと同じ製法でガンケースを作り、銃の付属品として提供しているのは、私の知る限りジェームス パーデイ社だけです。
実はそのガンケースを製造しているのは、当社でガンケースを販売している販売している「エンビ」社の製造になるものです。

ガンケース材料
ガンケース材料

私も樫材を部材にして牛革で補強した物を使っていますが、しっかりした作りですが重いのが欠点です。私は重いと思っていたのですが、ウッドワード付属のガンケースはさらに重たくできています、重量は7キロ有ります。なんと銃よりもガンケースの方が倍くらい重たいのです。
ペアーガンを使うような人達は、自らガンケースを運ぶと言う発想は無かったのでしょう。ですから軽さよりも丈夫さを重要視したのだと思います。

オリジナルガンケースラベル
オリジナルガンケースラベル
オリジナルガンケース内部
オリジナルガンケース内部
新しいラベル
新しいラベル
今のガンケース
今のガンケース

現在はジェームズ パーデイ社でウッドワード君の専用ケースをリリースしています。
ガンケースのラベルにそれが読み取れますよね。
1948年以降、ウッドワード社はパーデーの傘下に組み込まれたと言うことですね。
でも、このガンケース当社で販売している「エンビ」社のガンケースと同じ物なのです。
ガンケースの部材に樫材を使っていないのは、自らのジェームズ パーデイと差を付けるためなのでしょうね。

この銃が作られた当時の80~100年前の貨幣価値で言うと、家1軒が買えたのと同じくらいの貨幣価値が有ったでしょうね。
仮の話、100年前に親から遺産相続されて、お前は長男だからこの銃を、お前は次男坊だから家屋敷と田畑を、なんて言われたらその長男は泣きの涙ですね!
時折、親からの遺産相続で貰った銃の買い取りを相談されることがありますが、大抵の場合、ロンドンガンの価値は家1軒と同じだと親から言われた方が少なくありません。
そして今でもそれを信じている人も少なくないのです。今となってはまるで漫画ですね。

さて、ジェームス ウッドワード君の銃床材質を見てみますと、当時の値段からは考えるとごく平均的な銃床材料ですね。

右元台
右元台
左元台
左元台

勿論、これ自体良い銃床にかわりはないのですが超レア物とまでは言い切れませんね。
当時としては良い銃床材料は枯渇していたのでしょうか? 
今考えると何だか不思議な気がします。
実を言うと100年前より現在の方が良い銃床材料は多いのでは無いかと思います。
それは何故かと言いますと、100年くらい前に数百年と経過した古木を伐採しても、利用されるのは根っこから上の部分だけでした、言うまでもなく木質が一番緻密でなおかつ綺麗なのは何トンもの自重に耐えた根っこの部分なのです、何トンもの自重のために木質の導管は真っ直ぐに成長することが出来ず、縦横に折れ曲がりながらの成長を余儀なくされます、その為にその部分を製材すると複雑で華麗な木目が現れるのです。
100年前は伐採しても根っこを掘り起こすことは出来ませんでした。そのため今日までその一番おいしい部分は土の中に放置されてきたのです。
所が伐採された木の根は多くの場合、伐採されて捨てられても意外とそのまま生きていることが多いのです。その木からまた枝が生え、一見すると2,3本の木が生えているように見えますが、実はその下には巨大な根っこが隠されている場合があるのです。
あるいは枝が生えていなくても、根っこの部分は腐らずに残っている場合もあります。
現在では伐採の機械が画期的に進歩していますので、こうした「歴史的な」木が採集可能なのです。さすがヨーロッパの先進国ではこうした事は有りませんが、共産圏が崩壊したヨーロッパ諸国ではこれは大変に美味しいビジネスと成っているのです。
根っこを掘り起こすだけで、数百万、あるいは1千万円近い値段で取引できるからです。
そして、そうして掘り出された根っこの部分は、丸ごとペラッチなどに買い取られたり、それを製材して銃床材料として単品で売られたりしています。
私もドイツなどに行った時には購入していますが、販売しているのは中東の人たちとか、トルコの人たちです。そうして買った貴重な材料があるのですが、日本国内で加工に出したら、この材料は自分たちには手に負えないと言われて加工を断られた事もあります、こうした材料は木目も順目と逆目が微細に入り組んでおり、よほど切れる刃物を使い、腕の達つ職人が加工しないと加工できないのかもしれませんね、それにこうしたレア物の材料の場合、木の収縮で木の内部にミリ単位の空洞が出来ている場合もあります、そうした場合は同じ木を使い、木目と色を合わせながら丹念に埋めていく作業も避けられません。私はウエザビーに居るときにこうした作業を学びましたが日本ではこうしたレア物の材料を使わないので技術が継承されていないのかも知れませんね。
この銃床にはレコイルパットが付いていないのがお解りでしょうか?
最高級の狩猟銃には、この様にレコイルパットを付けないのが標準なのです。

銃の彫刻ですが、ロンドンガンの彫刻は、ドイツの深掘り、イタリアの毛掘り、その中間に位置するところにあります。

右彫刻
右彫刻
左彫刻
左彫刻

ドイツ物は唐草などを彫るときには良いのですが、彫りが深いため動物などの繊細な表情を表すのには不向きです、イタリアの毛彫りは動物の繊細な表情や、自然の豊かな情景を表現するのには適していますが、彫刻が薄いため、擦過により彫刻が薄くなる事もあります、それからするとロンドンガンの彫刻は繊細で、なおかつしっかりとした彫りから出来ており経年変化にはびくともしない強さがありますね。

下彫刻
下彫刻

機関部の中も分解して色々説明を加えたいのですが、分解の時にねじ山を滑らせたりするとそれだけで何十万円のペナルテーに成りますから怖くて出来ません。
ですからメカ的な説明は省略させて頂きます。

外見上から判断すると、数千発は使用されてはいますね、何しろ100年近い年月が経過しているので当然でしょう。

使用されたかどうかはブリーチ面のファイアリングピンの周りを見ると、ガスの吹き戻しで出来たクレーターで判断できます。
しかしながら、この部品は別パーツで出来ていますので、この部分だけを交換すれば見た目は新品同様にレストア出来ますね。

ブリーチ面
ブリーチ面

ブリーチ面全面にある細かな傷は錆の痕とも、火薬ガスの損傷による痕とも言えますね。

右銃口
右銃口
左銃口
左銃口
銃口
銃口
薬室
薬室

何しろ100年近い年月が経過していますので当然の事でしょうね。

チェッカリングを子細に観察しますと、ダイヤモンドの頂点がちゃんとエッジが出ていませんね、銃床はオリジナルと思いますので考えられないくらいお粗末な仕事ですね。
私でももう少しましなチェッカリングは出来ますよ!

右グリップ
右グリップ
左グリップ
左グリップ
右先台
右先台
左先台
左先台

これが後作りの銃床なら何となく理解出来るのですがね。


更新 2003年11月11日

私のコラムを読んだ読者の方から以下のメールを頂きました、先ずはご一読ください。

おはようございます
いつもためになる情報ありがとうございます.
さて,お粗末なロンドンガンのチェッカリングですが,これは小生のパーディ-もそうです.
聞くところによると,今のカスタムガンみたいにインチ26本とか30本とかのチェカリングで山を立てて施すと,店頭でのミントコンディションの時には良いのですが,猟場等で使用すると,直ぐに山がつぶれて価値が無くなるから行わないとのことです.
親子数代にわたって補修を重ねて,最後に山が立つようにとの配慮と聞いています.

上記のメールに対して、私は以下の様に考えています。
全ての銃は、完成したときが最良の状態であるのが本当です。さんざん銃を使ってだいぶ痛んだ頃にチェッカリングをやり直すというのは合理的ではありません。
それにその場合はチェッカリングの幅を均等に仕上げるのが本当で、山があったり無かったりと言うのはどうかと思いますがね?多分、セールストークの上手な銃砲店のオヤジにまんまと言いくるめられたのでは無いでしょうか?
私の回答に対して以下のようにメールが来ました、再度ご一読ください。

築地様
銃は見ていないのでチェッカリングのレベルはわかりません.
確かに現在のレベルから言うとそうかもしれませんね.
しかし,ロンドンガンのストックのチェッカリングが山を立てないといいうか,チェッカリングを完成させないで出荷している理由は何人ものオーナーから聞きました.
また,日本やアメリカでは投資目的で購入する人が多いのはわかりますが,私はエゾ雷鳥用に購入しました.まさか鴨撃ちには使いませんが.
私の知人でパーディ-で修行をし,その後メイン州キッテリーのニューイングランドファイアームズというセミカスタムのダブルガン専門店を経て独立した,ロンドン在住のサイモンリットンというあまり上手くないイングレーバーがいるのですが,パーディ-のVIP顧客が狩猟中に木に立てかけてあった水平2連のストックをレンジローバーでバックしたときに折ってしまったのでマネージャーが呼ばれたことがあると言っていました.
コルトで鹿撃ちをする人もいればロンドンガンを山に持っていく人もいるということでしょう.

こんばんは,築地さん!
お蔭様でまた勉強してしまいました!
ロンドンガンのチェッカリングはフラットトップダイアモンドといって,両引きのストレートグリップの銃で二の矢を撃つ時に手を滑らせるためものものだそうです.
詳しくはGAME GUN Richard S.Grozik著 Countrysport Press の86~87ページを参考にして下さい.たぶんアマゾンで購入できます.ちなみに92ページのイングレーバーが若き日のサイモンリットンです.

それから,去年,白熱した議論をメールで行ったスコープのパララックスですが,先日入手したUS OpticsのUSMCスナイパーの取扱説明書に書いてありました.
USMCスナイパーでは鏡筒の後ろのリングでレチクルのピント合わせをしたあとに前方のリングを冶具でゆるめて隠れているAOリングを動かすのですが,このとき,眼を動かしても(つまりパララックスを生じさせても),レチクルとターゲットがずれなくなるまで調節するように,と記載してあります.10X固定のスコープですので,これがパララックス調整です.

このメールを受けて思わず私の脳裏に昔の記憶がよみがえりました。
確かにストレートグリップの、両引き引き金の銃には、初矢と後矢でグリップを滑らせる必要があり、エッジの立っていないチェッカリングをすると言う事実が蘇りました。
それはそのとおりなのですが、私が書いたジェームス ウッドワードは、単引きのピストルグリップです、ですから、ロンドンガンの伝統を継承しているように見えて、実は大間違いをしていることが解りました。
グリップの位置をずらさない、単引き引き金の、ピストルグリップで、フラットダイアモンドに仕上げるなんて論外ですね!
これでは、銃の根本が理解できていません。
案外パーデイですらそうかも知れません、そうだとしたらお笑いですね。(違っていたらごめんなさい)

両引きの引き金のストレート銃床なら、グリップが滑りやすいようにフラットトップダイアモンドに仕上げるのが正統です。
逆に単引き引き金のピストルグリップ銃床なら、ちゃんとエッジの付いたチェッカリングに仕上げるのが理に叶っています、これを間違ったら、ガンスミスの知識としては私以下と言うことになります。

スコープの件は、パララックスについて色々ご説明したり、逆に資料を頂いたりした結果のメールです。
前後の話がわからないと意味不明なメールになります。
私はコラムで普段から偉そうな事を書いていますので、こうしたレベルの高い問い合わせが少なくありません。毎日が研鑽の日々です。

サコー フィンライト

2002年 3月13日 築地

昨日、お客様からメールを頂いた。

ホームページ、数日更新がないと「身柄を取られたかな」と心配しています。警察も「高飛びしたか」と思うでしょう。

メールの発信人は某大新聞社の社会部の記者さんである、勿論ジョークで書かれたメールには違いがないのであるが、私の場合冗談が冗談で無くなる場面も充分想定されるので、また大急ぎでHPを頻繁に更新しなければならない、そうしないとお客様にも、行政にも疑念を招くことになりかねない。
そんな訳で、急遽、サコー、フィンライトのレポートに取りかかる事にする。

この銃はサコー75の軽量版である、この銃のカタログは意外と少なく、2002年版のベレッタ総合カタログには掲載されているがそれ以外には出回っていないのである。
従ってこの銃の詳細をレポートするのは雑誌も含めてこのレポートが始めてでは無いだろうか?

前回リポートしたレミントン700チタニュームとの違いは、チタニュームの弾倉は固定式なのと比べて、フィンライトの場合は着脱式に出来ていると言うことである。

どうしても軽量化と言うことになると弾倉は固定式にならざるを得ない、ウエザビーウルトラライトもそうだし、当社では取り扱いをしていないが、ウルトラライト社の、ウルトラライト、ライフルも弾倉は固定式である。
しかしながら、これらの銃を購入した人たちの多くが、後日、弾倉を着脱式に改造できないかと度々相談される、実際に使ってみると弾倉交換式の利点に着眼されるからであろう。

着脱式弾倉
着脱式弾倉

その点、最初から着脱式弾倉に設計したサコー フィンライト軽量モデルの登場はそれなりに大きな意味を持つことになる。

軽量モデルと言っても、レミントンチタニュームみたいに機関部に特殊な材料を使った訳ではない。
機関部は通常のサコー75と全く同じステンレス鋼である。但しロングアクションの場合サコー75と比べて、銃身を24インチから21インチに変更し、その銃身にスリットを切って、重量を3.75キロから3.15キロに減量している。
さらに308口径等のショートアクションの場合、機関部がロングアクションと比べて少し短いのでさらに軽量化されている、銃身もさらに短くされて20インチになり、重量は3キロとさらに軽量に出来ている。

フルーテッド銃身
フルーテッド銃身
ロングアクションとショートアクション
ロングアクションとショートアクション

減量化の為、トリッガーガードと弾倉は軽合金を採用している、従来のステンレス製と比較すると白さがより際だって見えるのはそのせいである。

アルミ弾倉
アルミ弾倉

サコーのシンセテック銃床は全体的に黒色で出来ているが、握りと先台の部分に灰色で出来ている部分があるが、これは柔らかいゴムが貼り付けられている部分である。

ゴムを貼り付けているその目的は握った感じが柔らかいことと、それと寒冷地で使った場合、シンセテックみたいに手に張り付いたり、冷気を感じないことである、これは結構寒冷地では効果的なのである。

ゴム引き部分
ゴム引き部分

サコー社が、ベレッタの傘下に組み込まれた事はご存じの方も居られると思うが、そのため現在はサコー純正のカタログは存在しない。
サコーのカタログはベレッタの総合カタログの中に掲載されているが、2002年のベレッタ総合カタログはまだ国内には出回っていないので、サコー フィンライトのカタログをご覧になった方は案外少ないのではなかろうか。

ベレッタ傘下に組み込まれる時に、イタリアベレッタ本社のサコー担当者がサコーマウントの注文を忘れた為であろうか、現在サコーの純正マウントが世界的な規模で劇的に不足している。
当社でも相当数在庫していたのであるが、現在はほとんど在庫も底を突いている有様でベレッタの不手際で入荷予定もはっきりとしていないのが現状である。

そこで代替え品としてドイツ製のEAWのマウントをお勧めしている。
EAWのマウントは全部削りだしで作られており、さすがドイツ製と言う出来の良さである。
しかしEAWマウントは削りだしで作られているために、他の機種の市販価格は5万円近くしているのであるが、サコー用マウントに関しては、サコー純正マウントと同じ2万円で販売しているのでご安心頂きたい。

EAWマウント
EAWマウント

前回のレミントン700のレポートでは、銃床の先端が銃身を押させていると書いてあるが、ウエザビーライフルも銃床の先端で銃身を押さえている、これは細い銃身の命中精度を確保するための一つの手段なのである。
しかしながら、ファインライトの銃身はフリーフローテングになっている、つまり銃身と銃床は全く接触していないのである。

これは銃身の太さを限界までに細くせず、有る程度の命中精度を確保しているためであろう。

そのため銃身と銃床の間に紙が差し込める隙間があり、多くの射撃専用の銃はみんなこの様にフリーフローテング加工をしてあるのである、これは銃身の振動を銃床などで阻害しないことにより命中精度を高める方法なのである。

フリーフローテング
フリーフローテング
先台の紙
先台の紙

話は変わるが、銃を梱包するときに銃身の銃床の間に茶色い紙が挟んである、またボルトも茶色い紙で巻いて、ビニールで密閉してある。

これは何のためにそうしているかと言いうと、錆止めの為なのである。

梱包されたボルト
梱包されたボルト

実はこの紙に有る薬品を染みこませてあり。この薬品が蒸発してガス化すると、錆の原因である酸素を除去する事が出来るのである、そのためこの紙を入れて外気と遮断すると、銃はほとんど永久に錆びないのである。

しかしながら、この銃はすべてステンレス製であるが、ステンレスと言えども銃器に使われるステンレスは"鉄分"が多くて限りなくスチールに近いステンレスなのでこうした防錆び処理が必要なのである。

サコー フィンライト、ロングアクションモデル (口径30-06、270)
全長:105.5cm 銃身長:53.5cm 重量:3.15キロ

サコー フィンライト、ショートアクションモデル (口径308ウインチェスター)
全長:103.0cm 銃身長:52.0cm 重量:3.0キロ

いずれも価格は¥225,000である。

レミントン700 チタニューム

2002年 3月 9日 築地

現物を手にして初めて気がついた、それまでショットショー等でさんざん見ていたのにどうしたことなのだろう。ショットショーでは非常に混雑した中で見るので、かなり子細に見たつもりでもやはり見落としが避けられないのだろう。

チタニューム全体図
チタニューム全体図

私はショットショーレポートの中で、レミントンチタニュームのボルトもチタニューム製と書いた記憶があるが、ボルトを持った瞬間 "これはチタンじゃない" と解った!
ショットショーでは、展示品は機関部にボルトを装着した状態で展示してあるので、私はボルト全体の色で、ボルトはてっきりチタン製だと思いこんでいた、実を言うとチタンでは耐久性が大丈夫だろうかと言う懸念があったのだが、ボルトの先端が黒染めしてあるのを見て、この部分だけはクロームモリブデン鋼材を使っているなと勝手に判断していたのである。そうなるとボルトのメインフレームはチタン製だと勝手に思いこんでしまう。
特に、黒くなっている部分はボルト全体の中では別部品なので特に先端以外はチタンだと勝手に思いこんでしまった。
レミントンから当社に送られてきた銃は、箱の中では、ボルトは機関部から取り外してあるので、ボルトを持った瞬間、チタンではなく、クロームモリブデン鋼材で作られていることは瞬間的に判断できた。
念のために磁石をつけると、"バチン"と磁石が張り付く、間違いなくクロームモリブデン鋼材ではないか。ボルト本体を顕微鏡で子細に観察すると、旋盤加工した後200番程度のサンドブラスト加工をして表面を梨地に仕上げ、見た目チタンと同じような色になるように仕上げてある。私はすっかりこのチタン色に騙されてしまった。

ボルトはクロームモリブデン鋼材で出来てはいるが、それなりに軽量化の試みは色々なされており、ボルトハンドルのくり抜き、余分な部分の肉抜き、ボルトボデーのスリット、そうした試みはなされている。
レミントンのボルトはボルトボデーに先端のラグの部分、そしてボルトハンドルの部分が銀蝋付けで取り付けられている、つまり本来はそれぞれが別部品なのである。

ボルトの肉抜き
ボルトの肉抜き

私はチタンの蝋付けをしたことがないので定かではないが、チタンの場合、案外蝋付けがうまくいかない可能性がある、それもボルトボデーにチタンを使えない理由なのかもしれない。
要するに、チタニュームで出来ている部分は機関部だけである。チタニュームは私自身加工した経験があるので解るのだが、以外と割れやすい材料である、少なくともクロームモリブデンと比較すると粘りが無い、そのためだろうか機関部の刻印はエッチングでマーキングしてある。

もし機関部に銃身と同じように刻印を使い、深い打痕を打つとチタニュームの場合、割れてしまう恐れがある、以外とチタニュームは脆い材料なのである。
機関部の表面を顕微鏡で調べると、機械加工した痕に苦労の後が視認できる、それは加工表面の仕上がりが均一でないからである、これは加工時にバイト(刃物)で切り取った切り子がきれいに排出されたのではなく、バイトにくっつきながら削った事を物語っている。バイトに切りかすが付くと、その部分は深く削れ、切りかすが取れると本来の寸法に仕上がる、加工表面を見るとそれらが断続的に発生して加工されたことが解る。

機関部接写
機関部接写

軍用品ならともかく、民間用だと表面仕上げが悪いとクレームになるので、表面仕上げの荒を隠すために、加工後の表面にサンドブラスト仕上げをして、加工痕を誤魔化しているに過ぎないのである。
弾倉も軽量化のために固定式にされている。そのためか、ボルトを取り外した状態での重量は驚異的な軽さである。ボルト無しではなんと2.2キロである。片手で持てる軽さである。ボルトを入れると2.5キロである。

弾倉のタイプ
弾倉のタイプ

銃床は軽量化のために、プラスチックだけで作られている、こうしたプラスチック製銃床の場合は、内部にダイキャスト製のインナーを入れるのが普通だが、これも軽量化のために入れ込んでいない、但し機関部を止めるねじの部分にアルミのパイプを挿入してある、こうしないと銃床材料のプラスチックスがスカスカなので、ねじを締めればいくらでもねじが埋没してしまうからである。

銃床挿入されたパイプ
銃床挿入されたパイプ

銃身は基本的にフローテングされており、銃床の先端だけが銃身に接触している。
銃身の長さは22インチ、あと2インチ切りつめて20インチにすることも可能である、銃身を20インチにしても命中精度には何の影響もない。

銃床の先端部分
銃床の先端部分

銃身は長い方が命中精度は良いと考えがちであるが、究極の命中精度を競うベンチレスト射撃の場合などほとんどの銃は20インチの長さで作られている、あくまでもベンチレストライフルの場合であるが、この長さの銃身で100メートルでの命中精度は1ミリ~3ミリ程度の精度が出せる。
従って銃身が長いから命中精度が良いと考えるのは誤りである。20インチあれば少なくとも命中精度の観点から言えば十分な長さである。
銃身材料は416ステンレスである、日本には存在しない材料である。この材料の特性をもっと解りやすく言うと、通常のステンレスと、鉄の中間みたい無い特性を備えた材料である、従ってステンレスと言う名称ながら磁石は"バチン"と着く。鉄の成分であるクロームを大量に含んでいると言うことである、従ってステンレスでありながら、保管状況如何によっては"錆びる"事もあり得るのである。なぜ銃身材料には完璧なステンレスを使わないのかと言うと、加工が難しいからである、銃身内径の加工は5/100ミリ以上の公差があると極端に命中精度が悪くなるのである、従って加工性が良い材料を使わないと、肝心要な命中精度が出鱈目になるからである。
レミントン700チタニューム のロングアクションモデルの仕様は以下の通りである。
口径は30-06、270ウインチェスター、全長108.1cm 銃身長56.1cm 重量2.5キロ、そして価格は¥228,000である。

レミントン700 ポリス

2001年 8月27日 築地

レミントン700ポリスは警察向けの狙撃銃である。
てな書き出しで記事を書くと、仕事熱心な行政関係の方が読まれると、うむ、それではこの銃は狩猟用ではないな! と言い出しされかねない。
皆さんは"まさか"、行政官がそんな無謀というか無知なことを言うわけがないと思われるかも知れませんが、先々月号の狩猟界に今村銃砲の今村さんがサコーTRGを輸入しようとして警察からこの銃が狙撃銃だと認定され、輸入許可が貰えなかったと言う顛末が書かれているのでお読みになるとその"まさか"が現実に起こり得ることをご理解頂けるでしょう。
これは行政関係者の方が、たまたま、サコーTRGをどこかの軍隊で使っている写真を見て、仕事熱心なあまり、俺の目の黒いうちは何が何でもこの銃は輸入させないと決断されたのかも知れない、確かにこういう姿勢は仕事熱心かも知れないがたまたま目に付いた物だけに規制をかけようと言うのでは逆に言うと仕事に対して無知と言うことにもなる。

軍隊で使っている銃は猟銃としての輸入を一切認めないと言うので有れば、それでは1950年からアメリカ軍の狙撃銃として採用されてきたレミントン700、この銃はボルトアクションライフルとしては最も多く日本に輸入された銃であるがであるが、この銃については行政の仕事熱心な方はどういう説明をなさるのであろうか?

700ポリス
700ポリス

行政が無知だと国民が迷惑を被るが、さりとてあまり行政の悪口を言うとこちらまで目を付けられかねないので、逆に行政の方たちの立場に立って説明してみると、元々メーカーが猟銃として開発した物を、たまたま軍隊が狙撃用として採用したからと言ってそれが急に軍用銃になると言うのでは軍用銃の判断基準そのものが間違っているからである。
軍隊で使っている物は軍用銃、民間で使っている物は猟銃、軍隊で使っている物は軍用車、民間で使っているも物は自家用車、形が同じだから全部同じものと言うのでは行政に対する信頼はほとんどなくなりつつあるが、これでは法律に対する信頼までなくなりかねない。
昔からアメリカ軍の狙撃銃として使われてきたレミントン700であるから、いまさら警察向けの狙撃銃だと言っても、行政の方たちが目くじら立てられることも無いだろう。
最も狙撃銃だと言う言い方をしてもハンターが使えば猟銃になる、勿論軍隊が使えば全く猟銃と同じ銃であっても軍用銃という事になる。要はその使用用途で銃の名称も自ら変化するのである。この銃の機関部にはレミントン700と刻印があるが、軍用も、警察用途の銃も、そして猟銃もすべて同じ刻印なのである。何処にも違いはない。

刻印
刻印

刻印は同じなのだが多少は違いがあるのでその違いに付いて説明してみよう。
この銃のベーシックモデルは700バーミンターである、バーミントライフルは小さな動物を遠距離から狙う猟銃であるので、命中精度を最重要視して作られている、そのため重量は他の700より重量的には重たく出来ている。銃が重たいのは銃身の外形が太いからである、銃身が太いことは射撃時の銃身の熱の上昇を防ぐこと、反動を軽減すること、銃身の歪みが生じにくい、と言うことが利点として上げられる。
寸法的にはそのバーミンターと全く同じ寸法で作られているのがこのポリスモデルなのである。寸法的には全く同じであるが金属の表面処理は大きく異なる。
この銃の表面処理は最初にパーカーライジング処理をしてある、パーカーライジング処理をすると表面は隣酸皮膜が覆うので本来の色は白色になる、しかしながら白色では商品価値が半減するのでパーカー処理の上から黒染め処理を施してある。
パーカーライジングは防錆効果が極めて高いので、警察官が警察の装備品として使う場合、自分の銃と違い"手入れを怠るかも知れない"と言う前提でパーカー処理をしてあると言えなくもない。実はこのパーカー処理、顕微鏡で見ると小さなガラス状の結晶が表面に付着しているのが視認できる、顕微鏡の世界で見ると表面はかなり凸凹なのである、そのため表面が乱反射してつや消しの様な表面に仕上がっているのである。
金属の表面に処理するならば何の問題もないのだが、これが銃身の中に付着すると表面が凸凹なので命中精度は極端に劣悪になる。
レミントンの偉いところはちゃんと銃身内にはパーカー処理液が侵入しないように薬室側と銃口側にちゃんとプラグをして処理していることである、そのため銃口から覗くと、銃身内はつや消し仕上げになっていないことが簡単に視認できる。

銃身はまぎれもないレミントン製だが銃床はHSプレシジョン社製なのである。
この銃床の特徴は銃床の中に機関部を保持するためのアルミのフレームを埋め込んである事である。
プラスチックのままだと金型整形後変形しやすいのでアルミを埋め込むと変形が発生しない。

インナーフレーム
インナーフレーム

この銃床は外国では通称パームと呼ぶがグリップの所に脹らみを付けてあるが、脹らみが左右両方に付いているのが特徴である、警察の装備品の場合、右利き、左利き、どちらの人は使うか解らないので両方に対応しているのである。
一昨年までポリスモデルには弾倉交換式のモデルも有ったのだが、現在はヒンジタイプと呼ばれる固定式弾倉の物しか作られていない、狙撃用と言う以上、弾倉を交換して5発以上の弾を撃ち尽くすというのは現実的には考えられないからであろう。

銃床には負環の止め金具が2本付いている、先に付いているのはここにバイポットを取り付けるためである、後ろの金具にスリングを取り付ける。

皆さん方常識人にとってはとうてい信じられないでしょうが、バイポットが取り付く銃は軍用銃であると、我々輸入業者が血の気の引くような無謀な事を行政の方たちは平気でおっしゃいます、ですからこの銃にバイポットの付いた写真を公開することは出来ません。
負環の金具が2個付いているのは気の向いた時に好きなところに負環を付けるためかも知れませんが、ひょっとしたら先の方のはバイポットが付くのかも知れません、と、この程度しかかけませんので私の苦渋の内情をお察し下さい。

先台負環
先台負環

この様に馬鹿な人間が公務員になると国民が非常に迷惑します、私自身は元々納税意欲はあまり無かったのですが、こんな馬鹿公務員に給料を払うために納税するかと思うと、なおさら納税意欲が減退してきました。

ジュエルトリッガー
ジュエルトリッガー
ボルト分解工具
ボルト分解工具

引き金は通常のレミントントリッガーですが、これをジュエルトリッガーなどに交換すると引き味はさらに良くなります。ジュエルトリッガーの値段は¥38000です。

ボルトを分解するとき、またコッキングが外れたとき、再コッキング等に使うボルト分解工具は¥4500です。勿論、他のレミントン700全てに使えます。

ベレッタ682と686を比較する

2001年 8月21日 築地

従来まであった682が新モデルとなり、682Eと言うネーミングでリリースされたのは一昨年の事である。
それまで686と言うシリーズも682よりも一段下のモデルとして存在していた、682シルバーピジョン、あるいは682オニックスというモデルがそれである。
両方のモデルは外見上明らかに違いがあるので割合容易に判別することが出来た。

ところが、当然というか、思いがけずと言うか、686Eと言うモデルが突然発売されてきた、それまであまり情報が無かったので最初見たとき682と間違いそうになった、機関部に刻印してあるマークでかろうじて別のモデルというのが判別できた。
それくらい682ゴールドEと非常に良く似ているのである、但し値段はそれなりに安いのである。

機関部の刻印
機関部の刻印

682ゴールドEのトラップ及びスキートモデルの当社での値段は\305000であるが、S686Eのトラップ及びスキートモデルの値段は\250000である。

名前も間違いやすいし、値段も間違いやすい、どの部分にどれほど違いがあり、どういうメリット、デメリットがあるのか徹底的にリポートして皆さんにその違いを理解していただこう。

材質について。
銃身素材、及び機関部の素材についてはいずれも全く同じだと思われます、と言っても銃身を切断して断面を顕微鏡で見たとか、素材を分析したとかそのようなことをしているわけではないので断言すると言うにはいささか根拠に乏しいが、今まで何度も説明してきたのだが銃身素材はクロームモリブデン鋼材が唯一の銃身材料でこれ以外の材料を使うと言うことはあり得ないので、材料については同じだと考えるのが常識でしょう。

しかしながらいまだに高い銃には高い鋼材を使っていると信じている方も多いのでこれらの人に説得するのは難しいかもしれない、私の使っているベレッタのサイドロックの水平は銃身にボーラースチールと打刻してある、確かに同じクロームモリブデン鋼材でもボーラー鋼材は値段が高いのでこの様に打刻する意味は理解できる、ボーラー鋼の特徴は不純物が少ないことがその最大の特徴であり、だからといって特別に強靱な耐久性があると言う訳ではない。これはオーストリアで産出される鉱石に特徴があり、その為に以前は珍重されてきた材料なのだが、最近では製鉄技術が向上して為不純物のある鉱石でも徹底的に不純物を除去出来る高炉や技術が開発され最早ボーラー鋼を使う意味はあまり無くった。現在はベレッタの最高級の銃にもボーラースチールと言う刻印が無くなったので、ボーラー鋼材を使っていないか、使っても刻印する意味が無くなったんのだと思われる。

機関部比較
機関部比較
686機関部
686機関部

機関部にもクロームモリブデン鋼材を使うのは常識であるが、機関部を加工した後、表面硬度を上げて耐久性を上げるように処理するのもこれも現在では常識である、機関部の色で見ると682ゴールドの方がいくらか黒ずんで見える、私は窒化処理の結果かなとも思ったのだか、両方の機関部の堅さを見てみると、ロックウエルで45程度出ているので両方に硬度の違いはない、とすると単純にメッキ処理の違いだけと言うことになる。
せめてメッキの色くらい変えておかないと値段差の根拠にならないと言う発想かもしれない、一般のユーザーに違いを認識させるには色と形を変えるしか手がないからであろう。

機関部上部比較
機関部上部比較
機関部上部比較
機関部上部比較

機関部の上部のつや消し部分はそれぞれ少しの違いを見せている、多少は682の方が、手がかかっていると言うことは出来る、最もだからと言って別にどうと言うことはないが。
また機関部のデザインも多少の違いが見受けられる、しかし、これも別にどうと言うことはないが。

外見上の違いをもっと探してみよう。
引き金は686が固定式なのに対して、682ゴールドの方は移動式に出来ている、この辺りはユーザーにとってはメリットと考える人も多いかもしれない。
また686にはスペアの引き金が付いているのも価格差の違いであろう。
銃床のチェッカリングに付いても違いがある、686はチェッカリングなのに対して、682ゴーリドはレーザーチェッカリングである、これもそれぞれの好みで別にどうということもない。リブ幅、リブの形状をみても同じ作りである。

サイドリブの比較
サイドリブの比較
リブの比較
リブの比較

銃身のサイドリブに付いては明らかに外見上の違いが見られる、686のダイドリブはフラットなのに対して、682ゴールドの方はスリットが切ってある、ほとんどの高級銃はスリットが切ってあるのが普通だから、ここにははっきりと価格差を付けてある。

銃床素材については一般論として言えば682ゴールドの方が良い素材を使っていると言えるがその差はわずかな差である。

先台の比較 横
先台の比較 横
先台の比較
先台の比較

銃を注文されるお客様の中には、同じ銃の中で出来るだけ良い銃床の物を選んでくださいとわざわざ言われる方もあるが、このクラスの銃で、値段の割に高価な銃床材料が間違って入っていた、等と言うことは1000丁の内に1丁もない、このように特別に木目の良い銃床が間違って安い銃に使われると言うことは絶対無いのですべて値段相応の銃床がつけられている事をご理解下さい。
DT-10はそれなりに、ASE90もそれなりに SO5もそれなりの銃床が使われていますが、逆の例は皆無です。

元台の比較
元台の比較

外見上の差を最後に一つだけ申し上げると、少しセコイが、ガンケースに金属の鍵が付いているのが682ゴールド、付いていないのがS686Eである。ここまでくるとほんとにセコイ話である。

ガンケース比較
ガンケース比較

外見上の違いはここまでで、内部機構の違いは全くない、全く同じ物である、引き金が前後調整出来ることを除けば部品の互換性すらある。完全に同じパーツである。

ではベレッタのロッキングメカニズムを紹介しよう。
トップレバーをひねるとロッキングアームが後退して銃身と機関部のロックを解除する。

ロッキング機構
ロッキング機構
ロッキングアーム
ロッキングアーム

ロッキングアームは機関部から2本の丸棒として機関部から突き出て、これが銃身のロッキング部分に組み合わされる。トップレバーをひねると同時に安全装置が働き、引き金を引けないようにロックする。
銃身を折り曲げると機関部のロッキングシャフトを押し、機関部に組み込まれたハンマーのシエアーがハンマーを押し上げ、引き金にロックさせる、これで激発準備完了である。

ロッキングシャフト
ロッキングシャフト

これでトップレバーを戻し、安全を外して(射撃場でいちいち安全を使う人はいないが)引き金を引けば初矢が発射される、初矢が出た後その反動で振り子が後ろに下がり、それで2の矢ロックが解除され、2の矢が撃てる。

振り子
振り子

この様にいちいち弾の発射を確認して次の弾を撃つような構造にしているのは、引き金を軽くしすぎると発射の衝撃で2の矢のハンマーのロックが外れて同発になるのを防止しているからである。

セフテーの仕組み
セフテーの仕組み
引き金の安全機構
引き金の安全機構
引き金の安全機構 解除
引き金の安全機構 解除

ベレッタのプルレングスは370ミリである、当社で販売しているペラッチは注文生産であるが、銃床の長さは360ミリから380ミリ以内なので、ベレッタの寸法は平均的な日本人の好みに合っていると言うことが出来る。

ブローニング BPR

2000年11月23日 築地

BPRとは、ブローニング、ポンプ、ライフルの事である。

スライドアクションは別名ポンプアクションとも言う。ポンプアクション、ライフルと言うと、レミントン7600の独占市場だったのだが、ここにブローニングが参入したのである。元々ポンプアクションと言うのはあまり売れてはいない。自動銃100に対して、ポンプアクションの売れ行きは5~3丁と言うところであろうか。散弾銃でもそうだがライフル銃の場合でもポンプアクションは回転不良が少ないというのが最大の利点であろう。

自動銃は火薬の発射ガスを利用して回転しているので、火薬圧力の強い弾、弱い弾、つまり重たい弾頭、軽い弾頭で使用条件が大きく異なる、そのため使用装弾によっては回転不良が起きることは避けられないことなのである、しかしながら特定の弾頭の重さを特定したその装弾で回転することが確認できれば、その装弾を使う限りに置いてはあまり心配はない。しかし羆猟をするとなると自動銃を使用するのはやはり躊躇するのでは無いだろうか、少なくとも私なら猛獣を獲るのに自動銃は使わない。
話は逸れるが、先週ハンターとして名を知られた柳田佳久さんからご招待を受けた、奥さんの誕生日で私も同席させて頂いた、柳田さんは国内では70頭近くの熊と、180頭近くの鹿、それに外国ではライオン、象、サイ、ピューマ、ケープバッファロー、北極熊、等々の獲物を仕留められたハンターであるが、柳田さんの場合、猛獣を獲る場合使用銃はほとんどがウエザビーボルトアクションである、間違っても自動銃を使うことはあり得ない。(最も柳田さんも猟を始められて昭和30年頃は銃の種類も無かったのでレミントン742の自動銃で猟をされていた時期もあるが)。

すでに亡くなられた方なのだが、釧路では佐藤修さんと言うハンターがおられた、この方大藪春彦さんの親友で、私は大藪さんの紹介でお知り合いになったのである。佐藤修さんはレミントンのポンプアクションしか使われなかった、最も猟をされるのはいつも蝦夷鹿なので羆みたいに獲物に反撃される事がないのでポンプアクションの方が使い勝手が良かったのだと思う。
佐藤さんは亡くなられるまで生涯レミントンのポンプしか使われることがなかった、そのためこの1丁の銃を徹底的に使われて私が何度か再仕上げして新品同様に直したことがある。佐藤さんは徹底して忍びの単独猟をやっておられた、ポンプアクションを使われたのは自動銃だとボルトを戻したときに大きな音がして鹿が逃げてしまうからだと言われていた。忍びは絶対に音を立てないと言うのが大原則であるからである、これは柳田さんも同じ事を言われている。柳田さんはボルトアクションライフルを使われているがボルトの操作はソーット、音を立てないように操作されるそうである。
音を立てないで作動させるとなると、ボルトアクションライフルか、ポンプ式と言う選択になる、その中で素早く第2弾を撃てる銃となると、これはもうポンプ式しか無い。

そういう風に考えると忍の鹿猟となるとポンプ式しか選択の余地がないでは無いか、佐藤修さんはレミントンしか使われなかったが、それは佐藤さんの存命中はブローニングがまだポンプ銃の製造をしていなかったからである、もし佐藤さんが生きておられたら私はこの銃を使われるようにお勧めしたはずである。

全体図
全体図

何故これをお勧めするとかと言うと、絶対にレミントンよりは使い易いからである。
ブローニングの最大の利点は先台の移動距離の問題である、レミントンより大幅に先台が手前に移動する、つまり先台の持つ位置がレミントンみたいに先を持つ必要がないのである。これはレミントンみたいに真っ直ぐに後退するのではなく、ブローニングのメカニズムは真っ直ぐに後退した後、機関部を避けるようにして機関部の下に潜り込んで後退するかなり変則的な作動をするからである。また先台を作動させるための力も、ブローニングの方が軽い力で作動させることが出来る。外見を見るとお解り頂けると思うが、ほとんど自動銃と同じ格好である。

先台前進
先台前進
先台後進
先台後進

機関部も自動銃の軽量と同じで、素材はアルミ軽合金を使用しているのでレミントンなどよりは軽くできている。
自動銃もそうだが、ポンプ式も、マグナムカートリッジを使えるのはブローニングだけである、レミントのポンプ式は308,30-06だけで7ミリマグナム、300マグナムは使えない、使えるのはブローニングだけである。

BPRは照星照門が標準で付いているが、勿論スコープを使うことが出来る、そのためのマウントベースを止めるネジは最初から機関部に鉄製のブッシングをはめ込んで取りつけられている。

照門
照門

ボルトの外径は白いメッキをされた鉄板で覆われておりボルトは作動時以外露出していない、ボルトの先端は2個のロッキングが3カ所にあり、合計6個のロッキング、ラグで銃身後端にロックされている、先台を動かすと、ボルトが回転をはじめ、5度回転した時点で不用意に激発しないように撃針をロックする。60度回転したところでロッキングが解除される。解除されたボルトはそのまま後退し薬室内の薬莢を排出する。ボルトが完全に後退すると先台を前に押し出す。ボルトも連動して前に前進する。ボルトの先端は弾倉の装弾をキャッチしそれを押しながら薬室に装填させる。装弾が薬室に装填されたらボルトは60度回転してロックして止まる。この時点で初めて撃針のロックが外れ何時でも激発できる状態になる。これがポンプ式の発射一連のメカニズムである。

機関部
機関部

ブローニングは自動銃もそうだがこのポンプ式も予備弾倉の交換が面倒である、しかしながら実猟で予備弾倉を交換してやっと獲物を仕留めると言うことはあっては成らないことである、薬室に1発弾倉に4発、合計5発の弾が装填できているのであるからこれらの弾を全て撃ち尽くしても獲物に命中させられないときは獲物の勝ちというべきであろう。
もっとストレートに言うならば射手が下手糞と言うことに他ならない。

従ってブローニングの予備弾倉の装填が煩雑だと言う理屈はマイナス要因とは考えられない。ブローニング弾倉への装填方法を説明してみよう、マガジンキャッチを開いて弾倉を解放する、弾倉をヒンジに付けたまま弾を装填する、弾倉への装填が完了したらヒンジを閉鎖して装填完了である。案外慣れると簡単な作業である。

マガジンキャッチ
マガジンキャッチ
マガジン取り外し
マガジン取り外し
装填
装填

トリッガーガードの周囲は手前に安全装置が設置されている、トリッガーの前には スライドリリースと呼ばれるレバーがある、これはスライドを作動し引き金をロックさせた場合は引きを引いてハンマーを落とさないとスライドが引けないが、引き金をロックした状態でスライドを作動させるためにはこのレバーを押せばスライドが作動する、つまり装弾を薬室に入れた状態の場合引き金を引かないと排莢出来ないが、このレバーを引くと装弾は薬室から排莢出来ると言うことを意味している。

安全装置
安全装置
スライドリリース
スライドリリース

今まで説明したことがないが今回は照星照門の調整方法を説明してみよう。
初旬調整は全て照門で行う、標的の弾痕が下にあった場合、弾痕を上にやりたいわけであるから上下調整ネジを "UP"(アップ)の方向に回す、回す加減は1目盛りで100ヤード1/4インチ移動することになる。メートル法で言うと、約100メートルで、約0.6cm移動する事になる、6cm移動させたいときは10目盛り動かせば良いと言うことになる、左右の調整は弾痕が9時方向に飛んだ場合は、3時方向、つまり右に移動させれば良いわけだから、"R"の方向に回す、これも1目盛りで100ヤード1/4インチ移動することになる。メートル法で言うと、約100メートルで、約0.6cm移動する事になる、ブローニングはこの様に微調整出来るが、レミントンの場合微調整は出来ない。

さてここまで書くとポンプアクションには何の欠点もないように思われようが、これからポンプ式の最大の欠点というか、致命的な欠点をお話する、散弾銃の場合ほとんど問題視されないのだがそれは散弾の薬莢は撃ち終わった後は銃を逆さまにすると自重で落ちてくる、しかしながら、ライフル装弾の場合発射ガスの逆流を防ぐため薬莢が広がり薬室と薬莢の間をシールする、そのため弾を撃った後でも薬莢は自重で落下する様にクリアランスは無いのである、場合によっては薬莢が薬室に張り付いているときがある。ボルトアクションの銃はボルトを持ち上げたとき最後の所で強制的に3ミリ程度後退する、これで薬莢の張り付きを強制的に剥がすことになる、自動銃の場合、これは強制的に排莢するので張り付きがあったとしても薬莢を強制的に掻きだすことになるので問題はない。

ポンプ式の場合、この様に強制的に張り付を剥がすシステムは残念ながら備えていない、従って新品の時はあまり問題がないのだが手入れをしないで使っていると、薬室にカーボンが蓄積して薬莢が張り付いてしまうことがある、こうなると先台を引いたくらいでは簡単に動かすことが出来無い、これがポンプ式の最大の欠点である。
しかしながらポンプ式の場合、最悪の場合は両手で先台を持って"ヨイショ"と引けばまだ何とかなる、最悪なのは同じ原理で作られた直動式ライフルである。これも原理はポンプ式と同じ物である、薬莢が張り付いたら片手しか使えないのでどうにも成らなくなる。
直動式ボルトアクションライフルは100年前にスイスで作られている、それから最終的に製造中止に成ったのだが最近また復活した、しかしながら問題点が解決したわけではないのである、従って当社では、私の良識として今でも直動式ボルトアクションライフルは取り扱わないのである。

このブローニングの価格は¥115000、国内定価は約30万円である、勿論全く同じ銃なのである事は言うまでもない。未だに国内定価の30万円で購入される方も居るが、皆さんなかなか太っ腹な人達である。

ベレッタ 391ウリカ

2000年11月19日 築地

今回はベレッタの新製品、391ウリカ自動銃のリポートである。
ますはベレッタの言い分を聞いてみよう。
以下の文章はベレッタの取扱説明書からの引用です。

非常に細身の丸みを持たせた機関部の設計です、こうした機関部を採用することにより本能的に的に素早く狙いを付けることが可能です。機関部の上部と下部はマットフィニッシュというつや消し仕上げにしてあります、これは的を狙ったときに反射を無くすためです。
しかし銃の華麗さを保つために、機関部の中心部の左右は、輝きを持たせてあります。
またボルトおよびキャリアーにはエンジンターンと呼ばれる飾り磨きを施しております。

ボルト
ボルト
キャリアー
キャリアー

ガスピストンは全く新しいシステムを採用しました、名付けてエグゾーストバルブ付ガスオペレーテングシステム、これは排気バルブ付 ガスオペレーテングシステムと言う意味です。わざわざ排気バルブ付と言っているのには理由があります。
この銃は24グラムの射撃用装弾から、57グラムの3インチマグナム装弾まで全て使えるというのがその最大の特徴です。

ガスオペレーテングシステム
ガスオペレーテングシステム

排気バルブはそれらの作動を完璧にこなすための特殊装置なのです、つまり24グラム装弾を使うときは反動が少ないので当然にしてガスの圧力も弱い、そうしたときはガスをあまり排気しないでボルトが完璧に後退させるためにガス圧を利用する、マグナム装弾を撃つときはガス圧が高いので余分な高圧ガスを排気バルブから排気してボルトが強烈な勢いで後退してボルト、および機関部が破損するのを防止しているのです。
銃床の中にはボルトが急激に後退したときの衝撃を防ぐためにリコイルダンパーを内蔵してあります。また通常の使用時でも、ボルトの後退による衝撃を少なくするために作用します。トリッガーガードはガラス繊維混合のテクノポリマー樹脂で作ってあります。

この素材はアルミ合金より強い強度を備えております、またトリガーガードは手袋使用時でも楽に使えるよう大きく作っております。極寒の中でトリッガーガードに触れても従来の金属製のように冷たいと言う感じはしません、またポリカーボネイトは汚れにくいという性質も備えております。

トリガーガード
トリガーガード

機関部の左側にはカット-オフ機能を備えております、このレバーを押し込んで"オン"の状態にしておくと、弾倉から装弾が送られなくなり、ボルトを操作して排莢すると薬室の装弾だけが排出され弾倉内の装弾は排莢されません。
カット-オフ装置を解除すると通常とおり装弾が送られます。

カットオフ OFF
カットオフ OFF
カットオフ ON
カットオフ ON

安全装置はトリッガーガードの前に配置してあります、この安全装置はボタンを左右にはめ変えるだけで左射手用に簡単に交換することが出来ます。
バットプレートは通常のゴム製の物を取りつけてありますが、プラスチック製の物も標準装備されています。

安全装置
安全装置

狩猟や、スキート射撃の場合など素早い肩付けが要求される場合には便利なベットプレートです、またこれに取り替えると簡単に全長を1.6cm短くすることが出来ます。
銃床はベンドの調整、およびキャストオフが簡単に出来ます。以下その方法を説明します。
部品セットの中にポリカーボネイトで出来た楕円形のC-50-DXと刻印された部品があります、これは片方が厚く、片方が薄くできていますので、これを銃床と機関部の間に挟めばベンド調整が簡単に出来るのです、薄方を上にして挟めばベンドは高くなり、逆に厚い方を上にして挟めばベンドは低くなります。
またC-60-DXと書かれたスチール製の楕円の板を銃床のボルトチューブと呼ばれる中にセットすれば銃床を銃身軸線から左右に振ることが出来ます、これは楕円の鉄板に穴が開けてありますが、その穴が中心から少し偏芯しています、その偏芯分だけキャストオフすることが出来るのです、キャストオフとは右利きの射手が銃床の後ろを右側に振ることを言います、左射手の場合、逆に振り、これをキャストインと言います。
このキャストオフ、キャストインは銃を構えたとき銃床が反対側に少し曲がっていることにより狙いやすくするためです。
これらの調整をするためにはまずレコイルパットを外します、レコイルパットは上下2本のネジで止められていますのでこれを外します、そうすると銃創の中に銃床を機関部を止めているネジが見えます、これを外すと銃床と機関部が分離します。その分離した間に部品を挟めばベンドを変更できます、銃床の中に鉄の楕円形の部品を入れるとキャストを変更できます。

銃の付属品は、ガンケース、マガジンプラグ、予備のバットプレート、ベンド調整金具、キャストオフ設定金具、負環セット、ガンオイル、交換チョーク5本、交換チョークレンチが付属で付いている。これで391ウリカゴールドが¥165000、シルバーが¥145000ならお買得価格と言うことが出来るかも知れない。

引き金から銃床までの長さを言うプルレングスは36.2cm~37.6cm
重量は12番が 3.0キロ、20番が2.7キロです。

フルセット
フルセット
収納時注意
収納時注意
硬質クロームメッキ
硬質クロームメッキ
アルゴン溶接
アルゴン溶接

以上がベレッタの言い分であります、これからが私のレポート部分でありますが、少し辛口のいつもの調子です。

機関部の素材はどこのメーカーも軽合金としか言いませんが、どこのメーカーも素材はいわゆるジュラルミン製です、これが軽合金の中では一番強度がありなおかつ加工性も良いからです。従ってメーカーによって素材の優劣はありません。
機関部を上下マット仕上げにして真ん中を艶仕上げにしてあるのは単なる見栄えですがデザイン的に言うとなかなか優れたデザインだと言うことが出来ます、ゴールドモデルは機関部の中に金象眼が施されていますが、勿論本物の象眼ではありません、この部分だけを金メッキ仕上げにしただけの物で長期間使用すると剥げてくる可能性も否定できません。

機関部全体
機関部全体

機関部全体に丸みを持たせて狙いやすくしてあると言うベレッタの主張はある程度的を得ていると思えます、実際に狙ってみると従来の物よりは狙いを付けやすいように感じられます、また機関部のリブ延長線上の真後を少し削ってあるのも狙いやすくしてある理由でしょう。

窪み
窪み

この銃は24グラム装弾から57グラム装弾まで使えるというのが最大の売りですが、果たして全メーカーの全装弾まで絶対に使えるかと言うとほんのわずかですが疑念は残ります、私だったらメーカーによっては使えない可能性がありますよと注釈を付けておきたいところです。先台の構造はガス穴から排出したガスを銃床の外側に排気するような構造になっているのでレミントンなどに起こりがちな銃床割れは少ないと思われる、事実、今までベレッタ系統の銃はほとんど先台割れのトラブルは起きていない。
レミントンなど比較して、銃床の品質が良いと言うのもベレッタの特徴である、良い素材を大量にがっちり押さえているのでこうした事が出来るのだろう。

客の中には銃床を選ばせてくれと言うお客も居るが、当社では銃床は選ばせない、その理由としては銃の数が多く、煩雑でとても何丁もの銃を見せて対応することが出来ないからである、もう一つの理由は当社は99.9%通信販売であるため、全てのお客様に公平と言うスタンスを保っている、当社に来社されたお客様だけに優遇したのでは99.9%のお客様のい背信行為ではないか、それに、はっきり言うと、当社に来社されたお客様より電話だけで注文されたお客様の方が明らかに手間がかかっていないわけだから、煩雑なお客様により優遇するというのもおかしな話である、それと最大理由は、今時、定価の決められた銃に特別程度の良い銃床が取り付いている訳がない、銃によって例外的に綺麗な銃床が付いていると言うことは皆無であるから銃床を選択する必然性は無いのである。

安全装置ボタンはトリッガーガードの前にあるが、何故わざわざ前にしているのかその理由が解らない、使い易いという意味から言うとレミントンみたいにトリッガーガードの手前に設置するのが当然だと思うがこの辺りは設計者に聞かないと理由が解らない、ひょっとしたらこの設計者は実猟をやったことがないのかなと疑念を持たざるを得ない、ベレッタの安全は銃を構えた状態では絶対に作動させられない、従って銃を構える前、グリップを握る前に作動させなければ成らない。安全装置に関してベレッタは他のメーカーからすると明らかに間違った設計をしている。

レミントン7400

2000年11月18日 築地

ライフル銃の自動銃は以外と少ない、ハンテングにきっちり使えるのはブローニングとレミントンだけである。
当社のベストセラーはブローニングだが、レミントンもなかなか根強い人気がある、レミントンを好む人の多くは形から入っている人も多い、ブローニングのスタイルは一部の人にとっては格好が良くないらしい、また弾倉交換が簡単なのもレミントンが好まれる理由の一つである。
ブローニングの場合、弾倉を交換するのにはトリッガーガードの前にあるマガジンキャッチを押して、ヒンジを開き、その蓋の裏側に弾倉が取り付けられているので弾倉の後ろを持ち上げて外す、予備の弾倉を取り付けるには、弾倉の先端をヒンジの裏側にひっかけ、弾倉の後ろを押し下げ、"カチッ"とロックされるのを確認してヒンジを閉じる。
この様にブローニングの弾倉交換は煩雑極まりないのである。それとするとレミントンはマガジンキャッチを押しさせすれば直ちに弾倉が外れる、この作動性の良さは明らかにレミントンの方が優れている。

マガジンキャッチ
マガジンキャッチ
マガジン外し
マガジン外し

値段が安いこともレミントンの良さである、当社のセール価格は¥99,000である、正規代理店の価格では30数万円であることからして当社の価格は国内の正規代理店の価格からすると破格の値段だが、私からすると、ちゃんと適正利潤を確保した値段である。逆に言うと正規代理店価格は完全なボッタクリだったと言うことになる。小売店の名誉のために言うが小売店の利益はせいぜい30%である、通常は定価から10%程度の値引きをしているので利益率は20%程度ということで決して暴利を得ているわけではない、小売業者もいわば被害者なのである。輸入商社が如何に小売価格を押し上げていたか、その弊害の最たる物がこうした猟銃の価格で簡単に解る。
ビジネスを展開する上で価格は最も大切な事であるが同じように大切なことは技術的なサポートが出来る事である。銃器のサポートに関しては教科書が存在しない以上、銃器に関して豊富な経験と知識がないと出来ない、少なくともこれに関しては私の方が商社の社員より2歩も3歩もリードしていると自負している。
皆さんはすでにお解りだろうが、この徹底的に説明しましょうと言うレポートはほとんど毎日1本と言うペースで書いています、それも通常の仕事をちゃんとこなしながら書いている事なので、銃器の事がちゃんと頭に入っていないと出来ない芸当である。
誰かの書いた原稿や、資料を見ながら書いたのではとても追いつけないハイペースなのである。それに私は週末必ず射撃場に行くので、原稿を書くのは土日祭日以外の平日と言うことになるが、そうなると原稿を書くのは早朝と言うことになる、実はこの原稿を書いている今の時間は午前3時である。このまま2~3時間原稿を書いて6~7時には会社に出社しているのである。こんな事をつらつら書き連ねると、自慢話に聞こえるといけないが、つまり相当好きでないと出来ない芸当であると言うことをいいたかっただけなのである。

さて話がそれたがまた本題に戻ろう。自動銃で回転不良以外の次に多いトラブルは銃床の割れである。割れるのは決まって先台、元台が割れることはまず起きない。先台が割れる原因は火薬のガスである。自動銃を回転させるために銃身からガスを導入してピストンを動かし、その作用により弾を排莢して、弾倉から装填する、これら一連の作業はピストンに吹き付けたガスの作用による。

この火薬ガスはピストンを1センチメートル動かすだけである、あまりにも火薬のガスは強力なため、ピストンが1センチ動くだけでボルトはその "慣性" だけで10センチ動いてこれらの一連の作動を繰り返すのである。念のためにいうがピストンの力でボルトの作動範囲、10センチを動かしているのではない、わずか1センチである!
もしボルトを10センチ動かすようにピストンが作動したら、余りにも強烈な力のためボルトが崩壊してしまうはずである。ピストンを1センチだけ動かした後のガスがガス穴から放出される。この放出されたガスが当然にして強烈な力を持っている。
このガスが放出されるのは先台の中である、そのため自動銃の先台は割れやすいのである。

ガス吹き出し
ガス吹き出し

M-14という軍用銃があるが、この銃は火薬ガスを先台の中ではなく、先台の外に排出している、そのため先台の割れるトラブルは起こらないのである、国産でフジオートという散弾の自動銃があった、この銃は火薬ガスを先台の外に排出するシステムをとっていた、M-14と同じ設計である、こんな事を書くといかにも日本にも優れた設計者が居たかと思われるだろうが、実はこれはM-14のパクリである、ピストンの作動方法もM-14と全く同じだし、欠点まで完璧にコピーしているので簡単に解る。

さて、自動銃にとって先台が割れやすいということがお解りいただけたと思うが、レミントンの場合、新製品として銃床がシンセテックの物を発売した、シンセテックというのは対衝撃性プラスチックである、このプラスチック極めて強く、この材料を使ったナイフがあるくらいである、ただしナイフといっても切れ味が良いわけでは無い、シンセテックと言えどもさすがに鉄よりは弱いからである。このナイフ切る目的ではなく、刺す目的で作られたナイフなのである。では何故プラスチックかというと、それは金属探知器に反応しないからである。それにパソコンと一緒にカバンに収納すればレントゲンでみてもナイフと分かる事はない。何となくハイジャク犯人のために作られたようなナイフである。
話が横道に逸れたが、シンセテック銃床が割れないことはご理解いただけたと思うが、実は木製銃床も新型の物は横幅がかなり大きく出来ており非常に割れにくく出来ている、ここが旧型と違うところなので指摘しておきます。

さて自動銃がピストンの作動で回転することはご理解いただけたと思うのだが、実はこのシステムを使っていたのは他の自動銃である、このピストン方式は若干問題があったのである、使っている間にガス穴の中にカーボンが付着してくるとピストンの動きが渋くなって回転不良が起きやすいのである、レミントンの場合その構造は全く違う。ピストンにガスを吹き付けてピストンを動かすのではなく、ガスを直接アクションバーに吹き付けるのである、これだとカーボンがピストンに付着することはない、何故なら元々ピストンが無いからである。
そしてカーボンはガスと一緒に吹き飛ばされる。
昔の米軍の正式小銃はM-14であったが、これはピストンを使って作動させていた、それから後に正式採用されたM-16はピストンを使わず、ガスを直接ボルトに吹き付けて回転させる方式に改良した、しかしこの方法はボルトに直接ガスを吹き付けるためボルトが汚れやすい欠点があった、しかし新レミントン7400の場合、ボルトではなくアクションレバーに直接吹き付けるのでボルトが汚れる事はない。
旧型の物とはボルトのロッキングも変更された、旧型はボルトのロッキングがブローニングの様に6個付いていたのだが、新型は大きな物が2個付いている構造に変更された、ロッキングが多ければ多いほど異物を噛み込む可能性が大きくなる、それを避けるためにロッキングを少なくしたのであろう、ボルトの外側にはプラスチック製のダストカヴァーが付いているがこれも異物の進入を防御するためには効果がある。

レミントンには照星照門が付いている、もう一つレミントンで起こりやすいトラブルであるがこの照門を無くす人が思いの外多いのである、このサイトは調整式のためネジをゆるめて照準調整が出来るが、工場から出荷した段階でこのねじが良く締まって居ない物があり、山歩きの最中にポロリと抜け落ちてしまうのである。これは何もライフル銃だけに限った事ではなくレミントンの場合散弾銃のスラッグ銃身でも同じ事が言えるのでご注意願いたい。射撃場で照準調整を済ませた後は、ねじを完璧に締め上げ、そのあと外側をエポキシ系統の接着剤で接着しておくことをお勧めする、こうすれば抜け落ちることはない、どうしても再調整をするときはライターであぶると、接着剤を剥がすことが出来る。

照門
照門

銃全体の外見を見てみよう、写真では解らないと思うが金属部分は全部つや消し仕上げに出来ている、シンセテック銃床の仕上げとうまくマッチしている。
従来型の艶仕上げの7400とは全然雰囲気が違っている、ハンテングにはシンセテック銃床の方が良さそうに見える。

ウッド & シンセテック
ウッド & シンセテック
機関部の比較(ウッド、シンセ)
機関部の比較(ウッド、シンセ)

シンセテック銃床の機関部はよけいな装飾がないが、木銃床の機関部には彫刻が施してある、最も手彫りではなくプレスでスタンプしただけの簡単な物であるのであまり価値はないが。自動銃の回転不良を防ぐためには薬室をきれいに掃除しておかなければ成らない、自動銃は射撃をする度に火薬ガスが薬莢と薬室の間にわずかに進入する、通常は高圧ガスのために薬莢が膨らんでガスの吹き戻しをシールするがそれでも少しずつ汚れてくることには変わりない、またリーロードした弾を使う場合、ターボタンブラーできれいに研磨してから使うようにお勧めした、汚れたままの薬莢をそのまま使うと薬莢に付いたカーボンや汚れが、火薬ガスの圧力で薬室に押しつけられる、そしてそれが少しずつ蓄積するといつしか薬室の壁がざらざらになり、ついには薬莢が薬室に張り付くことになる。これが以外と回転不良の原因になるのである。ですから汚れた薬莢は使わない、射撃をした後は必ず薬室ブラシで薬室を清掃する事が必要である。この薬室ブラシを最初から付属で付けているのはレミントンだけである。

レミントンは最近のモデルから、安全装置に鍵がかかるようになった。この鍵を外さないと安全が外れないのである。つまり引き金を引くことが出来ないのである。
つまり安全装置が二重構造になっているのです、鍵を挿入して赤い印のある所まで回転させると初めて安全を左右に押して安全を解除したり、安全をかけたりすることが出来る。
鍵を挿入して白いマーキングの所に回すと、安全装置を左右に押し出すことが出来なくなる、つまり安全装置がロックされた状態になるのである。
かえって面倒に感じられるかも知れないが、今までとおりの使い方をするならば鍵の位置を赤い印の所にセットしておけば従来とおりの使い方が可能である。

安全装置の鍵
安全装置の鍵

レミントン7400には照星照門は全てのモデルに付いているが、当然にしてライフルスコープも使うことが出来る、マウントベースを取り付ける穴はすでに加工してあるので単純にネジ止めするだけで取り付けられる。
負環金具は付いていないのでアアンクルマイケル社の7400用専用負環を使うと先台の止めネジに差し替えるだけで取り付ける事が出来る、金具の価格は¥6000である。

先台の止めネジ
先台の止めネジ

ベレッタ DT-10

2000年11月17日 築地

オリンピックでどの選手が金メダルをゲットするかは誰しも興味のあるところだろうが、私たちみたいにガンビジネスに関わっている人間にとってはどこの銃を使ったかと言うことも非常に関心のあるところである。
車で言うとF-1レースみたいな物である、誰が優勝したかと言うことと共に、どこのメーカーが勝ったのか、フェラーリか、マクラーレンかと言うような別の次元の興味もそそられるのである。何故なら多少なりともビジネスの展開に影響があるからである。
日本ではオリンピックで誰も使っていないような銃をわざわざ宣伝して販売している。オリンピッククラスの射撃競技では、選手の使用銃は圧倒的にペラッチとベレッタに二分される、私もどちらの方がいい銃ですかと聞かれると返事に窮する。何を以て良しとするかはそれぞれの射手の価値観に負うところが大きく、私でも善し悪しを断定することは出来ない。私自身はペラッチSC0のサイドプレート銃を使っているがこれとて単なる私の好みで使っているにすぎない。

銃床のフィーリングはペラッチ、とベレッタでは違いがある、それはベレッタの方がグリップにパームと言う、手の平に当たる部分に脹らみを持たせてつくられているからである、昔のペラッチにはパームがつけられていたが、最近のペラッチはパームがないのが主流である。パームをつけない理由はそちらの方が自由に握る箇所を変えられると言うメリットがあるからである。

グリップ
グリップ

当社に銃を見に来られて、ベレッタ、ペラッチと両方の銃をお見せして、それぞれ構えさせて見ると、多くの方がベレッタの方が何となくしっくり来ると言う感想を述べられるが、ではしっくり来る方がより当たるかと言うと、それはまた別問題なはずである。これが射撃の奥深い所である。
当社では最近射撃銃の値段を大幅に値下げした、ペラッチMX8で¥690000である、この値段、イタリアの小売価格より安いのである、アメリカですらMX8は$8600である、約90万円である。
多分、世界中でMX8を一番安く売っているのは当社であろう。
MX8のライバルと言うと、ベレッタではASEゴールドがそれに相当する、当社の価格で¥800000であるが、ベレッタが打倒ペラッチとして出してきたのがDT-10である、当社の価格で¥595000である。 明らかにMX8を意識した価格である、銃の値段を下げると言うことはどこのメーカーもしないことである。今までの流通体系が完全におかしくなってしまう、在庫を持っていた所は悲劇だろう、そのため銃の値段が上がることはあっても下がることは無いのである。

DT-10 全体
DT-10 全体

今年のショットショーでDT-10を見たとき、新製品を出して値上げをするのだろうと思っていた、その時点では正確な価格が提示されていなかったからである。しかし最終的に提示された値段を検討した結果、当社ではこの銃を¥595000で販売することにした、正規代理店がいくらで売るかは関係のないことである。
値段が安い分、ASEより質が落ちているだろうと考えるのは至極当然の事だろうが、私の目からするとあまり遜色がないのである、ベレッタのエンジニアによると、DT-10の方が耐久性があるとのことだが、真偽のほどはわからない、その理由を聞いたところ銃身ブロックに差し込んでいる銃身のスリーヴが長いと言うのもその理由の一つだと言っていた、銃身ブロックと言うと聞いたことのない人が多いだろうが、ペラッチ、ベレッタの銃身は、薬室の部分は上下一体のブロックで作られている。そのブロックに銃身にあたる部分を差し込んで作られているのである、その差込の部分がスリーヴである。

話が変わるが、銃の中で最低と言われる故障はこの差込が抜けることである、弾を撃っても火薬の圧力は機関部と、ブロックにかかり、銃身にはほとんど負担を与えない、一番負担となるのは散弾が銃口内を通過していくとき、チョークの部分で抵抗が生じるのでその時銃身が抜けるような作用が働くだけである、しかし現実問題銃身が抜ける事はない。
しかし、かなり昔、SKBの銃身が少し抜けたのを見たことがある、昔の事なので今とは製造技術が違っていたのであろう、最近はその様な事例は皆無である。

クロスボルト
クロスボルト

しかし最近ある会社の銃の銃身が抜けたと言う話を聞いた、どこのメーカーかと思ったらマエストロとのことである、ペラッチのコピーみたいな銃であるが、値段はペラッチの正規価格と同じ値段で売られている銃である。
銃身が細く、銃床も小さくまた仕上げも非常に綺麗な銃でいかにも日本人好みの銃である、私のこの銃を売るかどうか判断するため外国の評判を聞いてみたらその評価は最低であった、外人の業者仲間からも扱わない方がいいよ、といわれたのだがその時点でその理由は示されなかった。
時間が経ちマエストロの銃を見る機会が出来て内部を見たら、とても銃器のことを熟知した人が設計したとは思えない作りである、外見はペラッチと同じであるが内部はペラッチと比較するとかなり劣悪な設計である、銃器設計の基本的な事が解っていないと言える。ただしパーツ類は良く研磨されているので素人目には良い銃に見えるかも知れない、しかしながらどんなに中の仕上げが良かろうが銃身が抜けるような銃は最低である、1回でも銃身が抜けると修理が効かない、その銃は廃棄しるしかないだろう、この事実からしてマエストロはジャンク、史上最低の銃であるとキッパリ断言しておく。
こんな事を書くと、マエストロの代理店の人は怒るかも知れないが、無知な射手を騙すようなビジネスをすべきではないと考えあえて暴露しました。(異論のある方はご自社のホームページで反論なさって下さい)

さて話がそれたがDT-10は明らかにMX8に対抗するために作られた銃である、なんと言っても価格が明らかにMX8を意識した値段になっている、MX8を購入しようとしているユーザーなら10万円安ければユーザーの判断は大きく揺らぐはずである。

しかしユーザーの心理からすると、安いからどこか手を抜いていているのだろうと考えるのが常識だろうが、この銃に関してはそのような懸念は必要ない、銃のクオリテーはASEと遜色がないのである、せめて引き金が固定式だとか言うのであればASEとの比較が出来るのだが、ほとんど違はない、あきれたことに銃床の質までASEと同じクラスの銃床を使っている。

先台
先台

これでは単にASEの名前を変えてプライスダウンして販売しているのと同じである。
私はペラッチが良いか、ベレッタが良いかは断言できないが、ASEを買うお金があったらDT-10を買うようにお勧めすることだけは自信をもって断言できる、なぜならベレッタが明らかにペラッチ潰しとして放った銃であるからである。
当社では相応の数のDT-10を注文しているが、間違いなく品薄状態に突入するはずである、当社ではDT-10ならいくらでも引き取るがASEは一丁も注文していないのが現状である。
DT-10が¥595000なら、ASEゴールドは¥695000くらいが妥当な値段ではないだろうか、つまりMX8と同じ値段と言う事である。

受注輸入と言うことが条件ですが、
セール期間中, ASEゴールドを¥695000で販売します。

この値段、多分、世界中で一番安い値段だと思います。
アメリカでの小売値段は$12,000です、¥110で換算して132万円と言う値段です。しかしながらこの値段ですのでASEゴールドの在庫はしません、受注輸入なので注文を貰ってから納品までは3ヶ月程度かかるのでご承知おき下さい。

DT-10はペラッチ潰しと言う戦略があるためだろうか、交換チョーク式のトラップ銃、スキート銃がある、皆さんは え? と言われると思うトラップやスキートで交換チョークを使う必然性など何処にもないと思われると思う、私自身もその必然性は感じないが、あえて言うならトラップの場合は、ダブルトラップに使う場合、初矢のチョークは交換できる方が良いかもしれない、スキートの場合、私はスキート射撃はやらないので全くその必然性を感じないがフルチョークに交換して練習でもするのかなと? と推測するがその利点は定かではない。
交換チョーク式の銃は5万円アップである、DT-10にはアジャスタブル銃床のモデルもあるが、これも5万円アップの値段である、初心者の場合ならともかく、ある程度射撃の経験がある人は、それほど頻繁にベンドをいじくることはないと思うので本当にアジャスタブル銃床が必要かどうかは疑問である。
ASEゴールドと比べてほとんど同じだと書いたが、あえて違いを見つけるなら機関部が窒化仕上げをしていないところであろう、窒化処理をすると機関部の表面が堅くなるが、堅くなったからと言って寿命が延びるわけではない、勿論傷に強いというのは屁理屈でしかない、窒化処理をしなくても使用している材料はクロームモリブデン鋼なので表面が柔らかいわけではない。

ベレッタの引き金の外し方を説明しておこう、これはASEもDT-10も共通の方法である。

レバー位置
レバー位置
引き金を外す
引き金を外す

引き金は安全装置と連携しているのでまずここの機構について説明しておこう、安全装置は安全がかかった状態だと"S"の文字が視認できる、レバーを前にやるとSの字が隠れる、さらにレバーを前進させるとレバーの後ろに金色の点が視認できる。この状態でトップレバーをひねると引き金を取り外す事が出来る。

先台
トップレバー

実はこの引き金、ASEとは大きく異なる、この引き金には振り子が組み込まれていない、ミロク、SKB、ペラッチ、ベレッタ、ASEゴールド、いずれの銃も引き金の中に振り子が組み込まれており、初矢を撃った反動で振り子が動き、二の矢がセットされる、つまり初矢が出ない限り二の矢は出ないのである、これは同発防止のための装置である、しかし初矢が不発の場合、二の矢も撃てないことになる。
これと違いブローニングなどは、振り子を使っていないので初矢が不発でも二の矢を撃つことが出来る、いずれの機構も決定的な長所短所ではない。勿論どちらが有利とも断定することは出来ない。

予備部品
予備部品
ガンケース
ガンケース

DT-10には交換用の照星二個と、撃針セット、交換用のトリッガーシエアーが付属で付いている。勿論ガンケースが付属なのは言うまでもない。

ウエザビー マークV ウルトラライト

2000年11月11日 築地

上記の文字はマークV(ヴイではなくて、ファイブ)です、アラビア文字の5と言う意味ですからお間違いの無いようにお願いします。
マーク*と言う言い方は、改良型*号と言う意味ですから、当然最初にはマーク1があったはずですが、ほとんどの人が1,2,3,4,は知らないはずです、ほとんど社内的な改造のレベルでほとんど市販された銃はありません、従って最初に市販された銃はマーク5だったのです、それからオイル仕上げ銃床のユーロマーク、とかレーザー光線で彫刻をしたレーザーマークとか、銃身をフルート加工したアキュアマークとか、銃身の太いバーミンターとか、マーク5を更新できるモデルが色々リリースされましたが、名称が相変わらずマーク5ままなのは語呂が良いからなのでしょう。車で言えばトヨタのマーク2と同じ感覚なのでしょう。

全体図
全体図

さて、当社では長い間ウエザビーは取り扱って来なかったのですが、一昨年、計量のウルトラライトがリリースされてから取り扱うようになりました、それは私の目から見てなかなか出来の良い銃であったからです。
なによりも軽量なのが最大のポイントです、元々ウエザビーは細い銃身をしているので重量としては軽かったのですが、機関部が重すぎました。ボルトラグの外径がボルトボデーの外径と同じ寸法のため、ボルトの重量が思いの外あったため軽量化に限界があったためです。ボルトボデーの外径を細くしないと軽量化は限界があるのです。しかし308や、30-06口径のウルトラライトがリリースされて、マグナム口径みたいにボルトを太くする必要性が無くなり、機関部自体も細くすることが出来て2.6キロと言う非常に軽量のボルトアクションライフルが作れる事になったのです。

重量
重量

ウエザビーライフルの取り扱いを躊躇していたもう一つの理由、それが銃床の折れです。
強烈なウエザビーのマグナム口径を撃つのに、銃床のグリップは数あるマグナムライフルの中で一番細いのです。その為グリップの中にはアルミの角棒を挿入して補強していますが、それでも折れると言うことは避けられないトラブルでした。
ウエザビーの工場ではクレームで返品された、グリップの折れた銃床がゴロゴロしています、アメリカ国内ならスピーデーな対応が可能でしょうが、日本からこうしてクレーム処理をするのには、いちいち通産省の輸入許可を取得しなければならないし、相手もアメリカ国務省の輸出許可を得なければなりません、これではスピーデーなサポートが出来ないので取り扱いを躊躇せざるを得なかったのです。

銃床テンション部
銃床テンション部

しかし、軽量のウルトラライトのリリースにより取り扱いをしてみる事にしました、それは先ず銃が軽いこと、こんな軽い銃は外のメーカーではありません、それに銃床がシンセテック銃床になったことで銃床折れの心配が無くなったからです、しかもそのシンセテック銃床にはアルミのフレームが鋳込んであります、これなら銃床折れは発生しせず、安心して売ることが出来ます。
また品質が昔より良くなったことも取り扱いを開始した理由の一つです。

銃床アルミフレーム
銃床アルミフレーム

1960年代、ウエザビーはドイツのサワー社で作らせていました。このころのウエザビーは非常に良い品質の銃でした。ウエザビーの社長、ロイ、ウエザビーと設計者のフレッド、ジニー氏はドイツの帰りに日本に立ち寄り、豊和工業を訪問しマークVの図面を見せて見積もりを取らせました、その当時の為替は¥360です、工員の平均給料が¥5000程度の頃でしたから、豊和工業はJ。P。サワーの半値で作ると言うことになり、1970から豊和工業で生産を開始する事になったのです。
しかし、それには相応のコストダウン製造方法が加味されていたのです、当時サワーで製造されていたウエザビーのトリッガーガードはスチール製の物でした、フライス加工の手間を十分にかけて非常に手の込んだ作り方をしていました、それが豊和工業で作るとアルミのダイキャストに変わったのです。それまでのウエザビーは最高級の銃と言うことを売り物にしていたのでトリッガーガードがダイキャストではいささかイメージダウンを避けられないでしょう。
実を言うと最も今回リポートしたウルトラライトもトリッガーガードはダイキャスト製です、これはコストダウンと言う意味もありますが、何よりも軽量を売りにしている銃ですからこれならばお客様にも充分容認される事でしょう。
さて、今のウエザビーはアメリカのサコーと言う会社で作られています、おっと、フィンランドのサコーと勘違いしてはいけません、アメリカのサコーはこの会社とは何の関係もありません、元々軍事産業の会社で、米軍の他用途機関銃M-60E3を作っていた会社です、ソ連崩壊以後軍需産業は仕事が激減し、この会社も民間用の銃を製造せざるを得なくなり、ウエザビーライフルの製造を引き受けることになったのです。
ここの会社は試射場すら持っていないので試射的は豊和製のウエザビーみたいに付いていませんが、命中精度は問題ありません、100メートルで1インチ以内に集弾します。
ウエザビーのカタログでは冷えた銃身から撃った最初の3発だけは1.5インチ以内に当たると書いていますが、実際には20発くらいまでは1インチにまとまります。しかしこんな事を書いて当たらないと困るので私もカタログにはウエザビーのカタログとおり書いていますが、本当はもっと命中精度がよいと考えて良いでしょう。

豊和工業で作られたウエザビーは銃番号の頭にHの文字があります、アメリカのサコーで作られたウエザビーはWBの刻印が打たれていますので簡単に識別出来ます。
それに、何よりも機関部の横にMADE IN U.S.A.と刻印してあるので簡単に見分けらます。
残念ながらこの銃の何処にも、これがサコーで作られたと言うことは一言も書いてありません、サコーは完全に蔭のメーカーとして忍んでいるのでしょう。

USA 刻印
USA 刻印

機関部の構造は昔と同じである、多くの会社が銃の反動を受けるラグの部分をより簡素化して来ているのに対して、ウエザビーはあくまでも頑固な作り方である。
レミントンは銃身と機関部の間にラグを挟み込んでいる構造だし、サコーも機関部に溝を切ってそこにラグを挟み込んである、いずれもコストダウンのためである。
ウエザビーがレミントン、サコーなどより高いのは、こうしたコストダウンをしないで頑固な製造しているからである。

ボルトのロッキングラグは昔から変わらない、マグナム系統のボルトは3個のロッキングラグが3列、合計9個に配置されているが、スタンダード口径のボルトはラグが2個ずつ、3列に配置され合計6個のラグで反動を受けている。

ボルトラグ
ボルトラグ
ラグ
ラグ

ウルトラライトが如何に銃を軽くするために苦心しているかというのは、ボルトの後端の上をほんの僅か削り取っている事からも容易に推測できる、またボルトハンドハンドルの中もくり抜いている、念のために言うが、これには技術的な意味は全くない、単なる軽量化の為である、これで何グラム軽くなったかは解らないが、極力軽く作らねば、と言う製造サイドのニュアンスは十分に伝わってくる、こういう徹底したところが所が私はこの銃を気に入っているのだ。
ウルトラライトの機関部はスチールですが、銃身はステンレスです。そのため錆びません。

軽量化ボルト
軽量化ボルト
ボルト穴
ボルト穴

銃身はフルート加工したあとステンレスの黒染めをされ、その後外側を研磨してまた地肌を再現させています、かなり面倒な行程を踏んでいますが、ボルトと同じように白黒パターンを付けるのはウエザビーの伝統です。勿論白黒をつけるのは見栄えだけの問題で技術的な意味は全くありません。白黒にするのは見栄えだけだが、フルートを加工することにより銃身の重量を軽減することが出来る、この加工だけで150グラム程度は軽くなっているのではないだろうか。

フルート溝
フルート溝

銃身はさらに軽くするため極限まで細くしてある、銃口の先端で14ミリである、普通の銃は細い銃身でも16ミリ程度であるから相当補足まで削り込んである。
この細い銃身の命中精度を確保するため、サコーみたいなフリーフローテングではなく、最初から銃身を銃床で下から押し上げ、極端に言うなら銃床のテンションで少し曲げてあるのである、細い銃身の場合、フリーフローテングにすると逆に銃身が安定しないので強制的に銃床で押さえて曲げてあると言う訳である、その銃床が銃身を押し上げている部分は銃床の先端にあり、銃身の当たる部分が少し盛り上がっているのである。
これがウエザビーの特徴で、ウエザビーライフルはすべて銃床をこのように工作している。

銃身計測
銃身計測

この押さえつける重さも3ポンド半とかで、設計上決められているのである。
ウエザビーは非常にデザインにこだわる会社です、銃身と先台の細い線、それに異常なまで細くしたグリップ、銃床が折れやすいと言うデメリットを押さえても細いグリップに拘ったのはデザインの問題です、もう少しグリップを太くした方が良いのではないですかと、設計者のフレッド、ジニーに言ったところ、"これがアメリカ人好みのデザインなのだ"と逆にたしなめられてしまった、日本人が握っても細いグリップだからアメリカ人が握ればさらに細いはずである、アメリカ人向けの銃は銃床が長くグリップは太いと言っている人に、私が知らない振りをしてウエザビーは何でグリップが細いの? と聞いたら、寒いところで手袋をして使うために細くしてあると言ったが、じゃ、アフリカで使うときはどうするのだと逆に聞きたくなった。
そんな屁理屈ではなくて、アメリカ人の目から見て、ウエザビーはカッコ良い銃なのである、そして多くの日本人もカッコ良い銃であると思っているのでは無いのだろうか?
それは銃身から先台に流れる細い線、細いグリップ、豊かなチークピースの盛り上がり、このスタイルこそがウエザビーの伝統デザインなのであろう。
私はかってこのウエザビー社でエンジニアとして修行をしていた、ある時、社長のロイ、ウエザビーが、世界中に色々なメーカーがある中で何故わざわざ日本からウエザビーに来たのと聞くので、マークVが世界中で一番カッコ良い銃だからです! と言ったら、社長のロイ、ウエザビーも、設計者のフレッド、ジニーも顔をくしゃくしゃにして喜んでいた、今頃天国で2人は何をしているのだろう、まさか天国でハンテングなど罰当たりな事をしている訳もないと思うが!

その他 詳細

マウントネジ
マウントネジ
付属 キー
付属 キー

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうち裏側まで、徹底解説カテゴリに属しているものが含まれています。

前のカテゴリは間違いだらけの銃選びです。

次のカテゴリは誰も書けない! 誰も書かない! 取扱説明書です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。