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リローデングデータの見方

2005年 1月13日 築地

前に2回ほど、コラムで「ハンドローデングのすすめ」を書きました。
これを読まれた方も数多くおいでだと思います。それを読んで実際にハンドロードを始められた方も少なく無い筈です。それは当社のハンドローデング用のマスターリロードキットの販売量を見ても容易に判断が出来ます。
しかしながら、その中でまだ説明できていない事があります。それはリローデングマニアルの読み方です。読み方と言うと語弊がありますので理解の仕方と言った方が適切でしょうね。ハンドロードを始める場合、どの種類の火薬をどのくらい装填するのが適当か、誰でも当たり前に考えられるはずです。
リローデングマニアルにはその事が細かく書いてあります。

幾ら大胆な人でも、あるいは世間で太っ腹と呼ばれる人でも、適当な火薬を適当に装填する人は居ないはずです。何しろ物が火薬ですから取り扱いを誤ると、とんでもない事故に繋がると考えるのは当然の事です。
火薬の取り扱いで一番危険な事、それは火薬の種類を取り違えることです。
例えば、拳銃や散弾銃に使う火薬をライフルに使えば間違いなく異常高圧を起こしてボルトが張り付くか、場合によっては機関部が破砕する事すらあります。
従って火薬の種類を取り違えないことは基本中の基本、リローデングで一番大切な事なのです。ライフル用の火薬でも、速燃性のIMR4198等の火薬を、遅燃性の火薬を使うマグナムライフルに装填すれば、先ず保証付きで異常高圧が発生してボルトはびくとも動かなくなります。
しかしながら、こういう間違いをされる方はほとんどありません、何故ならば火薬の選択間違いで当社に修理に持ち込まれる銃はほとんど無いからです。
これは皆さんがリローデングマニアルをシッカリと読まれている何よりの証でしょう。

所がこのリローデングマニアル、安全第一の為でしょうか、危険領域を示すマキシマムの決め方が結構いい加減なのです。
リローデングマニアルにマキシマムと書いてあってもその数字は決して本当のマキシマムではないのです。
ですから、多くの人がもう少し火薬量を増やさないとちゃんとした命中精度も、ちゃんとした威力も出せないのに、勝手にリローデングマニアルで決めた、仮定のマキシマムをそれが火薬量の限界だと勝手に決め込んでしまうのです。
そして真面目に物事を考える人ほど禁忌過剰にそれを頑なに守り通されるのです。
つまり結果として威力が無くて当たらない弾を沢山作ることになるのです。
私のコラムは、希にはおちゃらける事もありますが、基本的に私のコラムは真実を追究する真面目なコラムですから、間違いは間違いと的確に指摘します。しかし、私の説明よりリローデングマニアルに書かれている情報の方が確かに真実味はあると思いますが、取り敢えず私の言うことは本当です。
私自身も、雑誌あるいはインターネット上での情報で、リローンデングマニアルのマキシマムが低すぎると言う情報は今まで目にした事も聞いた事もありません。
皆さんもこうしたリローデングマニアルの間違いについてこうしたコラムを読まれるのは初めてだと思います。それに他の雑誌ではあまりこうした事は書きませんね。
アメリカは訴訟世界ですから、マニアルに書いてあるデーターが低ければ少なくとも事故は起きないので取り敢えずそれで良しとしているのでしょうが、火薬量が少ないと弾頭に本来のエネルギーも与えられないし、本来の命中精度も発揮出来ないのです。
工場製の装弾の場合は充分すぎる初速が出ているのでそれなりに命中精度も威力もあるのですが、リローデングマニアルとおりに装弾を作れば、工場装弾と比較して威力のない弾が出来上がるのです。ローデングデーターのマキシマムを厳守してリロードされている方の場合、一度工場製の実包と、自分でリローデングした実包の雷管の潰れ具合を比較すると容易に解ります。
私が何を言いたいのかと言いますとリローデングマニアルに書かれているマキシマムロードを越えないと、決してまともな弾は出来ないと言うことです。こういう事を書くとある意味危険な事のように思われるかも知れませんが、私自身は女性で間違いを起こした事は幾たびかありますが、火薬で間違った事は一度もありませんので安心して読んでください。
では具体的に説明を進めて見ましょう。

こういうテストに、さすがに人の銃は使えないし、人の実験させる訳にもいかないので、私の使っているサコー75、7ミリ、レミントンマグナムを使い、自らの体でテストしてみました。だからといって別に危険な実験と言う訳ではありませんよ。(ドキッパリ)
実験に使ったのはバーンズトリプルショック弾頭、7ミリ口径、140gr弾頭です。
ちなみにトリプルショック弾頭は新製品ですので、まだバーンズ弾頭のリローデングマニアルには記載されていませんが、ローデングデーターはXBT弾頭とほぼ同じだと考えてください。
先ず、バーンズのリローデングマニアルをご覧ください。

リローデングマニアル
リローデングマニアル

弾頭140grのページ、火薬はIMR4350の場合、XBT弾頭(トリプルショック弾頭も同じ)ではマキシマムロードは59グレインですね。
ではそのマキシマムで装填した薬莢をご覧ください。

バーンズ
バーンズ
59gr
59gr

火薬の圧力を判断する場合、雷管の潰れ具合で見るのが一番的確です。
画像を見て貰うと雷管の角にまだ丸みがありますね、つまり雷管を装填した時と同じ様な状態で雷管はほとんど変形していませんね。
火薬の圧力が高くなると、雷管は薬莢の中の火薬ガスでボルトヘッドに押しつけられ、ボルトヘッドの形状とおりに平たく変形するのです。
その変形が無いと言う事は火薬ガスがまだまだ低いと言うことを物語っています。
これがデーターブックのマキシマムなのです。
言うまでもありませんが、本当のマキシマムはもっとこれよりも上なのです。

ご注意
シェラなどの他のデーターブックの場合、マキシマムはもっと高いのですが、それは使う弾頭が芯に鉛を使って外側を銅のジャケットで覆った、いわゆる柔らかいジャッケト弾だからです。つまりこうしたジャケット弾は外側が凹み易いのでライフリングに食い込む抵抗が少ないのです、ですからバーンズ弾頭の時よりも火薬量は多くても良いのです。
それでも、ジャケット弾頭を使うと仮定したばあい、データーブックに書かれたマキシマムはやはり依然低い数字なのです。本当のマキシマムはもっともっと上の数字と言うことにを理解しておいて下さい。

使う弾頭によって火薬の量が変化すると言う事をもう少し詳しく説明してみます。
上の説明に書きましたとおり、ジャケット弾の場合は、弾自体の素材が鉛で銅弾より明らかに柔らかいので、純銅のバーンズ弾頭よりライフリングの食い込む抵抗が少なく、その為に火薬量は多くても良いのです。
ですからリローデングマニアルでは、バーンズとシェラでは同じ140grの弾頭を使う場合でもマキシマムの火薬量は弾頭が柔らかいシエラの方が火薬量は多いのです。
つまり、ジャケット弾の場合、火薬の点火と同時に弾頭がライフリングに食い込んでスムーズに前進するので火薬量は多くても弾頭の前進に合わせて徐々に火薬が燃焼して行くので火薬の圧力が異常に高くならないのです。
つまり弾頭が前進した分だけ火薬が燃焼していくと考えてください。
バーンズのリローデングマニアルをご覧頂くと解りますが、同じ7ミリ口径の140グレインの弾頭で、上に書いてあるXBTのマキシマムは59グレイン、下の方に書いてあるXLC弾頭の場合、マキシマムは66.5グレインです。
同じ純銅弾同士ですから何か変ですよね。弾頭の芯は間違いなく同じ純銅の弾なのです。但し、XLC弾頭は外側にテフロン、コーテング塗装をしてあります。
こうしたほんの僅かな事でマキシマムが容易に変化するのです。
テフロンは一種の潤滑剤です。テフロンは弾頭の滑りを良くしますから、ライフリングの食い込みも「スルッ」と入るのです。
比喩が適切でないと多くの女性からひんしゅくを書くことを承知で書きますが、ある種の行為の時にある種のゼリーなどを利用するとある種の挿入が楽になりますが、原理的にはそれと同じ理屈なのです、つまり「スルッ」と入るのです。
つまりテフロン、コーテングは弾頭の潤滑剤であり、ある種の行為をするときのゼリーと同じ役目を果たしているのです。
こういう比喩を多様して書くと、コラムの読者のおじさん達には極めて理解が早いのです。
すでに「成る程成る程」と大きくうなずいているおじさん達も多数居ます。(いません!)
私は決して自らの好みでこういう比喩を引用している訳ではありません。
本来は高尚な文章書きを心がけている私ですが、コラムの読者層に合わせて致し方なくこうした通俗的な書き方をしているのです。

さて自ら潤滑剤とも言うべきゼリーもどきを塗っているXLC弾頭君は何の躊躇もなくライフリングに挿入出来たため、XLC弾頭君は火薬の圧力に応じて、銃控内をどんどん前進し、その分火薬の燃焼がそれに応じて行き充分なエアースペースが確保出来ます。
従ってXLC弾頭を使った場合は火薬の装填量が多くても火薬は異常高圧にはならないのです。しかし火薬量が多い分、銃控内全体の圧力は相対的に高いのでその分初速が早くなるのです。
逆に火薬に点火しても潤滑剤を体に添付していないXBT(トリプルショック)弾頭君の場合、火薬の圧力がかかって後ろからグイグイ押されても、まだその時点でライフリングに挿入しようかどうか大いに躊躇しているのです。勿論、火薬の燃焼は万分の1秒と言うような瞬間の世界なので、弾頭の躊躇は人間世界の物差しでは測れない時間なのです。
出来ることなら挿入しないで済ませたいと思っているかも知れません、その様に大いに迷ってると言うことも出来ます。しかし火薬ガスの上昇に伴い、致し方なく挿入と言う行為に走るのです。言うまでもありませんが、XBT(トリプルショック)弾頭君の様に自らのボデーに潤滑剤が無い場合、ライフリングに挿入するときにかなり抵抗があるのです、有る意味でライフリングの挿入は「無理矢理挿入」と言う言い方も出来無くはありません。
無理矢理という行為ですからライフリングと弾頭の間に合意はありません、従ってスムーズな挿入というか、スムーズな前進と言うか、何らかの形で弾頭君の挿入行為が妨げられるのです。
そうこうする内に火薬の圧力は限界まで達してしまうのです。
これが理由でXBT(トリプルショック)弾頭君の場合は火薬量が多く装填できないのです。
潤滑剤の無いXBT弾頭には多くの火薬を装填できない、これが最大の理由なのです。
無理矢理と言う行為の後なのでライフリングは心に傷を負ってもいます(いません!)
火薬ガスが「オラオラ」と言って弾頭の後ろから暴力的にガンガン押している場面が想像できますね。XBT弾頭君は決して無理矢理挿入したくはなかった筈です。
出来るならば合意の上で、そういう想いが有った筈です。ひょっとしたら火薬にそそのかされてと言う無念の想いが有ったかも知れません。
この様に無理矢理とか、強引にとか、そういう行為は決して良くないのです。
あくまでも優しく、相手が挿入を許してくれるまで自然に待つ心のゆとりが欲しいのです、本能の赴くまま暴力的な挿入はするべきでは有りません、「あくまでも自然に」と言う行為を心がけたいとXBT(トリプルショック)弾頭君は思っているかも知れません。
すでに涙を流して、大きくうなずいているオトーサン達も居ます(いません!)
XBT(トリプルショック)弾頭君の前進がスムーズでないと弾頭が前進して充分なエアースペースが確保されないので簡単に火薬の圧力が危険領域まで上昇してしまい、多くの火薬が装填できないのです、結果的には初速が上がらないと言うことになるのです。
この様に同じ弾頭でも弾頭にテフロン、コーテングしてあるかどうかで火薬の燃焼特性も火薬の装填量も大きく変化するのです。

XLC弾頭
XLC弾頭

画像の左側はトリプルショック弾頭、右側は同じ銅弾ですが外側をテフロン、コーテングしているXLC弾頭です。
弾頭の中には、テフロンでは無く、二硫化モリブデンの粉末をまぶした黒いモリコート弾頭もありますが、モリコートも潤滑剤の一種、つまり、これも火薬の圧力を高くしない、あるいは初速を上げる為の物なのです。

話しはまたトリプルショック弾頭の事に戻りますが、トリプルショック弾頭のマキシマムロードは59grでしたが、火薬量をもう少し増やして、62grにしてみましょう。
これが火薬量62gr装填した装弾の薬莢です。

雷管は前よりも潰れていますね、でもまだまだマキシマムではありません。
この位の火薬圧力だと命中精度も充分出ていますし、弾頭の威力も充分です。
一応、この辺りが排莢もスムーズで一番使い勝手の良い装弾です。
グルーピングを確認してそこそこの命中精度ならこの辺りの所でOKとすべきでしょうね。

62gr
62gr

これは実験ですから火薬量をもう少し上げて行きましょう。
これが72gr装填した薬莢です。

雷管はかなり平たく潰れていますね、撃針の打痕跡の回りが盛り上がっていますね。
この盛り上がりは、ボルトの撃針と撃針穴の僅かな隙間に雷管が押し出されたために出来た盛り上がります、こうなると火薬圧力は高すぎ、排莢が困難になります。

72gr
72gr

火薬量をさらに増やして行きます。
これが74gr装填した薬莢です

雷管が完全に抜けましたね、これが文字通りの本当のマキシマムなのです。
この様に、実験の結果で比べると、データーブックで言うマキシマムとは13グレインの開きがありましたね。

これでローデングデーターのマキシマムは決して実態を表している事でないことがお解りいただけましたでしょうかね。

74gr
74gr

バーンズ弾頭は元々、近距離でマグナム装弾を使うために開発された弾頭です。
近距離で初速の早いマグナム装弾の弾頭を使うと、柔らかい弾頭だと初速が早すぎて獲物の体内で弾頭が破砕してバラバラになり、威力が激減するのを防ぐために作られた弾頭です、決して遠距離で命中精度を競うための弾頭ではありません。
マグナム装弾の弾頭は初速が早すぎるため、近距離で撃つと弾頭が獲物の体内でバラバラに崩壊します、丁度平手で叩いたのと同じ事です、平手よりも拳骨の方が痛いですよね、それはその方がエネルギーが集中するからです。そういう目的で最初の銅弾は作られたのです。
しかし、遠距離で撃つ場合はマグナム装弾の弾頭は丁度良い具合に弾頭が潰れます。

バーンズ弾頭はそうした目的で開発された弾頭で、決して日本の北海道の為に作られた弾頭ではありません。しかし、環境のために鉛弾を使わないと言うのは今や世界的な趨勢に成りつつあります。その為に銅弾であっても遠距離での命中精度も求められるように成りました。
最初は純銅のXBTと言う弾頭だけだったのですが、外側をテフロン、コーテングしたXLC弾頭が出来て、弾頭の初速を上げることで命中精度を向上させることになりました。
その後、弾頭の3本の溝を付けた新製品のトリプルショック弾頭が作られて、さらに命中精度が向上しました。
この弾頭の場合、100mで2cm以内、300mで5cm以内のグルーピングは可能です、もしどうしても命中精度が出ない場合は弾頭ではなくて別の要因だと考えた方が良いでしょう。

マッシュルーム弾頭
マッシュルーム弾頭

XBT弾頭は、弾の回りが全部ライフリングが食い込みます、その為ライフリングに食い込む抵抗が大きいのですが、トリプルショック弾頭の場合、ライフリングが食い込む部分、つまりドライビングバンドの面積がXBTより少ないのです、その為にライフルイングに食い込む抵抗がXBTよりも少なく、そのバランスの微妙な加減が思わないところで高い命中精度を出せる事になりました。また溝を設ける事により銃腔内の銅の付着、つまりカパーファウリングを減少させた事も命中精度を高めた要因だと私は考えています。
画像をご覧頂くと解りますが、弾頭はマッシュルームの状態で弾頭自体は全然崩壊を起こしていません、この状態で獲物の体内を貫通すると細胞に今までの弾頭には無い非常に大きな破壊を与えます。
ちゃんとした所に命中すれば大きな獲物でも一発で即死する事は間違いありません。

さて、改めてバーンズ弾頭の説明を付け加えますと、純銅で作られたXBT弾頭は弾頭自体に潤滑性はありませんから、同じ口径なら出来るだけ軽い弾頭を使うことにより初速を上げ、結果的に命中精度と破壊力を高めて使うには適した弾頭です。
30口径のマグナム装弾でも130grの様な超軽量の弾頭も多く使われています。
値段は1箱50発入りで¥4,200です。

XLC弾頭は弾頭自体に潤滑性があるので火薬量を増やして初速を上げて使うにの適した弾頭です、テフロン、コーテングしてある分値段も高く、1箱50発入りで¥4,700です。

私の一押しは、新製品のトリプルショック弾頭です、命中精度と獲物の破砕力は充分で一番使いやすい弾頭だと思います、ローデングデーターはXBT弾頭と同じと考えて下さい。
値段は1箱50発入りで、¥4,200です。

バーンズ、バーガー、シェラ、ノスラー、ホナデイ、等々いずれの弾頭を使う時でも、マキシマムロードは必ず雷管の潰れ具合で確認して下さい。
本当に本当のマキシマムロードは、リローデングデーターでは分かりません。
いずれにしても、本当のマキシマムロードは、リローデング データーに書かれているマキシマムロードより、数グレイン上であることは間違い有りません(キッパリ))
でも、ここまで「キッパリ」言い切って、後でトラブルを持ち込まれてもかなわないので、このコラムの最後は以下のフレーズで締めくくりたいと思います。

このコラムに書かれていることは全部真実です・・・・・・・・・なーんちゃって!

ハンドローディングの全て

2003年 7月 7日 築地
更新 2003年 7月 8日 築地

ライフル銃の性能を100%引き出すためには、装弾の性能が良くなければなりません。工場装弾の中にも、ラプアやフェデラルと言うような比較的命中精度の良い弾がありますが、これとてハンドロードの装弾の命中精度を超えるという事はありません。
何故ちゃんとした工場で作って、命中精度の良い装弾が出来ないのでしょう?
それは、全ての銃に最適な装弾というのは事実上作れないのです。
最適な装弾、それはその銃に合わせた特製の装弾でしか性能を発揮できないのです。
ライフル銃の銃身は、内径の公差±5/100ミリで作られます。
そもそも機械工作と言うのは必ず公差がつきものです、30口径、つまり7.62㍉を正確に加工しようとしても、必ず大きめに出来たり、逆に小さめに出来たりもします。
その公差が大きくてもプラス百分の5ミリ、小さくても百分の5ミリと言うわけです。
ですから同じメーカーの銃で、同じ銃身であっても厳密にはみんな微妙に内径が違うと言うことです。ですから同じ装弾を使っても内径の小さい銃身で撃てば、弾頭がライフリングに食い込む抵抗が大きくて火薬の圧力が高くなります。逆に内径の大きい銃身の場合、弾頭のライフリングに食い込む抵抗が少ないので火薬の圧力はあまり上がりません。
それぞれの銃身を初速で考えると、100フィート程度の違いでしかないでしょうが、命中精度には少なからず影響を与えます。日本で一番多く売られている装弾はレミントン、そしてウインチェスターでしょう。
これらの装弾は弾の威力、つまりエネルギーを重要視して作られているため、初速は早いのですが命中精度の視点から考えると少し問題があります。命中精度を重要視して考えると、少し初速が早すぎる感じがします。

世の中には装弾メーカーと弾頭メーカーがあることに着眼下さい。
レミントンや、ウインチェスターでは、弾頭メーカーの弾頭は使いません、全部自社製造です。弾頭メーカーは装弾は作りません。
しかし、レミントンやウインチェスターでは、薬莢も弾頭も火薬も雷管も販売しています。
普通に考えれば、大手メーカーが全部供給している訳ですから、弾頭メーカーは存在出来ないように思われるかも知れません、しかしアメリカには幾つもの大きな弾頭メーカーがあります。また究極の命中精度を競うベンチレスト射撃では、ほとんど家内工業の手作り弾頭が常に上位を占めています。
世間で命中精度が良くないと言われているバーンズ弾頭ですが、308ウインチェスターの場合、110グレインの弾頭を使い、4895の火薬を48グレインチャージすると、様変わりの命中精度が出ます、当然初速は3000フィートを軽く超えます。
この弾頭300ウインチェスターマグナムや、300ウエザビーマグナムに使っても効果があります。
しかしながら、困ったことにこの弾頭は今年から製造中止になりました、あまり買う人が居なかった為かも知れません。しかしマグナム口径なら130グレイン装弾でも命中精度は相応に出ますので試してみて下さい。
この様に理想的な装弾を作るには、自らリロードするしか方法がないのです。

ハンドロードの利点はそれだけではありません、むしろこれが最大の利点とも言えますが弾の値段が非常に安く出来るのです。
308ウインチェスターなら1発¥80程度、マグナム装弾なら1発¥100程度です。
装弾の値段が安いと言うことは、それだけ充分な練習が出来ると言うことになります。
射撃は弾数を撃たないと上手くなりません、それには弾代が安いことが絶対条件です。

さて、前書きが長くなりましたが、徹底的に説明するハンドロードなのでこうしたくどい説明があるのです。
くどくど書いているので読む方は大変でしょうが、書く方はなお大変です。
電話でもハンドロードの質問を受けることが多々ありますが、常識的な質問が少なくありません、そうした基本的な、そして常識的とも言える事に対して、わざわざ電話で聞かなくても解るように、出来るだけ子細に説明を試みようとして書いたのがこの記事なのです。

当社では、これ一式でいきなりハンドロードが始められると言う、ハンドロードのセットを販売しています。それはRCBSマスターリロードキット(¥59,000)とリーアニバーサリーリローデングキット(¥19,000)です。
値段が相当違うので、安い方はちゃんとリロード出来るのかと言う問い合わせがありますが、間違いなくちゃんとリロード出来ます。値段の違いはそれぞれのパーツの作り方の問題です、RCBSのプレスはスチール製ですが、リーの製品はアルミダイキャストです、また多くの部品がプラスチック製です。実用上ほとんど問題はないのですがプラスチック製の場合、火薬の定量を装填するパウダーメジャー等は、静電気を持った火薬がプレスチックの部分に付着して、指で弾いて火薬を振り落としたりする事もあります。
プレスはここまで強固にある必要は無いじゃないか! と言う思想で作られたのがアニバーサリーキットだと考えてください。しかし一生もんだからと言う考えならためらわず最高のRCBSを選択した方が良いでしょう。財布の問題と言うよりはハンドロードに対するスタンスの問題でしょうね、どちらを選ぶかは!

いずれのセットも薬莢を成型するダイスは付属ではありませんので別途にお買い求め下さい。このダイスは色々なメーカーで作られていますが、プレスに取り付けるネジ部分は全て共通です。
当社では以前はRCBSをメインに販売していたのですが、最近はレーデングをメインに販売しています、それはレーデングの方が材質が硬く、型持ちが良いからです。
シェルホルダーもレーデングの方が持ちが良いのですが、値段の問題で現在もRCBSを販売しています。

今回の記事はRCBSのセットをベースに話を進めますが、先ずはダイスの説明です。ダイスとセットで必要になるのがシェルホルダーです。
薬莢を保持する部分ですね、これは¥1,200です。

これは必ず必要な物ですからダイスを購入するときは忘れずに購入して下さいね。
シエルホルダーは色々な場面に使われます、プレスには当然使われますが、プライミングツールにも全て使われますので複数必要となります。

シェルホルダー
シェルホルダー

ダイスセットは通常2本のダイスがセットになっています。価格はスタンダード口径の物は¥5,000です。セットの内訳はフルレングスダイスと、シーターダイスです。
フルレングスダイスの役目は、薬莢の成形をすることと、雷管を抜くことです。
従って雷管を抜くためのデキャッピングピンが付いているのがフルレングスです。

ダイッスセット
ダイッスセット

フルレングスダイスからデキャッピングピンを取り外して見ましょう。
先端の白い金属の部分がエキスパンダーと呼ばれる部品です、この部品は薬莢のネックの内側を広げる目的があります。

デキャッピングピン
デキャッピングピン

この部分で薬莢を広げますので、ここに油を付けてないと薬莢を成形するたびに"ギギー"と擬音がする事になります。油を付けると言ってもわざわざコレを取り外して付けるのではなく、薬莢のネックの内側に少しだけ油を付ければ良いのです。
私は薬莢のネックの内側に少し付けますが、ブラシで付けても構いません。
しかし油を塗ると火薬を入れたときに火薬がここに付着します、付着しても弾頭を入れるときにちゃんと装填されますので問題はありません。
油の替わりに雲母の粉で出来た乾燥潤滑剤を付ける場合もあります。

乾燥潤滑剤
乾燥潤滑剤

次にエキスパンダーを取り外してみましょう。
デキャッピングピンが差し込まれていますが、コレを止めているのがエキスパンダーなのです、ですからデキャッピングピンが折れたりして取り替えるときはエキスパンダーを外して取り替えるのです。
このエキスパンダーの部分に超硬を使った物も販売されていますが、使用感はあまり違いはありません。別にこの部分は真鍮のネックを広げるだけなので別に超硬を使わなくても摩耗は発生しません。
デキャッピングピンをねじ込んでいくと、いくらか偏芯して入っていきますが、この偏芯は気にしなくて構いません。
エキスパンダーが薬莢のネックに入ると、強制的に薬莢のセンターに修正され、そのままプライマーホールに導入され雷管を抜きます、雷管が抜けないくらい偏芯していれば問題ですが、雷管が抜ければ何の問題もありません。

ピン
ピン

さて、このデキャッピングピンのアジャスト方法ですが、プレスにダイスをつけて成型します、デキャッピングピンがちゃんとした長さにセットされていないと、雷管は抜けません、デキャッピングピンを少しずつ奥に締め込んで行き、雷管が抜けたところでセットします。長すぎたからと言って特に問題は無いのですが、デキャッピングピンのピン折れの原因になります。
フルレングスダイスの取り付け。
プレスにフルレングスダイスを取り付けます。 このときにシェルホルダーとダイスの下端が隙間無く接触している状態が正常な状態です。

正常なセッテング状態
正常なセッテング状態

時折ネックサイザーの注文を受けます、ネックサイザーとはボデーは成型せずにネックの部分だけを成型するダイスです。しかしながらアメリカではほとんどネックサイザーの需要がないと見えて値段はこの2個のダイスセットよりも1本のネックサイザーダイスの方が高いのです。
何故誰も買わないのかと言いますと、フルレングスダイスのセッテングを少し変えるだけで簡単にネックサイザーになるからです。
先ず薬莢の形状をご覧下さい、如何なる薬莢も全てテーパーが付いています、薬莢を成形するときにダイスの中に薬莢を挿入します、そして少しずつ送り込んでいくと、先ずネックの部分を成形します、最初の挿入ではほとんどネック部分の成形なのです、そして最後の2ミリくらいでボデーの成形をします。ネックの部分はストレートなので先ずはネックの成型をするのです、そして最後の2ミリで薬莢のボデーはテーパーなのでここでやっとボデーの成型をするのですね。
では最後の2ミリを送り込まないとどういう事になるのでしょう。
"そうです、ネックだけを成形してボデーは成形しないわけですから、これはネックサイザーダイと同じ事なのです、お客様からネックサイザーの注文が有る度に、"私が何度もネックサイザーは要らないですよ、ネックサイジングはフルレングスダイスで出来ますと説明しても、依然ネックサイザーを買う人が後を絶ちません、そのため現在はネックサイザーダイスも置いていますが、これは全く無駄な買い物です!
画像をご覧下さい、こうしてダイスとシエルホルダーの間に2ミリの隙間を作ると、たったこれだけでフルレングスダイスはネックサイザーダイスに変身したのです。

ネックサイジングのセッテング
ネックサイジングのセッテング

薬莢をフルレングスダイスで成型する場合、必ず薬莢に油を付けなければなりません、通常はルーブリカントオイルと言う油をスポンジのパッドの上に染みこません、その上で薬莢を転がしながらボデー全体に塗りつけます。
これが一般的な方法ですが、油を付けすぎると油の逃げ口が無くなり、ショルダーの所が内側に凹む事があります。薬莢はこの常態で凹んだまま使用しても何の問題もありませんがその時は薬莢に塗る油は少し少なめにした方が良いでしょう。
ベンチレストシューターのほとんどは、ルーブリカントオイルではなく、リサイジングワックス(¥800)と言う製品を使っています。

リサイジングワックス
リサイジングワックス

これはルーブリカントオイルみたいにベタベタしません、それに使う量はごくわずかなので拭き取りも簡単です。使い方は指に塗ったワックスを薬莢に塗ります、パッドなどの上で転がしたりはしません、チョットだけ薬莢の上部に塗るだけです、上部にぬればダイスの中でワックスは下に伸びていくので結果的に薬莢全体に回るのです。
私もコレを使っていますが、出来れば皆さんにもお勧めしたい逸品です。

次に雷管の装着について説明します。
雷管の装着には色々な方法があります、RCBSのプレスには雷管を装着するパーツが付いていますのでそれを使うのも一つの方法です。これの利点はハンドプライミングツールを買わなくても言い替わりに、"ガクッ"と入ることや、スピーデーさに欠ける点にあります。
もう一つはリーのオートプライムを使う方法です、これはプレスの上にリーのオートプライムを取り付けて使う方法です、これの利点は微妙な力加減で薬莢がおかしく装填されたときには気が付くという点、欠点としては雷管の流れをスムーズにするため、時折トレイを指で弾いたりする事があります。

リーオートプライムもそうですが、RCBSのハンドプライミングルールのトレイも、同心円の○が幾つもあります。コレは何のためにあるかと言いますと、トレイの上に雷管を置いて左右にスイングさせると、薬莢は全て上向きにセットされます、これは円の端で雷管の端を引っかけて上向きにひっくり返すからです。
数分スイングさせると雷管は全て上向きになります。

リーオートプライム
リーオートプライム

あとはLPSを使った装着方法です。
これはあらかじめスリップに装着した雷管を利用して雷管を装填します、力のかかり具合も微妙に分かりますし、シエルホルダーがアジャスタブルのため、薬莢ごとに交換する手間がかからないことがありますが、スリップに装着する分二度手間になります。

LPSプライミングツール
LPSプライミングツール

しかし、最初からスリップ装着の雷管も販売されていますのでそれを使えば簡単ですがね。
一番多く出回っているのはハンドプライミングツールでしょう、これは手で持って使う分使い勝手が良く、雷管の流れも簡単に調整できます。

RCBSハンドプライミングツール
RCBSハンドプライミングツール

次に火薬の装填ですが、これにはパウダーメジャーを使います。
私個人はレーデングのパウダーメジャー(¥25,000)を使っています。
調整のダイヤルに目盛りが付いているので、微妙な調整が可能です。

レーデングパウダーメジャー
レーデングパウダーメジャー

パウダーメジャーの下に長い透明のチューブが付いています、これは同じ量の火薬を装填した時、ネックからこぼれる様なときでもちゃんと圧入されるのです。
「え、ネックからこぼれる位装填する?」そうです、ちゃんとした命中精度を出すためにはそうした装填も必要なのですが、それは後で説明します。

タンブリングチューブ
タンブリングチューブ

パウダーメジャーでセッテングした火薬が何グレインか調べるためには、デジタルスケールを使います、勿論付属のリローデングセットにも天秤のスケールが付いていますのでそれを使っても構いません。しかしながら海外に遠征に行ったときはこうした電気製品は使えませんのでその時はパウダースケールの目盛りを目安にします。

デジタルスケール
デジタルスケール

アメリカの大会に行くと、射手同士が火薬を何グレインと言う替わりに、目盛りでいくつと言う言い方をしていますので、それに慣れれば結構重宝です。
パウダーメジャーとセットで使われるのがパウダートリックラーです。

パウダートリックラー
パウダートリックラー

これはトリックラーのダイヤルをクルクル回すと、火薬が数粒ずつ送られて0.1グレインの計量が可能なツールです。お客様から注文がある度に、パウダートリックラーは必要ないですよと説明していたのですが、あまりに注文する人が多いので現在は在庫で置いて販売していますが、はっきり言って必要のない道具です。
確かに0.1グレインずつ計量できるのですが、ハンドローデングの場合0.5グレインの誤差は全く着弾に影響しません。
念のために今年開催されたベンチレスト射撃、カクタスシュートのローデングの現場写真をお見せします。

カクタスのローディング現場
カクタスのローディング現場

ベンチレスト射撃は究極の命中精度を競う大会ですから、みんな最先端の技術を持って大会に参加しています、画像を見て貰うとお解りいただけますが、誰もデジタルスケールやパウダートリックラーを使っていないのがお解りいただけるでしょうか、全員がパウダーメジャーだけです。これで私の言うことがご理解頂けたでしょうか。
お客様からの注文があれば、黙ってトリックラーを売れば良さそうなものですが、「お客に不必要な物は売らない」と言うのが私のポリシーですから致し方ありません。
こうしてわざわざ説明して注文が来ないように努力しているのです。

さて、弾頭のシーテングですが、シーテングダイスを取り付け、弾頭を手で押さえながらゆっくり弾頭を押し上げていきます。
弾頭が薬莢に挿入されるときには、ほんのわずかな抵抗が在りますのでそれを「感じて」下さい。何故感じることが必要かといいますと、それを感じないような荒っぽいシーテングをしますと、装弾のショルダーの部分が外側に変形します、見た目では気づかないほどのわずかな変形ですが、コレを自動銃などに使うと、間違いなく薬室で噛みこんで装填するのも排莢するのも出来なくなってしまいます。ご注意下さい。

シーテングダイス
シーテングダイス
装弾の変形
装弾の変形

弾頭をシーテングしたときに、多くの皆さんが気にされるのはその長さです。
ローデングブックに細かい寸法が書いてある物があるので、気にされているのだと思いますが、はっきり言って「この寸法はどうでも良いのです」弾倉に入る長さであればいくつでも構いません、自動銃の場合はちゃんと回転する長さが最適な寸法です。
装弾の全長はデーターブックの寸法に惑わされる必要はありません。
それと同じようなレベルですが、薬莢の寸法を調整するケーストリマーも必要ありません。
私は308ウインチェスターを使う時は一度もケーストリマーを使用したことはありません。
銃器を作っていた立場で言いますと、薬莢の先端と薬室の寸法の部分は2ミリ程度のクリアランスがとられています、従って薬莢が2ミリ伸びても実用上は何の問題もないのです。
少なくとも薬莢が伸びて装填不良になったという事例はほとんど聞いたことがありません。新型のRCBSマスターリロードセットから、このケーストリマーが除外されましたが当然の事と私は思います、しかしながらネックターニングしたり、几帳面な性格の方はケーストリマーを使われるので一応在庫はしてあります。(¥18,000)

弾頭をシーテングしたとき後に、間違った弾頭を付けた、あるいは火薬を間違えた、その他色々な理由で弾頭を抜かなければならないこともあります。
相当数の弾頭を抜かなければならない場合は、ブレットプーラーを使うと良いでしょう。

ブレットプーラーはプレスに取り付けて使います、ブレットプーラーは(¥4,300)弾頭によって内径の違うコレットが必要ですが、コレットは(¥2,800)です。

ブレットプーラー
ブレットプーラー

ブレットプーラーにはハンマー式のキネックブレットプーラもありますが私は推奨しません(¥3.950)何故なら1回では抜けなくて最低2回叩かないと抜けないのと、結構な音がすると言うことです。
あまり大量の弾頭を抜かない場合は、弾頭をペンチで保持して、シェルホルダーで保持した装弾を下に下げると簡単に抜けます。これならブレットプーラーを使わなくても簡単ですからお試し下さい。

弾頭をペンチでつまむ
弾頭をペンチでつまむ
そのまま薬莢を下げる
そのまま薬莢を下げる
抜けた弾頭
抜けた弾頭

次に油を付けないとフルレングスダイスに薬莢が焼き付きます。
無理して薬莢を抜こうとするとリムがかけてしまいます。そうしたケースを抜くのがスタッグケースリムーバーという道具です。
簡単に説明すると、焼き付いた薬莢にドリルで穴を空けて、それにタップを立ててネジの力で取り外そうという訳です。
所がこの部品は¥4,300するのです、それなら最初から新品のダイスを買った方がお買い得です、時折フルレングスダイスだけと言うご注文が有りますが、残念ながらどこの会社もフルレングスダイスだけの販売はしておりません。

さて次にローデングに実際について説明してみましょう。
ローデングブックを開くと、使用する弾頭と火薬、何グレインチャージすると初速がいくつになると書いてあります、またこれ以上入れてはいけないと言うマキシマムロードも書いてあります、しかしながら色々な会社のローデングデーターを比較すると、その数字は微妙に違っています、従って本当のマキシマムは自分で調べるしかないのです。
火薬量を1グレインずつ増量していくと雷管が徐々に潰れてきます、マグナム口径の雷管などマキシマムでなくても平たく潰れています。
スタンダードカートリッジでマグナム装弾並みに雷管が潰れていたら一応それは限界の一歩手前くらいの領域です、それ以上火薬を増量していくと撃針痕の周りにクレーターと呼ばれるバリがセリ出てきます、これはもう限界です、このあたりが事実用のマキシマムロードです、これから薬量を少し減して使用されれば良いでしょう。

先程パウダーメジャーの所で、透明チューブの話をしました、透明チューブを使うと薬莢のネックからあふれる火薬でも、ある程度圧入出来るのでネックぎりぎりで装填できます。
ネックの上ぎりぎりまで火薬が有れば、どう見ても弾頭の底部で火薬を圧入すると言うことになります。火薬を弾頭の底部で圧入すると言うと、たいていの人が「大丈夫ですか?」と怪訝な顔で尋ねられます。
重たい弾頭を撃つときは火薬量が少なくなりますが、軽い弾頭を撃つ場合は多くの火薬を装填します、と書きましたが、これは誤記では在ありません、でも常識で判断するとちょっと意外ですよね、重たい弾頭の場合は火薬を増量し、軽い弾頭の場合は火薬を減量してと言うのが一般的な考えかも知れませんが、軽い弾頭の場合初速が早くなるので火薬の量を増やさないと燃焼が追いつかないのです。そのため308口径の場合、125gr程度の軽い弾頭の場合、火薬量はネック一杯まで来るのです。

スピアーのデーターを参考にしましたが、ローデングデーターをお見せしますのでご覧下さい、薬量の右にCと書いてあるのはコンプレシードロード、つまり火薬を圧入すると言うことなのです。火薬は圧入しても安全なのです、勿論燃焼速度も変化しません。

コンプレシードロード
コンプレシードロード

ターボタンブラーです。(¥19,000)
薬莢を研磨する機械ですが、モーターの振動で薬莢とメデア(トウモロコシの芯を砂状に粉砕した物)をタンブラーの中で擦り合わせ汚れを取り除く装置です。
通常は10時間くらい連続運転するようお奨めしていますが、私自身は24時間かけっぱなしにしています、いくらかけすぎても薬莢の寸法がマイナスする事はありません。
308ウインチェスター薬莢なら1回で200個磨けます。

タンブラー
タンブラー

何故薬莢磨きを推奨するかと言いますと、カーボンの付着した薬莢を使うと、そのカーボンが薬室に付着して薬室が荒くなってしまうからです、ボルトアクションの場合排莢不良になることもあります、スライド式ライフルですと薬莢の張り付きになります。自動銃ですと回転不良の原因にもなります、そうした理由から薬莢を使った後は必ずタンブラーでクリーニングすることを推奨します。

タンブラーでクリーニングした後は、セパレーターと呼ばれる、振るいにかければメデアは簡単に除去できます、メデアを入れるバケツまで付属で付いています。
タンブラーには、メデア、セパレーター、バケツ、そしてメデアに入れるクリーナーまで付いてます。

セパレーター
セパレーター

ハンドロードを始めよう

2001年10月17日 築地
更新 2001年10月19日 築地

最近は軍用実包が大量に日本のマーケットにも流れてきているので、結構安い値段で完成実包が購入できるようになった、最も308ウインチェスターだけに限った話で、他の実包は別に安くなってはいないが、それでも308の場合は、1発¥100位であろうか、ラプアなどの命中精度の良い弾でも、100発まとめれば1発¥150で買えるそうで、なかなか良い時代になってきた。
しかしながら308以外の弾は相変わらず高い、ウエザビー系統の弾は1発¥500近くする、ハンドロードで造れば1/4位の値段で出来ることになり、ハンドロードの経済性は卓越していることになる。

308が¥100で買えたとしても、私自身は308でも全てハンドロードで作っている、それは命中精度の良い弾を作るにはハンドロードが唯一の方法だからである。
軍用の308実包は、できたての弾でも、アメリカではわずか1発¥30で買えるのである、賞味期限の過ぎた古い弾ならわずか1発¥10である、これを日本では¥100~¥150で売っている訳だからこうした経済実体が解ると余りありがたがってもいられない。

軍用弾頭はその特性上、自動小銃、または機関銃に使用される、また全天候で使われるため防水処理が施されている、弾頭と薬莢はピッチの様な溶剤で接着してある、これにより湿気の侵入と、弾頭が機関銃などの振動で弾頭が動かないようにしてある、また弾頭が接着してあるので抜弾抵抗が強くなり初速は通常の物より100フィートくらい加速される、しかしその分抜弾抵抗のばらつきがあるため、命中精度から言うと良い結果は得られない。

はやい話、いくら軍用弾頭が¥100で買えるからと言って、同じ値段ならハンドロードの方が絶対にお勧めである。
308の場合、薬莢は1発¥38である、フルパワーをかけても最低15回は使える、仮に15回で廃棄したとしても1回辺りの原価は、¥38÷15回=2円50銭ということになる、弾頭が¥45,火薬が¥40、雷管が¥13として計算すると、大体¥100見当で収まることになる。
勿論、30-06でも、270でも、概ね同じような値段で出来る、マグナムの場合、薬莢の値段が¥75,火薬は¥100~¥150分くらいは使うだろう。
薬莢の値段は¥75でも、マグナムの使用回数はせいぜい3回である、3回使うとマグナムの薬莢は必ず切れる、もし3回で切れないマグナム弾なら、逆に言うと、全く初速が出ていないことになる、初速が出ないマグナムならばマグナムの意味がない、それなら30-06で充分である。だから3回で薬莢が切れるマグナムは正常なのである、3回以上使えるマグナムが異常なのである。

あまり使う人はいないが、6ミリPPCなどの特殊な弾の場合は、ハンドロード以外で製造する方法はない。

RCBS社から、マスターリロードセットと言うハンドロード機材が¥59000で売られている。これ以外に必要な物は薬莢を成形し、弾頭をセットするダイスセットが必要になる、ダイスセットはほとんどの口径の物が¥4500である。
それに薬莢をくわえるシェルホルダーが必要になる、これは¥800である。
さて、マスターリロードキットを購入すると、これをセットする机が必要になる。
出来れば専用の机にボルトでプレスを止めるのが一番理想的であるが、家庭の事情でそうもいかない場合は、机にCクランプで止めると言う方法もある。
Cクランプは1個¥500~¥1000で買える、これが2個あれば充分しっかり止めることが出来る、自宅以外でハンドロードする場合は、簡単に移動できる便利な方法である、弾を作るのには、必ずしも自宅で作らなくても法律違反ではない、
私のハンドロード機材を見て貰うと解るが、RCBSのロックチャッカーは机に据え付けであるが、これ以外に携帯用のプレス2台を使っている、海外にベンチレスト射撃の遠征試合に行くときは、現地で、そこの気候に合わせたリロードをする必要から携帯用のプレスを持参して、現場でリロードするのが常識なのである。
日本では多くの射撃場がハンドロードを禁止しているので、射撃場ハンドロードする場合は事前に確認しておく方が良いだろう。

工具一式
工具一式

ネックサザーとは、薬莢全体の成型をしないで、ネックの部分だけをリサイズするダイスであるが、ネックサイザーを購入するほとんどの人が、ネックサイズだけでリサイズした方が命中精度が良い、あるいは薬莢の保ちがいいと考えているようであるが、ネックサイズだけでリサイズしていると、薬莢が大きくなり、何時か薬室に入らない時が出てくる恐れがある、それと、フルレングスサイズをかけても308なら20回程度は使えるので特段薬莢の寿命に影響がある訳ではない。さらに説明するならば、どうしてもネックサイズを使いたいと言うのであればフルレンズスダイスを使い、最後の2ミリ位、クリアランスを付けて押し込めば、ネックの部分は成型し、ボデーは成型しないと言うことが出来る。ネックサイズだけならこれで充分効果を果たせる。この様にネックサイズダイスを購入する人は極めて少ないので、現在では、2個セットのフルレングスダイスセットよりも、1個しかないネックサイザーの方が値段が高いという逆転現象が起きている。

ダイスセット
ダイスセット

さて、ダイスのセッテングであるが、フルレンズスダイスをプレスにねじ込んでいく。

ダイスの適正位置
ダイスの適正位置

ダイスの下端と、シェルホルダーが接触するようにセッテングする。

ダイスのセット
ダイスのセット

ダイスの位置が確定したら、ダイスに付けてある外ねじリングを回してリングの位置を決める、そのリングが動かないように6角レンチで止める、これで次回からダイスをセットするときは何時も同じ位置にセットされることになる。

ダイスの位置決め
ダイスの位置決め

マスターリロードセットを購入すると、リザイジングオイルと言うのが付属で付いている、これをパッドと呼ばれるスポンジの上に塗り、その上で薬莢を転がし、薬莢全体に油を塗る、この油塗りの作業を怠ると、薬莢成形のフルレングスダイスに薬莢が焼き付いて抜けなくなる。
油塗りは絶対に忘れてはいけない作業である、油は外側に塗ると同時にネックの内側にも塗るのを忘れてはいけない、薬莢の成型は、ネックの内径と、薬莢の外形、この両方を同時成型するので両方に油を塗る事が必要なのである。
油は塗りすぎても弊害は無い、せいぜいショルダーの所が溜まった油で内側に凹むくらいで、凹んだ所で何の問題もない、むしろ塗り足らなくて焼き付いた場合はそのダイスは廃棄するしかない、(焼き付いた薬莢を取り除くスタッグケースリムーバーと言う工具も¥3800であるが、ダイスセットを改めて¥4500で購入する方が、面倒が無くていいかも知れない)

サイジングワックス
サイジングワックス

付属のリサイジングオイルよりも、私はリサイジングワックスの使用をお勧めする、この1缶で普通の使用頻度なら1年は持つはずである、このワックッスは必ず手で塗るので不必要に多くの油を塗りすぎることがない、使い勝手が非常に良いのでお勧めの商品である。
価格も¥1400とお手頃価格である。
私がこれを知ったのはアメリカのベンチレスト射撃大会に参加したとき、参加選手全員がこれを使っていたので早速試してみた結果、お勧めしているのである。

フルレングスとシェルホルダーはクリアランス無しで取り付けると書きましたが、弾頭をシーテングする、シーテングダイスの場合は2~3ミリ、クリアランスを空けてください、そうしないとシーテングダイスの場合は、マウスの先端をクリンプすることになります、クリンプとは軍用弾頭の用に、弾頭に溝の入っている弾頭を保持するために薬莢の先端をわずかに内側に折り曲げる事を言います。

通常の弾頭を使うときはクリンプをすると命中精度が悪くなります。

フルレングスにかける
フルレングスにかける
ケーススタンド
ケーススタンド

さて、通常ならこれから次のリローデングステップに入る所であるが、実際にはここで薬莢をターボタンブラーにかけて薬莢の研磨を行うのである。
薬莢の研磨は、同時にリザイジングオイルの除去を兼ねるので、フルレングスサイズしたあと必ずターボタンブラーで研磨することをお勧めする。
ターボタンブラーは¥19000である。
タンブラーで研磨する時間は最低でも6時間くらいは必要である、24時間かけっぱなしでも大丈夫である、1~2時間では全く効果がないのでご注意を。

タンブラーで研磨
タンブラーで研磨

研磨が終わった薬莢に雷管を取り付ける、雷管を取り付けるには、ロックチャッカーに付いているプライミングツールを使う方法もあるが、あまり使い勝手が良くないので、RCBSのハンドプライミングツール(¥3800)を使うか、リーのプレス用のオートプラアイムを使うか、いずれかの方法をお勧めする。
私はリーのオートプライムをプレスに取り付けて使用している、価格は¥3800である。

リー オートプライム
リー オートプライム

リーオートプライムのセッテングは、プライミングトレーと呼ばれるトレーの上に雷管を乗せて左右に細かく揺する、さらに小さな同心円の溝があり、ここに雷管の角がひっかかり、しばらく揺すると全ての雷管が上向きに整列する、この状態でふたをしてオートプライムに取り付ける。

雷管のセット
雷管のセット

このプライミングツールはプレスに取り付けて使用する。シェルホルダーに薬莢を取り付けてプレスのレバーを押し下げると、雷管がセットされることになる。

雷管取り付け
雷管取り付け

次に火薬の装填である、パウダーメジャーのレバーを1回上げ下げすると、規定量の火薬が出てくる、それをデジタルスケールのトレーで受け、デジタルスケールで計量する。

火薬のセット
火薬のセット

マスターリロードキットには天秤のはかりが付属で付いているが、デジタルスケールの方が使いやすいので、私はこれを使っている、デジタルスケールは¥25000である。

デジタルスケール
デジタルスケール

デジタルスケールで計りながら、パウダーメジャーの目盛りを調整して規定量の火薬のセッテングが出来たら、全ての薬莢にパウダーメジャーから装填する。

火薬を入れる
火薬を入れる

精密射撃を目指すあまり、パウダーメジャーで計量した火薬を再度デジタルスケールで計測し、パウダートリックラー(¥3800)を使い、火薬の微調整をしながらより正確な火薬計量を目指す人もいるが、実は火薬量を細かく計量してもあまり命中精度にから言うと意味はありません、少なくとも0.5グレイン程度の誤差は無視してもかまいません。
命中精度と火薬の因果関係は、どの種類の火薬を、どのくらい装填するかで決まります、火薬量の正確さではありません。それと一般論ですが、弾のスピードは早いほうが命中精度からは良い結果が得られます、ハンテングに使う場合でも初速が速いと言うことは絶対条件ですから、リローデングの場合、遅い弾より、速い弾を作るように心がけて下さい。

火薬を装填したら次は弾頭のセッテングです。

プレスにシーテングダイスを取り付け、弾頭を薬莢の上に置いたまま、ソーッとハンドルを押し下げます。
この時、特に注意しなければならない事として、弾頭が薬莢に挿入される時、ゆっくり挿入するようにしないと、ガツン、と弾頭を薬莢に押し当てると、薬莢のショルダーの部分が外側に張り出してしまい、見た目では解らなくても、銃に装填したときに装弾が薬室に装填できないと言うアクシデントに見舞われることになります。
ですから、この作業は出来るだけ丁寧に作業するように心がけて下さい。

弾頭のセット
弾頭のセット

これで、装弾の完成です、長文をお読みいただきお疲れさまでした。

装弾の完成
装弾の完成

これでリローデングの説明は終わりですが、マニアックな方のために少し追記しておきます。

多くの方から装弾の長さは? と質問されることがありますが、ハンテングライフルの場合、弾倉に入る長さが適正な寸法です。
装弾が弾倉から薬室に送り込まれるとき、場合によっては薬室の入り口で引っかかる事があります、これは使用する弾頭が尖ってるか、丸くなっているかでも違いますが、弾頭の長さを調整することで改善されることもあります、この場合トラブルの起きない弾頭の長さが適正な寸法と言うことが出来ます、ハンテングライフルの場合、装弾の長さはこういう事を基準に判断して下さい。
よく、ライフリングにタッチする、ランドタッチの寸法が最良だと言う人も居ますが、ハンテングライフルでランドタッチの弾を作ると、とてつもなく長い弾になります。
とうてい弾倉には装填できないし、必ずしも命中精度は良くありません。

命中精度を競うベンチレスト射撃専用銃の場合、ライフリングのスタートがかなり薬室の手前にあるのでランドタッチで作ることが出来ます。
火薬も雷管も入れていない状態で弾頭だけを長めにセッテングして、それを強制的に装填してボルトを閉鎖すると、弾頭はライフリングの所で止まっているので弾頭は薬莢の中に無理矢理挿入されることになり、そのまま抜き出せばそれが正しくランドタッチの寸法になります、これを専用のジグを使ったノギスで計測すると寸法を計測できます。

この基準弾頭を0として、いくらランドタッチから引くかを決めます。
私はランドタッチから0.5ミリ程度引いた寸法でリロードしています。
ランドタッチと命中精度の因果関係はまだ解っておりませんが、わずか0.5ミリでも、ランドタッチさせるか、させないかで初速が変化します、ランドタッチさせると初速が遅く、ランドタッチさせないと初速は速くなります。
火薬が燃焼するとき、0.5ミリ弾頭が動くだけで、火薬の息使いが出来ると言いましょうか、火薬が良く燃えるようになります、実に不思議な現象ですが現実です。

長さのチェック
長さのチェック

ベンチレスト射撃の世界では、命中精度を高めるためネックターニングと言う作業をします、これは薬莢のネックはミクロの単位で言うと、必ずしも真円でないから、薬莢の軸線に合わせて外形を真円に加工する作業を言います。
少しずつ削ると最初はマウスの一部だけが削れます、これでマウスが真円でないことが簡単に理解できます、こうして削る作業をネックターニングと言います。
そうして削った薬莢は通常の薬室ではネックの寸法がぶかぶかになります、そのため最初からネックターニングした薬莢を使うことを前提として薬室を加工した物を、タイトネックチャンバーと呼びます、これはネックの部分があらかじめ小さめに出来ています、ネックターニング加工をして初めて装填できる薬室です。

ブッシングダイスのセット
ブッシングダイスのセット

こうしたネックターニングして小さめに出来たネックの薬莢を通常のダイスで成型してもネックの寸法が小さいので全く成型が出来ません。そのためネックの部分だけさらに小さな寸法で成型出来るように、ネックの部分だけを交換できるようにしたのがブッシングダイスと呼ばれる物です。
ネックサイズに合わせて色々な寸法のブッシングが売られています。

ブッシングの色々
ブッシングの色々

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