実鉄砲自慢の最近のブログ記事

ベレッタ451 EELL

2003年 1月30日 築地

鉄砲自慢もいよいよネタ切れ! これで最終回です。
チッ、たった4回、そうです、そんなに自慢できる銃がある訳無いじゃないですか。

で、今回は水平2連銃、ベレッタ451、EELLです。

全体図
全体図

この銃の購入目的は当然狩猟用なのですが、現在のように狩猟鳥が劇的に減少している昨少なくとも東京周辺ではバードハンテングは事実上出来ないのが現実です。
しかしながら、当、ファーイーストガンセールス社の前の小川には、鴨が何羽も居着いているのです。当社に来社されるお客様の多くが、 "鴨が居ますね" と笑顔で言われるのですが、その度に "撃っちゃ駄目ですよ" とたしなめています。
田園調布の町中で撃てば、間違いなくテレビ放映され、翌日の新聞を飾るのは目に見えていますからね。北海道の競馬馬誤射事件より最も大問題になるでしょう。

川と鴨
川と鴨

私自身は終日ハンテングで歩き回っても、狩猟鳥と遭遇するのは希有な事なので声を掛ければ100%間違いなく飛び出す、クレー射撃で楽しんでいます。
この水平2連、購入したのは新品ではなく中古銃です。前の持ち主は柳田佳久さんです。何冊もハンテングの本を書かれているのでご存じの方も多いと思います。
お年も70以上になられていますのに、私よりは若く見えます。そろそろ鉄砲も整理したいと言うことで私は氏のお持ちだった水平2連銃を分けて頂きました。
水平2連銃ですと、ストレートグリップの両引きであるべきだと見識のある方は言われるかも知れませんが、射撃用として使いますと、ビバーテイルの単引きで、ピストルグリップと言う取り合わせが最適です。氏の銃もそのスペックだったのでためらわず分けて頂きました。ただし厚着した中で振り回しよく使えるように銃床はかなり短めです。
私はどんな鉄砲でも文句を言わずに使うと言うスタイルですので、外見が汚くなるような銃床の継ぎ足しはしません。
銃床にはレコイルパットもバットプレートも付いていませんので、知らない人は、これは"安物"か? と思われるかも知れませんが、高級銃と言うのは実はレコイルパットもバットプレートも付いて無く、木部に直接チェッカリングを切ってあるだけなのです。

銃床銃尾
銃床銃尾

銃床と機関部を取り付けるネジ穴の蓋も、同じ材質の木で作り、それを挿入してあるだけです。勿論こうした、レコイルパットもバットプレートも無いと言うのは狩猟用、あるいはスキー射撃用に限ったことではありますが。
当然、ジェームズパーデイも、こうしたロンドンガンと言われる高級銃にはレコイルパットもバットプレートは付いていません、少し安くなると水牛の角などで作ったバットプレートを付けていることもあります。
あるいは金属で縁取りしたバットプレートを取り付ける事もありますが中心部はあえて木部を露出させます。
以前に当社で販売したFN-のMモデル、つまりFNでは最高級のモデルでサイドプレートのタイプの物ですが、スキート用の銃にはレコイルパットが付いていませんでした。
この様に最高級の狩猟銃にはレコイルパットは付いていないのが本当なのです。

ベレッタの彫刻には舌を巻く事があります、繊細な彫刻と言う以前に、手彫りでも無いのに手彫りに見せる技術が格段に優れているのです。
ベレッタの上下2連、687とか、687EELLモデル等の彫刻は多くの人が手彫りだと思っているのでは無いでしょうか? だから高くても仕方がないと考えて居られると思います。
当社のカタログにはベレッタのこうしたシリーズは掲載しておりません、何故ならスタンプ、およびエッチング処理なのに手彫りと同じくらい、ぶっ高い値段だからです。
スタンプといえば、プレスを使って型押しするだけのことです。
エッチングと言うのは写真製版の技術を利用して加工面に写真焼き付けしたものを酸で溶かして模様を付ける方法です。これらの銃はベレッタにとっては相当利益率の良い銃でしょうが、逆にお客様にとっては非常に割高な銃なので私は取り扱って居ないのです。
しかしながらこれが手彫りだと誤認しているお客様にっては満足度の高い銃かもしれません。最もコーナーの縁取りなどは手彫りで彫っているのでなかなか素人目には見極が難しいのです。私の451 EELLは手彫りです、手彫りかどうかの確認をするには、私は彫刻の表面を顕微鏡で見ます、顕微鏡で見てタガネの後を子細に確認するのです。
そうしないとなかなか手彫りかエッチングか見分けが難しいのです。
でもスタンプ彫刻は、線の脇が盛り上がりますので簡単に視認できます、それに第一、タガネの痕はありません。

水平2連と言うと多くの人が、上下よりも安いと思われているかも知れません、しかしながら、ちゃんと作るとむしろ上下2連より手間がかかるものなのです、現実問題、上下よりも安い値段で売られている水平2連はそれなりに手抜きをして作られています。
ちゃんと作った銃は例外なく、上下よりも高い相応の値段をしています。
ジェームズパーデイ等はその代表でしょうか、メルケルも安い値段で水平を作っていますが、彫刻も含めてそれなりに手抜きをして作っています。
しかしながら世界的な傾向ですが、水平は上下よりも安い! そう言う常識があるのでどこの会社も水平2連銃は作らなくなりました。
水平2連銃の特徴は、軽いと言うことです。ペラッチのコラムでも書きましたが、最近は妙に軽い射撃銃を欲しがる人が多いのですが、そんなに軽いのが良ければ水平をお使いなさいと言いたくなります。 私の水平は3.2キロ、銃身重量は1.4キロです。
軽い水平を使いますと、成る程と言えるくらいスイングは楽になります、軽い銃を欲しがる理由も解らなくはありませんが、軽ければ軽いで、銃身が走りすぎる傾向もあり、なかなか一長一短です。水平で射撃と言うのは無理があるのではと多くの方が思われると思いますが、殆ど上下と変わらない位に撃てると思います、私が水平で当たらないのは、単に下手なのと単に外の銃を使いすぎるからに外なりません。勿論、殆どの水平が狩猟目的で作られていますのでベンドが深く、プルレングスも短いので使い勝手は良くありません。
従って、上下2連銃と比べますと、狙点はかなり上になります。
勿論、リブの水平面とするとそれなりに銃身は上向きになっては居ますがね・・・
クレーの狙いについては水平銃身の中心でとらえるのでかえって中心を明確に視認できると私には思えます。水平2連銃の射撃で絶対的に必需品なのは、手袋です! これがないと銃身の熱で触れません。私の銃はビバテイル銃床なのでまだ良い方ですが、これが正統派のイギリスタイプですと、ほとんど銃身を持って撃つようになりますので、手袋がないと銃身の熱で10発以上続けは撃てないはずです
ビバーテイルと書きましたが、これは文字通りビーバーのテイル、つまりしっぽみたいな形状をしたと言う意味です。
こうした形状の先台も、こだわりのある水平フアンからしますと、邪道と言う事になるのかもしれません。

ペラッチのコラムでも書きましたが、銃の値段によって材質の違いは無いと断言しましたが、この銃身にはボーラースチールと打刻してあります、いわゆるボーラー鋼使用という訳です。打刻はBORERですが、この会社はオーストリアの会社でドイツ語圏ですので正確にはOの上にウムラウト、つまり点々がつきます。

銃床先台
銃床先台
銃身刻印
銃身刻印

発音も、ボーラーと明るく発音するのではなく、少し濁ったような発音になりますね。

ボーラー鋼と言うと何か特別の鋼材みたいに思われると思いますが、ボーラー製鋼所製のクロームモリブデン鋼材で、通常銃に使われるクロームモリブデンと違いはありません。
しかしながら、昔のボーラー社は非常に優れた鋼材を製造していたのです、何よりも不純物が極めて少なく、鋼材の均一性を最大の特性としていました、従って値段も通常の鋼材の倍以上もしていたのです。40年くらい前は、ボーラー鋼材で作ったプレスの金型は型持ちも良かった様です、ボーラー社の刃物鋼材も結構日本に輸入されていた筈です。私も入手したことがあります。しかしながら日本の製鉄技術が向上するに従い、ボーラー鋼材の特異性も無くなり、現在はボーラー鋼材使用と、あえて宣伝している銃器メーカーは皆無になりました。
現在の銃砲はすべてボーラー鋼材と同じレベルの材料が使われているはずです。
同じように30年くらい前までのドイツでは、クルップ製鋼所で作られたモリブデン鋼材を使った物は、スペシャル、クルップスチール等と刻印した物もありましたが、これらの刻印はとっくの昔に無くなりました。

昔の銃は、射撃でも32グラム装弾が普通でしたので、水平2連には耐久性の問題から35グラム以上は使ってはいけない、等と言われていました。
ですから、銃身のロッキング、いわゆるダボが1個の物は安物、2個ある物は高級銃と言う言い方がありました、メルケルや、一部のロンドンガンはクロスボルトも備えています。しかしながら、現在の射撃のように24グラム装弾しか使わない場合は、水平2連銃は耐久性に気兼ねなくなくどんどん撃つことが出来ます。
水平2連銃で強い弾を撃ち続けると、機関部と銃身の間にクリアランスが発生します。
クリアランスがある場合、銃口から覗くと機関部と銃身の合わせ目の所から僅かに光が差し込むのでそれが視認できます。
昔はこうして寿命を判断していました、しかしながら使えないというレベルではありません。まあ、鉄砲屋さんがお客に買い換えを勧める手段だったのかもしれません。

EELLのサイドロックには、ピンが4本あります、つまり中のパーツの支点は4個と言うことですが、私が昔上司から教わった話では、サイドロックのピンは最低でも7本無いと良いサイドロックとは言えないと教えられたことがあります、その理屈からすると、この銃のサイドロックはあまり高級な出来ではないと言うことになります。
機関部のブリーチ面を見ると、撃針は表から取り外せる様に出来ています。
現在のミロクの方式と同じですよね、どちらかがアイデアをパクッたと言うことですが、一体どちらが先に出来たんでしょうね? 興味はありますが調べる元気はありません。

ブリーチ面
ブリーチ面

最後に451 EELLの彫刻をお見せしましょう、上下、左右とも繊細な唐草が掘ってありトップレバーには透かしも入っています。

彫刻 1
彫刻 1
彫刻 2
彫刻 2
彫刻 3
彫刻 3

今回もまたガンケースの話をしますが、ベレッタの水平を入れているガンケースは非常にコンパクトに出来ています、水平だからこういうサイズと言うのではなく、参考までにFNのD-4を収納してみます、これは銃身長30インチですからこれ以上大きい物は無いのですがちゃんと収納できます。このガンケースも例によってイタリアのEmmebi snc社です。ホームページもあるので一度覗いて見てください。アドレスは以下の通りです。
http://www.emmebi.it/

ガンケース
ガンケース
ガンケース内部
ガンケース内部

ブローニング D-4

2003年 1月27日 築地

最近は全然ブローニングが売れません。
一昨年、ブローニングのD-5を売ったきり、引き合いもありません。

銃の全体図
銃の全体図

基本的にミロクもブローニングも同じなので、わざわざ値段の高いブローニングを買う必然性が見あたらないのがその理由でしょう。
確かに、ブローニングのA,B,C,はミロクと大差ありません、しかしながらDグレードはちょっと違います。私が最初に自分のDグレードを手にしたとき、あまりにも開閉が緩いのでまるで中古銃であるかの様な印象を受けました。
しかしながら中古銃か新銃かの判断くらいつきます。紛れもない新銃なのですがトップレバーをひねると銃身の重みで中折れ部分が自動的に折れる位柔いのです。
しかしその理由は直ぐに理解できました、なんと機関部と銃身を徹底的に摺り合わせをしているので摺動面での抵抗が極めて少ないのです。摺り合わせをすると言うことはそれぞれの部品を最初から少し大きめに作る必要があります、そして当たり面に朱(朱肉みたいな物)を付けて朱の取れたところだけを僅かずつ研磨して削り取るのです。
この作業、写真では見たことはあるのですが、実際の作業をドイツIWA展示会に行ったときに初めて見ました、この作業、殆ど忍耐との勝負の様に見えました。
ひたすら何時間も摺り合わせを繰り返します、で、削りすぎれば大変な事になります。
全部おシャカと言うことになります、忍耐の仕事ですが気を抜くことは出来ないのです。
前々回のメルケルの項で書き忘れたのですが、メルケルの新品は中折れ部分がむちゃくちゃ堅いのです。よくこれで摺り合わせをしたなと関心するぐらいきついのです、それと比べるとDグレードはふにゃふにゃしていて頼りないくらいです。
善し悪しではなくて、それぞれの会社のポリシーの違いなのでしょう。
で、実際に射撃に使ってみると、射撃中は射撃に集中しているのでDグレードの様に弱い力で折れる上下の方がやはり使いやすく感じます、中折れ部分が堅いと射撃への集中力が遮断される、あるいは阻害されるような感じを受けます。これが実際に射撃をしてみて感じる使用感です。

日本ではDグレードと言うと圧倒的にD-5の唐草模様が一番好まれます。
私自身は変わり者ですから、D-5ではみんなと同じなので、あえてD-4を選択しました、しかしながらD-4の使用者は非常に少なく、私以外にD-4を使っている人には今まで出会った事はありません。

彫刻 1
彫刻 1
彫刻 2
彫刻 2
彫刻 3
彫刻 3

Dの後に付く、1,2,3,4,5,と言う数字は彫刻の種類であって、いずれも値段は同じです。このDグレード、ミロクの定価は470万円です、当社の販売価格でも310万円ですから、以外と価格差は少ないのです。
こんな値段が高くても、銃の製造現場では年々コストダウンをされています。
私の使用しているDグレードは1989年製造ですが、最近製造される物はリブの部分が明瞭に違っています。
私のDグレードは薬室の上にあるリブは銃身と一体で作られています、勿論薬室上部から先のリブは別部品の後付けです。実はリブが一番剥がれやすいのは薬室の上なのです、もっとも作業が粗末でリブの一部にハンダが回っていない場合はそこの箇所が剥がれるのは言うまでもありませんが、すべて同じレベルの作業がされている場合は、一番振動の起こる薬室の上が弱いのです。と言っても理論上そうだと言うことで、丁重な仕事をした銃は、生涯リブ剥がれは起きないでしょうけどね。
でもリブ全体の中でどこが一番弱いかと言うとやはり薬室の上が一番弱いのです、ですから薬室の上の部分のリブが銃身と一体で出来ているのとは耐久性の面でちゃんと理屈が付くのです、しかしながらこれを銃身と一体で作ると言うことは非常に余分な手間がかかることは言うまでもありません。
銃身部材は旋盤で削って作るわけですから、リブの部分を残すという事は丸い円周全部を削り残し、リブ以外の不要な場所をフライス盤で削り取るわけですから、無駄な作業この上ない事なのです。しかしながらこういう無駄な作業に手を掛けていると言うことがユーザーサイドには好まれるわけで、ですからFNを探す人はあまり使っていない古い物を探すと言う現象も起きてきます。ですからコストダウンをした最近のFNは特に売れ行きが悪いのです。

私のFNは古いモデルなのでリブはワイドリブです、 ワイドリブはクレーが見やすいと言う理由で使われていたのですが、クレーの速度が速くなってからはだんだん使われなくなり、現在、新銃でワイドリブというのは全く存在しません。
しかしながら、だからといってワイドリブが使い難いと言うこともないので、私はこのまま使用しております。

ワイドリブ
ワイドリブ

ミロクもそうですが、ブローニングもハンマースプリングはコイルスプリングを使用しております。射手の中にはスプリングは絶対に松葉でないと、と言うこだわりの人も少なくありません、理由を聞くと多くの人が引き金の切れ味が良いからと答えますが、引き金の切れ味とハンマースプリングの因果関係はありません。世の中で一番引き金の切れ味を大切にするのはフリーピストルですが、これに使われているのは全部コイルバネですからスプリングの種類が引き味と連動していないことは明白です。
でも、松葉ばねの方がスプリングの特性が違うので、空撃ちしたときの質感が良いのか、その様に感じているのかもしれません、また耐久性でもどちらのスプリングも優劣はありません。
では何故散弾銃には松葉バネが多いのかと言うと、スプリングを組み込むスペースの問題だと私は考えます。例えばサイドロックの銃には大きすぎてコイルスプリングは使えません。サイドロックの部分にスペースが無いし、それに格好が悪すぎます、出来るだけコンパクトに綺麗にメカ部分をまとめるには松葉バネが最適なのです。

松葉バネが良いと言われる根拠の一つに、ペラッチの引き金が影響しているかも知れません、はっきり言ってFNと比較するとペラッチの引き金は切れ味が鋭く、使用感も快適です、クレー射撃の場合、1発目と2発目を撃つ機会が多く、タン、タン、と撃つ、その切れ換えのフィーリングが大きく影響します。
FNの場合初矢を撃った後、充分に引き金を戻さないと、2の矢がセットされません。
ペラッチの場合こうした場面には殆ど遭遇しません。
それが松葉は切れが良いと言われている所以では無いかと考えています。
実はペラッチの場合も松葉スプリング以外にも、コイルスプリングも用意されていて、通常の松葉バネのモデルがMX8ならば、コイルスプリング使用のモデルはMX8Bと呼ばれています。FNの引き金の切れが悪いのは設計上の問題だと思います。
勿論調整すれば改善されるのですが、私はオリジナルのまま使用しています。
少なくともそれが命中不良の原因にはならないと考えているからです。

前回のメルケルの項では、共産圏の粗悪な装弾を使うためにメルケルのハンマースプリングは極めて強くしてあると書きましたが、Dグレードの場合はその逆です、雷管が撃発する範疇で、出来るだけハンマースプリングを弱くしてあります、ハンマースプリングが弱いと言うことはそれだけ銃の耐久性が増すことになります、スプリングが弱ければ空撃ちしても全然問題がありません、唯一問題なのは性能の悪い装弾を使った時など不発が多発することです。

ついこの間までイタリア製の装弾は性能が悪く不発の連続でした、しかしながら日本やアメリカ等の装弾メーカーが技術供与して装弾を作らせるようになってからは劇的に性能が向上しました、しかしながらイタリアで作られるレミントンのプレミアは未だに雷管だけは日本製と言うことです。この様にそれぞれの国の化学工業の完成度のレベルに応じて雷管の性能は大きく左右されます、日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、北欧、等は良い雷管を製造していますが、スペイン、イタリア、等はまだ完成度は低いと思います。
旧共産圏のレベルは全然駄目でしょう、ロシアなどは雷管の性能が悪いのに加えて、塩素酸塩類でも使っているのでしょうか、簡単に錆を誘発します。
幾ら弾が安くてもこんな弾は私なら使いませんね。値段の安い弾は要注意です!

FNの場合、ハンマースプリングが弱いので、引き金を引いてから撃発するまでのロックタイムは明らかに遅いですが、ロックタイムを云々するより、散弾銃の装弾の初速は1400フイート、ライフル装弾はその倍の2800フィーですから、長年ライフルを撃ってきた私からすると、散弾は弾のスピードが遅いのでロックタイムの遅さは全然気になりません。
殆どの上下2連銃は初矢を撃ったときの反動で2の矢をセットする振り子を内蔵しております、これは同発を防止するためのメカですが、Dグレードには振り子はありません、しかし絶対に同発はしません、いままで一度も同発の体験はありません。
同発しないと言う事の前提には、引き金の掛かりや重さをいじくらないという条件が付きます、些細な衝撃で引き金のロックがはずれれば当然同発することになります。
同発が絶対に起こらないと言うためか、発矢を撃った後、完璧に引き金を戻さないと2の矢を引けないことがあります、おっとっと、と言う感じで前につんのめるは格好悪いのでFNの時は引き金はちゃんと戻して引くように心がけています。
それと比べるとペラッチの引き金は秀作です、引き金をちょっと戻しただけでも確実に2の矢は激発します、欠点と言えばこれがFN系統の欠点でしょうね。
振り子がないと初矢が不発でも、そのまま引き金を再度引けば上の銃身から弾が出来ます。Dグレードはこうしたメカを採用していますが、ブローニング社では振り子を使わない、この方が優れていると言う判断なのでしょう。

Dグレードのハンマースプリングは弱いのに、エジェクタースプリングは異常に強すぎると私は感じます、ミロクも、そしてFNも欠点と言えばこのスプリングが強すぎるために、エジェクターの折れが起きることです、これを防ぐにはエジェクタースプリングを弱くするのが最良の方法だと思います。
今に時代、薬莢をそんなに遠くまで飛ばさないでも良いと思うのですがね・・・・・

銃床材料は年々悪くなるように思えます、Dグレードといえども最近の展示会に出してある物は飛び抜けて良いとは感じられません。
はあ~・・・・・・と思うようなDグレードも展示会で時折見かけます。
それと比べると私のDグレードはまだまともな方だと言えます、我々が銃を注文するときにはどんな銃床が付いてくるのか全然解らないのです、少なくとも銃床材の指定は出来ないのです。
Dグレードに粗末な銃床が付いてきたら売る方としては非常に困るので、最近ではブローイングを注文するのは控えています。

ブローニングの引き金は一見すると簡単に見分けられるように外見上の特徴があります、
同じ銃に見えて、ミロクとFNが歴然と違うのは引き金の上の部分が膨らんでいる事です、こう言う形状にすると指が引き金に当たる面積が増えますね、指の当たる面積が多ければ多いほど、引き金は軽く感じられます、引き金が指に当たる面を出来るだけ多くとる、これはブローニングのポリシーみたいで、上下2連みたいに基部が膨らんでいるという形状ではありませんが、ライフル銃も、拳銃も、そして機関銃までこんな感じで作られています。引き金の幅を広くしても軽く感じられますが、今度はその分デリケートな引き金感覚は阻害されます。

引き金
引き金

銃身を取り外すためには、先に先台を取り外すのはどの銃でも同じですが、先台の取り外し方法にはメーカーにより色々なタイプがあります。
メルケルの場合、先台の下半分を取り外して銃身を取り外します。
このタイプの場合、銃床の経年変化、あるいは乾燥の度合いにより、上下の合わせに狂いが生じることがあります。

先台取り外し 1
先台取り外し 1
先台取り外し 2
先台取り外し 2
先台取り外し 3
先台取り外し 3

ペラッチの場合、先台全部を取り外します、通常はこうしたタイプがおおいですね。
このタイプの場合、新品の時にはやたら堅い先台があり、外すのに苦労する場合があります、また外すとき勢い余って銃身や先台に傷を付ける事もあります。
あまり高級銃では使わないタイプです、唯一の例外はペラッチだけですね。
FNの場合、先台を前に前進させ銃身を取り外します。このタイプの場合、上下合わせみたいに狂いが生じることはありませんが、先台を前にずらすため、銃身の下側の黒染めがはげる場合があります、Dグレードの場合、メルケルみたいに上下に外すタイプの銃床もあります。

平行リブ
平行リブ

ブローニングのリブは銃身と平行に作られています、そのため狙点よりも上に着弾しなければならないトラップ銃は、少し銃身が上を向いている必要があります。
そのためリブの中心に中間サイトが付けてあり、これと照星とが8に字になるような見え方でリブをみるとちょうど良い具合に、僅かに銃身は上向きになり、照星で狙う狙点より上に着弾することになります。そのため前に出るクレーは追い越しざまに、横に飛ぶクレーは、クレーの下を撃つ事により命中します。
実際に射撃をするときは、銃を構えたときに、照星と中間照星、そのリブの感覚を確認しながら頬付けの感覚を記憶します。
その状態を継続しながらクレーを追って撃発するわけで、その瞬間は中間照星を見ることはありません。初心者にありがちなトラブルは、クレーを追っていくときに顔が上がることです、いわゆるヘッドアップと言う現象です。
拳銃にも、ライフル銃にも照星、照門が付いていますが、上下2連銃には照星はあっても、照門はありません、その照門の替わりになるのが自分の目なのです。
ですから、頬付けが変化すれば照門である目の位置が変わるので、保証付きで当たらないと言うことになります。
と、言うことになるとベンドの高さが極めて需要になりますよね、人によっては数ミリ単位で神経質に高さを調整する人も居ます、別にそれはそれで良いのですが。
私は、メルケル、ペラッチ、FN,ベレッタ水平を代わる代わる撃って楽しんでいます、いずれの銃もベンドは勿論、銃床の長ささえ違っていますが、いずれの銃でも満射の体験があります、と言うことは、それぞれの銃にあわせて、狙点を変化させればちゃんと撃つことも可能なのです、私の悲しい性は、一つの銃を徹底的に使い、射撃競技一本に集中することが出来ないと言う事なのです。
物事を一本に絞れない、女性関係に関しては"当たり"という方も読者の中には居られるかも知れませんが、やはり物事は一本に絞るのが王道でしょうね、しかし残念ながら私にはできませんね・・・・・・・・・・・・・

あ、勿論鉄砲の話ですよ、このコラムは鉄砲自慢ですから。

ここまで書いて終わりにしようと思ったのですが、他のコラムと比べて原稿量が少ないのでもう少し、番外編として書き足します。

番外編はガンケースです。
今まで誰もガンケースの事について書いた事例は少ないので書いてみます。
世界中のガンケースやさんで、私がベストだと考えているのが、イタリアのEmmebi snc社です。ホームページもあるので一度覗いて見てください。アドレスは以下の通りです。
http://www.emmebi.it/home.html 私がここの会社がガンケースでは一番だと思うのは、イギリスの名銃、ジェームスパーデーのガンケースの製造を受けていると聞いたからです。メルケルのガンケースも作っています。パーデイのガンケースを作っていればガンケースメーカーで頂点である事は言うまでもありません。
HPを覗くと色々なタイプのガンケースを作っていることがお解りいただけると思います。多くの銃器メーカーがここに自社ブランドで注文を出していますので、それぞれのメーカーの最高級のガンケースは大体ここの製造になります。
ヨーロッパに行ったときに、日本では何処に卸しているの? と聞いたら*社と*社に出ていると言う事でした、ここの会社のガンケースはユーロで表示されています、為替相場では1ユーロ=¥127位ですから演算してみてください。
日本国内で売られている価格は、この価格の倍以上ですが、倍の値段なら運賃、通関費用、流通経費等々を考えると、ごく当たり前の価格です。
それに、ここの会社個人向けには売らないそうで、最低ででも10本以上の注文でないと受け付けないと言っています。
私の購入したのは1000/71と言うモデルで、ここの会社の最高級モデルです。
これと同じ物をジェーズパーデイ用に作っていると言っていました。
日本国内の価格で言うと30万円くらいではないかと推測します。

ガンケースの外側は、パナマキャンバスと言う生地に、皮でステッチしたカバーをかけてあります、革製のガンケースは簡単に水がしみます、雨に当たっても皮は簡単に水滴を吸い込みます、勿論、皮革油を付ければ水滴は跳ね返せますが、結構べたべたして感触が良くないので、一般的に革製のガンケースに油の塗ってある物は安物ですね。
高い物はこの様に油を塗らない代わりに、キャンバスのカバーを使います。

ガンケース本体
ガンケース本体
ガンケース内部
ガンケース内部

革製のガンケースの部材は一般的にラミネートの板材です、いわゆるベニヤですね。
ベニヤでケースの本体を作り、それに皮を張り付けて作ります。
私のガンケースは、ベニヤではなくて樫材で本体を作っています、わざわざ樫材を使っているので、その樫材の本体が見えるように木部を露出させています。
その樫材で出来た本体に革を巻いて作り上げています。
このガンケースは、丈夫に出来ている分、重さが他のガンケースよりも重くできています。

ガンケース樫材
ガンケース樫材

ぺラッチSOC

2003年 1月25日 築地

前回書いたメルケルは、いずれも高いグレードの物は気の遠くなるような徹底的な摺り合わせをしてあると書きました。
しかしながら、ペラッチに関しては高い製品も安い製品も全部同じ作りなのです。違いは少しだけ磨きが良くて、良い銃床材料を使い、単に彫刻などで芸術的な付加価値を付けたかどうかにすぎないのです。
私は現在ペラッチSCOサイドプレートを使っているのですが、通常のMX8とどこがどう違うのか実際に使いながら確認したいという好奇心もありました。
良い物と悪い物を比較する場合、たとえば安い肉と高い肉を食い比べる、安い酒と高い酒を飲み比べる、そうすると何が良くて何が悪いか、体験的に理解することが出来ます。
体験じゃないと、物の本を読んでも、人の話を聞いても本当の所は正確には解らないじゃないですか、やはり自分で試すのが一番です。
それに、第一自分で使わないと、人に説明するのに説得力が無いではないですか、実際そうして使ってみると、今までペラッチについて語り継がれてきたことが、嘘だったり、逆に以外と知られていない面も解るようになってきました。
今回はそうした諸々のペラッチに関する話をしてみたいと思います。

写真はSCO専用のガンケースです、恥を忍んで書きますが、銃を車のトランクに仕舞おうとして、別の事を初め、そのまま収納するのを忘れ、車を動かしたため、このガンケースを車で踏んでしまいました、ガンマニアとしては心の痛むことしきりです。
思わず、心の中で"痛い"と叫んでしまいました、当然銃は修復不能とあきらめたのですが、なんと無傷でした、このケース、外側は皮ですが本体は金属で出来ているようです。
大したモンだと改めて感心したケースです。

SCOケース
SCOケース
箱の中
箱の中

ペラッチのMX8は、正規代理店が独占的に販売していた頃は、何と、190万円していたのです、現在の当社の価格は64万5千円ですよね。
あまりに価格差が大きいので全く同じ鉄砲かと疑いたくなるでしょうが、正真正銘同じ物です、例えば同じMX8、現在のアメリカでの価格は$9,500です。為替を120円で計計算しても、114万円です。これからしても正規代理店が輸入していた価格は法外だし、当社の値段も法外に安いと言うことになります。
常識的に考えれば、アメリカの値段がまともな値段と言うことですね。
当社の、こうした異常に安い値段が何故可能なのか、それは秘中の秘なのですが、書きたがりの虫がうずうずしていますので思い切って書いちゃいます!

 ペラッチは、名前の割には小さな会社です、ベレッタと比較すると像とあり程度の比較です、ベレッタはアメリカの軍用拳銃を作っている会社です、当然他の国の軍用銃も生産しています、ひるがえり、ペラッチは射撃専用の上下2連銃だけを作っている会社です、自動銃すら製造しておりません。従って日本の中小企業と同じで、年中資金繰りは厳しいはずです。ですから正規代理店と言っても、数を買わない代理店などイタリア国内の卸値段と同じ程度でしか売りません、逆に言うと相応の数を注文すると、相当な無理が利きます。
当社のペラッチの販売丁数と言うのは、日本国内では一番でしょうが、世界的に見ればとるに足らない存在です、実はそう言う会社が世界中にはたくさんあります。
最近はインターネットでも共同購入と言うシステムが流行っているでしょう、私はあれに
着眼しました。そうだ!力の無いところが結集して共同購入すれば安く買える!
私はそう思ったのです、それで外国のある会社に相談して話を持ちかけました。
そこで、試しに1億円分のペラッチを全額前金で購入したら幾らにしてくれるか相談しました、全額前金と言うことは、当社の注文する銃の銃床は全部特別注文ですから納品は最低でも6~10ヶ月後ですからこの間充分な資金繰りが出来ます。
何社か集まれば1億円分の注文も不可能なのです。
すると驚くべき価格を提示してくれたのです、些細な金額は秘中の秘ですが、当然日本の正規代理店価格より安いはずです、もっとも1億円分の銃を当社1社で購入する訳ではありません、それだからこそ共同購入なのです。
共同購入の展開が開けると具体的には資金計画が必要です。
これが最大の難問だったのですが、ある時、三井住友銀行からDMが来て中小企業の皆さんに低利で融資しますとあります、駄目元でFAXしたら担当が飛んできて、決算書との納税証明を持って帰りました。それから3日後に4000万円融資すると言うではありませんか、それも無担保、金利は2.9%です。
銀行の担当者に些細な事情を聞くと、今までは担保に対して融資していたが、現在の様に担保が目減りして不良債権になっている、その反省から、担保融資ではなく、企業の業績に対して融資すると言うのです。その時は真面目に税金を納めていてヨカッタと思いました。その4000万円がペラッチ購入資金になったのは言うまでもありません。
これが現在のようにペラッチをお安くできた秘密です。

ですから正規代理店の190万円のペラッチも、当社の64万5千円のペラッチも全く同じ製品なのです。

日本では昔から銃は贅沢品だと見られてきて、法外な値段で売られてもそれが法外だと理解できない国民性がありました、悪く言えば無知だったのでしょうね。
40年前、国産の乗用車は幾らだったでしょう?ご存じですか?
その当時同じ車がアメリカでは日本より安く売られていたのです、しかし現在では乗用車の価格差はありません。それが経済の本当の姿だと思います。
ペラッチは当社がリーズナブルな値段まで価格を引き下げましたが、しかしながらまだまだ高い製品が国内でも流通しています。例えばウエザビー社の上下2連銃、これはSKBのOEM製品ですから、アメリカ国内で販売されている価格から演算すれば、ウエザビーのごく標準のモデルでも7万5千円位で工場から出ていると思われます。
アメリカで販売している値段の50%~40%が工場出荷価格だと私は思います。
それからすると、SKBの国内価格は随分高いですね。
ミロクも残念ながら安いとは言えません。 
唯一のライフルメーカー、ホーワライフルも、アメリカでの2000年版販売価格は$435.00ですから為替120円で計算しても\52,200でしかありません。
工場出荷価格を40%と計算すると、僅か\20,880です。しかしながらカタログ誌、スポーツガンに掲載された石井銃砲店のホーワライフルの値段をみると、一番安いホーワ製の銃でも¥223,000です。この価格体系、なんか狂っているとしか私には思えないですね。
さもなければあまりにもユーザーを馬鹿にしているように思えてなりません。

この様に流通を整理する事により、銃の値段はもっともっと安く出来るのです。
日本では銃の所持者が少ないから、警察の規制が厳しいから、色々な屁理屈は言えますが、世界的なレベルで考えて、東京は例外にしても、一つの県に数カ所も射撃場のある国はそうそうありません、間違いなくアメリカより射撃できると言う環境は良いはずです。
確かに警察の規制も度を超しているとは思いますが、それでも運転免許よりはハードルは低いと思います。
ですから銃の値段を安くする事が唯一、この業界の発展に繋がる事だと信じます。

横道の話の方がメインテーマになりそうで本当に困ってしまいますが、今回はペラッチの話なので本題に戻ります。
ペラッチの高い銃と安い銃の違いですが、銃砲店の人が与太話を言った為でしょうか、それとも無知な射手が出鱈目を言ったためでしょうか、ペラッチは値段によって金属材料が違うと言う説が真しやかに流れています、噂の範疇であっても誰も否定しない、おかしな空気が漂っています、私がSCOを使っているので断言できますが、使用感において材質の違いはありません、それははっきり断言できます。
私は、元々銃の製造に携わっていたので、銃の金属材料については相応の知識は持っています、金属材料が違うという話が、仮にペラッチの人間から出たとしても、それはイタリア人特有の、よく言えばおおらかさ、悪く言えば無責任、それに何でもありがたがる日本人体質、それらが一体となって作り上げた虚偽の話です。
ペラッチの機関部の素材は全て鍛造から作られます、クロームモリブデン鋼の素材を炉で真っ赤に焼いて、プレス機を使って、ドンドンと叩いて、大まかな成型をします。
解りやすく言えば日本刀の鍛錬と同じですね。
鍛造というこの行程は金属の組織を緻密にして強度を上げる目的と、加工しやすい形に成型するのが目的です。銃砲店のカタログや広告を見ますと、****は特別な金属材料を使ってと言う記述を見る事がありますが、クロームモリブデン鋼材の鍛造品これこそが銃の材料として最良の物なのです、クレーンのフック、よく工事現場で見かける物です、あれは絶対強靱な製品でないと大変な事になりますよね、だれでも常識で判断できると思います。
あれが、クロームモリブデン鋼材の鍛造品です。
さらに強度を上げるために、バナジュームを添加した、クロームバナジューム鋼材という鍛造品もあります、クレーンのフック、あるいは身近にあるスパナ等の製品がそれです。
ただし、クロームバナジュームだと機械の加工特性が悪く、寸法がちゃんと出来ない、あるいは加工痕汚いと言う欠点があり、銃器の材料としては現在殆ど使われません。
名もない小さなメーカー等が、当社の材料はもっと良い材料で値段も高いと、特性も違うなどと、的はずれな宣伝をしているのを時折見かけますが、そう言う会社に限って鍛造の製品は使わない物なのです、何故なら、鍛造品を作るには相応の数量と金型が必要だからです。
これが出来ない会社が、当社の材料は特別だと吠えているだけです。
この事からしても、ペラッチが銃のグレードに応じて金属材料を変えるというのが、如何におかしな話かご理解頂けるでしょうか。古今東西銃色々な銃器メーカーがありますがグレードに応じて金属材料を変えている会社は存在しないのです。
材料を変えると、加工刃物から切削速度、挙げ句の果ては油まで変えなければならないのです、これは加工現場では常識以前の常識なので、わざわざ取り立てて言うレベルでは無いのですが、念のため説明しておきます。

ペラッチを購入する人から一番聞かれる質問が、ベレッタと比べて耐久性はどうですかと? 言う事です。
ここで銃の耐久性と言う事について説明してみます。
上下2連銃の銃身と機関部というのは別部品から出来ています、当然ですがね!
お互いは組み立てて使用しますが弾を装填すると言う作業があるので、お互いの作動性と言う問題もあります。しかしながら銃身と機関部は装弾を発射するという目的の為に作られていますから、お互いが装弾の発射にともなう圧力に耐えなければいけません、つまり、銃身と機関部は火薬ガスの圧力で分離しようとする動きが発生しているのです、高い銃ほど、あるいは設計が良いとされる銃ほど、その圧力に耐える面積が多いと言えます。そのメカからすると断然ペラッチの方が優れているのです。
まずペラッチのその耐圧部分を説明します。

銃身のロッキング部分
銃身のロッキング部分
ロッキングの厚み
ロッキングの厚み

まず機関部と銃身の支点、ここに圧力がかかりますが、この部分の出っ張りはベレッタよりペラッチの方が大きくなっています、それに薬室のサイドに設けられたロック部分、ここも大きな力を受けます、従来の上下2連と言うのは、メルケルも、ブローニングも全部銃身の下にこれが有ったのです、思い出して頂けましたか?

機関部のロッキング
機関部のロッキング

これを薬室の横に配置したのがペラッチの偉大な所です。ロック部分を薬室の横に配置することにより、機関部自体をコンパクトに出来ます。機関部がコンパクトと言うことは軽いと言うことです、機関部が軽ければ銃のバランスが良くなります、少なくとも好みにバランスに調整しやすくなります。いままでブローニングタイプの上下2連しか無かった世界で、このメカを考えたペラッチは本当に偉大な存在です。
それからすると、このペラッチのメカをそのままパクッた様な銃が多数出ていますが、基本構造はパクリながら、無理矢理内部を設計変更しているため結局ガラクタな銃になっています、私は全く評価しないのですが、それでも結構買っている人も見かけます。
物まねで作って、オリジナルを超えると言うことは殆どあり得ないことなのですが、人が使っていない物を使いたいと言うので有ればそれはそれでその人の認識でしょうね。
私は、上下2連はオリンピックで使った物しか売らないと言うスタンスをとっています。私はそれが一番正常だと思うのですがね。

オリンピックと言えば最近、ペラッチはオリンピック選手用に特別なチョークを密かに作り、それを極限られた人にしか販売しないが、**社にはその特殊な銃が入荷した、価格は200万円と高いが、ファーイーストなら幾らで入りますかと言うメールが数回舞い込んだ、これも詐欺まがいの商法だと思うのですが、シューターと言うのは純朴な人が多いのかよくこんな話に簡単に乗せられると感心してしまいます。
いまや、オリンピックと言うのは非常に大きなビジネスの場と化しています、そのオリンピックで密かに特性のチョークを作って、一部の人だけに販売している???????
常識で考えれば解りそうな物ですが、もしオリンピックで使われて、そのチョークが本当に効果的で、メダルでも独占できる程度の製品なら、私がペラッチの社長なら、絶対、それこそ絶対と言う言葉が1000回続くぐらい絶対を言った上で、"密かに売る"なんて事はしませんね、当然にして、大々的に宣伝して売りまくります、それこそがビジネスの常識、王道ではないですかね。またパターンが良いとか、色々な話を聞きます。パターンが良いと言うことはコロンが短いと言うことなのでしょうかね??????
騙される人が居るから騙す人も出てくるのでしょうが、射撃を、銃器を愛する人間として銃を利用して詐欺まがいのビジネスをするというのは悲しい事ですね。

ペラッチのトップレバーはひねった状態でロックされます、これはSKBみたいにロックしないとクロスボルトに銃身が激突すると言う防止策の為では無く、ロック部分を引っ込めて置くことにより、銃身を閉鎖したときに軽く閉鎖できる様にしているためです。
従って、間違ってトップレバーが戻っているときに銃身を閉鎖しても何の問題も起きません。私のSCOはサイドプレートであり、サイドロックではありません。サイドロックと言うメカが作られたのは、フィールドで簡単にハンマースプリングが交換できると言う利点のためです、しかしながらその分、工作が面倒になるので値段も高くなると言う寸法です。
しかしながら純粋にメカニズムの観点から考えると、スプリングもハンマーも、全ての部品を片面だけで支えているわけで力学的に考えても合理的な考えではありません。
力学的に合理的なのは、機関部の中で左右のピンで支えられたボックスロックが最良です、しかし、ボックスロックのハンマースプリングを交換するには銃を全分解しないとできない、ブローニングなどはその構造ですよね。
しかし、ペラッチは引き金部分を脱着出来るようにしてしまったのです、この機構の設計や製造が困難という物ではなく、全くコロンブスの卵的発想です。
引き金が外れると言うことは確かにスプリングの交換は容易だが、さりとて撃針が折れれば、やはり完全分解しないといけないので、あまり大した意味は無いように思うのだが、日本の総代理店は、引き金が外れると言うのを利用して、スペアーの引き金を付けて販売しました、190万円と言うのは、正確に言うとスペアートリッガー付きで190万円です、当社の価格はスペアートリッガーの付いていない値段で64万5千円である、日本総代理店の名誉のためにあえて記述しておきます。

しかしながら私のペラッチは、今日に至るまで未だにスプリングも撃針も折れていないので、分解掃除以外で引き金を取り外した事は過去に一度もありません、付属のトリッガーなどは全くの無駄と言うほかありませんが、未だにスペアートリッガーを希望される方も少なくないので別部品としては販売しています。スペアートリッガーの取り外しは、セフテーの目一杯前進させるとロックが外れ、下に外すことが出来る、ところが新銃の内はこのロックが堅く、容易な力では外れません、親指の指紋が無くなるのではないかと思うくらいの力を出さないと動かないのです、ペラッチを購入したお客様から、引き金を外してくださいと言われる度に気が萎えるます。

引き金取り外し
引き金取り外し

ペラッチは銃身を折ったときにハンマーがロッキングされます、そのメカを少しお話ししよう。
銃身を折ると銃身に附いているレバーを下げる部品が機関部に組み込んであるレバーを後ろに押し上げる、このレバー機関部の内側と裏側からお見せしよう。

引き金
引き金
引き金レバー
引き金レバー
機関部サイド
機関部サイド
機関部内側
機関部内側

銃身を折ることによりこれらの一連の作動が完了するのですが、これらの作動をするために作動部分、特に接点の所には非常に大きな力がかかるのです、この部分は絶対に油を切らさないようにして頂きたい、私は通常のガンオイルではなく、グリースを使用しています。
ペラッチの凄いところは、全てが機械加工で出来ているのに機械の加工痕が全く無いと言うことです、こう書けば、メルケルもそう言っていたではないかと言われそうですが、メルケルの場合全て手作業でやっているので、特定の銃身と機関部はぴったり合うのです、しかし当然の話、銃が変われば合わないですよね。
ところが、ペラッチの場合、別の銃の銃身を持ってきてもビシャリと合うのです。
これは驚異的な精度で、一見手作業で出ているように見えるこれらの填めあわせが、すべて機械の研磨作業で出来ていることを意味しています、研磨作業だと3/1000ミリまで加工できますからね、また完璧な平面度も再現できます。
残念ながらこの作業を手作業でこなすのは不可能な事なのです。
試しに、私のSCOとグレードに違うMX8の銃身をはめてみた、"ビシャリ"と結合する。
お見事と言うしかない出来映えなのである。

銃身の互換性
銃身の互換性

ペラッチの銃を購入されるお客様から、銃身の重さを聞かれることがよくあります、トラップ銃の場合、1.55キロ、スキート銃の場合、1.5キロくらいが標準の重さなのですが、もっと軽い銃身の物はありませんかと聞かれることがありますが、私としてはあまりお奨めしたくはないのです、そのために銃身の作り方を少し説明しておきましょう。
銃身はパイプから作られるのではなく、鍛造された鋼材から、銃身の中にロングのドリルで穴を空けるのです、機械工作が解る人なら簡単に理解出来ると思いますが、30インチもの長さを一方からだけ空けると出口は必ず偏芯して出来上がるのです。穴の開いた後はその穴を中心にして外形を切削するので、皆さんの手元にある銃は入り口も出口も真心に穴が開いているはずです、当然ですがね!
ところが銃身の中心の所は必ずどちらに偏芯していることになりますよね!
元々出口は偏芯していたのですから。これがどれくらい偏芯しているか外見上からは全く解らないのです、ですからむやみに細くすることは非常に危険なのです。ですから銃身の外径を削るとき一定の寸法で削ろうとしても銃身材料のクロームもモリブデン鋼材は、切り子が刃物に絡んだりする事が多々あります、そうするとそこの部分が深く削れたり、あるいは切り子のために傷が深く付いたりする事もあります。
これが同じ鉄でも快削鋼と呼ばれるような材料なら綺麗に削れるのですが、粘りのあるクロームモリブデン鋼材は削り難いのです、少し専門的になりますが銃身の様に長い材料を削ると言うことは、旋盤加工で非常に面倒な加工なのです。

銃身がストレートならまだ加工方法があるのですが、銃身と言うのは薬室部分は太くて銃口は細いですよね、こうした作業はさらに面倒になります、従って加工途中でバイトがかんだり、切り子が絡んだり、従って傷の付いた銃身素材は外径をより研磨しないと傷が除去できません、逆にほとんど無傷のまま出来上がった銃身は外径の研磨が少ないのでトラップ銃の場合など1.65程度の重さで仕上がります。ですから銃身の重さは重量で指定されても作ることは困難なのです、しかしながら傷が深くてたまたま軽くできる物はありますが、トラップの仕様で1.5以下と言うのは事実上耐久性の問題で作る方も売る方も抵抗があるのです。しかしながら他のメーカーでは1.5以下の銃身も存在しますが、こうしたメーカーの銃は、銃身が膨れたり、銃身が抜けたりした事例があります。

そんなとき、銃身が軽いから仕方ないね! なんておおらかな考え方をしてくださるお客様は皆無です、我々の感覚からすれば、軽い銃身でたまたま異常高圧の弾に遭遇するとそういう事が起こるのは当然のことなのです、こういうクレームを持ち込まれたくないからペラッチも軽い銃身は作らないし、私も売りたくないのです。
あまり、こういう事を"売り"にするメーカーには信頼は置けないし、私はこれを"売り"にはしたくないのです。

彫刻左
彫刻左
彫刻右
彫刻右
彫刻下
彫刻下

メルケル303

2003年 1月22日 築地
更新 2003年 1月28日 築地
更新 2003年 1月31日 築地

私は、人に自慢できるような物は何一つ無いが、私自身マニアのなれの果てなので唯一、鉄砲だけは自慢できる、と言うよりはこれしか自慢する物が無いと言うのが現実です。
多くの人は、クレー射撃や、ライフル射撃をやっておられても、常々点数がどうしたこうした、と言うスコーアの話になるが、私自身は点数よりも色々な銃を使いこなすことに密かに喜びを感じている。
まあ、変態といえば言えなくもない、しかしながらそうした性癖のおかげで、それを生業にするまでなったのであるから、これも怪我の功名と言うところであろうか。

私は14才から射撃を初めたので、現在で、すでに40数年この世界にどっぷり浸かっていることになる。射撃技術についても、相応の体験は積んでいるが、何よりも多くの知識の源泉となっているのは今まで色々多くの銃を使い切ってきたという体験である。
私は射撃選手と言うよりは、ガンスミスとしての血の方が遙かに濃いので、射撃の成績よりも、銃器そのもの方にどうしても、より興味をそそられる。今でも毎週射撃場には出かけて、行くたびに数万円のお金を射撃場の肥やしとして蒔いているが、これは射撃の腕を上げるためと言うよりは色々な銃を撃ち比べる事の方に興味をそそられるので、多分にトリッガーハッピー的な要素を潜在的に含んでいることは否定できない。

射撃場に行って、弾を激発した後に漂う、ほのかな雷管の臭い(火薬の臭いではない)を嗅ぐ時などは至福の瞬間である。私は雷管の臭いの方が、婦人の色香よりも遙かにエクスタシーを感じる。これは、今まで婦人の色香では何時も悲しい体験をしているので、知らず知らずの内にそういう異常体質になってしまったのかも知れない。
その体験を通じて、人に自慢できる唯一の事例、鉄砲を自慢する事によりこのコラムは成り立つ、従ってひんしゅくを買うような記述があるやも知れぬが、それはこのコラムの体質である特性であるの、なにとぞご容赦を。

それでは短期連載コラム、鉄砲自慢、メルケル303の巻き、始まり始まり。

実を言うと、メルケル303を購入したのは、これで3丁目である。
最初に購入したメルケル303は、まだ東西ドイツが統一されていない頃、共産圏国がガラクタな製品を産出している中で、唯一西側の製品に勝るとも劣らない製品を作っていたのが東ドイツ、ズールにあるメルケル社の銃である。
銃器に関心を持った頃から何時の日かメルケルを手にしたいと考えていた、その想いが募り3丁ものメルケル303を購入する事になったのである。

メルケル全体図
メルケル全体図

当時のメルケル303のジャパンガンの定価は470万円である、もっともこんな値段で購入する気は無いので、直接ドイツの商社に依頼して注文をした。チークピースが付いていないだけの、特別注文ともいえない程の極ありきたりの製品であったが、それでも注文してから入手出来るまで2年を要した。
銃の入っていた紙箱も、そしてぺらぺらの取り扱い説明書も、こんな紙が存在するのかと思えるほど、粗雑な紙で作られていた。今時、北朝鮮でしかこんな紙は使わないだろう。
そしてその粗末な紙そのものが唯一、この銃が共産圏の製品である事を如実に物語っていた。
箱はお粗末だったが銃の出来は私を充分うならせる出来であった。
特に、粗末な機械設備しか無かったであろう共産圏で、どうやって機械工作したのか解らないような箇所が何カ所もある。

機関部四角穴
機関部四角穴
機関部四角穴銃身無し
機関部四角穴銃身無し

たとえば機関部の下にある四角の穴、これは銃身の薬室の下にある、ロッキングが機関部とはまり合う所である、ロッキング部分なので丸穴では具合が悪い、強度を考えると四角穴でないといけないのである。丸穴ならドリルでもめば簡単に穴あけ出来るが、四角い穴は非常に工作が難しい、理論的に考えられる唯一の方法は、ドリルの様な形状をしたフライスの刃で、少しずつ穴を空けて極力四角穴に近づける、しかしながら回転するドリル状の刃物なので、角はどうしても残ることになる。その角をスロッッターと呼ばれる、刃物が前後に動く機械で角を削る、あるいは油圧で作動する、ブローチと呼ばれる刃物を使い、それを通して角を落とす、それくらいしか加工方法が見あたらない、現在なら放電加工と言う方法も取れるが、まだ放電加工が発明されていない頃からメルケルは四角穴を作っていたのである、従ってスロッター加工か、ブローチ加工以外、加工方法が無いはずである。しかしながらいずれの四角穴にも刃物後が全く無いのである、現在であっても機械工作で加工後を残さないで作ることは事実上不可能な事なのである。
さらに驚くのは、その四角穴は真っ直ぐ開いているわけではない、銃身のラグは真上から降りてくるのではなく、機関部先端のピンを軸に斜め上から回転するように動きで入ってくるわけで、その動きに合わせて穴加工がされているのである、銃身の2個のラグの形状を見て貰いたい、これと同じ形状の穴を空けているのである、こうなるとスロッターでもブローチでも加工は困難である、どうやって加工したのか、未だに解らない。

しかも穴の何処にも機械加工した痕が全くないのである、そうなると膨大な手間をかけ丁寧に研磨をしたとしか考えようがないのである、研磨すると言うことは穴自体を最初から小さめに作る必要がある、その穴を手作業で正規の寸法に仕上げると言うことは膨大な作業時間を必要とする、しかも熟練した労働者でないとこうした加工は出来い。

銃身ラグ
銃身ラグ

だからこそ共産圏の製品で、470万円と言う値段で売られていたのである。
子細に調査した訳ではないが、この値段だと共産圏で売られていた、トラバントと言う東ドイツ製の乗用車は少なくとも10台は買えたはずである。
恐らく、東ドイツの市民でメルケル303を買えた人間は居なかったのでは無いかと思う。
それくらい共産圏の東ドイツでは論外の値段だったはずである。

最初にメルケル303を購入したのはこれで3丁目だと書いたが、最初のメルケル303はどうしたかと言うと、ある射撃場のオーナー氏が、どうしても私の持っているメルケルを譲って欲しいと、私が射撃場に行く度に懇願するので、"貴方が自分で使うのなら"と言う条件で、50万円で売ってあげた、相場からしてもかなり安い値段だったので、相手も非常に喜んでくれた。
しばらくすると、知らない人が私のメルケルを使っている、他の人にさり気なく聞いてみたら、その射撃場オーナーから250万で買ったという話である。
どうもその射撃場オーナー氏は、お客からメルケルの注文を受け、私に狙いを定めて必死に買い取り作戦を始めたらしい。こうした行為は確かに真義にはかけるが、腹が立つ前に、そのビジネス手腕に感心するばかりであった。

2丁目のメルケルは東西ドイツが合併してから購入した物である、正確に言うと注文時点ではまだ東西ドイツが存在したのであるが、品物が送られてくるときは合併した後であった。当時、東ドイツと西ドイツは賃金に相当差があった、多分5倍以上の開きがあったのでは無いかと記憶している。併合された後は当然値上げされる物と思っていたのだが、値上げなしで注文は継続された。値上げがされなければ当然どこかをコストダウンしなければ理屈に合わないのであるが、逆にどこをコストダウンしてくるのか、そこが不安だった。しかし送られてきた製品を見て、ほとんど品質が落ちていないことに安堵した。
しかしながら、"ほとんど"と書いたように、全く変わらないと言うわけでは無かった。
無視しても良いような所だが、がさつな加工が随所に見られた。実際に使うには全く問題は無いのであるが、私は射手としてよりも、ガンマニアであることを自負しているので、どうしても愛着が持てず、早々に手放してしまった。
現在使っている3丁目のメルケルは非常に珍しい東ドイツ製のメルケルと言うので、やっと手に入れた逸品である。

メルケル303はメルケル社の最高級品で、撃発機構はサイドロック式である。
共産圏で作られた銃であるので、当時の劣悪な共産圏の弾を100%点火させるために非常に強いハンマースプリングが使われている、その為にもあるが、それにスプリング折れが出やすい、共産圏の国では金属材料と熱処理は西側と比較すると遅れていたので、東ドイツ製の頃のスプリングは、現在のメルケルの物と交換した方がトラブルは少ない。それにスプリングが強いために引き金のシエアーの部分の負担が大きく、絶対に引き金調整をしないようにしないといけない。引き金を軽くしたり、遊びを無くしたりすると、同発の原因になる。

サイドロック
サイドロック

別に引き味に問題は無いので私はオリジナルのまま使っているがこれをいじくるといろいろなトラブルに悩まされる事になる。
メルケル303のサイドロックメカの優れている点は、手で簡単に取り外す事が出来ると言うことにある。右側のサイドプレートの所に隠しネジが取り付けられている。

隠し蓋
隠し蓋
蓋を開ける
蓋を開ける
つまみを持つ
つまみを持つ
ネジとサイドプレート
ネジとサイドプレート

隠しネジの蓋を持ち上げると、それがつまみになりネジを回転させることが出来る。
ネジを外すとサイドロック機構が取り外せる。この撃発機構の全ての部品にも機械加工の跡はない、どうやって作ったかは想像力で分析するしかない。

左右のサイドロック機構
左右のサイドロック機構

ハンマーをロックしているのは2個のシエアーである、1つはハンマーをロックしているシエアー、もう一つは引き金を 引かないときに初矢の振動で引き金が落ちないようにするためのロック機構である、ロック機構は引き金を引いたときに一番最初に作動しハンマーロックを外す、そしてその後を追うように引き金のロックがはずれ、このハンマーが作動する訳である、この様に微妙なシステムなので、メルケルの引き金調整はしてはいけないのである。サイドプレートの内側は、きれいな文様が描かれている。
これはエンジンターンと呼ばれる物で、ボール盤を使い、ドリルの替わりに棒の先端に硬質ゴムを取り付け、それにエミリー粉と呼ばれる、グラインダの素材となる研磨剤を付け、金属表面に文様を付けていく手法なのである。

サイドロック内部
サイドロック内部

本来は単に文様を付けるという目的ではなく、細かい溝を付けることにより油ためて置く目的でなされたのであるが、現在ではあまりそうした目的は認識されていない、ほとんど単なる文様であるが、イギリス等の高給銃には例外なく施されている手法である。

外見からもこの機構は非常に複雑な形状をしている、その為にこの機構を銃床に組み込むためには非常に複雑な加工をしなければならない。現在ではどんな銃器メーカーでも銃床加工は100%機械加工である、そうでないと正確な加工が出来ない。また互換性もとれない。そんな時代にあって、メルケルの銃床加工は完全に手加工である、全ての部分にノミの後が歴然と残っている。この部分だけは絶対に機械加工が出来ないらしい。

銃床内部
銃床内部

銃床の内部加工を、大きくとれば機械加工も簡単に出来る、しかしながらこの複雑なメカを組み込んで、メカと銃床の間は1ミリ程度の隙間しかないのである。出来るだけ多くの木部を残すと言うことは、それだけ木部の強度を保つことになる、その為にこうした非常に手間のかかる作業を厭わないでやっているのである。
手作業にこだわるもう一つの理由は、これだけ複雑な加工になると、機械で加工した場合、木の順目と逆目を配慮して加工することは出来ないからである、機械加工の場合、エンドミルで削るので削る方向は常に一定方向だけである、そうすると順目の部分は綺麗に削れても、逆目の部分はむしり取られるように削られる、その木くずが激発機構に入ると作動不良を起こすし、木の強度も保てない、しかも、こうした高給銃に使われる銃床材料は、良い材料になればなるほど、木目が入り組んでいる、日本では高級材料と信じている人も多い、虎目の銃床は、こうした順目と逆目が織りなしている模様でこれだけでもかんなで削れば模様の度にかんなが引っかかると言う扱いにくい材料なのである。
従って、手作業で加工するのが最良の方法なのである。

機関部と銃身のロッキングは、2個のロッキングラグと、クロスボルトで止められている。
常識で考えれば、ボルトが穴に入る場合、ボルトと穴の両方か、少なくともどちらかはボルトが入りやすくするために先端をテーパーに作るのが常識だが、メルケルの場合、そのテーパー部分は全くない、こういう機構の場合、穴とボルトが完璧に一致しないと絶対に作動しないわけだが、テーパー部分を全く設けていと言うことは、加工精度に絶対的な自信があるからに違いない。こういうほんの些細な事で私みたいなメカ好きは完全に脱帽してしまう銃なのである。

クロスボルト銃身側
クロスボルト銃身側
クロスボルト
クロスボルト

こういうクロスボルト式の銃は色々あるが、メルケル以外の銃は例外なくトップレバーを開いたときには、それをロックするための装置が必ず設けてある。そうしないとトップレバーが自動的に戻れば、クロスボルトの上に銃身の穴の部分が激突することになる。
しかしながらメルケルにはその装置はない。トップレバーにかけた親指を放せば何時でもトップレバーは自動的に戻る、つまりクロスボルトも閉鎖したままである。
普通の銃ならこれで銃身を閉鎖させれば、銃身のロック部分がクロスボルトに激突するわけであるが、メルケルはそうならない。それは銃身に付いているロッキングの一つが、機関部側のラグに連動して銃身を閉鎖しようとすると、ラグが後退するのと同時に、トップレバーも動き、同時にクロスボルトも開くのである、これこそ完璧なメカニズムである。

トップレバー
トップレバー
銃身ラグ トップレバー連動部
銃身ラグ トップレバー連動部

当社では中古銃の取り扱いもしているので、SKBの上下が入荷したときなど、組み立て中にトップレバーを開かないで、そのまま組み立てようとして、銃身のロック部分がクロスボルトに激突してしまうことが間々起こる。SKBの中古だからさほど心は痛まないが、こんな時にはメルケルの優秀さをあらためて実感する。

SKBクロスボルト1
SKBクロスボルト1
SKBクロスボルト2
SKBクロスボルト2

メルケルのサイドリブは空気穴が無い、その為か、連続して射撃すると銃身が熱くなるのが早い、まあ欠点とは言えないほどの事ではある、私の感覚では我慢できる範疇に属する。
メルケルの先台は上下分離式である、ほとんどトラブルは無いが、私が最初に買ったメルケルは経年変化により先台の先端が2ミリ程開いてしまった事がある、仕方ないので銃を収納する時は、ここの部分をプラバンドで収束して収納しなんとか改善したが、銃床材料の良い物を使うとこうしたトラブルが出ないとも限らない。

分離式先台1
分離式先台1
分離式先台2
分離式先台2

最近は、上下の銃身、そしてリブを止めるのにハンダではなく、銀蝋を使う銃が増えている、ミロクもそうだし、ベレッタのDT-10もそうである。
銀蝋は剥がれにくいと言う利点がある替わりに、逆に剥がれた時には補修が聞かない。
勿論ミロクは日本のメーカーだから修理は出来るだろうが、ベレッタ等はお手上げである。
勿論本社工場に送り返せば修理できるが、かなり修理期間をとられる。
それも完璧な故障なら修理と言うことも出来るが、修理と言えないようなトラブルの場合、は非常に困るのである。
たとえば、DT-10の場合、ベレッタは銃身の基部に銃身の筒を挿入して銃身を完成させている、この部分は圧入ではなく、銀蝋がよく回るように僅かな公差を設けて作られている、ここに完璧に隙間を埋めるように銀蝋が流れてくれれば良いのだが、時には僅かな隙間が出来ることがある、これは製造上の事で容認されるレベルの事なのだが、私が体験した事例は薄い油をたっぷり塗ったのであろうが、射撃をして銃身が熱くなると僅かに油がにじむ事でクレームとして持ち込まれた。製造現場での感覚で言うとトラブルとは言えないのであるが、通常のハンダの場合は修理で対応できるのだが、銀蝋の場合は鉄が赤くなるまで焼かないと銀蝋が溶解しない、そのため事実上修理は出来ないのである。
真っ赤に焼いたら再度熱処理をしなければならず、熱処理をするとなると金属材料の組成が解らないとやりようがないのである。従って日本では手も足も出ないことになるのである。
仮ににベレッタに送ったら、こうした程度のクレームは向こうの感覚では修理対象とは認識してくれないだろう。従って説明のしようが無くなるのである。
リブなどが変形した場合も同様である、これがハンダ付けなら修理も容易だが銀蝋の場合は国内での補修はほとんど絶望的である。

そういう意味ではメルケルは当然してハンダ付けなので、補修も容易と言うわけである。

メルケルの銃床はベンドが深く、グリップも細い、最近では***は日本人向けに銃床を作っている、だから正規代理店で購入しないといけない等と、無知なシューターに吹き込む業者も多かったが、元々銃床サイズは日本人向けと言うおおざっぱなサイズがある訳ではなく、同じ日本人でも多種多様な人が居るわけで、背の大きい人も小さい人もいる、太った人も痩せた人もいる、体力のある人も非力な人も、男性も女性もいる。
一体日本人向けとはどういう体躯の人を対象としているのか、代理店はそのデーターは一切公表していない。
当社ではペラッチはいろいろなサイズで多くの日本人が好む寸法で作らせている。
そもそも銃床の寸法というのはそれを設計した人が、どうした射撃スタイルで撃って貰いたいかを考えて作る物である。
またオリンピッククラスの射撃選手が依頼する銃床の型を参考にする場合もある。
あるいは、その銃のポリシーというか、外観を重要視して決める場合もある。
例えばウエザビーライフルの場合、グリップは極端にまで細くしてある。
この銃はアメリカ人に販売するために作られ銃であるが、グッリップは本当に細い、私は1970年、ウエザビー社でガンスミスの修行をしていたので解るが、ウエザビーライフルはこの細いグリップでマグナム装弾を撃つのであるから、グリップが頻繁に折れる。グリップの部分にアルミの棒を挿入して多少防止策を図ったが、それでもグリップ折れは無くならない、ある時ウエザビーの設計担当の副社長と話したときに、ウエザビーではグリップが折れるからグリップを太くすると言うのは出来ない。何何故ならば、それによってウエザビースタイルが阻害されるから、そう言う話だった。
先台の細さ、グリップの細さ、そしてチークピースに広がるふくよかな形状、それがウエザビーの命だとも話していた。
ウエザビーの散弾銃はSKBでOEM生産されているが、日本向けに出荷される銃よりも、ウエザビー社に出荷される銃の方がグリップは細いのではないかと思う、ミロクの銃は外この国向けも国内向けも同じグリップな筈である。
日本人向け銃床?????
製造現場では誰もその様な与太話は信じていないはずである。

私の原稿は頻繁に話が横道にそれるが、そちらの方が退屈しないで良いのでは無いかと勝手に解釈して、また話をメルケルに戻す。
メルケルのベンドは深いので、普通の銃しか撃ったことの無い人は"これじゃ使えない"等と簡単に判断してしまう事になる。

ペラッチを例にとって話すが、ペラッチの銃は銃身とリブが平行に出来ている。
そのためベンドを高くしてリブを斜め上から見るような構造になっている、つまりそう言う見え方をすることにより、銃身が上を向いているので照星で狙った所より、上に着弾する様になる。

元台写真
元台写真

狙った所より上に着弾しないと、トラップ射撃で上に飛び出すクレーは相当上を狙い超ししないと命中しない事になる、我々が飛び出したクレーを視認して、弾を撃つには、目で視認するとその情報が脳に入り、それを脳が判断して人差し指に"引き金を引け!"と指令するまで相応の時間がかかる、正確な時間は失念したが、100分の3秒くらいだったと思う、その後ハンマーがリリースされて撃針を叩くまで、いわゆるロックタイムという時間だが、これだけでも1000分の3秒くらいかかる。
そのために目で視認して弾が出るまで、あるいは弾が飛翔して目標に当たるまで、当然にし相応の時間がかかる、そのため前に出るクレーには見越しの時間が必要なのである、狙い腰とも言うが。弾は狙ったところより上に着弾するように出来ているので、必然的に横に飛ぶクレーはクレーの下を狙うことになる。
メルケルの場合のリブは、銃身と平行ではない。
リブの平行線から見ると銃身は僅かに上を向いている、メルケルのリブを銃身の真ん中と先端で比較すると、先端のリブが薄くなっていることがおわかりいただけるだろうか。
そのためにリブは斜め上から見る必要は無いのである、リブをほとんど平らにして見ても狙点よりも必ず着弾は上に行くように出来ているのである。
であるから、メルケルの場合、リブを斜め上から見る必要はないのである。リブを平行に見てもちゃんと弾着は照星の上に着弾する事になる。

リブ
リブ

逆に言うとペラッチやベレッタ等の銃身と平行のリブの銃はは、リブを斜め上から見るようにしなければいけないのである、従ってこれらの銃に中間照星を付ける事は私は推奨しない。
もし中間照星を付けて、それが8の字状に見えたら明らかにベンドは削り過ぎである。
照星と中間照星の間は相当離れていないとリブを正しく視認している事にはならない。
それなら最初から中間照星を付けない方が絶対に正しい狙いが出来る、なんて書きながら私はペラッチに中間照星を付けてしまって、しまったと思ってが手遅れで、さりとて一端付けた物を外すわけにも行かず現在も付けっぱなしである、私のペラッチをみてこの原稿内容と言うことが違う等と誤解をしないようにお願いしたい。

あまり知られていないがメルケルのチョークは他の上下よりも絞りがきつい。
一番大切なのはスイングだが、チョークの絞り具合もグレーの粉砕時には影響が大きい、実際にメルケルで射撃すると、スイングが完璧で、狙点も正確だと、パターンだけでなく散弾の隊列とも言うべきコロンが飛翔するクレーに次々に当たっていくため、クレーは粉々に粉砕する。これはメルケルの特徴である。
しかしながらコロンが長いと言うことは当然パターンは小さいと言うことになる。

彫刻1
彫刻1
彫刻2
彫刻2

メルケルの彫刻はこうしたハンテングシーンの他に、唐草模様の彫刻があります、1丁目も2丁目も唐草を使ったのですが、唐草は表情に乏しいので飽きがきます、それで3丁目はハンテングシーンを選択しました、ペラッチなのの繊細な毛彫りと違い、ドイツの彫刻は全部深彫りです、毛彫りと深彫りとは一長一短があり一概にどちらが良いとは断言できませんが、些細な質感を表すには毛彫りが一番である。、しかしながら長年使うと彫刻が薄くなってくるという欠点もある。メルケルの深彫りは彫刻が薄くなるなんて事は絶対にあり得ない。

彫刻3
彫刻3

メルケルのグリップもめちゃめちゃ細い、画像でごらんいただけるであろうか。

グリップ写真
グリップ写真

アメリカに売られている銃も、ヨーロッパで流通している銃もメルケルはみんなこんなにグリップは細いのである、これがメルケルの標準寸法なのである。
この様に銃メーカーによって、グリップの細い物もあれば太い物もあるのである。


更新 2003年 1月28日

Sさんの感想文です

HPのメルケル303のコラム、とても興味深かったです。
実は私も10数年前、中古のメルケル303を所有していて少しスキートを撃ったのですが、スプリング折れ、撃針折れなどトラブルに悩まされ、やむなく手放した経緯があります。
どうも前オーナーがかなり、いじっていたようです。
私の父が射撃場に通っていた30数年前はメルケル303といえば全シューター憧れの銃だったそうです。ちょっと普通の人は手が出なかった価格だったようです。
普通に射撃をやるにはベレッタ、ペラッツィで十分で、かえってメルケルは今や扱いにくい銃と見る人が多いようですが、イタリア銃とは異なるドイツ鉄砲職人の魂というか鉄砲鍛冶気質の結晶のような魅力があると思います。
私もお金に余裕があれば是非貴社にオーダーしたいのですが、この不況下では・・・・・・。
でもいつかは、持ちたい銃です。
今後益々の貴社のビジネスのご発展をお祈り申し上げます。

Kさんの感想文です。

いや~メルケルはただ高いだけでなく、本物の名銃だったんですね。いまだに機械を凌駕する、職人が存在することに敬意を払いたいと思います。素晴らしい技も、これを評価する人や解説できる人がいないと、何時の間にか消えてしまうことが、間々あります。ぜひ、すばらしい技と技術について解説をお願いします。「出物情報」もまってます。


更新 2003年 1月31日

築地様のHP、いつも興味深く拝見しております。
そして鉄砲自慢メルケル、興味深く読ませて頂きました。

私は昨年の夏から射撃を始めまして、今日に至るのですが・・・
父の勧めもありまして、中古のメルケルスキート銃を購入致しました。
購入当時は、何故こんな重くて、古い銃・・・しかも今時どこにもない26inc。
と思っておりましたが、鉄砲自慢のコラムを読ませて頂きようやく東ドイツ製メルケル銃の価値を知りました。

父はもう20年前ほどに射撃をやめていますが、メルケルと言う銃は本当に憧れの的だったんですね。
父の若かった頃には、とても手が出る銃ではなかったと聞かされました。
私が自宅に持ち帰った銃を手にとって、「これこれ!初めて手にした」と言って、私以上に嬉しそうでした。
何十年も前、射撃場でメルケルを横目でチラチラ見ながら撃った経験があるそうです。
また気のせいか、メルケルの銃は他の銃とは違った重みのある銃声に聞こえたそうです。

自分が持ちたくても持てなかった銃・・・息子の私に持たせて、若かった頃を思い出しているのでしょうか・・・
父の話だけでは、メルケル銃の優秀さと価値を信じきれなかった私ですが、コラムを読ませて頂きようやくこの古いメルケルに愛着がわいてきました。

さ~週末もこの古いメルケルで練習してきます!
メルケルの詳細な解説、どうもありがとうございました。

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