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弾道学のお話

2004年 10月18日 築地

我々男達は毎日何気なく、そして何度も何度もやっている小便ですが、是非とも小便をするときには飛翔状況を子細に観察してみてください。
放尿した物が微妙にスパイラルを描いて飛翔しているのをご確認頂けると思います。
これは尿道にライフルが存在するからなのです。
水道ホースみたいに漠然と放出されている訳ではありません。
私自身、若い頃から何となく解っていたのですが、それが私自身の特異体質の問題なのだろうかと思い誰にも聞けなかったからです、幾ら男同士でも、他人の道具もそういう物か、流石にそこまでは確認するわけにはいかなかったからです。
この事を専門のお医者さんに聞いたところ、「それはライフル銃と同じように尿道に螺旋が有るから」だと説明を受けましたが。
その理由も同じようにお聞きしたら、放尿を周りに飛散させないためと説明を受けました。
この様に男性は生まれながらにしてライフル使いだったのです。
ではそのライフリングと称するメカがどうなっているか、せめて自らの所持品で調べようとしたのですが背骨を折りそうなので残念ながら調査は断念しました。
調査を続行していたら、背骨を折り、脊髄損傷で下半身麻痺に成っていたに違い有りません。読者の皆さん方は小便する場合でも、ただ漫然と放尿されていると思いますが、こういう事ではいけません。私は常に物事を探求していますので、この様に単なる放尿でも常に絶えまぬ探求をしているのです。たかが放尿、されど放尿なのです。
こうした普段は見逃すような些細な現象でも、絶えまぬ探求心と、豊富な好奇心のおかげで、今まで多くのコラムを書き上げてきたのです。
こういう私の行動を評して、「偉い!」と言う方もごく一部で居られるかもかも知れませんが、ひょっとすると、ほとんどの方はかなり呆れておられるかもしれません。
こういうくだらない話から切り出すのが落語で言うところの「まくら」と言うことになります、何故まくらに小便の話を持って来たかと言うと、弾道の話を展開するのには、毎日何度も何度も体感している小便の話からするのが、一番適切だと判断したからです。
何しろ弾道も、小便も同じように放物線を描いて飛翔する物だからです。
しかし、この比喩が適切かどうかについては後世の読者の判断にお任せしたいと思います。

さて、出来るだけ遠くに小便を飛ばすには、言うまでもなくチンチンを少し上向きに向けて飛ばす必要があります、弾道も同じです。
遠くの的に命中させるには銃身を少し上向きに撃つ必要があります。
この辺の理屈はお解り頂けますよね。
一般的な308の150グレインのスピアー弾頭を2800フィートで飛ばした場合、100mで命中させると、100mを過ぎた後はひたすら落下を続け、300mでは47cmもドロップしてしまいます。
最初から300mに命中させようとすれば、銃身をほんの少しだけ上向きに撃てば良いのです、300m命中させる為には、ほんの少しだけ上向きですから、コンピューターで演算すると100mで15.71cm上に当てれば良いのです。
そうすると300mでは正照準、350mでも、18.8cmドロップするだけです。100mで正照準の場合の弾道と、300mで正照準の弾道とグラフにしたのでご覧ください。ちなみに後で説明しますが、この表は距離はヤード、弾道のドロップ量等はインチで表示しています。完全にメートルで演算するのは簡単なのですが、メートルとインチの表があると混乱するので今回はヤード/インチの表でご覧下さい。

100ヤード弾道表
100ヤード弾道表
300ヤード弾道表
300ヤード弾道表

標的に弾頭が当たれば7.62ミリの穴が空くだけですが、ハンテングの場合、獲物の着弾点の回り10cm位の広範囲を破砕してしまいます。
多くの方が、ライフルの弾頭は先が開くので破砕力が大きいと考えておられますが、必ずしもそれは正確ではありません。弾頭が開くのであればその開いた直径だけが破砕されそうな物ですが、実際はそれ以上の範囲が破砕されます。
それは弾頭の初速に最大の理由があります。弾頭が獲物に命中し場合、少し難し理屈で言いますが、弾頭と獲物の細胞との元々質量の違いがありそれが細胞の破砕に根本的な影響を与えます。弾頭は鉛ですから、それよりも軽い細胞は、弾頭の命中した速度以上で飛翔しないと物理学の法則から外れます。これが質量の問題です。
例えばライフルの弾頭でアルミの板を撃ち抜いた場合、弾頭のスピードよりもアルミ破片のスピードの方が早いのです、これは質量の違いでそうした事が起こるのです。
このスピードの違いは容易に高速写真で確認することが出来ます。
弾頭がアルミ板に命中した瞬間の写真を使い、弾頭が飛翔する時の空気の衝撃波の角度と、アルミが飛翔する空気の衝撃波の角度を調べると容易にスピードが判断できるのです。
空気の衝撃波の角度が鋭角になる程、スピードが出ていると言うことなのです。
ですから弾頭が獲物に命中した場合、弾頭よりも軽いタンパク質の細胞は、その弾頭のスピードよりもさらに早いスピードで細胞は隣の細胞に叩きつけられるのです、そしてその破砕の連鎖活動は広範囲に広がっていくのです、こうして細胞が次々と破砕されていくのでバイタルゾーンつまり破砕範囲は、弾頭が開いた状態の直径よりも広くなるのです。
ライフル弾頭の射入口よりも射出口が大きいのはそれが理由です。
弾道学で重要なのは弾頭が命中した時の破砕範囲、つまりバイタルゾーンのことは最も大切なことなのです。
ライフル弾が口径よりも初速を重要視されるのはここにその理由があります。
45口径(11.4mm)の拳銃弾よりも、30(7.62mm)口径のライフル弾頭の方が、口径は小さくても破砕力が大きいのはひとえに初速の違いが影響しているのです。

300mで正照準にしておけば、350m以内は全部狙い越無しで撃ってもバイタルゾーンのおかげで、ほとんどの獲物を仕留めることが出来るのです。
もし100mで照準を合わせれば、弾頭は落下する一方ですからバイタルゾーンが広くても獲物には致命傷を与えることが出来ないのです。
100mで正照準に合わすか、300mで正照準に合わすから、それぞれの猟場での
展開により異なると思いますのでその選択は皆さんの自由です。
でも一番便利なのは、100mと300mで瞬時に狙いを替えるのが一番便利ではあります。

これからは弾道学の抗議も第2ステージに昇格します。
これ以降の原稿をお読みになる方は相当な博識をお持ちの方でないと付いて来れません。
心して熟読して弾道学を学んでください。
この高尚な原稿を読み切った方は、自らの名刺に弾道学修士と印刷しても構いません。
本当は、弾道学の事を説明するには弾道計算ソフトの話を避けて通れ無いのですが、今回は修士課程ですからそこまで踏み込みません。
但し、これからは弾道学の話は距離はヤード、着弾の移動量はインチで説明しますのでご了承ください、何しろアメリカ系のライフルスコープのクリックは全部インチ単位で目盛りが切られているのでこれをいちいちメートル換算していたのではかえって煩雑になるからです。
ヤードとメーターの違いは僅かメートル÷1.094がヤードですからいちいちメートルに演算せず、同じ感覚で考えてください、少なくともこの程度の距離の違いは弾道学上の弾頭の着弾には大きな影響は有りませんから。
弾道表を再度ご覧ください、308ウインチェスター150グレイン弾頭を初速2800フィートで飛ばした時、ヤードとインチで計算した弾道表です。
この表で見ると、300ヤードで照準が合っている場合、100ヤード地点では、弾頭は4.84インチ上を通過していることが解ります。
ほとんどのライフルスコープのダイヤルの大きい目盛りは、1インチの移動量を示しています。小さい目盛りは1/4インチの移動量を示しています。
通常の使用は100ヤードで使っていて、時と場合により300ヤードに照準を調整する場合、ダイヤルを動かして、リチクルを4.84インチ上げれば良いのです。
つまり数字を4.84にすればいいのです。これなら簡単でしょう。
ここでスコープの調整について説明をしなければなりません。
ほとんどのハンテング用スコープは猟場でちょこまか調整するのを前提としていないので調整クリックはキャップを外して中のダイヤルを動かさないとなりません。
ましてや、中のダイヤルは必ずしも0の位置にあるわけではないので、そこから4.84目盛り、つまり4.84インチ上に上げるなんて煩雑ですよね、確かに煩雑なのですが、少なくともその煩雑さを軽減するために、ダイヤルを0に合わす方法だけは説明しておきます。
今お手持ちのスコープがあればご確認ください。
キャップを取り外してダイヤルをご覧頂くと勝手な所にダイヤルが有るはずです。
照準調整の終わったスコープは、このダイヤルを0にする方法があります。

これはリューポルドのハンテング用スコープの調整ネジです、リューポルドはこれ以外にもネジを緩めると空転する物もありましたが、これは一番新しいタイプです。
真ん中の溝は25セント硬貨を使ってネジを回すための溝です。
このネジを使って上下左右の調整をした後、回転版の切り欠きの部分にドライバーなどをいれて回転板を空転させ0点に合わせます。

ダイヤル1
ダイヤル1

これはツアイスの調整ダイヤルです。
ツアイス等、ヨーロッパ物はメートル表示になっています。
H/Rと書いてあるのは、ドイツ語で、ホーホ オーダー レヒト、ドイツ語のホーホ(hoch上)又はレヒト(recht右)を意味します。上下左右とも同じダイヤルを使用しているので、上または右と書いてある訳です。つまり右の左右調整のダイヤルも同じ事を書いてあります。
ドイツ語でHochと言うと上とか、高いところと言うことを意味します、Rechtは文字とおり右という意味です。アメリカの物はUPと書いて矢印があれば上の方向に弾着が移動しますが、 ドイツ語では弾着を上に移動させる場合は(hoch)ホーホの方向に移動させます。弾着を下にやりたい場合は(tief)テーフの方向に回します。

ダイヤル2
ダイヤル2

弾着を右にやりたい場合は(recht)レヒト、弾着を左にやりたい場合は(link)リンケに回します。ドイツ物はこの上下左右のネジが逆ネジに成っているので回す方向がアメリカ物とは逆の方向なのです。
ドイツ物は移動量もメートル表示ですから1目盛りで、100mの距離で、弾着は1cm移動する移動量を表します。

ダイヤル3
ダイヤル3

ツアイスのダイヤルは上に引き上げると空転して任意の所で止めることが出来ます。

ダイヤル4
ダイヤル4

これはツアイスのターゲットタイプのダイヤルです。
ダイヤルが露出しているので弾道修正は簡単に出来ます。
リューポルドとダイヤルの回転方向が逆です。

ダイヤル5
ダイヤル5

ダイヤルの中心のネジを緩めるとダイヤルを空転させることが出来ます。

ダイヤル6
ダイヤル6

これはリューポルドのM-1タイプのダイヤルです。
照準調整を済ませて、ダイヤル上のねじを緩めるとダイヤルが空転しますので0をあわせます。

ダイヤル7
ダイヤル7

これはリューポルドのM-3タイプのダイヤルです。

ダイヤル8
ダイヤル8

いわゆる照尺付きといわれるタイプですね。

ダイヤル9
ダイヤル9

これも同じようにダイヤルの上のねじを緩めるとダイヤルが空転しますので、100mで照準を合わせた場合、ダイヤルの目盛りを0にします。

ダイヤル10
ダイヤル10

このまま、ダイヤルの目盛りを3に合わすと300ヤードでの正照準に合う事になります。

ダイヤル11
ダイヤル11

ここで前の記述を思い起こしてください。

「弾道表を再度ご覧ください、308ウインチェスター150グレイン弾頭を初速2800フィートで飛ばした時、ヤードとインチで計算した弾道表です。
この表で見ると、300ヤードで照準が合っている場合、100ヤード地点では、弾頭は4.84インチ上を通過していることが解ります」

こういう風に書いています、ではダイヤルのインチの目盛りをみてください、目盛りは約5インチの所を示していますね、4.84、つまり約5インチの所ですね。
この様に弾道修正は距離の目盛りを使ってもいいし、インチの移動量を目安にしてもいいのです。
ここまで書くと、ヤードとメートルは違うのではと言われると思いますが、弾道学の見地から言えば、ヤードもメートルも大差ないのです、弾道はそれ以外の要因で簡単に変化します、その時の風、風向、気圧、高度、外気温度、銃身温度、そうしたもので容易に変化します。
ですから少々荒っぽいように思われるかもしれませんが、ヤード表示もメートル表示もそれほど気に病む必要はありません。
第一、弾道計算ではやたら細かい数字でが出ますが、現実に弾道がその通りに飛翔したら1000M先でも、弾痕はワンホールに成ることになります。
しかし、1000M先でワンホールなんて絶対に起こりえません、ですから弾道計算の数字にそれ程振り回されてはいけません、あくまでも目安です。
弾道計算では、まるで1000m先でもワンホールに命中するような演算の仕方ですが、軍用の場合はこれに散布率と言うものを加味します。つまりばらつきです。
でも軍用の散布率はかなり非道くて、100mで数ミリのグルーピングを競う、私のようなベンチレストシューターには到底容認できる物ではありません。
一番非道い散布例をご紹介しますと、それは戦闘機に搭載されるバルカン砲のミルスペックです。1分間に4000~6000発撃つバルカン砲ですから、有る程度の散布率は仕方ないとしても、その規格は300の距離で撃って、1m以内に80%の弾着が有ればいいと言うものです、80%と言うことは残り20%は弾着不明でも良いと言うことですから、これはまるで散弾銃のパターンテストの様な物です。
ですから軍用の散布率を計算に引用するととんでもない事になってしまうのです。
さて話が横道にそれましたのが、照準調整は300mで0にしても良いし、100mで0にしてもかまいません。しかし日本全国に300mの射撃場が沢山ある訳なので、多くの人は100m射撃場で照準調整をされていると思います。
100mの射撃場で照準を言わせているのだが、実際に使うのは北海道で、その為に300mに正照準を合わせたいとした場合、簡単です!
今までくどくど説明してきたのはその為です、アメリカ系スコープの場合はダイヤルの目盛りを5にすれば良いだけです。つまり100mの時点で5インチ上に着弾すれば、即、それは300mでの正照準なのです。これで簡単に300メートル正照準に調整できました。言うまでも有りませんがこの目盛りは使用するカートリッジと弾頭により違います。
2インチの場合もあれば、3,4,インチの場合もあります。
巻末にその100m対300mの移動量を書き置きますので参考にしてください。

ダイヤル調整ではなくて、リチクルで狙い越をつける方法もあります。
ミルドットリチクルなどはその例ですが、HPの当社カタログの中のリューポルドタクチカルスコープの所に解説がありますので参考にしてください。

ここのタクチカクル レチクル と言うぺージをご覧いただくとミリドットの説明があります。ミルドットで説明している、1ミルと言う単位は元々軍事用語です、1ミルと言う言い方は最初は砲術に使われていた単位で、1000mで1mの移動量を表しています、厳密には少しの違いがあるのですが、1ミルは100mの地点で約1インチの移動量と考えても構いません。我々にとっては1000m先の話より、100m先の話の方がより具体的で解りやすいですからね。4インチ狙い越を付けると言うことは、4ミル狙い越を付けると解釈して構いません。ミルドットもこういう使い方をするとハンテングの世界でも充分実用性があるのです。
ミルドッットは上下左右にもミルドットがあります。
1ミルは1000mで1mの大きさを表しますので、1mの物が1ミルの大きさでみれればそれは目標までの距離が1000m、もし2ミルの大きさでみれれば、目標までの距離は500mとなります。この様に目標までの距離を測定するのにも利用されます。
また左右のミルドットは、歩行する歩兵を狙撃する場合、移動する車を狙撃する場合の狙い越量として利用されます。

これはナイトフォースのリチクルです。
詳細はここをご覧ください。http://www.nightforceoptics.com/
この様にリチクルに最初から狙い越量があるので、瞬時に狙い越を付けて撃つことが可能です。ではそのリチクルの使い方について少し説明をしてみます。


先ずNP1-RRリチクルについて説明します。
リチクルの下の方に簡易距離計があります、アメリカで一番普及している、黒丸の大きさが9インチの的を参考に演算します。日本では射撃場というと、最初から100m射撃場、200m射撃場、300m射撃場と距離が決まっていますが、アメリカの場合、私有地なら何処で撃っても自由なので、例えば砂漠の何処かで、任意の場所に標的を設置した場合、そこまでの距離が幾らか解りませんよね、そこでこの簡易距離計で大まかな標的までの距離の目安を付けるのです、日本では例え自分の地所でも、銃を自由に発砲する事は出来ません、銃刀法で発射の制限と言う事が法律で決まっていますからね。
アメリカの場合は銃の発射の制限が緩やかなので、こうした物が必要なのです。
○の上にある-線と数字の書いてある上の-線との間に鹿の胴体を当てはめればおおよその距離の目安も計れます。これなどは日本の猟場でも利用できそうですね。

P1-RR リチクル
P1-RR リチクル

NP-R2のリチクルについて説明します、このリチクルの1目盛りは100ヤードで1インチの巾を示しています。弾のドロップ量に応じてこれを使い分けると容易に弾道修正が出来ます。
(弾道計算表装入)
これで弾道学修士課程は修了しました、ではお開きにしますので小便でもしてきて下さい。あ、言うまでも有りませんが、放出は一歩前進、正照準でお願いします。

NPR2 100m照準
NPR2 100m照準
NPR2 300m照準
NPR2 300m照準

※この計算式は100ヤードで正照準を合わせた場合、それどれの距離に応じた正照準にするには
ダイヤルを何インチ上に移動させれば良いかを計算しています 。

カートリッジ名称重量初速100200300400500
243 ウインチェスター80335001.253.416.29.72
270 ウインチェスター130306001.473.736.479.68
7mm レミントンマグナム140317501.273.25.518.16
30 カービン110199006.4616.229.1245.01
30-30 ウインチェスター150239003.789.612.6528.25
308 ウインチェスター150280001.974.918.5412.94
30-06 スプリングフィールド180270002.436.0910.8616.98
300 ウインチェスターマグナム180296001.563.886.629.78
300 ウエザビーマグナム180312001.373.516.19.11
338 ウインチェスターマグナム200292501.674.167.1610.65

弾道学、番外編

2003年 8月13日 築地

前回のコラムで、防衛大学の応用物理学教室の先生から講義を受けて、その中で直径1ミリのアルミ弾をマッハ30で撃ち出す、超々高速銃の話をしました。
そしてそれをレントゲンを照射して1億分の1秒でシャッターを切るとちゃんと、マッハ30で飛翔するアルミ弾が撮影できると書きましたが。今は夏休みですから弾道学から少し離れて弾道学番外編として、その延長線上の話をもう少し展開してみたいと思います。

先ず、この超々高速銃ですが、銃という名前はあっても、実は何トンもある機械でおおよそ銃の概念からはかけ離れた物なので、大がかりの長尺旋盤みたいな物だと考えて下さい。
成る程、超々高速銃を設備して超々高速飛翔物体の研究をしている、さすが防衛大学! なんて感心してはいけません、防衛大学はそれほど予算が無くてこれを持っているのは、実は東京工業大学です。ですから防衛大学の先生もこれの実験をするためにはわざわざ東京工業大学まで出向かなければ成らない事になるのです。
実は、防衛大学教授、田村英樹先生は昨年まで東京工業大学の先生だった方で、防衛大学も超々高速銃を設備する予算がないので、ちゃっかり田村先生を引き抜き、それで超々高速飛翔物体の研究をしようとしているのではないかと思うのは私の勘ぐりでしょうかね?

皆さん方の常識からすると、防衛大学の先生方と言うと、何か自衛隊出身の人達が教えているように勘違いされているかも知れませんが、元はと言えばほとんどの先生がかっての国立大学の先生方です。防衛大学と言っても教えている内容は普通の理工科系の大学と変わらないはずです。海上防衛学、陸上防衛学、航空防衛学と言う教室があるかどうかは私は知りません。
話がトンチンカンに成る前に超々高速銃の話に戻しますが、前回のコラムではこの超高速弾頭を撮影する為、1億分の1秒でレントゲン光を露光すると書きましたが、では一体どの時点で露光をしたらいいのでしょうか、マッハ30で飛翔してくる弾頭をどの時点で感知して、どの時点で露光するか、それのメカニズムを知りたくなります。
先生に聞いたら弾頭を最初に感知するのは「光センサー」だと言うことです、それはフォトダイオードですかと聞いたらそのとおりだと言うことです。
1億分の1秒を制御出来るのですから、フォトダイオードはそれ以上に時間制御が出来無ければなりません。専門家の話だとフォトダイオードは1兆分の1秒まで制御できるのだそうです。コンピュータを使ってこのコラムを読んで居られる方は、当然インターネットに接続されているはずですが、最近は光通信と言う手段がかなり普及して来ています。私の会社も光通信です。その光通信の端末にあって膨大なデーターをを制御しているのが実はこのフォトダイオードなのです。

昔、私は光ケーブルで何故膨大な量のデーターが送できるのか不思議でしょうがなかったのですが、光の中からフィルターを使って色々な波長を取り出し、それをフォトダイオードで制御すれば、映画みたいな膨大なデーターでも短時間で送れると言う理屈が近年になってやっと飲み込めるように成りました。

さて、このフォトダイオード、実は弾速計算機にも使われているのです。
実は弾速計算機でライフル弾頭の初速を計ると、毎回計測する数字が違います。
あまりにも違うので、弾速計算機に誤差があるのでは? と疑問に思っていた時期がありましたが、フォトダイオードの分析能力を知ると、表示された初速の下4桁くらいまでは容易に分析出来る能力が有る事が理解できました。
下4桁の表示は実用上意味がないので表示していないだけだったのです。

弾の初速を計ると、銃口から飛び出す瞬間の弾頭を見たくなります。
実は弾頭を撮影するのは意外と簡単なのです、ストロボを使えば簡単に撮影できます。
問題はセンサーの使い方です、フォトダイオードを使うには蛍光灯などのパルスを発する物は誤作動が生じるので使えません、そう言う場合はマイクを使うと言う方法もあります。問題はマイクをどの位置に設置して、何時ストロボを発光させるようにするかです。
しかし、これも何度か実験していく中にベストポイントが解るようになります。
銃口から飛び出た弾頭と言うのは、すでに多くの雑誌で随分発表されていますから多くの方がその画像をご存じだと思います。
しかしムービーとなると少し難易度が上がります、高速度撮影機を使うとムービーが撮れますが撮影のメカニズムとして、シャッターを開いて撮影して、シャッターを閉じる、フィルムを1コマ送ってまたシャッターを開く、このメカを連続して行うのですから、あまり高速にするとフィルムが剪断してしまいます。これ以上の高速で撮影するには別の撮影方法を使います。つまりフイルムを動かさないのです。
イメージとして大きな樽を想像して下さい、その樽の内側にフイルムをびっちり張ります。樽の中心にレンズがあり、レンズの後端にプリズムを置きます、そのプリズムを高速で回転させて撮影するのです。
勿論フイルムの枚数に制限があるので、長い時間の撮影は出来ませんが、弾頭発射の瞬間の映像なら充分すぎるフイルム枚数です。
こうして撮影すると、ライフルや拳銃の弾頭は、銃口から弾頭が出る前に火薬ガスが吹き出しているのが見れます。
実は弾頭は、火薬ガスが吹いてから出てくるのです。
英語でジェット イフェクトと言う言い方がありますが、この事を言っているのかも知れません、日本語はまだこの事実を知らない人が多いので適当な語彙はありません。

映像を見なくても火薬ガスが銃口から吹き出ていると言うことは容易に証明できます。
お手持ちのライフル銃の内径を子細にご覧下さい。
弾頭が銃腔内を通過していった痕跡があります。
つまりカッパーファウリングです。弾頭の銅が銃腔内に付着した痕跡です。
どんな銃を見ても、銅が付着しているのはライフリングの山の中心、そして谷の中心だけです、ライフルの山の両端、谷の両端には絶対に銅は付着していないはずです。
つまり、驚いた事にこの部分は弾頭とライフリングは接触していないのです。
銃口だから弾頭が銃腔内を通過する課程ですり減ったのではありません、ボアースコープで銃腔内を観察すると、ライフリングが始まる所からそうなっているのです。
と言うことは弾頭とライフリングが接触していない所を、3500気圧のガスが吹き抜けて行ったと言うことなのです。
逆の言い方をすると、火薬ガスが吹き出るために弾頭腔内のこの部分は接触していないのです。
それが証拠に、高圧ガスを使わない空気銃などはライフルの全面に鉛の付着が認められます。
ですから、フォトダイオードを使った弾速計を使うときは、銃口から1m以上は離さないといけないのです。
その理由は、弾頭が出てくる前に火薬ガスが吹き出すので、フォトダイオードがガスをあたかも弾頭と感知してしまうから誤作動を起こすのです。

高速度撮影と言うとやたらフイルム代がかかると思われるかも知れませんが、フイルム代は意外と安く\5,000程度の物です。
高速で弾頭を撮影すると意外な発見をすることがあります。
その1例として、スラッグ弾を撮影すると、スラッグ弾の中が中空の物は銃口から離脱した瞬間、ガスの力で弾頭が膨らみます。ほっぺをぱんぱんに膨らまして飛んで行っている様にも見えます。
スラッグ銃の多くは銃口には全然絞りがありませんが、ほんの僅かでも絞りがあるとこうした現象は起きません。スラッグを撃つときはシリンダーではなくて、インプシリンダーを推奨するのはこうした事がその理由なのです。

散弾銃の弾道

2003年 8月12日 築地
追記 2003年 8月13日 築地

私は長い間ライフル射撃を専門としていたので、どうしても弾道学という理論が頭から離れません、得意分野がライフルなので、不得意分野のクレー射撃を徹底的にマスターするため、ここ15年くらいは徹底的にクレー射撃を撃ち込んでいます。
先週、火薬の譲受け許可が満了になったので申請に行ったら、警察官に「随分撃ちますね!」と言われた。前の申請が5月だから、3ヶ月で5000発撃っていることになる。
とすると、年間20000発である。改めて諸費用を計算してみたら、弾代とクレー代で年間180万円使っていた。高速代やガソリン代まで入れると、250万円に以上になる。
私は射撃の腕前を上げると言うよりも、生来の凝り性のおかげで、メカ的な事を探求する事にその指向が向いている。クレー射撃はライフル射撃みたいに目標を狙い込んで撃つ射撃ではなく、感覚で撃つタイプの射撃である、従ってクレー射撃に於いては「理論と実際」というたぐいの弾道学の書物が意外と存在しない。断定するのも何だが、あるいは先人達の書かれた優れた書が在るのかも知れないが、私は不勉強で未だにそうした資料に遭遇したことはない。

クレー射撃で一番大切なのは、照準とスイングである。
ライフル銃の場合、照星照門を正確に合わすことにより、正確な射撃が出来る。
散弾銃には照星はあるが、照門は無い。つまり自分の目が照星と言う訳である。
従って、その照門となるべき目の位置が違ったら正確な照準は到底おぼつかない、目の位置が変わったら照星とクレーは一致していても、とんでもない所を散弾が飛翔していることになる。その様な理由で散弾銃は元々照門が無いのであるから、ヘッドアップしたら全然当たらないのである。
ライフル銃では照星照門が合ってさえいれば、あるいはライフルスコープのリチクルさえ合っていれば、必ず弾は目標に命中する。頬付けなんてどうでも良いのである。
私の所には初めてライフル銃を所持される方が数多く来社されるが、初めての方は多くの方がライフル銃のベンドが低いと良く言われる。しかし、ライフル銃の場合ベンドはどうでも良いのである、照準さえ合っていれば必ず命中するからである。
第一ベンドを高くしたらライフル銃のボルトが抜けなくなるではないか。
ベンドのことは別段このページで説明しなくても、常識以前の常識なので殊更説明するまでもないが、スイングについてはあまり論理的に書かれていないと思う。
それは何故スイングが必要かと言うために説明するのに欠かせない、弾道学が確立されていないためかも知れない、散弾が空中でどの様に飛翔するかについて、実験データーが今まで極端に少なかったからである。
散弾が銃口から飛び出した瞬間の写真はストロボを使えば比較的簡単に撮影することが出来る。過日、縁があって 防衛大学で応用弾道学を研究されている防衛大学教授、田村英樹先生からお話を頂き、マッハ30で飛翔する物体の画像を見せて頂いたが、真空中でレントゲンを使って1億分の1秒で露光すると、この様な超高速飛翔物でもはっきりとした画像が写し出される。超高速飛翔物体の撮影はこのレベルまで到達しているのである。

散弾銃で大切な、パターンテストは誰でも簡単に出来る。
射撃場でパターン用紙をはり、ズドンと一発撃てばおしまい、誰でも出来る。
しかし、これで散弾銃の弾道学を語るとトンチンカンな話になり、暴走すれば神懸かり的な与太話を展開することにも成りかねない。
散弾銃の場合は銃口から30~40m離れた所でんの散弾の飛翔映像がないと弾道学が語れないのである。その事こそが散弾がクレーに命中する瞬間の弾道学であるからである。
飛翔する散弾も高速度撮影機を30m離れた所に設置して撮影すれば、理論的には撮影できるのであるが一番の問題は"タイミング"である。通常の撮影では1分間に60~120コマで撮影するが、弾道を撮影するための高速度撮影では、1200~2400コマ撮影するのであるが、撮影機の構造上あまり長いフイルムは使えないので、撮影はホンの一瞬で終わる。
最大の問題は散弾が写っているかどうかである、現像して写っていなければ再度撮影しなければない成らないので飛翔する散弾の撮影は膨大な時間とコストがかかるので今まで出来なかったのであるが、時代の進歩はすばらしい! 現在は超高速ビデオが作られ、これで飛翔する散弾を簡単に撮影することが出来るようになったのである。
何と言っても、写ったかどうかを直ぐに確認でき、写っていなければタイミングをずらして何度でも、写るまで撮影が可能になったからである。
もったいぶらないで結果を言おう、散弾が銃口から30~40メートル飛翔している時点で散弾のコロンの長さは1mである。
言うまでもないが銃によって、あるいは使用する散弾によってコロンが微妙に変化するのは言うまでもないが、学術的に違いがあるだけで、実用上の違いは存在しない。
念のために言うが銃の値段が高いからと言って優劣が在るわけでもない。
コロンは全ての銃で約1メートルである、これを良く覚えておいて頂きたい。

ホースで水道水を水まきするときに、ホースを振らないと水は真っ直ぐに放水される。
ホースの出口を左右にスイングすると、水もその動きに応じて放水される。
スイングが速ければ早いほど、その水の動きは速くなる。

銃口をスイングさせる理由はまさしくここにある。
散弾は秒速1400フィートの高速で飛翔するが、いくら初速が早いと言っても散弾は真っ直ぐ一列になって飛翔する訳ではない、ホースを左右にスイングさせた時の水の動きと全く同じなのである、早くスイングさせればコロンの先端と後端はあたかも水道ホースをスイングさせた時の水流と同じ動きをするのである、時折テレビで飛行機を機関銃でスイングさせながら撃つシーンがあるが、あのシーンを思い起こして頂きたい、トレーサー弾頭が流れるように飛翔する、あれと同じイメージを描いて頂きたい。
散弾銃も銃口をスイングさせて撃つとあのように弾が流れて飛翔するのである。
しかしながら、散弾のコロンは、ホースの先端から出る水のように無限にある訳ではない。
機関銃のように連続して弾が出るわけではない。
散弾のコロンは1メートルしか無いという事である。
逆に言うと1メートルもあると言う言い方も出来よう。
横に飛翔するクレーに対して、銃口を素早いスイングで振ると、散弾のコロンは流れるように飛翔して、先頭の散弾がクレーに命中し、飛翔し続けるクレーに対して、次々と散弾が命中し続ける事になる。
まさしく、銃口をスイングさせる理由はここにある、コロンを有効に使うためにスイングさせるのである。
銃口から離脱した散弾はパターンを広げながら飛翔する、そのコロンは1mあると言うことである。この1mあるコロンを有効にクレーに命中させられれば、クレーは粉々に粉砕するが、コロンの先端だけ、あるいは後端しか命中させられないと、クレーは力無く2個割れ、あるいは4個割れになるのである。
言うまでもなく、クレー射撃のルールでは、割れれば1点である。
しかしクレーを粉々に粉砕することこそがクレー射撃の神髄である、少なくとも私はそう考えている。

コロンの長さが1mと言うことが解れば、少し計算すれば、クレーに対してどの位のスピードで銃をスイングさせれば良いか、簡単に計算できるはずである。
計算された物を見るのではなく、自ら計算することで銃口のスイングスピードがより正確に把握できるはずである。クレーに対してどれくらいのスピードが一番効率的か!
銃口のスイングのスピードは論理的に分析され無ければならない。
案外先輩方の今までの説明が間違っていることも充分あり得るのである。

言うまでもないがクレ-が飛翔する角度によって、銃口のスイングのスピードが変化するのは言うまでもないが、早すぎず、遅すぎず、正確なスピードで銃口をスイングさせることが絶対必要なのである。
但し、銃口をスイングさせる前の0.5秒の制止時間、「タメ」も忘れては成らない。
この銃口の静止時間である「タメ」はクレーの飛翔方向を正確に把握するためと、銃口のスイングのスピード、そして安定性、加速性を確保するためにどうしても必要なプロセスだからである。

銃のスイングが正確であれば、銃口は高付けであっても、放出口に付けてもどちらでもかまわない、高付けの方が銃のスイング量が少ない分、疲れないと言うだけの話である。

計算が苦手ならスイングのスピードは体感的に感じてもかまわない、クレーが粉々に粉砕した、そのスイングこそがコロンを一番有効に使った射撃である。
その瞬間の射撃を忘れないように記憶して頂きたい。
狙いは何処だったか、スイングのスピードはどうだったか、それを良く反芻して頂きたい。
そしてその射撃の再現に努める事である。
外れたら何故外れたか、命中できたら何故命中できたか!
考えながら撃つ、これこそが少ない予算で射撃を楽しむコツなのである。


追記 2003年 8月13日

散弾銃の弾の初速は銃口付近で、クレーのスピードの約10倍です。
しかしながら銃口から離れる毎に散弾の初速は急激に減少して行きます。

ライフル実包と違い、散弾の場合は散弾が大きく散開するの上に、飛翔する散弾にはコロンが存在するので、散弾の1粒だけを抽出して銃口から先の初速を計測すると言う事は事実上できません。

従って、あくまでも推測のレベルですが、銃口から30~40mで、散弾の初速は30%減少していると私は推測します。
とすると、散弾がクレーに命中する時点では、散弾はクレーの7倍位のスピードです。

これからスイング量を算出すると・・・・・・・・・

斜め45度に切れるクレーを30~40mで撃つには、45度ですからクレーの見かけの飛翔スピードは真横の半分になります。
従ってクレーを見た目のスピードの3.5倍の銃口のスイングが必要と言うことになります。

しかしながら横に飛ぶクレーを視認して捕らえられるのは現実には30~40mよりかなり先になるはずですから、散弾の初速はさらにもっと落ちています。ですから60~70mで撃つ場合は、銃口のスイングはクレーの見た目の飛翔スピードの、2.5倍~3倍位になるはずです。

正確な狙いで、しかも理想的なスピードでクレーを追えたかどうかは、クレーが粉々に粉砕されたかどうかが唯一の目安です。

かなり早くスイングしたとしても、横に飛翔するクレーを粉砕できないのは、まだ銃身の振りが遅いと言うことになります。

逆にほとんど上昇しないで、前に出るクレーは、クレーの見かけの移動量の1.1倍くらいのスイングスピードになります。

弾道計算尺(ミルドット マスター)の使い方

2002年 6月13日 築地

ライフルスコープのリチクル(十文字)には色々なタイプがあるが、ミルドット言われるリチクルは、団子を串刺しにしたような形状をしている、参考までに取扱説明書の表紙にあるミルドットレチクルをご覧頂きたい。

この団子の一つの大きさが1ミルと呼ばれる大きさです、1ミルとは1000メートルの距離で1メートルの大きさである、つまり1メートルの大きさの物が、この団子と同じ大きさに見えたら、その目標までの距離は1000メートルであると言うことになる。
逆に言うと、目標の大きさが事前に解っていないと距離の補足は出来ないことになる。
しかしながら、実際のハンテングでの獲物は大半が鹿、熊、等のあらかじめ大きさの分かっているものであるから計測は容易である。

取り扱い説明書
取り扱い説明書

このミルドットと言うリチクルは、元々軍用のスコープとして開発された、軍隊で使う場合は立ち上がった歩兵のサイズとか、歩兵の肩幅とは、あるいは戦闘車両の大きさとか、あらかじめ基準となる物を決めておくことにより、その大きさがミルドットと比べてどの大きさに該当するかで距離を補足していた。

従って、ミルドットを使う場合、このスコープを覗くだけで目標までの距離も簡単に補足できるのである。
これは計算尺なので計算尺の中の目盛りの部分は上下にスライドする。TARGET SIZU (ターゲットサイズ)の目盛り10"の所を1ミルの所に合わせてみよう。10"(インチ)は25.4CMである、仮にこの大きさの物が、1ミルの目盛りの所で重なった場合、TARGET RANGE (ターゲットレンジ)の目盛りを見ると280の所に目盛りが来ている、つまり目標までの距離は280ヤードと言うことになる。
この様に目標の大きさがあらかじめ解っていれば容易に目標までの距離を割り出すことが出来るのである。

10インチの物を1ミルで合せる
10インチの物を1ミルで合せる

最近、ハンテングの世界では、レーザー距離計が普及しているので、スコープを利用して距離を計測すると言うことは無くなった。レーザー距離計の誤差は1メートル以内なので、こちらの方がはるかに高精度である。従ってレーザー距離計を使う限りに置いては、ミルドットを利用して距離を計測する意味はほとんど無くなった。

弾道計算尺と言っても、個々の弾頭のドロップ量が計算できるわけではない、弾道のドロップ量は使用する火薬、火薬量、火薬の種類、弾頭の種類、重さ、カートリッジ、外気温度、湿度、そうした要因で微妙に変化する。従って自分の使っている弾頭のドロップ量はあらかじめ把握しておかなければ成らない、そうしないとこの計算尺の使いようがないからである。この計算尺を最も有効に利用できるのが、リューポルドのM-3ライフルスコープであある、リチクルは元々ミルドットであるが、目標までの距離をレーザー距離計で計測する場合はミルドット使って計算する必要はない。
M3ライフルスコープは非常に勝れたライフルスコープで、308ウインチェスター、300ウインチェスターマグナム等のカートリッジを使用した場合、それぞれのカートリッジに合わせた照尺ダイヤルが付いている、100ヤードで照準調整をした場合、そのダイヤルの目盛りを100に合わせてねじ止めしておけば、その目盛りを300にすると自動的に300ヤードの照準に自動補正してくれる優れものなのである。
しかしながらいずれも水平距離における照準補正である、上に向かって照準した場合、下に向けて照準した場合、弾着はどの様に変化するかお解りだろうか?
上に向けて撃った場合、水平の照準点より、上に着弾するか、それとも下に着弾するか?
逆に、下に向けて撃った場合、水平の照準点より、上に着弾するか、それとも下に着弾するか? お解りだろうか?
正解は、上に向けて撃っても、下に向けて撃っても、水平撃ちしたときより上に着弾するが正解なのだが、この弾道学のイロハとも言うべき弾道学が理解できていない人は、当然獲物に命中するわけがないのである。当然撃つ角度でその着弾点は微妙に変化する。

どの程度変化するかは、私も実際にコンピューターで演算しないと解らない。しかしながらこの計算尺を使うと瞬時にその数字が割り出せる。
しかも、実際に撃つ角度も割り出すことが出来る優れものである。

角度を計測する
角度を計測する

この計算尺の端にひもを通し、一方に重りを付ける。計算尺の端面を利用して端から目標を見ると上向きか、あるいは下向きかによって下げた紐は必ず真下に位置するので、その紐の延長線上に有る目盛りを読みとると角度が解る。

60度で撃つ計算をすると
60度で撃つ計算をすると

では角度により計算方法を説明しよう。レーザー照準器を使い、あるいはミルドットを使い目標までの距離が300ヤードとしよう、そして角度が60度だったとしよう、 計算尺のターゲットレンジの目盛りを300に合わせると、60度の角度の所の目盛りは150に成っている、つまりこの場合、ライフルスコープの目盛りを150ヤードに合わせれば、300メートルで、60度の角度で撃つ場合の正照準となるのである。

弾道計算尺は、この角度調整の為だけでも充分に有効な道具なのである。

このミルドットマスター、取扱説明書が付いて、¥5,900である。買って!

ウインド イフェクトの表(チャート)

2001年 4月14日 築地

有りそうでなかなか無かった、ウインド イフェクトの表(チャート)です。
矢印の方向から吹く風と、弾着の関係を示しています。風の影響を受けるベンチレスト射撃には無くてはならない必需品です。

ウインド イフェクトの表

カクタスシュートの会場で、隣のベンチでローデングをしていたジェリーさんが送ってくれた物です。本当に有りそうでなかなか入手できなかったチャートです。

弾道計算ソフトを使う

2000年 4月 2日 築地

このサイトをご覧の方のほとんどがコンピューターを介して閲覧されていると思う。
現在ロスアンジェルスのコンピューター博物館に展示されている、世界で最初に作られたコンピューター "エニアック" 実は弾道計算するために作られたコンピューターでああった、砲弾の弾道を計算するために何万と言う真空管とリレーを組み合わせ、小さな町一つと同じ程度の電力を使い、砲弾が発射されてから着弾するまでの弾道を瞬時に演算できた驚異的な機械だったのである、何と、それまでは何百人と言う人間が計算機を使って演算していたのである。価格は、と言っても軍事予算で作られたので実際には知ることは出来ないが、今のお金に換算すると数百億円という値段では無いだろうか。しかし今、貴方が使っているコンピューターに内蔵されているマイクロチップはそのエニアックよりもさらに高度な計算処理能力を備えているのである。そのCPUを弾道計算に使わないのはあまりにも、もったいないではないか、もし貴方がライフルシューターなら、100メートルで照準を合わせた弾頭が、300メートル先、あるいは500メートル先で何処に着弾するかコンピューターに計算させて見るのもこれこそ、ライフルシューターのコンピューター利用方法の一つではないだろうか。

さて、弾道計算をするには先ずは弾道計算ソフトが必要になる、私はコンピューターがDOS仕様の頃から弾道計算ソフトを色々買い込んでテストをしてきたが、90%以上の弾道計算ソフトが日本では使えなかった、全ての弾道計算ソフトが英語版のDOS上で動いているため日本語バージョンにインストールすると全く動かない、そのためハードデスクの中に英語版の領域を作っておきそこにインストールして初めて作動することになる、しかしながら使い勝手は極めて悪く、私自身よほどの事がない限り弾道計算ソフトを使うことは無かった。こうして買いそろえた英語版の弾道計算ソフトはほとんど私のコンピューターでは使われないまま、防衛大学で弾道学を研究されているT教授の研究室に寄付させて頂いた。(防衛大学では充分使えたそうである)

その後ウインドウズが発売されてからウインドウズ版の弾道計算ソフトが発売されるようになったが、それでも日本語版でやると動かない、今まで発売された全ての弾道計算ソフトを試した中で唯一シェラの弾道計算ソフトが作動するのを確認した、しかもNEC仕様のコンピューターでも作動する、今まではDOS/V仕様のコンピューターでは作動を確認できてもNEC仕様のパソコンでは動かない物がほとんどであった、そのため弾道計算ソフトの紹介をする事が出来なかったのでが、ここで初めて日本仕様のコンピューターで使える弾道計算ソフトを皆さんに公開することが出来る。

この弾道計算ソフトにはほとんどの弾頭メーカーの弾道がデーターベースとして記録されているので簡単に目的の弾頭を計算できる。弾頭には元々それぞれ独自の空気抵抗係数があってこの係数は残念ながら計算では求められない、どの弾頭がどのくらいの空気抵抗があるかは、すべて実験でデーターを集める、たとえば、30口径の150gr、ホローポイント、ボートテールの弾頭を実際に撃って、初速を取ると同時に100ヤードで何処に当たったか記録する、同じ条件で撃って、300ヤードでは何処に当たったか記録する、そうしたデーターの積み重ねがないと弾道計算は出来ない、これが元になるデーターベースなのである。だからいくらコンピューターが在っても弾道計算はデーターベースが無いと演算しようが無いのである。

このデーターベースを最初に作ったのはアメリカ陸軍である。陸軍の弾道のデーターベースをG1と読んでいる、G2は多分ホワイト弾道学研究所、G3は多分シェラ社のデーターだと思う、G4,G5については知らないが、弾道計算のデーターベースはG5まであるが、それぞれの弾道データーベース間の、数字の違いはごく僅かだから弾道学計算上から無視してかまわない。
多くの人が弾道計算ソフトを、これを使うと初速が演算出来るのでは無いかと勘違いする人がいるがそれは出来ない。弾道計算ソフトは、何の火薬を何グレイン入れたら銃身長、いくつの銃では初速がいくらになると計算できる物では無いのである。初速に関しては各弾頭メーカーから発売されているデーターブックを見ると使用火薬と火薬量との組み合わせに応じた初速が出ているので参考にされると良いと思うが、しかしながらこれはあくまでも "参考" であって必ずしもその初速が出ると保証しているわけでは無い、同じメーカーの同じモデルの銃であっても、銃身の内径がほんの僅かでも小さいと火薬の圧力が上がり、初速は早くなる、逆に大きいと初速は遅くなる、従ってデーターブックに書かれている数字は貴方の銃を使って出る初速では無いことをしっかり頭にたたき込んでください。
実際の初速は実際に弾速計算機を使って速度を測るしかないのである、で、実際に初速を計ってもそれが海抜の低いところで計測すると、海抜高度の高い山の上で撃つと、空気の密度が低いので着弾は上に着弾する、同じ海抜でも外気今度が高くなると空気の密度が小さくなるので空気の抵抗が少なくなり着弾は上に上がる。
従って弾道計算ソフトで演算してもいかなる場所でもそのとおりに弾道が描かれる訳では無いことを弾道学の常識として頭に"入力"しておいてもらいたい。

従って弾道計算をするときには使用弾頭の抵抗係数はデーターベースから呼び出せるが、その弾頭をいくつの初速で撃ちだしたときにどういう弾道を描くかは、貴方自身が初速をコンピューターに入力する必要がある、と言っても常識的に初速は大体決まっているのでその常識的な初速を入力すれば実用上特に問題は起こらないので気にしなくても良い。
使用する弾頭を選択して初速を入力したら、最大射程をいくらまでにするか入力する、これは弾道を求める最大距離の事である。次に正照準を合わせる位置を入力する、100メートルなら100、300メートルなら300と入力する。
最後に何メートル置きに弾道を計算するかも入力する、10と入力すると、400を最大射程と仮定して、10メートル置きに、着弾の位置と、その時点での初速、エネルギーを演算してくれる。表示する数字にはメートル、またはヤードを選択できるので、我々が弾道を把握するのにはメートル表示にしておく方が弾道がどのくらい上がるか、下がるかが把握出来やすい。
数字で表示出来るが、同じようにグラフィックでも表示できる、グラフィックの方が視覚的に把握しやすいので他の弾頭と比較する場合は有用な手段である。
初速の変化、残存エネルギーの変化、風によるドラフテングもグライックで視認できる。

さて、この弾道計算ソフトの購入方法だが、私の会社で扱えば手数料を加算する関係上どうしても高くなるので直接シェラ社にご注文される方法をお勧めする。
商品名は以下のとおりである。

INFINITY BALLISTICS SOFTWERE

このソフトウエアーの価格は$38位、その他運賃が$20位かかります。
支払いは、VISA及びMASTERカードでの決済が可能です。
シェラ社の住所は以下のとおりです。
SERRA
1440 West Henry Street Sedalia,MO65301
Tel 660-827-6300  Fax660-827-4999

http://www.sierrabullets.com/

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